兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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可愛い部下は、意地悪上司の夢を見るか

またまた『上司と部下』シリーズです。

書くの楽しい~

前回、拍手数が全て36と書きましたが、新たに拍手をもらいまして、数がずれました
ずれたのは悲しいけど、拍手されるのは嬉しいです

ありがとうございます

前回のお話は黎翔視点でしたが、今回は夕鈴視点です。

では、どうぞ




可愛い部下は、意地悪上司の夢を見るか


広い会場は沢山の人で溢れかえっている。
そこにいるのは、今年入社したばかりの新人達。

皆緊張した様子で、これから行われる白陽コーポレーションの入社式に挑む。

「ねえ、夕鈴。…あの人、かっこいいと思わない?」

仲の良い親友と共に無事に入社する事が出来た夕鈴も、着慣れないスーツに違和感を感じながら座っていた。
式が始まる前、女性社員達は役員席の方を見て色めき立つ。

「…見て~」
「すっごいカッコいいね♥」

顔を赤らめ小声で話す彼女達を見ながら、夕鈴も親友の言葉にそちらを見た。

役員側の入り口で、数人の男性が話をしている。
スーツ姿も様になっている彼らは、どう見ても新人ではない。

その中に、一際目立つ見目麗しい男性がいた。

艶のある黒い髪、宝石のような紅い瞳をした、端正な顔立ちの彼。

一目見た瞬間、ぽわんと夕鈴の顔が赤くなる。

彼女は一目で、名も知らぬ男性社員に恋をした。


夕鈴は営業一課に配属された。親友も一緒だが、高卒の自分達にとっては破格の待遇だ。

「あんなかっこいい人が、自分の上司になったら良いね。」

仲良くなった女性社員とそんな話をしていたら。

「――今日から君達と共に働く、珀黎翔だ。」

その彼は新人課長として一課に配属された。
そして――。

「…私が君の教育をする事になった。お互い新人同士、頑張ろうな。」

入社式で一目惚れした彼が、自分の教育係となり。

「はっ、はい…!汀夕鈴です!…よろしくお願いしますっ!!」

緊張から顔を真っ赤にして叫んだ夕鈴を見て、課長は「元気だな。」とフッと笑った。

(わあ~…)

その笑顔に夕鈴はまた彼に見惚れてしまう。

記念に、と撮ってもらった写真は、大事に飾ってある。

これから楽しく仕事が出来ると思っていた。

――けれど。

「…汀!お前は何度言ったら分かるんだ!?」
「ここ、数値が間違っているぞ!…きちんと資料、読んだのか!?」
「何だ?この企画案は!…こんなのが通るとでも思っているのか!?」

毎日毎日、課内に怒声が響く。

何度も怒られ、頑張って仕上げた企画案はバッサリ切られ、少しの事で責められる。
いつもの事だと、他の社員達は肩を竦めながらも傍観するだけ。

鬼課長かと思いきや、彼は他の社員には優しかった。
たまに他の社員を怒鳴っているのを見掛けるが、それは本当に稀だった。

昼の休憩時には、食堂や喫煙ルームで良く談笑している。
若い女性社員達とは、特に仲良さそうに話している。

夕鈴はいつ頃からか、彼が何故あれほど怒ってくるのか理解した。

自分は課長に嫌われている。
いつも怒られるのも、小言を言うのも、私の存在が目障りだからだ。

早く一課から出て行けば良いと思っている。

好きなのに、課長が好きなのに、彼にこの気持ちは伝わらない。

胸の奥に溜め込んでいた辛さは、一度決壊してしまうと一気に溢れだした。

「…私がそんなに嫌いなら、異動でもなんでもさせればいいじゃない!!」

そう言った瞬間、課長は驚愕の表情で私を見た。

ずっと言いたかった言葉を言えて喉が渇いたので、近くにあったウーロン茶のグラスに手を伸ばす。
先輩が焦ったように何か言ったが、もうそれを口に含んだ後で、私の世界は暗転した。

ふわふわと、優しい揺れを感じる。
不安定なはずなのに、妙な安心感を夕鈴は感じていた。

揺れが治まり、慣れた布地の感触を肌に感じた。そして、優しく頬を撫でられる感触。

「んぅ…?」

何だろうと思った瞬間、その感触が消えた。
残念に思いながら重い瞼を開けると、目の前には課長の姿が。

「…課長…?」

何でここに?と、ぼんやりとした瞳で見上げる。

「――ああ。…どうした?気持ち悪いのか?」

問われて、フルフルと首を横に振る。
気持ち悪くはないけれど…。

「水を……」

頭と喉が痛くて、顔を顰めながら呟く。

一度立ち上がった彼は、ミネラルウォーターを持って戻ってきた。

「汀、身体を起こせるか?」

彼の言葉に頷き起き上がろうとしたが、身体は重くて起こす事が出来ない。
苦笑いした彼は、背中に手を添えて抱え起こしてくれた。

課長の視線を感じながら、コクコクと水を飲む。

会社では上司と部下の関係、こんな風に彼に触れられるのも初めてだ。
こんな優しい瞳で、見詰められるのも…。

―――ああ、これは夢なんだ。

普段は怒鳴ってばかりの課長も、夢の中ではとても優しい。

「か、ちょ…?」

再び布団に横にされて、見上げたまま彼を呼ぶ。
その声は、何だか舌足らずになってしまった。

目を開けようとしても、眠くて開けていられない。
夢の中なのに、寝るなんて変な感じ。

(ねるの、やだな…。もうちょっと見てみたいのに…)

こんなに優しげな瞳で見つめてくる、課長の顔を――。

「…何だ?」

とてもとても優しい声で、問い掛けられて。

――良いよね?
夢なんだから、少しくらい望みを言っても。

現実では、とても言えないけれど。

「…意地悪…しないで、…やさ、しく…して……」

他の社員には見せるあの笑顔を、私にも見せて?

