兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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~♪rainy ~

突然ですが、溜め込んでいたお話をアップします。
連休も終わり、明日から仕事なので、更新はさらにスローになると思われます。
過去の作品のアップも増えると思いますので、悪しからずご了承下さいませ

このお話は5月14日に、SNSの慧ネン宅で記念すべき1000hitを踏まれました、白友ともぞう様に捧げたSSです。
時系列を気にしてこちらへのアップは見送ったのですが、注意書きを付けて順次アップしていくようにします。

注意

Creuzシリーズです。
夕鈴は高校三年生の、梅雨時のお話です。
オリキャラ(黎翔の父)が出ます。

気にならない方だけ、どうぞお進み下さい




~♪rainy ~


早朝のビル清掃のバイトの帰り、夕鈴はいつもとは違う駅で電車を降りた。

電車の窓から見える、青々とした広い海。
その場所を通るたび、もっと近くで見てみたいと思うようになった。

空は生憎の雨模様。
でも、そんなにひどい降りでもない。

人気のない堤防を、傘をくるくる回し一人歩きながら、そう言えば彼が作った曲に、こんな雨の日を歌った曲があったなと夕鈴は思う。

人気バンドグループ、Creuzのヴォーカリスト・Rei―。
彼は夕鈴の恋人だ。

彼が作った歌は、強く、それでいて優しく、とても暖かく、人の心を揺さぶるような不思議な力を持っている。
夕鈴が思い出した歌も、そんな曲だった。

芽吹いたばかりの緑の葉が、優しい雨を受け、生命力に溢れ光り輝いている――。
そんな、力強い歌。

知らず知らずのうちにもうすでに覚えてしまった歌詞を口遊み、夕鈴はステップを踏み、クルクルと踊る。彼女の動きに合わせ、優しい栗色の髪が宙を舞った。

頬にかかる雨の雫がとても気持ち良くて、彼女の口元に笑みが浮かぶ。

誰にも見られていないと思っていたのに、後日大変な事になるなんて、この時夕鈴は思ってもいなかった。

――某テレビ局。

早朝の、とある海の近くで撮影に使用したカメラの画像をチェックしていた担当者は、画面の奥に写る一人の少女の姿に釘付けになった。

雨で視界が霞み、顔は見えないが、クルクルと回る身体と栗色の髪がとても美しい。
この娘(こ)は、カメラに良く映える――。

「お、おい!…この子が誰か、すぐに調べてくれ!!」

すぐに男から指示が飛んだ。


一週間後…。

『ちょっと、夕鈴!大変よっ!!』

バイトから帰って来たばかりの夕鈴の携帯に、明玉から連絡が入る。

『…お前、大丈夫か?何かあったら、すぐに言えよ?』

明玉の電話の後すぐに几鍔から連絡が来て、とても心配された。

夕鈴は呆然とテレビの画面を見つめる。

そこには【この女性は一体!? 雨の中、踊る美少女】という見出しで、あの日の自分の姿が映されていた。

(美少女?…一体誰の事よ?)

不思議に思うが、遠目であっても分かる者には分かったらしい。
夕鈴の周囲で、ひそひそ話しながら見てくる者が増えた。
そして、取材記者やカメラマン達の姿を見掛けるようになる。
明玉や几鍔、仲の良い友達たちのお陰で、夕鈴は見つかる前に何とかやり過ごしていた。

