兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司は、送り狼になりうるのか

上司と部下シリーズ、早くも4話目。

このシリーズ、拍手数が全て36なんですよね

偶然にビックリです


意地悪上司は、送り狼になりうるのか


彼女の自宅は一軒家ではなく、お世辞にも綺麗とは言えない古びたアパートだった。球が切れかけているらしくピカピカと点滅している照明に照らされたとても薄暗い廊下を、黎翔は夕鈴を抱きかかえて進む。
彼女の親友に手渡されたメモにある住所、彼女の部屋は二階の一番奥だった。

自分の部下とは言え、女性の鞄を勝手に漁るのは申し訳ないと思いながら、仕方が無いと諦め彼女の鞄を探り、鍵を取り出す。

一人暮らしらしい彼女の部屋は当然真っ暗で人気もなくシン…している。手探りで照明を点け、黎翔は室内に足を踏み入れた。

アパートの外観からは想像出来ないほど、室内は綺麗に整頓されていた。
四畳ほどのキッチンと六畳ほどの部屋、バストイレがあるだけの狭い室内。
必要最小限の物しか置かれていないその部屋は、女性の一人暮らしにしては質素だった。

室内にベッドはなく、黎翔は仕方なく畳の上に一度彼女を寝かせると押入れを覗いてみる。中には綺麗に畳まれた布団が入っていて、それを引っ張り出して畳の上に敷いた。
もう一度抱き上げた細い身体をそっと横たえると、彼女は慣れ親しんでいる寝具の感触を感じてか、もぞもぞと身動ぎする。

そんな彼女を見て、黎翔はフッと微笑んだ。

彼女が寝ている布団の傍に胡坐をかいて座ると、黎翔は室内をキョロキョロ観察してみる。

小さなテレビと、箪笥に化粧台。
部屋と続きになっているキッチンのシンクに洗い物などなく、朝のうちに片付けられているのが分かる。
几帳面な、彼女らしい部屋。

黎翔はふと目に入った物に、腰を上げて近付いた。
ファイルや分厚い本が仕舞われてる本棚の上に、飾られている写真立て。

年若い男女と、小さな女の子。母親と思わしき女性の腕の中には幼子が抱かれている。
彼女の両親だろうかと思う。けれど家族写真のようなものは、それ一枚しか飾られていない。

黎翔は一つの写真立てを手に取って見詰めた。

彼女の学生時代の写真、仲の良い友達と撮った写真、スーツ姿の硬い表情の彼女の写真。
それらに交じって、一枚だけ社内で撮られた写真があった。

営業一課の入り口で並んで立つ、黎翔と夕鈴。

彼女が入社してすぐ、彼女の教育係になった時、記念にと撮った写真。

緊張からかぎこちない笑顔で写っている彼女を目を細めて見詰め、黎翔はツイッと指でなぞった。

「…う、ん…」

突然後ろから聞こえた声に黎翔はギクリとして、慌てて後ろを振り返る。
彼女が目を覚ましたのかと思ったが、まだ眠ったままだった。
寝苦しいのか、顔を顰めている。

黎翔は写真立てを戻すと、ゆっくりと彼女に近付いた。
そうして、彼女がまだ飲み会の時のままの服装だという事に気付く。
本当なら着替えた方が良いのだろうが、さすがに黎翔が着替えさせるわけにはいかない。
自分の部下で、彼女の親友・明玉も連れてくるべきだったかと黎翔は悔やむ。

「…許せよ。」

独り言のように詫びて、黎翔は首元までキチッと閉じられている彼女のブラウスのボタンを外し、襟元を少し緩めてやった。
そして顔に掛かっている彼女の長い髪をそっと横に流し、真っ赤になっている頬を優しく撫でた。

