兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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優しいうさぎと、傷付いたおおかみとの出会い

新しい話を書く時間が無いので、またもう一つのブログから持ってきました。

『おおかみとうさぎのお話』二匹(ふたり)の出会い編、うさぎサイドです。

少しでもお楽しみ頂ければと、思います。



二匹(ふたり)の出会い編 ―うさぎサイド―

優しいうさぎと、傷付いたおおかみとの出会い


あるところに茶色い毛並みの、小さなうさぎがいました。

彼女は兎達が住む里で、両親と弟と共に仲良く暮らしていましたが、ある夜、狼の奇襲を受け、母は死に、父と弟とは離れ離れになってしまいました。

一羽(ひとり)ぼっちになったうさぎを、子供がいない優しい夫婦が引き取り、育ててくれたのです。

うさぎはすくすくと大きくなり、親代わりになってくれた二羽が寿命で亡くなったのをきっかけに、生き別れた父と弟を探す旅に出ました。

彼女の名は、夕鈴と言いました。

短いうさぎの足では、一日に進める距離に限度があります。
うさぎは特に急ぐ事をせず、ゆっくりと進みました。
たった一羽(ひとり)での旅でしたが、優しい彼女の傍には何時も、他の動物や鳥がいてくれました。

餌を分けてくれたり、美味しい葉っぱが生えている場所を教えてくれました。
雨が降る日には、濡れない場所に連れて行ってくれました。
森の中での危険な事。
近付いてはいけない場所。

『人間』が仕掛けた、『ワナ』という物も見せてもらいました。

「『人間』には見つかっちゃダメだよ。殺されちゃうから。」

うさぎと同じ小動物達は、口を揃えてそう言いました。

兎の毛は良い布の材料になり、柔らかい身体は食料にもなります。
『人間』にとって自分の存在は、良い収入源になる事をうさぎは知りました。
小さなうさぎには狼だけでなく、様々な敵がいる事を彼女は理解しました。

何の力も無いうさぎには、危険が常に付き纏ってました。
それでも、沢山の動物達に支えられていたうさぎは、寂しくなんかありませんでした。

そんなある日の事です。

その日はとても暖かい日でした。
うさぎは春の陽気の中、自分の何倍もの高さがある草むらを進んでいました。

ふとうさぎは足を止め、耳をピンと立てました。
彼女の長い耳が、獣の唸り声を捉えたのです。
その声は、聞いた事がありました。

母が死に、父と弟と生き別れたあの日、兎の里を襲った動物。

―――そう、狼です。

うさぎは鼻をヒクヒクさせながら、慎重に進んでいきます。
やがてうさぎは、一本の木の根元に横たわる、大きな黒い狼を見つけました。

「ねえ、そこの君。…頼みがあるんだけど、僕動けないんだ。こっちに来てくれないかな?」

狼の紅い瞳はギラついているように見えましたが、掛けられた声は比較的優しいものでした。

ゆっくりとうさぎは狼に近付いていきます。
でも、兎は途中で歩みを止めました。

うさぎの鼻が、鉄のような匂いを捉えます。これは、血の匂いです。
うさぎはジッと狼をを見詰め、匂いの出所を探ります。

黒い毛並みに隠された赤い色――。

狼の後足は、血に染まっていました。

「…どうしたの?僕は足を怪我してて動けないから、もう少し傍に来てくれないと?」

突然歩みを止めたうさぎに、狼が困惑げに声を掛けますが、うさぎはその場から動けませんでした。
狼が言っている怪我と言うのは、この事でしょう。彼が動かない所をみると、そうとう深い傷なのかもしれないと、うさぎは思いました。

うさぎは鼻をヒクヒクさせて、怪我に効く草の匂いを探します。
そしてその匂いを嗅ぎ取ると、全速力で駆け出しました。

うさぎが傷に効く葉っぱと少しの食料を集め終えたのは、狼と別れてから大分時間がたった後でした。
怪我をしている狼の様子が気になり、うさぎは大急ぎでその場所に向かいました。

もういなくなっているかもと思いましたが、『ここから動けない』と彼が言っていた通り、狼はまだその木の根元にいました。

待ちくたびれたのか、完全に寝入っているようです。

うさぎは葉っぱを噛み砕き、狼の傷に塗り込むように舐めていきます。
口の中に苦い味が広がっていきますが、うさぎは気にしません。
狼の傷が少しでも良くなればと思い、必死に舐めました。

眠っていたおおかみは、突然ビクリと身体を揺らすと飛び起きました。
うさぎの姿を認めると、驚愕したような、困惑したような顔をしました。

葉っぱが傷に沁みたのかな?舐めたのが不味かったのかな?、とうさぎは焦りました。

「…きみ、僕が怖くないの?」

狼が力無い声で聞いてきます。その声色も、どこか困惑気味に聞こえました。

怖くない、と言えば嘘になります。
狼は、うさぎの母と、沢山の仲間達を殺しました。
あの日の光景は、幼かったうさぎの瞳に焼き付いています。

でも、この狼をほっとけないと思いました。

自分を見詰めるその赤い瞳が、泣いているように思えたからです。

兎は舐める事を止め、狼の顔をジッと見詰めました。
大きくて逞しい狼です。顔立ちもキリリとしていて、とてもカッコいいです。
暫し見とれてしまったうさぎはハッとして、慌てて言葉を紡ぎました。

「…怪我してるからどうにかしなきゃって思ったの」

そう思い、以前他の動物に教えてもらった傷に効く葉っぱを捜しました。

「少しだけど、ご飯も取ってきたの。良かったら食べて下さい」

お腹が空いているかもと思い、見つけた木の実や野イチゴ、うさぎの大好きな葉っぱも採ってきました。
狼が普段どんな物を食べるか良く知りませんが、食べてくれたら良いなとウサギはそれを狼に差し出しました。

狼は苦笑いしながら、野イチゴを食べてくれました。続いて木の実、うさぎの大好きな葉っぱ…。

狼は本来、肉食です。木の実も野イチゴも葉っぱも、食べた事などあるはずがありません。
でもうさぎは、それを知りませんでした。

「…美味しいよ、ありがとう。」

狼が何故か恥ずかしげに、そう言ってくれました。
お礼を言われたうさぎは、とても幸せな気持ちになりました。

二匹(ふたり)は時間がたつのも忘れ、色々な事を話しました。

うさぎは、生き別れた父と弟を探す旅をしている事を。
狼は一匹(ひとり)でこの森に住んでいる事を話しました。

会話が弾む中、二匹(ふたり)は名を名乗っていなかった事にようやく気付きます。

互いの名前も知らないのに、こうして話しているなんて変な感じだと二匹(ふたり)は笑いました。

「…私は、夕鈴。おおかみさん、貴方のお名前は?」

「僕は、黎翔」

「貴方はずっと一匹(ひとり)なの?…じゃあ、私が一緒にいてあげる。」

優しいうさぎは、傷付いた一匹の狼と出会いました。

―――そしてここから、二匹(ふたり)の旅が始まります。



END

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