「…先に行って!」
「明玉…!」
「私は大丈夫だから、行きなさい!!」

ある日、報道陣達に囲まれそうになり、明玉は夕鈴を先に逃がしてくれた。裏道を通り抜けようとする夕鈴の前に、一台の車が滑り込んだ。

「…っ!」

先回りされたのかと唇を噛み、踵を返そうとした夕鈴の耳に、聞きなれた優しい声が響いた。

「――夕鈴っ!」

聞き間違える事の無い、愛しい彼の声―。

「早く乗って!!」

後ろからバタバタと数人の足音が近付いてきて、夕鈴は慌てて助手席に飛び乗った。

「大丈夫…?」

息を整えていると、優しい労わりの言葉を掛けられる。
運転席を見ると、いつものようにサングラスを掛けた恋人の姿。

「黎翔さん…。」

久し振りに見る恋人に、夕鈴は泣きたくなった。
彼は仕事で海外に行っていて、二週間ほど会えなかったのだ。

「…忙しくて、夕鈴がこんな大変な事になっているの知らなくて。」

夕鈴も心配掛けたくなくて、彼には何も言っていなかった。

「帰って来た途端、几鍔から『夕鈴が大変な事になっている』って連絡もらって…。」

黎翔が海外にいる間は連絡を控えていたらしい几鍔も、日本に着く時間を狙って連絡をくれたらしい。

「こんな時に傍にいてあげられなくて、ごめんね…?」

彼の言葉に夕鈴は首を横に振る。
日本に帰って来たばかりで疲れているだろうに、真っ先に来てくれてとても嬉しかった。
ここ数日の疲労と緊張が解けて、夕鈴の目から涙が流れ落ちる。

俯いて泣いている恋人の頭を、黎翔はクシャリと撫でてやった。

明玉の事がとても心配で黎翔に彼女の事を言うと、彼はすぐにどこかに談話を掛けて手を回してくれた。
すぐに明玉から連絡が来て、『もう大丈夫だから、心配しないで。』と言われ、心底ホッとした。

黎翔はマンションに着いてすぐ、夕鈴の父・岩圭に連絡を入れ、周囲が静かになるまでマンションに匿うと伝え、承諾を得た。

夕鈴の自宅よりここの方がセキュリティーがしっかりしている。
夕鈴から、「夜、自宅前の道路に誰かが立っていて怖かった」と聞いて、余計に彼女を家には帰せないと思った。

朝、同じベッドで目覚め、彼の寝顔を見詰めたり、時々先に黎翔が起きていて、夕鈴が目を覚ますと朝から濃厚なスキンシップをされてクタクタになったり。

一緒に朝食を食べて、彼の車で送ってもらって、帰りも迎えに来てくれて。
夕鈴はとても幸せだった、のだが…。

「――だから、私はずっと夕鈴についていると言っただろう?」

彼が、誰かと電話で話している。

「私が傍にいてあげなくて、誰が彼女を護るんだ。」

電話の主は、Creuzマネージャーの李順だと分かったのは、黎翔がシャワーを浴びている間に彼から連絡が来た時だった。

黎翔のマンションに来て、一週間。
夕鈴は、自分を学校に送ってから、彼は仕事に行っているとばかり思っていた。

『…貴女の事が心配で、Reiはずっと学校の傍で見張っているんですよ。』

学校の傍の、道路脇に車を停めて――。

嘘でしょ?誰かに見つかったらどうするつもりなの?

『仕事に来るように言っても、自分がいない時に貴女に何かあったらどうするんだと言って、聞かないんです。』

有り得ない。仕事より、私の傍にいる事を優先するなんて。

彼が傍にいてくれるのは、嬉しいし、とても幸せだ。
けれど、彼は芸能人なのだ。
沢山の仕事で、スケジュールは詰まっているはずだ。

彼の恋人だからと言って、私一人が彼を独占するわけにはいかない…。


黎翔はチラチラと恋人の様子を窺う。

今日迎えに行くと、彼女の様子がおかしかった。
何かを決意した表情にも見えるし、怒っているようにも見える。
それに、口数も少ない。

――夕鈴、どうしちゃったのかな?

黎翔は不安になる。

「…誰かが待ち伏せしているかもしれないから、僕が行くよ。」
買い物に行こうとする彼女を引き止め、代わりに行ったから?

「ベランダにも出ちゃダメ。どこから監視されているか分からない。」
洗濯物を干すためベランダに出ようとしたのを止めて、クリーニングに出しちゃったから?

「一人で外に出ちゃだめだよ?危ないからね。」
退屈そうにしている彼女を、無理矢理部屋に閉じ込めたから?

