兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪何よりも大切なもの ♯7

続きです。

Creuzシリーズ

♪何よりも大切なもの #7


人を愛すると言う事は、本当に難しい。

今まで経験した事のない、胸の痛みや嫉妬心。それは目の前の光景にだったり、恋人の過去にだったり。
相手の全てを知る事なんて、出来る筈がないのに。

自分の知らない彼の過去に、嫉妬ばかりしている…。


「…私、自分が情けないんです。」

芸能人の彼には、当然沢山のファンがいて。自分より四歳年上の彼には、過去付き合ってきた女性がいる。夕鈴にも過去があるように、自分の知らない彼の過去があるのは当然の事。

そんな事、分かっていた筈なのに。

「分かっていた筈なのに、貴方が今までに付き合ってきた女性に嫉妬しちゃうんです。…私の知らない黎翔さんを知っている彼女達に、ムカムカして、嫌な気持ちになるんです。…貴方を好きになってから、ここが…」

夕鈴は自分の胸をギュッと押さえる。

「…とても痛いんです…」
夕鈴の辛そうな顔を見て、黎翔は彼女をまた胸に閉じ込める。

「…僕も痛いよ?」
彼女の髪に唇を寄せ、日溜りのような匂いを胸に吸い込む。

「…僕が君に会うまで、君は17年生きてきた。その間の事は、僕は第三者から教えてもらうか、君が話してくれないと分からない。」

大好きな彼女の事を何でも知りたいと思っても、出会う前の彼女の事は話を聞く事しか出来ない。


夕鈴が産まれて、17年。

彼女はどのように生きてきたのか。

弟が産まれた時、彼女は嬉しかっただろうか?

母親が亡くなった時、彼女はどんな風に泣いたのだろう?

小学生の時は? 中学生は?

何を思って、彼女は今の高校に入学したのだろう。


幼子から少女へ。少女から大人の女性へ向かう今。

17年と言う月日は、とても長い。


「君の傍で君の成長を見られなかった事が、とても悔しい。」

「黎翔さん…。」

黎翔の背に回した腕に、夕鈴はギュッと力を入れた。

「…私も、とても悔しいです。」


黎翔が産まれて、21年。夕鈴より四歳年上の彼。

彼はどのように生きてきたのか。

実家とは折り合いが悪いと聞いている。

実の母を亡くした時、彼はどう思ったのか。

父親との確執は、それほどまでに深いものなのか。

どうして今まで、誰も愛せなかったのか。


「貴方が苦しんできた21年間。…貴方を知らずに生きてきた事。もっと早く出会えたら、貴方の苦しみを減らす事が出来たのに…。」

どうしてもっと早く出会う事が出来なかったのだろう。

「…僕達が今出会えた事に、何か意味があるのかもしれない。…過去の事はもうどうしようもないし、僕は過去より、これからの君の事を沢山知っていきたいと思っている。」

自分の胸に埋めている彼女の顔をそっと上げさせると、涙に濡れた赤い瞳で、夕鈴は見上げてきた。

「…それじゃダメかな?」

「でも、でも私…!…これからも些細な事で嫉妬して誤解して、貴方を煩わせてしまうと思うんです!…そのたびに貴方や、Creuzの皆さんに迷惑を掛ける事になります…!」

それが夕鈴が一番危惧している事。

自分の子供じみた嫉妬や焼餅で、只でさえ忙しい彼に迷惑を掛け、仕事にも支障をきたしてしまう。

そんな事、絶対あってはいけないのに。

「…それなのに私達このまま、付き合ってても良いのかなって…!」

ヒックヒックと泣きながら、夕鈴は胸の内を黎翔に伝える。

大人な彼には、先日の女性のような大人の女がとてもお似合いで。

高校生の自分は、忙しい彼を支え癒すどころか、煩わせるばかり。

黎翔の力になれない自分が、夕鈴はとても惨めに思えた。

「…夕鈴は、僕と別れたいの…?」

夕鈴の言葉を聞いた黎翔は、今にも泣きそうな顔でしょんぼりとそう呟いた。


21年生きてきて、初めて出会えた愛しい存在。

大切に真綿に包む様に、優しく愛しんでいくつもりだったのに。

「僕、…夕鈴に辛い思いをさせる事しか出来ないのかな…。」

そんな事ないと、夕鈴は必死に首を振る。

黎翔に非はない。彼の優しさにただ甘えるばかりで、それなのに肝心な時に彼の言葉を信じる事が出来なかった自分が悪い。

彼はいつも、全力で愛してくれている。

「…別れたく、ないです…」

「うん…」

「私、貴方が大好きです。」

「うん。…僕も夕鈴の事、愛してるよ。」

「…これからも色々、我が儘とか、…ちょっとした事で嫉妬したりして、貴方に迷惑掛けると思います。……それでも、良いですか…?」

「…良いよ。これから先、何かあるたびに二人で話し合おう?…そしてお互い納得して、共に進んでいこう?…僕が夕鈴を好きだと言う気持ちだけは、いつまでも変わらないから。」

自信満々にそう言った黎翔に、夕鈴は目に涙を溜めたまま笑う。

「…すごい告白ですね?」

「本当の事だよ?…だって僕にとって君は、初恋であり、初めて愛する女性だからね。」

端正な顔で幸せそうに笑う彼は、本当にカッコよくて。夕鈴は思い切り見蕩れてしまう。


彼の過去ばかり見ないで、今目の前で自分を愛していると言ってくれる彼を信じようと思う。

これから様々な事で、また悩む事があるだろうけど。

今の夕鈴を愛している今の黎翔を信じる事。

それが何よりも大切な事だと夕鈴は思う。


ふと、夕鈴は彼の口元に目をやった。特に深い意味はなかったのだが、少し開かれた唇に夕鈴は釘付けになった。

あの唇が、先日の女性と口付けを交わしていたのだ。

ムカムカする。

過去はどうあれ、今の彼の恋人は自分なのに。


夕鈴は吸い寄せられるように黎翔に顔を近付けると、彼の薄い唇に自分の唇を押し当てた。

「?!…ゆ、夕鈴っ?!」

ただ唇を押し付けただけの、稚拙で子供っぽいキス。

だが、初めての彼女からの口付けに、黎翔は顔を真っ赤にして手で口元を覆った。

夕鈴の方も、顔を真っ赤に染めていたが…。

「…消毒、です。」

なんて可愛い事を言ってくれるから、黎翔は我慢出来なくなって、愛しい恋人をソファに押し倒してしまった。


彼女が高校を卒業するまでは、最後の一線は越えない。

付き合い始めたとき、そう彼女と約束した。

本当に大切な愛しい存在だからこそ、自分の醜い欲で汚したくはないと思い、そう誓いを立てたけど。


ギュッと抱き付いてくる彼女の胸元に顔を埋めながら、黎翔は溜息を吐く。

可愛すぎる恋人に、自分の理性が持つかな、と思いながら。


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