兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司のお知り合い? -二課の男- 中編

続きです~。

途中少しだけ、夕鈴の過去話が入ります。

そして課長は出てきません



意地悪上司のお知り合い? -二課の男- 中編


『浩大』と名乗ったその男性社員は、夕鈴を二課の給湯室に誘った。
しきりに遠慮する夕鈴にジュースを買って寄越し、自分用にコーヒーを買うと無造作に置かれた椅子を引き寄せ、向かい合って座る。

「汀さんはさ…」
「――あ、夕鈴で良いですよ?浩大さんとお呼びしても構いませんか?」

見た目からは想像出来ないが、おそらく彼は年上だ。さん付けにされると変な感じがして、名前で呼んでもらうようにした。

「…そう?じゃあ、夕鈴ちゃん。」

彼はとても話し上手で、夕鈴は次第に話に引き込まれていく。
ニコニコしながら話す彼との会話は楽しくて、すぐに緊張は解けてしまった。

「夕鈴ちゃんはさ、どうしてこの会社に入ったの?」

浩大に聞かれて、夕鈴は素直に答えていく。

「…私、高校を卒業したら働こうと決めていて、でも高卒で採用してくれる会社ってあんまりないんですよね~。困っていたら、先生からここを受けてみないかって言われて。」
「ああ、最近は大卒じゃないとダメって所、多いもんなあ。」
「そうなんですよ。ダメ元で受けてみようと思って資料見たら、思った以上に大きな会社でビックリしました。」
「あはは、分かる、それ!」
「受かったと思ったら、いきなり一課に配属で…。ますます驚きました。」

研修期間を終えて配属されたのは、『第一営業課』
高卒の社員もいれば、大卒、途中入社の一般社員もいる。

「…ここの社長が、そういう方針だから。」
「そういうって?」
「ああ、学歴や地位とか関係ない。やる気と能力があれば誰でも雇うって。」
「へえ~。実力主義ってヤツですか?」
「まあ、そうだね…。」

社長の姿を思い浮かべ、浩大は心の中で呟く。

(ちょっと変わっているけどね。)


休憩時間が無くなっていくのも忘れ、二人は話に熱中していた。

「――浩大さん、私ね。…実は中学卒業後、働くつもりだったんです。」

苦笑いをしながら、夕鈴が話し始める。

「…え?高校行かずに?」
「はい。私、母親しかいなくて。その母も身体が弱く、入院しているんです。」

自分の身の上話。
この話をするのは、彼で二人目だ。

夕鈴には父親の記憶が無い。
たった一枚持っている家族写真を見れば、自分に父と弟か妹がいたのだと分かる。
けれど二人の所在は、今も分からぬまま。

中学三年の夏。
進路相談で、夕鈴は進学ではなく就職を選んだ。
入院中の母の容体はあまり良くなく、どうしてもお金が必要だったからだ。

教師達にはこぞって止められた。
中卒で雇ってくれる企業なんてそう多くない。
今は奨学金制度があるから、せめて高校だけは出た方が良いと。

悩んでいた彼女は、ある夏の日、一人の男性と出会う。
高校生か大学生風の若い男は、自分の進む道に悩んでいた。

『親に敷かれたレールの上を、ただ歩いているだけで良いのかと思って。』

彼の悩みを聞いて、夕鈴は羨ましいと少しだけ思った。
自分には親に敷かれた道なんてない。
自分で探して、歩いていくしかない。

けれど彼の目があまりにも辛そうだったから、余計な事だとは思いながら彼に告げた。

「敷かれたレールを、まっすぐ歩くだけが人生じゃない。たまには自分で寄り道してみたら?」

目を見開いた彼は、少し考える仕草をして、『そうだね、ありがとう。』と笑った。

その後、夕鈴に匿名で援助をしてくれる人物が現れ、彼女は高校へ入学、無事卒業した。
その人物は代理人を通じて『大学卒業まで援助をする』と言ってきたが、夕鈴は見ず知らずの方にそこまでしてもらう訳にはいかないと、その申し出を断った。

無事に大手企業・白陽コーポレーションに入社した今は、援助してくれた方に少しずつ返済しながら暮らしている。

浩大にそこまで話して、あの後すぐに別れた、名も聞かなかった男性は今どうしているかな?と思う。
彼も今は、自分の道をまっすぐに歩いている事だろう。

「夕鈴ちゃんって、結構苦労しているんだねえ…」

意外だ、と言われて、夕鈴はそうでもないと笑う。

確かに大変な時もあったけど、良き親友、教師、沢山の人達に支えられてここまで来た。
匿名で援助してくれた人にも、雇ってくれたこの会社の役員にも感謝している。
――自分は決して、独りなんかじゃない。

「それにしても、いきなり一課配属で大変じゃなかった?」
「…初めは。でも今は、もちろん大変な事もありますけど、とてもやりがいがあって楽しいです。」
「まあ一課は、社員仲が良いしね。」

「羨ましいよ」と言われ、夕鈴は首を傾げる。

「…二課やその他の部署は、そうではないのですか?」
「仲悪いってわけではないけど、一課ほどではないね。」
「そう…なんですか。」

一課以外を知らなので、どこもこういうものだと思っていた夕鈴は少しだけ驚いてしまった。

「一課は、ほら。課長からしてアレだろ?」

ニヤニヤしながら、浩大が聞いてくる。

「夕鈴ちゃんはさ、課長の事どう思う?」
「どうって…?」
「いやほら、好きとか嫌いとか?」

まるで親友明玉のように、彼はあけすけに聞いてきた。

一課課長・珀黎翔は確かに仕事が出来る。カッコいいし、部下の面倒見も良い。そして会社からも大きな期待をされている。

そんな彼を、とても信頼しているし、密かに恋をしている。
でも、彼は―――。

夕鈴に対してだけ、彼の態度はきつい。
何かあるにつれ、すぐに叱責が飛ぶ。

「私は課長に、嫌われているので……。」

俯いて、小さな声で呟く。
言葉にすると余計に辛くなって、伏せた目に涙が滲んだ。


続く


やっぱり前中後編…。
これ以上書いたら長くなりそうなので、いったん切ります。




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こんばんわぁ〜 

きゃぁー!

更新
してあって、バスの中でにやにやですよぉ〜

大ちゃんと夕鈴ちゃん
最高です!

続き
楽しみに待ってまぁ〜す☆


でわ♪

  • posted by 鈴⭐ 
  • URL 
  • 2013.06/07 22:08分 
  • [Edit]
  • [Res]

NoTitle 


更新されてたんですね~!!

待ってましたー^^

(´∀`*)ウフフ

ドキドキ、ワクワク
お楽しみがいっぱいな感じがもうたまりませんo(^o^)o

続き待ってます(^O^)

  • posted by ぷーちゃん 
  • URL 
  • 2013.06/07 23:13分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: こんばんわぁ〜 

鈴様

バスの中ではニヤニヤしないで下さいよ~(汗)

お兄ちゃん大ちゃんには、夕鈴も素直にお話してしまうようです。

続きも頑張ってアップしますね(^^♪
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.06/08 00:55分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: NoTitle 

ぷーちゃん様

書ける時、書きたい時にちまちま書き進めて、こそこそとアップしております。
このシリーズも、長々と続きそうな予感がします。

のんびりと、お付き合い下さいませ(ぺこり)
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.06/08 00:57分 
  • [Edit]
  • [Res]

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