兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪同級生 ♯中編

続きです。

几鍔、驚愕の事実を知る…?

Creuzシリーズ

♪同級生 ♯中編


几鍔はずっと彼らを撮り続けて来た。煌びやかなステージで歌う彼は、確かに最近、今までに無い優しげな表情を見せる時がある。

その原因が、今付き合っているという彼女にあるのなら。

この男を変えたその女は、一体どんな女なのか知りたくて。

下世話な事だと思いながら、先に尋ねたのは自分だったけれど。

「…でね、でね、彼女がね~」

「はいはい、彼女がどうしたって?」

テンション高く話す彼を、几鍔は呆れ顔で見る。

確かに相手を聞き出そうと尋ねたのは、自分の方だが。

「もうメチャクチャ可愛くて、片時も離したくないんだ~」

「そうか、それは良かったな。」

黎翔が話すのは、いかに彼女が可愛いか。どれほど素晴らしい女性なのか。

何だ?…これってやっぱりただのノロケか?

「ちょっと、ちゃんと聞いてる?」

だんだん鬱陶しくなって、適当に相槌を打っていると咎めるような言葉。

「聞いてる、聞いてる。」

ぶっきらぼうにそう言って、几鍔はグラスに残っていた酒を一気に煽る。

全く…惚気話を聞きたかったわけじゃねえぞ!

瞳をキラキラさせながら、うっとりと『彼女』の人となりを話す黎翔に心の中で悪態を付く。


「…彼女は白陽学園に通っていてね」

「『白陽学園』と言や、名門校じゃねえか。良いとこのお嬢様か?」

学園の名を聞いて、几鍔は腐れ縁で幼馴染の一人の少女が頭に浮かぶ。

「いいや、普通の家庭の子だよ。…お父さんはサラリーマンで、弟が一人いるって言ってた。…お母さんは早くに亡くなっていて、家計を助けるために沢山バイトしてる。そこに入ったのも、奨学金制度があったからだって。」

黎翔の話を聞きながら、几鍔はますます顔を顰める。

「…聞けば聞くほど、俺の知っているヤツと被るんだが、ただの偶然か?」

「…え?」

几鍔の頭に浮かぶのは、いつも勝気な一人の少女。

父はサラリーマンで、母は少女がまだ幼い時に他界。公務員を目指す弟を溺愛し、家計と学費を稼ぐ為に日々バイト三昧。
さらには自分の授業料を浮かすために、あの名門『白陽学園』に見事合格し入学を果たした。

「…まさかその彼女って、『夕鈴』って言わねえよな…?」

そんなわけ無いと思いながら、几鍔は黎翔に聞いてみる。

几鍔が知っているその少女は、勝気で生意気で、どちらかと言うと男勝りだ。美人だとも、特別可愛いとも思わない。
ただの偶然だと思いながら、その幼馴染の名を口にしたのだが…。

「…何故君が、彼女の名前を知っているんだ?」

きつい口調。

ガラリと変わった雰囲気に、几鍔は背筋に寒気を感じた。

黎翔が紅い瞳で、几鍔を見据えていた。

「は?」

「だから何故、君が夕鈴の事を知っているのかと聞いている。」

先程までの蕩けた顔はどこへやら。几鍔を睨み付ける表情は、獰猛な狼そのもの。

そこに浮かぶのは、隠し切れない嫉妬だ。


「…マジかよ…」

脱力したように、几鍔は肩を落とした。


マスターに何杯目か分からない酒を注文し、几鍔は昏い瞳で自分を見ている黎翔を見て溜息を吐く。

真相を話すまでは、なかなか引いてくれそうも無い。

「…ただの幼馴染だ。」

「幼馴染?…本当にそれだけの関係か?」

黎翔が探るように聞いてくる。

紅い瞳が冷たく光り、真実を暴こうと睨み付けてくる。

「昔から家族ぐるみで付き合いがあるんだよ。…あいつの母親が死んだ時、弟はたった三歳だ。夕鈴は七歳。ちょうど小学一年になった年だった。あの父親一人で子供の面倒見れなくて、俺の母親が家事とか引き受けたんだ。」


今でも思い出す。

幼い弟の手を握り、必死に泣くのを耐えていた、彼女の姿を。

「…夕鈴の母親は、俺達の前で死んだ。」

几鍔の告白に、黎翔の喉がヒュっと鳴る。


血に濡れた細い手。青白い顔。

彼女は必死で、当時まだ小学生だった几鍔に、幼い我が子の事を頼んだ。

「…夕鈴の事を愛し守ってくれる人が現れるまで守ってくれと、そう頼まれた。」

几鍔はギュッと拳を握る。だんだん冷たくなっていくあの感触を、まだ覚えている。

彼女の最期の頼みを、几鍔は何としても成し遂げようと思った。

勝気で生意気な、弱音を吐かない夕鈴。
几鍔はずっと、そんな彼女を近くで守ってきた。

几鍔が夕鈴と恋人関係にならなかったのは、二人の距離が近過ぎたせいだ。

几鍔が夕鈴に持つ感情は、異性愛と言うより家族愛に近い。

「『妹』、のようなものだな。」

「いもうと…」

黎翔を纏っていた冷たい気が、フッと掻き消えた。


カラン…と、グラスの中の氷が音を立てる。

「…何だか悔しいな…」

黎翔が泣きそうな顔で呟く。

黎翔の知らない、夕鈴の過去。

彼女の一番近くで、ずっと見守ってきた彼。

何故その役目は、自分ではなかったのか。

「…過去の俺に嫉妬されても困る。」

「分かっているけどね…。」

そう言いながら、黎翔はブチブチと文句を垂れる。

「お前はあいつの恋人なんだろ?…だったらこれからあいつの一番近くで、大人になっていく姿を見ていくのはお前だ。」

「几鍔…」

「…守っていってくれるんだろ?俺の、妹を。」

「うん…うん。…必ず、守るよ。」

彼の家族を、愛しい彼女を、これから守っていく。

「…それにしてもお前、恋人の事を俺なんかにべらべら喋って。…俺が記事を書き上げて世間にバラすという事は考えなかったのか?」

俺はフリーライターだぞ、と几鍔は笑う。

それを見た黎翔はクッと笑って首を振る。

「…君は誰かを不幸にするような記事は書かない。その点に関しては、僕は君を信用している。ましてや、それが君の家族なら、尚の事。」

違うか?、目で問い掛けられて、几鍔はポリポリと頬を掻く。


彼にそこまで信じてもらえていたなんて、思ってもいなかった。

何だか気恥ずかしくなって、几鍔は俯く。

「…照れてるのか?」

「ばっ、ちげーよ!」

高校生の(あの)頃は、今こうやって酒を共に飲む付き合いになるなんて思いもしなかった。
愚痴や互いの文句を言いながら、たまに飲める事が、とても楽しい。


暫く無言で二人ともグラスを傾けていたが、几鍔はふと気になる事があって黎翔に尋ねた。

「…そういえば、他の奴らは知ってるのか?」


個性派揃いのあのメンバー達は、『妹』の事をどう思っているのだろう?



続く
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