兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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可愛い部下の、初出張 7

続きです。

前回までのお話で、相手会社社長に大ブーイングの嵐です。
珀課長の報復も恐ろしいですが、皆様の報復も恐ろしい…。

課長、報復の準備を着々と進めてます。
報復は次に回し、今回は…。

夕鈴の親友・明玉と、それぞれのお話です。


可愛い部下の、初出張 7


頬に感じる冷たい感触に、夕鈴は重い瞼を押し上げる。
霞む視界に写ったのは、親友明玉の姿。

「めい、玉……?」
「――夕鈴?…目が覚めた?」

憔悴した彼女の表情が、ホッと緩んだ。

「ど、して…ここに…?」

頭が痛い、喉も痛くて声が出ない。
そして、ズキズキと痛むのは頬。
自分の身に何が起こったのか思い出し、夕鈴は身を固くする。

「ごめんね、明玉…。」

夕鈴の目に涙が浮かぶ。
自分の身を案じてくれた親友の言葉を無視して、一人で行動した結果がこれだ。
唇を噛み締め嗚咽を漏らすと、明玉はクシャリと夕鈴の頭を撫でた。

「…バカね、そんな事どうでも良いのよ。」

そう言う明玉の頬にも、涙が流れ落ちる。

「怖かったでしょう?…でも、もうすぐ全部終わるから、課長が終わらせてくれるから…。何も心配せずに、ゆっくり休みなさい。」

熱を持った頬に、当てられたタオルが気持ち良い…。
明玉の声を聞きながら、夕鈴はまたうつらうつらと眠りに落ちて行った。

寝息を立て始めた親友に、明玉は布団を掛けてあげた。
真っ赤になって腫れている頬は痛々しいが、先程より幾分穏やかになった彼女の表情にホッとする。

コンコン、とノックの音が響き、明玉は涙を拭うとベッドルームを出て扉に向かう。

「――はい?」

幾分緊張しながら声を掛けると、

「あ、俺だよ~?」

陽気な声が返ってきて、明玉は息を吐き、チェーンを外しドアを開けた。

「浩大課長…と、徐さん。」
「――あ、克右で良いですよ?」
「俺っちも、浩大で良いよ~。どう、夕鈴ちゃんの様子は?」

二人を招き入れ、テーブルを挟みソファに座る。

「今は眠っています。」

鎮痛剤が効いているようで、先程目を覚ました時も、それほど痛がったりはしなかった。

「あの、課長は…?」

夕鈴をこの部屋に運んでから姿が見えない上司の行方を二人に聞いてみるが、克右は視線を逸らし、浩大も僅かに笑っただけだった。

それだけで明玉は気付く。
課長が動き始めた。
夕鈴を苦しめた相手に、報復するために――。


21時過ぎ――。

「どうしよう…?」

明玉は駅の構内で途方に暮れていた。

親友の様子が気になり、何度も彼女の携帯に連絡するが出ない。
仕方なく課長にも掛けてみたが、こちらは電源が入っていないのか無機質なアナウンスが流れるだけだった。
不安になり、意を決して親友の出張先に向かおうと家を出たのは良いが、すでに時間も遅く、直通の電車もバスもない。電光掲示板の前で一人佇んでいると、ポンと肩を叩かれた。

「――悪い、すぐに俺と来てくれないか?」

明玉の前に現れたのは、営業二課課長・浩大だった。

彼が運転する車で空港まで行き、そこからヘリで二時間。
タクシーで向かった先は、出張中の親友が泊まっているはずのホテル。
先を歩く少し強張った彼の背中を見ながら、明玉は案内されるまま浩大に着いていった。

「――入って?」

扉を開けられた部屋に恐る恐る足を踏み入れると、部屋の中央に男が立っていた。

「課長…!?」

明玉は驚きの声を上げる。

いつも自信に溢れている彼の顔は真っ青で、意志の強い瞳には覇気が無い。
所々赤い染みがついたシャツを着た珀課長が、ぼんやりと佇んでいた。

「珀課長?…連れてきたよ?」

浩大の言葉に黎翔はようやく目の前に立つ部下の存在に気付き、「こっちへ。」とくるりと背を向けた。
浩大を見ると頷かれたので、明玉は彼の後を追った。

そこはベッドムールで、そこそこ広いベッドが置かれていた。
そこには頬を真っ赤に腫らし、茶色の髪をシーツに散らしたまま、力無く横たわる親友の姿――。

「…夕鈴っ!!」

明玉はベッドに駆け寄る。

「どうして…どうしてこんな…!?」

ベッドの傍に膝立ちし、夕鈴の身体の状態を確認する。
頬以外、目立った外傷はない。けれど、課長の物らしきスーツの上着と、シーツに包まれたその異様な姿が、明玉の不安を大きくする。

