兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

♪ありがとうの言葉を君に

突然ですが、慧ネンは今日誕生日です

なので(?)誕生日ネタで

慧ネン的には、夕鈴は春生まれのイメージです

※ちょっと視点の入れ替わりが多過ぎて、読み難いかもです




♪ありがとうの言葉を君に


夕鈴はテーブルに並んだ料理を見ながら、ひとり溜息を吐いた。

昨日の夜―――。

「…え?」

夕鈴は携帯の向こうから聞こえてきた彼の言葉に、思わず呟きを漏らす。

『――だからね、急にライブが入っちゃって、明日会えそうにないんだ…。』

そう言う黎翔の声は沈んでいて、夕鈴は「そうですか…。」と呟く。

『本当にごめんね!…明日は夕鈴の誕生日なのに…』

何だか泣きそうになっている彼に、夕鈴は慌てて明るい声で返事をする。

「仕方ないですよ、お仕事ですもの。…それに大丈夫です!明日は家族と明玉達に祝ってもらう事にしますからっ!!」

『…夕鈴、無理してない?』

「してないですよ?…本当はパーティーしようって言われていたんですけど、黎翔さんと約束してたから遠慮してもらったんです。黎翔さんに会えないのは寂しいですけど、事情を話して皆に祝ってもらいます。」

『でも…』

黎翔はまだ何か言おうとしたが、背後から彼を呼ぶ声がする。

「――ほら、呼ばれてますよ?」

きっと打ち合わせやリハーサルなどで忙しい中、合間を縫って連絡してくれたのだろう。

『…っ、ごめんね、夕鈴!…この埋め合わせは後日必ずするからっ!!』

「ふふ…プレゼント、楽しみにしてます。」

通話を終えた夕鈴は、フウッと息を吐く。

明日は自分の誕生日。

黎翔と付き合い始めて、初めての誕生日は一日オフを取った彼に祝ってもらうはずだった。

とても楽しみにしていたが、黎翔の仕事を考えたら仕方が無い。
彼は一般人ではなく、今世間で最も人気のあるバンドグループのリーダーで、俳優のReiなのだから。

そんな遠い存在の彼と、庶民で平凡な自分が恋人同士あること自体すでに凄い事なのに、これ以上何を望むのだろう。

――だから私は、寂しいなんて思っちゃいけない。


ツーツーと無機質な音を聞きながら、黎翔はがっくりと肩を落とす。

明日は大好きで堪らない可愛い恋人、夕鈴の誕生日だ。
去年の自分の誕生日を夕鈴が祝ってくれた時、黎翔も彼女の誕生日を祝ってあげたくていつなのかを聞いた。

「4月です。」

と言われて、もう過ぎている事にがっかりしたのを覚えている。

4月と言えば二人は出会っていたが、まだ付き合ってはいなかった頃だ。
だから今年の夕鈴の誕生日には、絶対オフを取って、お祝いしてあげるつもりだった。

明日は土曜日で、夕鈴も学校は休み。
一日中彼女と一緒にいられると思っていたのに、まさか急に週末ライブの仕事が入るなんて。

「…仕方が無いでしょう。仕事なんですから、諦めて下さい。」

ものすごく機嫌の悪い黎翔に、「私としても、入れたくなかったんですが。」とマネージャーの李順は眼鏡を押し上げる。

黎翔と夕鈴の関係を知っている李順は、滅多に会えない二人のために出来るだけスケジュールに気を配っている。
けれど彼にも、どうしようも出来ない事もあるのだ。

李順を責めるわけにもいかず、黎翔も仕方が無いと気持ちを切り替える事にした。


「…よしっ!」

夜八時過ぎ、明るい照明を点けたキッチンで、夕鈴は出来上がった料理を見詰め満足げに笑う。

自分の誕生日のご馳走を自分自身で作るのは初めてではない。
母を亡くしてから、夕鈴はずっと家事をしてきたのだから。

好きなイチゴのショートケーキも、小さいがスポンジから焼いて仕上げた。
今は冷蔵庫の中で、その出番を待っている。

「…いただきます。」

エプロンを外した彼女は、椅子に座り一人手を合わせる。

いつもなら家族が集う時間。
けれどこの日は、夕鈴だけしかいなかった。


(…夕鈴、皆にお祝いしてもらってるかな…。)

ホテルの廊下を歩きながら、黎翔は思う。

今日は夕鈴の誕生日当日。
誰にも負けたくなくて、日付が変わると同時におめでとうメールを送り、電話もかけて少し話もした。
夕鈴は「ありがとうございます。」と嬉しそうに言ってくれた。