「んぅ…?」

ハッと、黎翔は手を引く。

「…課長…?」

ゆっくりと夕鈴の瞼が上がり、ぼんやりとした瞳で見上げてくる。

「――ああ。…どうした?気持ち悪いのか?」

フルフルと、夕鈴は首を横に振る。

「水を……」

辛いのか、時々顔を顰めながら彼女は呟いた。

黎翔はキッチンに行き、冷蔵庫の中からミネラルウォーターを取り出した。

「汀、身体を起こせるか?」

問い掛けると彼女は頷き起き上がろうとするが、初めて口にした酒のせいで思うように動けないらしい。
苦笑いした黎翔は、夕鈴の背中に手を添えて抱え起こしてやった。

コクコクと水を飲む夕鈴を、黎翔はじっと見つめていた。

会社では上司と部下の関係、こんな風に彼女の身体に触れるのも初めてだ。
何より、会社ではどうしても彼女に対して優しく出来ない。

嫌っているわけではないが、何故か苛めてしまうのだ。

そんな自分の態度が、彼女には嫌われていると思っていたなんて。

「か、ちょ…?」

再び布団に横になった夕鈴は、舌足らずに黎翔を呼んだ。

「…何だ?」

彼女の眼はすでに閉じかけている。
話しかけているというより、すでに寝言だろう。

けれど黎翔は、そんな彼女に続きを促す。

「…意地悪…しないで、…やさ、しく…して……」

そうして、彼女はスウ…と眠りに引き込まれていった。

可愛らしい彼女の言葉に、黎翔は口元を押え、視線を逸らす。
彼の頬は、ほんのりと赤い。

一筋涙の跡が残っている夕鈴の頬に唇を寄せ、黎翔は苦笑いする。

「…ごめんな。―――夕鈴。」

会社では決して呼ぶ事のない彼女の名を、初めて呼んでみる。

素直になれない自分。

好きなのに、どうしても彼女を苛めてしまう。


もう一度夕鈴の頬を優しく撫でて、黎翔は立ち上がる。

意識のない彼女に本心を漏らし、こういう時にしか優しく出来ない。

こんなんだから誤解されるんだろうなと、黎翔は苦い気持ちで部屋を出て行った。


END


送り子犬くらいにはなったのかな?






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Comment

No title 

現代パラレルの次回作ありますか??
  • posted by 陽向 
  • URL 
  • 2013.04/29 22:56分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: No title 

陽向様

現代パラレルと言うのは、Creuzシリーズの事ですか?
続きはもうちょっと待って下さいねm(__)m

  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.04/30 00:42分 
  • [Edit]
  • [Res]

No title 

んも~~。

ジレジレ・・・・。

黎翔さん、素直になってよ~
いじめたくなる気持ちもわからないでもないけど・・(笑)

「・・・ごめんな ----夕鈴。」

・・・・・・・///////!!
このセリフ、シチュに萌え!てか、照れ(//∇//)
か・・・課長・・・ご年齢は・・・可愛すぎます~~!!

なかなか、私を翻弄してくれちゃいますね(笑)

楽しみに待ってます♥

  • posted by ぷーちゃん 
  • URL 
  • 2013.04/30 08:58分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: No title 

ぷーちゃん様

コメントありがとうございます!

慧ネン、じれったいのが大好きなんです。(甘々も好きですが…)
本人の前では全く素直になれない課長さん。
好きと言う気持ちが、夕鈴に届く日は来るのでしょうか?

例のセリフ、書いている時は何も思いませんでしたが、読み返してみると滅茶苦茶照れますね(書いといてなんですが…)

この二人は書いていてとても楽しいです♪
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.05/03 18:59分 
  • [Edit]
  • [Res]

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  • posted by  
  •  
  • 2015.03/20 21:59分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

お名前無し様

また古い記事にコメント下さって、ありがとうございます☆
生気果ててるって、一体何があったんですか!?
お客様の洗い物をしなければならないなんて、大変ですね(*_*;
旦那様の言う通り、座ってちょっと休んで下さい。でも『壊れたか?』と余計ですよね(*_*;
慧ネンも急性アル中で救急車のお世話になった苦い過去がありますm(__)m
一週間は長くて辛いです。
一ヶ月のうち一日仕事して、後全部休みだったら良いのに…。←ダメ社会人。
  • posted by 高月慧ネン(お名前無し様) 
  • URL 
  • 2015.03/26 02:43分 
  • [Edit]
  • [Res]

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