思い当たる事は沢山有り過ぎて、黎翔は不安になる。

「――黎翔さん。」
「は、はいっ!!」

突然夕鈴に呼ばれ、ビシッと背筋を伸ばた。

「李順さんから聞きました。…お仕事行ってないんですってね?…李順さんやメンバーの皆さんに迷惑を掛けちゃ駄目ですよって、いつも言っていますよね?」

にっこり微笑んでいるけど、怒っている事が分かる。
頬がぴくぴくと引き攣っている。

「だ、だって…!夕鈴の事が心配だったんだ!」
「私を心配してくれるのはとても嬉しいです。…でも、それで他の方に迷惑が掛かるのなら、心配してもらわなくて結構です。」
「そんな…、夕鈴っ!」

黎翔は泣きたくなった。

「明玉さんや几鍔は良くて、僕はダメなの~!?」

いつも夕鈴の傍にいる明玉や、几鍔にまで嫉妬する。

「二人は、他の方に迷惑を掛けたりなんかしてませんよ。」

明玉は学校もバイトもきちんと行っているし、几鍔も仕事を休んだりはしていない。

「………。」

何も言っても切り返されて、黎翔はしょんぼりと肩を落とした。

幻の耳と尻尾をペシャンと伏せて項垂れている恋人を見て、夕鈴はフウッと溜息を吐く。
途端にびくりと身体を震わせた黎翔を見て、苦笑いする。

確かに怒っていたけれど、彼のこんな姿にはすごく弱い。

本気で心配してくれて、護ろうとしてくれて、とても嬉しかった。
時々突拍子もない事をするけれど、強くて優しい、自慢の恋人――。

「…大好きです、黎翔さん。」

忙し彼とはなかなか一緒にいられないけれど、この気持ちは、誰にも負けない。

チュウッと黎翔の唇にキスをして、夕鈴はふわりと笑った。

――その後、理性を失った野生の狼に、彼女は襲い掛かられてしまいました。

***

そして、このたびの騒ぎはどうなったかと言うと…。

「…はい。○○テレビ。はい、―え!?」
「××出版です。……ええっ!?…はい、分かりました…」
「了解です……」

各テレビ局や、出版社、カメラマン、フリーライターetc…。
重役達はとある人物から連絡を受け、慄いて部下達に謎の美少女から手を引くように通達したらしい。

蜘蛛の子が散らすように沢山いたカメラマンや報道陣が引き上げて、ようやく騒ぎは終焉を迎えた。

***

『…お前が私に連絡をくれるなんて驚いたよ。』

そう言う電話の相手は、何だか嬉しそうだ。

「手を煩わせてしまって、すみませんでした。」
『――いや、お前が私を頼ってくれたのが嬉しかった。』

深い確執だった。
長い間、誤解していた。
その溝を埋めてくれたのも愛しい愛しい恋人――夕鈴だった。

「…夕鈴を助けてくれて、ありがとう――お父さん。」

黎翔の頬に笑みが浮かぶ。
こうやって、素直に父親に礼を言えるようになるんて。

まだ自宅にて療養中の父は、一瞬言葉に詰まり、感極まったように返事を返した。

『またいつでも…困った事があったら掛けてきなさい。』

照れ隠しなのか、父は少しぶっきらぼうに言って通話を切った。
言葉が足りず誤解されやすい父は、自分とよく似ていると思うし、夕鈴もそう言っていた。

彼女と二人で、また家族に会いに行こう。

携帯を降ろした黎翔は、窓際に立ち、空を見上げる。

雨はまだ降っている。
けれど、こんな日も悪くないと黎翔は思った。


END

リクエスト内容【Creuzシリーズ。雨の中、Reiの曲を聴きながら無意識にリズムをとり踊っている夕鈴の姿を、何かの撮影で来ていたカメラにうつり、テレビで映像が流れあの少女は誰だと王道の流れになり、それを知った黎翔が嫉妬し、さまざまな外敵から夕鈴を守るも、夕鈴に仕事そっちのけで自分の側を離れない黎翔に、嬉しいんだけれど、つい怒ってしまう夕鈴】

かなりリク内容から掛け離れてしまいました
素敵なリクエストを、ありがとうございました


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『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

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