彼女が生まれた大切な日に傍にいれないのは悲しいが、家族や友達に祝ってもらって、彼女が楽しめたら良い。

「あれ…?」

ふと黎翔は、前後に見た事あるような後姿を見つけ首を傾げた。

「明玉さん?」

人違いだろうと思ったが、思わず黎翔は呟いてしまった。

だって、彼女がここにいるのはおかしい。
夕鈴の大親友であるはずの彼女は、今夕鈴を祝ってくれているはずだから。

呟きが聞こえたらしい彼女は、足を止めて振り返った。

「…え!?…黎翔さ…っ…!」

黎翔を見て目を見張った明玉は思わず彼を本名で呼んでしまい、慌てて口を押え、周囲に視線を走らせる。
幸いな事に、廊下には誰の姿もない。

「…どうしてここにいるのですか?…今日は夕鈴とデートのはずじゃ…」

「明玉さんこそ。…夕鈴の誕生日パーティーをしてくれてるんじゃないの?」

「…去年まではしてたんですけど。今年は黎翔さんとデートするだろうと思って遠慮して、他に予定を入れていたんです。」

「僕は急に仕事が入って…。夕鈴がご家族や友達に祝ってもらうから大丈夫だって、言うから…。」

「変ですね…。岩圭さんは今出張中で、青慎君も泊まり掛けの学校行事で昨日からいないはずですが…。」

「え……?」

明玉の言葉に、黎翔は呆然とする。

じゃあ今彼女は、あの家に一人きり…?

「……っ!」

黎翔は踵を返し、明玉に背を向けた。

やはり彼女は、無理をしていたんだ。
黎翔を心配させないように、罪悪感を沸かせないように。

大丈夫だと笑って、この世に生まれた大切な日に、たった一人で過ごしている。


『――明日八時までには、必ず戻って来て下さい。』

事情を説明すると、「仕方が無いですね。」と送り出してくれたマネージャーに、黎翔は感謝する。
そして今夕鈴が一人でいる事を教えてくれた彼女の親友にも。

夕鈴の自宅まで、車で4時間ほどの距離。
ギリギリ今日に間に合うかどうかの時間、そして明け方にはまた彼女を置いて、戻らなくてはいけない。

けれど行かなくては。

彼女に会って、彼女を抱き締めて、「おめでとう」と「ありがとう」と伝えたい。


もうすぐ24時。

誕生日が終わる。

すでに片付けも済ませお風呂にも入った夕鈴は、冷蔵庫から手作りケーキを取り出す。
カットして皿に乗せて、リビングに運ぶと彼女はソファに腰を下ろした。

フォークで掬い、一口食べてみる。

「うんっ、美味しい!」

我ながら会心の出来だ。

「父さんや青慎、皆にも食べて欲しかったなっ!」

自分しかいないリビングで、殊更明るい声を出す。

「…黎翔さんも、美味しいって言ってくれたはず!」

見た目によらず甘い物好きの彼は、ブンブンと尻尾を振って、ニコニコしながら食べてくれた事だろう。

ぽろっと、夕鈴の目尻から涙が溢れた。

お祝いして欲しかった。
一緒にいて欲しかった。

「…う…ひくっ……」

彼はとても忙し人なのだから、こんな事言っちゃいけない。

――だけど。

「寂しい……」

黎翔も、父も弟も、親友達も。
沢山の人がおめでとうとメールを送ってきたり、電話を掛けて来てくれた。

けれど一人きりのリビングは、とても寒くて。

夕鈴は、流れる涙を止める事が出来なかった。


静かな空間に響くインターホンに、夕鈴はのろのろと顔を上げる。
もうすぐ日付が変わるという、遅い時間。

こんな時間に来客なんて、今までなかった事だ。

近所に住む腐れ縁の幼馴染、几鍔かな?と思う。
彼ならこんな時間の訪問も有り得るかもしれない。

グイッと涙を拭いながら、夕鈴は立ち上がり玄関に向かった。

「…はい、どちら様で…」

不用心にも扉を開けた夕鈴は、目の前に立つ人物に目を見開く。

「どうして…。」

彼は、ここにいるはずのない人だ。
せっかくのオフの日にも、急に仕事が入ってしまうとても忙しい人。

会いたい時にもなかなか会う事が出来ない、一緒にいる事すらままならない、とても遠い人。

「…っ……!」

拭ったはずの涙が溢れ、止まらなくなった。

くしゃりと顔を歪めて泣き出した夕鈴を、黎翔は玄関先で強く抱き締める。
唇を噛み締め、何とか泣き止もうとする彼女。
けれどその涙は、止まる気配がない。

「…う、ひっく…ご、ごめ…なさっ…」

「…うん。僕の方こそごめん。」

いつも黎翔の事を気遣って、仕事だから仕方が無いと笑い、寂しさや辛さを全部抱え込んでしまう夕鈴。

強がりで、優しくて、寂しがり屋な君。

――気付いてあげなくては、いけなかった。


いつまでも玄関先にいるわけにもいかず、ようやく落ち着いてきた夕鈴は黎翔を家の中に招き入れた。
リビングで二人でケーキを食べて、夕鈴の自室に向かう。

クッションを敷いた畳の上に座る黎翔は、少しそわそわしながら所在無さげにキョロキョロ視線を動かしている。
夕鈴の自室に入るのは初めてなので、物珍しいのかもしれない。

