兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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孤独なおおかみ、うさぎと出会う

最近更新出来ないので、前ブログに残っていたお話を持ってきました。

新しいお話じゃなくてごめんなさい。

このお話は童話風に書いてます。

黎翔は『おおかみ』、夕鈴は『うさぎ』です。(ひらがな表記です)

のんびりゆっくり、時に危険を交えながら、二匹(ふたり)は旅をしています。

そんな二匹(ふたり)の、出会い編です



二匹(ふたり)の出会い編 ―おおかみサイド―

孤独なおおかみ、うさぎと出会う



ある森に黒い毛並みの、大きなおおかみが住んでいました。
彼の力は強く、向かってくる動物達を殺してしまいます。
森の中に彼に敵う動物はいませんでした。
鋭い牙と爪を持ち、冷たい紅い瞳をしたおおかみを、動物達は冷酷非情と恐れていました。

何時の間にか、彼は森の動物達から距離を置かれ、いつも一匹(ひとり)でした。

彼の名は、黎翔と言いました。

彼は幼い時両親と死に別れ、ずっと一匹(ひとり)でした。
他の動物達と適度な距離を保ち共存する術を、教えてくれる者がいませんでした。
冷酷非情と恐れられる彼の行いも、彼にとっては生きていく為に必死にした事だったのです。

おおかみは、自分はずっと一匹(ひとり)で生きていくのだなと思っていました。
またそれを、寂しいとも辛いとも、思っていませんでした。


そんなある日、おおかみは森の中で『人間』が仕掛けた罠に掛かり、後足を怪我してしまいました。
完全に挟まれる前に何とか抜け出したので、その場からは逃れる事が出来ました。

小さな獣や鳥も襲う狼を仕留めようと『人間』が仕掛けた罠は強力です。
もし挟まれていたら、おおかみの足の骨は砕け、千切れていたでしょう。

『人間』が追ってこないように、おおかみは川を渡り、血の跡を消しました。

「忌々しい人間め…!」

大きな木の根元に横たわり、おおかみは唸ります。
紅い瞳がギラギラと、血走っていました。

傷を舐めますが、まだ血は止まっていません。この場からすぐには動けそうにありませんでした。

おおかみは困りました。

動けなければ、餌を獲りに行く事が出来ません。
餌を食べなければ、待つのは『死』のみなのです。

森の動物達が、遠巻きにおおかみの姿を見ては、逃げるように去っていきます。
彼を助けようとするものは、誰もいませんでした。

その時おおかみの鋭い嗅覚が、美味しそうな匂いを捕らえました。
目の前の草むらが、ガサガサ揺れています。

背の高い草を掻き分け、ピョコンと飛び出してきたのは、一匹の茶色い毛並みの兎でした。

可愛い顔立ちの、雌兎です。
とても美味しそうな匂いがします。

おおかみは、この兎を喰ってやろうと考えました。

「ねえ、そこの君。…頼みがあるんだけど、僕動けないんだ。こっちに来てくれないかな?」

なるべく優しい声でそう言うと、兎は鼻をヒクヒクさせながら近付いてきます。
すぐ傍まで来たら、その柔らかそうな身体に喰い付いてやるつもりでした。

でも何故か、兎は途中で歩みを止めてしまいました。

「…どうしたの?僕は足を怪我してて動けないから、もう少し傍に来てくれないと(喰い付けないよ?)」

自分の思惑に気付かれたかと、おおかみは内心焦りましたが表情には出しません。
せっかくの御馳走です。逃したくはありませんでした。

兎はジッとおおかみを見詰め、顔を上げまた鼻をヒクヒクさせています。
そして何かの匂いを嗅ぎ取ったのか、ピョンピョンと別方向に飛び跳ねていきました。

「あ…」

おおかみはがっくりと肩を落としました。

せっかくの御馳走に、逃げられてしまいました。
身体は空腹を訴えてましたが、今日は何も餌を得る事が出来そうにありませんでした。

おおかみは溜息を吐き、瞳を閉じて寝の体勢になりました。
どちらにしても、この場からは動けないのです。
こういう時には、寝るに限ります。

そして、暫くたった後。

眠っていたおおかみは、後足を舐められる感覚に気付き飛び起きました。
驚いて見てみると、そこには茶色の毛並みをした兎がいました。

先程の兎に間違いありません。

おおかみの怪我をした後足を、懸命に舐めてくれていました。

おおかみは絶句しました。

この兎が戻ってきた事にも驚きましたが、一番の理由はそれではありません。
気配に敏感な筈の自分が、この兎にここまで近付いて身体を舐められるまでその存在に気付かなかった事に対してです。

「…きみ、僕が怖くないの?」

喰い付く事も忘れ、おおかみは兎に問い掛けます。

この森の動物達は彼の傍に近付いて来ないので、こんなに近くに別の存在がいる事も、話をする事も初めてでした。

兎は舐める事を止め、おおかみの顔をジッと見詰めてきました。
クリクリとした綺麗な目が、おおかみを真っ直ぐ見ています。

「…怪我してるからどうにかしなきゃって思ったの」

兎が初めて喋りました。やはり可愛い声です。

「少しだけど、ご飯も取ってきたの。良かったら食べて下さい」

兎が差し出したのは、木の実や野イチゴ、何か分からない葉っぱ。

おおかみは苦笑いしながら、野イチゴを食べてみました。そして木の実、何か分からない葉っぱ…。

――狼は、肉食です。木の実も野イチゴも変な葉っぱも、もちろん食べた事などありません。
正直に言うと、あまり美味しくはありませんでした。

でもその時、おおかみの心の中には不思議な気持ちが芽生えていました。
自分のためにこの兎がしてくれた事が、嬉しかったのかもしれません。

「…美味しいよ、ありがとう。」

初めて口にした感謝の言葉、とても気恥ずかしく思いました。
お礼を言われた兎も、とても嬉しそうです。

二匹(ふたり)は時間がたつのも忘れ、色々な事を話しました。

おおかみは一匹(ひとり)でこの森に住んでいる事を。

うさぎは、生き別れた父と弟を探す旅をしている事を話しました。

会話が弾む中、二匹(ふたり)は名を名乗っていなかった事にようやく気付きます。
互いの名前も知らないのに、こうして話しているなんて変な感じだと二匹(ふたり)は笑いました。


「…私は、夕鈴。おおかみさん、貴方のお名前は?」

「僕は、黎翔」

「貴方はずっと一匹(ひとり)なの?…じゃあ、私が一緒にいてあげる。」


孤独なおおかみは、優しいうさぎに出会いました――。





END
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  • posted by  
  •  
  • 2013.05/19 10:27分 
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Re: タイトルなし 

ちょこれーとぱふぇ様

こちらでは初めまして。
コメントありがとうございます♪
続きは、一応ありますよ。完結には程遠いですが、一話完結・短編連載を心掛けているので、読むのに支障はないと思います。
『漆黒の迷宮』で検索を掛けてくれれば、ヒットするはずです。
最終的には、こちらにすべてのお話を移しますけどね(^^♪ 
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.05/20 19:11分 
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