兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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可愛い部下の、初出張 3

今回は、黎翔サイドのお話です。

部下の出張に同行した珀課長、何を考えているのか分からない彼ですが、彼は彼で色々悩んでいるのです…。

前回のお話でR様から『黎翔さん、夕鈴が心配でついてきましたね?ちょっとは商談も含まれているでしょうけど絶対比率が違う!』とのコメント頂きまして、思わず吹き出してしまいました

比率って…!!(R様、ごめんなさい!

素直になれない不器用な課長さんの、心の葛藤をご覧下さい



可愛い部下の、初出張 3


狭い車内はカーステレオのクラシックだけが流れ、お互いに会話は無い。
助手席に座る彼女が、時々チラリと視線を向けて来たり、また外の景色を見ている事に気付いていた。

前回の飲み会の時に知った彼女の自宅アパートに迎えに行くと、すでにアパートの前にスーツ姿の部下が立っていた。車から降りると、彼女は黎翔を見て目を見開いた。

「付き添いを一人付ける」と言っただけで、誰が行くかは言っていなかった。
まさか一商談に、課長である自分がついていくとは思わなかったのかもしれない。

それとも私とは、行きたくなかったのか?

つい苛めてしまって、この部下は『自分は嫌われている』と思っている。
誤解は早く解いた方が良いと思うが、彼女相手にはどうしても素直になれない。

今回の出張も、二課長・浩大の話を聞き、彼の言う通り彼女一人では危険だと判断した。
浩大の手前、「汀一人では荷が重すぎる。」と言ってしまったが、聡い彼は気付いていたのだろう。
彼女の身を、心配してしまった事を――。

信頼の厚い部下は多いが、他の男に彼女の身を護らせるのは癪だし、何だか悔しい。
だから押していた仕事を徹夜してまで片付けて、この出張に同行した。

気まずい雰囲気が流れる二人だけの車内で、黎翔は夕鈴を呼ぶ。

「…汀。」

四六時中、彼女の傍にいる事は出来ない。
部屋は当然別だし、一人になる時には自分の身は自分で守ってもらわないと。

今回の商談は、相手会社社長の裏がある。
先方の口車に乗せられて勝手に動いたり、もし社長に誘われても決して着いていくな。

そう言いたかった。
なのに―――。

「…分かっていると思うが、今回の商談はとても大事なものだ。先方がお前を指名してきたから連れてきたが、勝手な事をして、私に迷惑を掛けるなよ?」

口から出るのは、辛辣な言葉ばかり。
――どうして、素直な気持ちを伝える事が出来ないのだろう?


『――馬鹿か?お前は!?』

携帯から浩大の怒った声が聞こえて来て、黎翔は上着を脱ぎ捨てるとソファにドカリと腰を下ろした。

「馬鹿って言うな。」
『いいや、正真正銘の大馬鹿者だね。』

ムッとして口答えすると、すぐに切り返される。

『何のために夕鈴ちゃんに着いていったんだ?…彼女を護る為だろ?それなのに、お前が余計に苦しめるような事を言ってどうするんだ!』

グッと言葉に詰まる。

彼女は萎縮したように、肩を竦めてしまった。
先程、明日の商談の最終チェックをこの部屋でした時も、その表情は強張ったままだった。

横目で見えた彼女の怯えた表情を思い出し、黎翔は苛立って前髪を掻き上げる。

『…お前、晩飯まだ?』

無言になった黎翔に、彼の葛藤を感じたのか、浩大は突然話題を変えてきた。

「あ?…ああ。」
『夕鈴ちゃんも?』
「多分まだだと思う。」

腕時計を見れば20時前。
夕鈴と別れてからまだ時間が経っていないので、彼女もまだ食べていないだろう。

『そのホテルの最上階にさ、レストランがあるんだけど、なかなかイケるぞ?』

俺のお勧め――と言う浩大に、黎翔は怪訝に返す。

「来た事あるのか?」
『そりゃ~出張多いですから、モチロンありますよ?…料理も美味いし、シャレてて、若い子にも結構人気のあるレストランだよ?』
「そう、なのか…?」

良く分からないが、浩大が美味いと言うなら味は確かなのだろう。

『夕鈴ちゃんと一緒に行って来いよ。…分かっているよな?優しく、優し~く、エスコートするんだぞ?』

ニヤニヤしているヤツの顔が浮かんで来る。

「………。」
『わ~!?待って、待って!…切らないで!!』

浩大はまだ何か叫んでいたが、何だかムカついた黎翔は、通話を無理矢理強制終了させてやった。

着替えは…別にこのままでも良いかと、黎翔はネクタイだけ外すと部屋を出た。
少し離れた彼女用の部屋に向かい、ドアをノックする。

「はい?」

返事の後、すぐに扉が開かれた。

出てきた部下は、初めて見る私服姿だった。
いつもスーツに着られているような彼女は、私服になるとますます子供っぽく見える。
そう言えば、こいつはまだ未成年なんだよな…と、改めて認識する。

思わず目を見開いて凝視してしまい、ハッと我に返り、チェーンも掛けていない事を不用心だと咎める。

「あ、はい…。すみません…」

細い声で謝り、シュンと俯いてしまった彼女を見て、またやってしまったと後悔する。

「――あ~、最上階にレストランがあるんだが、一緒に行かないかと誘いに来たんだ。」

飯、まだだろ?

出来るだけ優しい声で言うと、弾かれたように顔を上げた部下は小さな声で了承してくれた。

思った以上に高級そうなレストランに、彼女はしきりに代金と自分の服装の事を気にする。
そんな事を気にする必要はないと一蹴して、黎翔は顔を上げて正面に座る部下を見た。

「な、何ですか…?」

見られて、不安げな顔で聞いてくる。

「…そういう格好していると、子供みたいだな。」

思ったままを言うと、彼女はムッとし、

「悪かったですね、どうせお酒も飲めないお子様ですよ!」

小声で言い返してくるが、それすらも可愛くて黎翔はククッと笑う。

「ムウ~!」

悔しげに頬を膨らませたその表情が、ますます子供に見える事にこの部下は全く気付いていないに違いない。


食事を終え、彼女を部屋に送る。

「じゃあ明日、7時にロビーで。」
「はい、分かりました。」

返事をした後、彼女は少しだけ視線を上げ、チラリと窺うように黎翔の顔を見て。

「――お休みなさい…。」

小さな声でそう呟き、ふわりと笑みを見せた。

「――ああ、おやすみ。」

扉が閉まったのを確認した後、黎翔はその場を後にし部屋に戻る。
軽くシャワーを浴びて、どさりとベッドに身を横たえる。

彼女が初めて、笑い掛けてくれた。
その微笑みを思い出し、黎翔は手で口を押える。

――少しだけ、ほんの少しだけでも、彼女に近付けたのだろうか?

寝るにはまだ早すぎる時間。
けれど、彼女に良いか?と断って飲んだワインが、ほど良く身体に回り、瞼が重くなってくる。

――その夜、彼はいつになく温かな気持ちで眠りに、ついた。


続く




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  • posted by  
  •  
  • 2013.06/11 20:08分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

からあげ様

早速のコメント、ありがとうございます♪
ええ、課長は夕鈴の私服姿を初めて見て、目を見張りました。
心の中では、『可愛いなあ~』とか思っていたかもしれません。
「大人は19才になら手を出してよかったんでしたっけ?」
←ウフフフ…自己判断で、お願いします(^^♪
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.06/11 20:32分 
  • [Edit]
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