「…どうしたんですか?」

ベッドの淵に腰掛けている夕鈴の方をチラッと見て、困ったように彼はくすりと笑った。

「…親がいない間に恋人(彼女)の部屋に入り込むなんて、何だかイケナイ男になった気分。」

端正な顔立ちの彼の笑みは妖艶で、夕鈴は途端に真っ赤になる。

「黎翔さんのバカ…。」

この部屋は夕鈴にとって寝室でもある。
恋人と二人きりでいる事を、急に意識してしまう。

「ごめん。」と笑って、黎翔は立ち上がり夕鈴の隣に腰掛ける。

「――はい、これ。」

手渡されたのは、綺麗にラッピングされた小さな箱。
手のひらに納まるその箱を見て、夕鈴は「え…?」と黎翔を見詰める。

「開けてみて?」

促され、夕鈴は震える指で装飾を解いていく。
だって、この箱はどう見ても…。

「……っ!」

夕鈴は片手で口を押え、懸命に嗚咽を耐える。

真っ赤な箱の中には、煌めくシルバーリング。
埋め込まれたダイヤモンドが、キラキラと光っている。

黎翔が指輪を手に取り、動けないでいる夕鈴の左手を持ち上げる。

「…僕は、正直君にとって、良い恋人じゃないと思う。」

仕事が忙しく、会う事もままならず。
普通の恋人のように、気軽に外も歩けない。
たった一人の恋人より、沢山のファンを優先しなければいけない時もある。

彼女を幸せに出来る男は、他にも沢山いると思う。

「でも、僕は君が大好きだし、ずっと一緒にいたい。」

だから今まで贈った事がなかった将来を約束するようなリングを、今日この日に贈りたかった。

――彼女の、18歳の誕生日の日に。

「…受け取ってくれる?」

優しい声に、夕鈴は懸命に片手で涙を拭いながらコクコク頷く。

そんな彼女の薬指にスッと唇を落とし、黎翔は細い指にリングを填めた。

これからもずっと、共にいる事を願って。

「…誕生日おめでとう、夕鈴。生まれて来てくれて、ありがとう。」

本当に、本当にありがとう。

黎翔は全てに感謝する。

彼女との出会いも、共にいられる事にも、彼女が自分を、愛してくれる事にも。

彼女がこの世に生を受けた事に。彼女を生んでくれた、会う事は出来ない彼女の亡き母にも―――。


腕の中の愛しい彼女の唇に、黎翔は優しい優しいキスをした。


END















関連記事
スポンサーサイト

Comment

No title 

わ~!!一日遅れでごめんなさいね!!

<お誕生日おめでとうございますーーー!!>

慧ネンさんと出会い私の誕生日にもお祝いの言葉を頂き、

慧ネンさんへもお誕生日のお祝いの言葉が送れて嬉しいです♥

この世に生まれ落ちたこの日に感謝し、
そして産み育て見守ってくれる両親、家族にも感謝ですね^^

私も両親、自分の子に感謝しながら日々を過ごしております^^

***


キュンキュンうるうる(´;ω;`)

心が締め付けられ苦しかったです・・・。

読みながら大事な人がゆうりんみたいな状態だったら
何をおいても駆けつけるだろうと思います!
ほんとに、黎翔さんが気がついてよかった・・・(安心)

将来への約束のリング・・・

ずっと一緒にいられるようになるのはもう少し先でしょうかね・・。
李順さんがと~~~っても優しい。
二人の良き理解者ですね!^^

   happy  birthday  慧ネンさん!!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ

  • posted by ぷーちゃん 
  • URL 
  • 2013.04/28 22:24分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: No title 

ぷーちゃん様

ありがとうございます!!(^^♪

こうやってお祝いされるのも、嬉しいものですね♪
出会いに感謝しつつ、これからも沢山の妄想を世に送り出そうと思います。

夕鈴は誰かに甘えたりするの苦手そうだから、寂しくてもそう言わない。一緒にいられないのは、仕方が無いと思う。我慢強い子ですよね。
でも黎翔さんは、それが時々歯がゆくて。
慕って欲しい、甘えて欲しいと思いながら、けれど仕事が忙しくて肝心な時に一緒にいてあげる事が出来ない。
ジレンマですね…。

夕鈴が一人でいると知った黎翔さん。すぐに行動を起こしました。
李順さんも、何だかんだ言いつつサポートしてくれます。

なんとか誕生日が終わる前に夕鈴の元に辿り着けて良かったです。

二人が共にいられるようになるのは確かにまだ先の事ですが、ようやく黎翔さん、将来の事について考え始めました。夕鈴を逃がすつもりはないようですよ(笑)
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.04/29 19:36分 
  • [Edit]
  • [Res]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

右サイドメニュー

プロフィール

高月慧ネン

Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

ご訪問中のお客様

現在の閲覧者数:

にほんブログ村ブログパーツ

ブロとも申請フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。