兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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可愛い部下の、初出張 6

警告

今回のお話は、暴力表現を含みます。

苦手な方は、閲覧しないで下さい。



可愛い部下の、初出張 6

先にホテルに着いた黎翔は、克右の到着を今か今かと待つ。
数分も経たぬうちにタクシーが横付けされ、慌てた様子の部下が降りてくる。

「…遅い。」
「すみません…。」

八つ当たりのように一瞥くれて、黎翔は克右と共にホテルに入ると、フロントを通り越しエレベーターに向かう。
何も言わずにいきなり上階に上がろうとする二人にフロントマンや警備員が駆け寄ってくるが、それを振り切り三階に上がった。

克右を呼び出したのは、ストッパーになってもらうつもりだったからだ。
相手の会社社長が、もし夕鈴に何か良からぬ事をしていた場合、自分は何をするか分からないと黎翔は思う。
そうならない事を祈り、追ってきたフロントマンに事情を説明し、半ば脅迫めいた事を言い、無理矢理鍵を開けさせる。

303号室の、室内は静かだった。

だがついさっきまでそこに人がいたようで、テーブルの上には書類と、空になったグラスが二つ。
足を踏み入れ、注意深く辺りを見渡す。

「どこに行ったんでしょうね…。」

克右が呟いた時、奥の部屋から物音がした。
様子を見に行こうとする克右の腕を引き、後ろに下がらせる。

この部屋の間取りなら、この奥はベッドルームだ。
足音を忍ばせ、ゆっくりと奥の部屋に向かう。

室内を覗くと、ベッドの上に男の姿があった。背中を向けているため、こちらに気付いた様子はない。
そこまではまだ冷静を保っていた黎翔だったが、男が抑え付けている白い足と、ベッドのシーツに広がる
茶色い髪を見た瞬間、目の前が赤く染まった。

ずかずかとベッドに近付き、男の肩を鷲掴みにすると、驚いて振り返った男の顔に強烈な一撃を喰らわせる。

「…が!」

男は醜い声を上げ、吹き飛んで床の上に倒れこむ。

「――汀…、汀…?」

ベッドの上には、しどけない姿の部下が横になっていた。
ブラウスは脱がされ、スカートもたくし上げられて、下股が露わにされている。
見ていられなくて、黎翔はスーツの上着を脱ぐと彼女の身体に掛けてやった。

意識が朦朧としているようで、黎翔の呼びかけにも彼女は応えない。
黎翔は真っ赤に腫れ上がった頬を見て、ギリリと唇を噛み締めると。
無様に床に転がる男に歩み寄り、胸倉を掴みあげた。

男の顔面を何度も殴りつける黎翔を呆然と見ていた克右は、慌てて黎翔に駆け寄る。

「課長!…それ以上はダメです!」

振り上げられた腕を掴むが、振り払われてしまう。

「課長…!!」
「――邪魔をするな、克右。」

尻餅を着き床に座り込んだまま、克右は上司の背中を見詰める。
ガツガツと拳を打ち込んでいる黎翔は止まる気配が無い。
男の顔も、黎翔の右手も、真っ赤な血で染まっていた。

これ以上はマズイ…。
克右は危機感を募らせる。

「それ以上やったら、死んでしまいます!!」
「――それがどうした?」

振り返った黎翔の顔を見て、克右はゾッとした。

怒りに燃えた、血のように赤い瞳。
端正な顔には、冷酷な笑みが浮かんでいる。

「こいつは彼女を苦しめた。それだけで、死に値するとは思わんか?」

――なあ?

すでに虫の息に近い男に、同意を求める。

(ダメだ、止められない……!)

本当に殺す(やる)つもりだと確信し、克右はスローモーションのようにゆっくりと振り下ろされる拳を、ただ見ている事しか出来なかった。

「…か、ちょ……?」

小さな呟きに、黎翔の身体がびくりと震え、腕の動きが止まる。
克右は、ゆっくり腰を上げ、ベッドに視線を送る。

「どこ…?課長…?」

泣きそうなその声に、黎翔の身体から力が抜ける。
男の身体が、どさりと床の上に崩れた。

夕鈴は朦朧とする意識の中、必死に課長を呼んだ。
身体の上から、男の重みが消えた事に気付いた。
けれど、肌を這い回る気持ち悪い感触は消えない――。

課長の声が聞こえたような気がして、夕鈴は必死に助けを求めた。

「助けて…かちょ……」
「――汀っ!!」

黎翔は耐え切れなくなり、ベッドに駆け寄り手を伸ばす。
けれど、真っ赤に染まった右手を見て、ハッとしたように動きを止めた。
こんな血塗られた手で、彼女に触れるわけにはいかない――。

