兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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可愛い部下の、初出張 2

続きです。

まだ商談は始まっていません

のんびりゆっくり進みます…。

可愛い部下の、初出張 2


午後三時過ぎ。
まだ渋滞はしていない高速道路を、一台の車が快適に走り抜ける。
クラシックが流れる車内の助手席で、何でこうなってしまったんだろうと、夕鈴はチラリと運転席に座る男を見た。

今回の出張先は遠いので、前日に出発して近くのホテルで一泊し、翌日商談に向かう。

課長に報告した時に、「一人では不安だろうから、付き添いを一人付ける。」と言われた。
初めての商談で確かに不安もあり、一人ではない事にホッとした。
迎えに行くから家で待機しているように言われ、準備を整えて待っていた夕鈴は、迎えに来た人物を見て目を点にしてしまった。

(ど、どうして…!?)

迎えに来たのは、自分の上司である珀課長だった。

(何で課長が来るのよ~~!?)

初めは何故課長直々に、迎えに来たのか夕鈴は分からなかった。

「…汀。」

視線を窓に戻し流れる景色を見詰めていると、いきなり声を掛けられた。

「は、はい…!」

突然の事にビックリして、声が上擦ってしまう。
ハンドルを握る課長の横顔を、夕鈴は見詰める。

「…分かっていると思うが、今回の商談はとても大事なものだ。先方がお前を指名してきたから連れてきたが、勝手な事をして、私に迷惑を掛けるなよ?」

冷たい声が、夕鈴を萎縮させる。
彼は前だけを見詰め、決して夕鈴を見ようとしなかった。

――どうしてこの出張に彼が同行したのか分からなかった。
けれど彼の言葉を聞いて、ようやくその理由がはっきりした。

今回の商談は、会社にとってとても大事なものだ。
いくら先方の指名とは言え、その大事な商談に、新人を一人だけ行かせるのは心許ない。
部長は自分を…と推してくれたが、課長は自分では力不足だと思ったのだろう。

「――返事は?」
「はい……。」

――やっぱり自分は課長に認められていないんだなと、夕鈴はギュッと唇を噛み締めた。

宿泊するホテルに着き、各部屋に荷物を置いた後、課長の部屋で夕鈴は彼と翌日の商談の確認をする。
持参した書類をチェックし、商談が上手く進むように手順を整えた。

その後課長と別れた夕鈴は一度部屋に戻ると、スーツから私服に着替えた。
もうそろそろ時間は七時になろうとしている、ご飯はどうしようか考える。
一人でお店に入るのも気が引けるし、この辺の事は良く知らないのでどこに何があるのか分からない。
フロントで聞いてみようか、それともコンビニで何か買ってこようかと考えていると、突然部屋がノックされた。

「はい?」

確認もせずにドアを開けると、そこには先程別れたばかりの課長が立っていた。
彼にしては珍しく、目を丸くしている。
――が、彼はすぐに呆れた表情を見せた。

「チェーンぐらい掛けろ。…それにいきなりドアを開けるな、不用心過ぎるぞ?」
「あ、はい…。すみません…」

自宅は普通のアパートだ。チェーンなんてもちろん無いし、掛ける習慣もない。

また彼に怒られてしまった。シュンとして俯くと、頭上から深い溜息が降ってきた。

「――あ~、最上階にレストランがあるんだが、一緒に行かないかと誘いに来たんだ。」

飯、まだだろ?

初めて聞くような彼の優しい声に、夕鈴は弾かれたように顔を上げる。
自分を見下ろす彼は、何だか少し困った表情をしていた。

「あ、行きます…。」

普段の自分なら、断っていたかもしれない。
いつも怒る意地悪な上司と一緒に、食事なんか出来ないと。
けれど夕鈴は、初めて見る課長の表情に思わず了承の言葉を返してしまう。

何だか彼が、捨てられた子犬のように見えた。

レストランの席に向かい合って座り、夕鈴は落ち着かないまま料理を口に運ぶ。
時間帯もあって空席は見当たらず、運ばれてくる料理は初めて食べる高級そうなものばかり。
客のほとんどが正装に近い服装で、思いっ切り普段着の自分がすごく浮いて見える。

「…どうした?美味しくないのか?」

周囲の視線が気になって食が進まない夕鈴に、課長が声を掛けてきた。

「いえ、すごく美味しいですけど…。私こんな格好で良かったんですか?…それにここ、物凄く高いんじゃ…」
「何だ、そんな事を気にしていたのか?」

料理にナイフを入れながら、彼は笑う。

「気にするな。どうせここは経費で落とす。…それに服装も、そんなに気にする事は無い。」

それで良いのか?、そういうものなのか?と夕鈴は思いながら課長の言葉を聞く。
すると彼は急に顔を上げて、夕鈴を見てきた。

「な、何ですか…?」
「…そういう格好していると、子供みたいだな。」

夕鈴はムッとし、

「悪かったですね、どうせお酒も飲めないお子様ですよ!」

小声で言い返すも、彼はククッと楽しそうに笑う。

「ムウ~!」

悔しげに頬を膨らませたその表情が、ますます子供に見える事に全く気付いていない夕鈴だった。


続く


初めはちょっぴり暗めモード、後半は比較的和やかでした
珀課長、少しずつ優しさを見せ始めたか…?



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