――少しでも良いから、私にも優しくして下さい。


チュンチュンと、小鳥のさえずりが聞こえる。

目を覚まし起き上がった夕鈴は、「う…」と頭を押さえ呻いた。
頭が痛い。体がダルい。

ウーロン茶だと思って飲んだあの茶色の液体が、ビールだったという事にようやく気付く。

そして恐ろしい事に、あの後の記憶が全くない。
飲み会の後、一体どうやって帰ってきたのだろう。

酒の力は恐ろしい、と夕鈴は思う。

(…もう絶対、お酒なんか飲まない!)

そう心に決めた。

土日は幸いにも休みで、一日夕鈴は寝て過ごした。
明玉から『鍵はポストの中ね。』と言うメールが入っていたが、詳細を聞くのが怖くて親友に電話する事も出来ぬまま日曜日が終わり、週が明ける。

「おはようございます…。」

月曜日、出勤した夕鈴は、非常に居た堪れないまま席に着く。
おはようと挨拶してくれる同僚や先輩たちの目が、妙に生暖かい。
不快な視線と言うわけではない。
何故か皆、何かを悟ったような、期待を込めたような瞳で夕鈴を見てくるのだ。

「…おっはよう!夕鈴!!」

こちらも妙にテンションの高い、親友の明玉がルンルンしながら近付いてくる。

「おはよう、明玉。」

顔を上げると、明玉はニヤニヤしながら夕鈴を見る。

「…何?」

首を傾げると、彼女はニマ~と嫌な笑みを漏らす。

「課長と何か良い事あった?」

「…は?課長…?」

どうしてここで意地悪な上司が出てくるのか。

課長の席に目を向けるも、彼の姿はない。
ボードには、土曜日から明日まで出張となっていた。

「どうして課長が出てくるのよ…?」

心底分からないと問うと、明玉は目を丸くした。

「…あんた、何も覚えてないの!?」

「…何もって、何を?」

ハア~と、彼女は大げさに溜息を吐いた。

始業時間ギリギリまで、夕鈴は明玉からあの日の詳細を聞いた。

「…え!?私、そんな事言ったの!?」

夕鈴は課長に、『異動でもさせればいい』と怒鳴った事をすっかり忘れていた。
呆れたような瞳で見られ、夕鈴は身を竦ませる。

そしてさらに驚愕の事実は、課長が酔い潰れた自分を部屋まで送ったという事。

「なっ…何で、課長が!?」

夕鈴としては、嫌われている相手に送ってもらいたくなかった。

「何でって、ねえ…」

いつの間にか周囲に集まってきた同僚達。
皆が皆、困ったようにそれぞれの顔を見やる。

いつも彼女を苛めている課長の気持ちを知っている彼らは、それを言うわけにはいかず言葉に詰まる。

一方、夕鈴は焦っていた。

課長が来た。
あの部屋に。

入社したばかりの頃撮ってもらったあの写真を飾っているのも見たかもしれない。

それに。

夢だと思っていたあれも、現実だったのだろうか。

優しい瞳で、見つめてきた彼。

どこまでが現実で、どこからが夢だったのか。
今となっては、夕鈴には分からない。

――けれど。

頬に触れた、優しく、温かい感触。
優しい、優しい、彼の謝罪の声。

「…ごめんな。―――夕鈴。」

あれが現実だなんて、ありえない。

……だって、あれは夢よね?


END










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Comment

No title 

(ノ゚ο゚)ノ オオォォォ-
夕鈴は一目惚れでしたのね////

嬉しいはずの同じ課なのに怒られてばかりなら
あんなことも口走っちゃいますよね~・・。

うん。課長が悪い(笑)

ああ・・・ジレジレ・・・

文章から、慧ネンさんがノリノリで書いた感じがすっごく
伝わってきましたよ~♪

続き待ってますねー^^
  • posted by ぷーちゃん 
  • URL 
  • 2013.05/04 00:17分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: No title 

ぷーちゃん様

お返事大変遅くなってごめんなさい<m(__)m>

ええ、夕鈴は黎翔さんに一目惚れでした。
実は黎翔さんも…??

なのに、夕鈴にはきつい事ばかり言っている。
本当に大人げない課長です。

あ、ノリノリ感、伝わりました?
ジレジレ擦れ違い、好きなんですよね~。

続き、頑張りますね!!
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.05/14 02:30分 
  • [Edit]
  • [Res]

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