ハラハラと涙を流しながら自分に助けを求めてくる夕鈴を見て、黎翔はギュッとシーツを握り締める。

――怖かっただろう、痛かっただろう…。

「汀…、一人にして悪かった…。遅くなってごめんな…!」

震える黎翔の背中を、克右は呆然と佇んだまま見詰めていた。


「課長、これを…」

無言のままベッドの脇に縋る黎翔に、克右は水で濡らしたタオルを差し出した。
いつまでもこんな所にいるわけにもいかないし、早く彼女の身体を清めてあげた方が良いだろう。
腫れ上がっている頬も、冷やして医者に見せた方が良さそうだと判断する。

タオルで右手の血を拭った黎翔は、意識を失った夕鈴の身体をホテル側が用意したシーツで包み、負担が掛からないようにそっと抱き上げる。

「う……」

呻き声を漏らしたが、彼女は目を覚まさなかった。

「…おい、待てよ…」

ベッドルームを出る瞬間、後ろから掛けられた声に、黎翔の足が止まる。
気を失っていた男が、意識男取り戻したらしい。

「てめえ、このままで済むと思うなよ…!俺の親父はなあ、俺には甘いんだよ!…てめえの会社なんか、すぐに潰してくれるぜ…!!」

負け惜しみのように、顔を血だらけにしたまま男が叫ぶ。
だが、黎翔は何も言わずにまた歩き始めた。

「…っ畜生!覚えてろよ!!俺に手を出した事、後悔…――」

男の言葉が止まったのは、目の前に克右が座り込んだからだ。

そこそこ顔立ちが良かった男の顔は、とても無残な事になっている。
その顔を見ながら、克右はニッとにこやかに笑う。

「――あの人を怒らせて、後悔するのはあんたの方だと思うけどな?」

あの時、彼女が課長を呼ばなかったら、この男は間違いなく殺されてた。
彼女は偶然にも、この男の命をも救ったのだ。

「…明日の朝、どうなってるか楽しみにしてな?あの人を敵に回したあんたの会社、もう終わっちゃってるかもしれないぜ?」

これは脅しではなく、現実になりうる事だ。
彼女を傷付けられた黎翔が、このまま何もせずにいるとは思えない。

克右の冷たい瞳を見て、男は身体を震わせる。

何と言う冷たい目をするんだ。
こいつも、そして、あの男も――。

「――っ!あいつは一体、何なんだよ!?…どうして俺がこんな目に合わなくちゃいけねーんだ!!」
「…本来なら、ここにはいないはずの方だよ。まあ、正体はいずれ分かるさ。」

立ち上がった克右はじゃあなと手を振り、へたり込んだままの男に背を向けた。


続く






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  • posted by  
  •  
  • 2013.06/19 06:37分 
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NoTitle 

わ~♡連続更新!!(*≧∀≦*)うれしい!!

かちょ!!!もっともっと!!
私も怒りが収まりませんよ~(`・ω・´)
あいつの会社、ううん、その他諸々(?)も徹底的に!ね?

うわ~んヽ(´Д`;)ノ
ゆうり~ん・・・大丈夫だよ・・・きっと・・・。
だから、課長に任せて。
課長の正体もそろそろわかりますか?楽しみです♪
  • posted by ぷーちゃん 
  • URL 
  • 2013.06/19 06:53分 
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  •  
  • 2013.06/19 10:44分 
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Re: タイトルなし 

ますたぬ様

課長の仕返し…。
モチロン、夕鈴の事を考えて行動しますよ。
怒りのまま、動いたりしませんよ?多分…。
夕鈴の恐怖を拭ってあげれるのは課長だけでしょうから、なんとか頑張らないと(慧ネンが)
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.06/20 01:05分 
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Re: NoTitle 

ぷーちゃん様

さすがに、あそこで止めて、次の休みまで放置はあんまりだと思い、頑張ってアップしてみました。
相手会社社長に、大ブーイングですね?
課長の怒りは激しいですが、色々しちゃうと後で夕鈴にばれた時に、ね?
悲しむんじゃないかと思うんですよ…。
だからその辺を考慮して、課長には動いてもらおうと思っています。
課長の正体は…ウフフ…もうお気付きなのでは??
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.06/20 01:09分 
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Re: NoTitle 

あさ様

え!?まさかの急所狙いですか!?
一発で撃沈ですよ?それを十発って…(汗)

夕鈴のアフターケアは、課長と、親友にお任せしようと思います。

前回、凄い所で寸止めしていたので、夕鈴を早く助け出すために頑張りましたよ~!!
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.06/20 01:12分 
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