「――すまない…。」

背後から掛けられた、上司の力無い声。

「課長……」

振り返り、明玉は涙目で黎翔を見上げる。

「医者は手配している…。君に頼みたいのは、汀の……」

そこまで言って黎翔は、グッと言葉に詰まり、

「彼女の身体を…清めてあげて欲しいんだ…。」

泣きそうな声で、声を絞り出した。

「未遂…なんですよね…?」

明玉の頬を、いつの間にか涙が伝っていた。
大丈夫、絶対大丈夫だと思いながら、明玉は泣き笑いの顔で、黎翔に問う。

「恐らくは…。」

そうであって欲しいと、黎翔も願わずにはいられない。

「服など必要なものは、すでに用意してある。…医者が来たら浩大に知らせるよう伝えておくから。」

踵を返し歩き始めた黎翔は、入り口で一度足を止めた。

「―――明玉。」
「はい。」

上司の広い背中や、握り締められた拳は、はっきりと分かるほど震えていて。

「……汀を頼む。」
「――はいっ!!」

その心中を痛いほど察した明玉は、彼の頼みに大きな声で応えた。

夕鈴の身体に負担を掛けないように、注意しながらスーツと下着を脱がせ、身を清める。
露わにされていた下股に、最後までされた形跡はなく、明玉は心底安心した。
新しい服を着せてホッと一息吐いた時、浩大が医者が来たと知らせてくれた。

心配だった頬の怪我も、骨までは痛めていなかった。
ただ腫れが酷く、口の中も切ってしまっているため、しばらくは痛みが続くだろうとの事。
痛み止めの注射をうち、飲み薬を処方してもらった。

一度目を覚ました夕鈴が、取り乱さなかったのが救いだった。
いや、今はまだそんな余力が無いだけなのかもしれない。
次に目を覚ました時が不安だと、明玉は眉を寄せる。

――その時には、課長が彼女の心を癒してくれたら良い。

「課長は…。」

明玉はポツリと呟く。

「―― 一体、何者なんですか?」

克右は携帯が鳴り、話しながら部屋を出て帰ってこない。
明玉は、目の前に座る営業二課課長・浩大に問い掛ける。

あの時、駅にいた自分を迎えに来た浩大。
後で聞けば、課長から連絡をもらい、探していたと言うのだ。

電話一本で部下を使い、ヘリを調達し、次々と指示を出す。
確かに彼は仕事が出来る人だが、ただの課長が、ここまで出来るものなのだろうか…。

――これじゃあ、彼はまるで…。

「…彼は第一営業課課長で、君の上司――って事じゃダメかな?」

静かな声にハッとして顔を上げると、浩大がジッとこちらを見詰めていた。

「浩大さん…。」
「――何れ分かるよ、何れ…。それまで、あの人を一課課長でいさせてあげてよ。」

彼は何だか寂しそうにそう言って、明玉に頭を上げた。

――そうだ。
彼が何者だろうと関係ない。
今彼は、一課の課長で、自分の上司。

そして、親友の好きな人――。

「…分かりました!」

明るい声で返すと、浩大は顔を上げて苦笑いした。


夕鈴と比べると、彼女はとても聡そうだ。
本当に一課は良い人材が揃っているなあ…と思う。

きっと彼女は気付いてる。
黎翔の、正体に――。

「……多分、思っている通りだと思うよ?」

夕鈴ちゃんは無理だろうけど、この娘(こ)、二課にもらえないかな?

この件が片付いたら、直談判してみようかなと浩大は思った。


続く


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Comment

きゃぁーー 


夕鈴ちゃん
大丈夫かなぁ?

心配です。。。

明玉
カッコよすぎです!!

黎翔さんの報復
楽しみに待ってまぁ〜す☆

でわ♪
  • posted by 鈴 
  • URL 
  • 2013.06/20 07:44分 
  • [Edit]
  • [Res]

NoTitle 

心配ですよ~・・・

夕鈴・・・・。

明玉という無二の親友がいてよかったね・・・。
課長も夕鈴も、心強いはず

みんな痛々しくて辛い。

  • posted by ぷーちゃん 
  • URL 
  • 2013.06/20 17:19分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: きゃぁーー 

鈴様

コメントありがとうございます!

夕鈴はきっと大丈夫ですよ。
何があっても最後には立ち直れる、強い女性だと慧ネンは思っています。
明玉も、課長も傍にいるしね。

後は、課長の報復ですね~。
どういう風に動いてもらおうか、悩んでいます(汗)
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.06/22 02:34分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: NoTitle 

ぷーちゃん様

心配してくれて、ありがとうございます。

でも、支えてくれる人達がいるから、夕鈴も辛さを越えて行けると思います。
課長にとっても、明玉は夕鈴を任せられる存在。

無二の親友って、良いものですよね(^^♪

痛々しいながらも、みんな頑張っています。
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.06/22 02:37分 
  • [Edit]
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