兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、失態 前編

『上司と部下シリーズ』、少しだけ未来(夕鈴は20歳・入社二年目)のお話です。

何事にも完璧な、珀課長が犯した失態とは…?

前中後編でお送りします




意地悪上司の、失態 前編


「――と言う訳で、この予算をもう少し上げれば、簡単に取引が成立すると思いますわ。」

真っ赤な唇が、媚びるように言葉を紡ぐ。
営業一課の応接室で、黎翔はうんざりしながら女の話を聞いていた。

ざわざわと、一課内が騒がしい。
みな自分の仕事をしながらも、その視線はガラス張りになっている応接室に向けられている。

「…ねえ、あの女誰よ?」
「知らないの?三課の最悪女。」
「――アレが?うちの課長を狙っていると言う…。」
「そうそう。見てよあれ、課長に媚び売っちゃって…。下心があるの見え見え。」

嫌そうにひそひそと、囁き合う女性社員達。
彼女達は全員、顔を上げチラリと一人の女性社員を見た。

彼女の名は、汀夕鈴。
今年で入社2年目になる女性社員だ。
そして、営業一課・珀課長の想い人。

夕鈴は先輩社員達の心配げな視線を受けながら自分の仕事をこなしていた。気にしてはいけないと思っていても、彼女の視線もつい、応接室の方を向いてしまう。

課長と向き合って話している女性は、スラリとした体形で、とても美人な人だった。
課長と並んで立つと、とても絵になる。何をとっても平凡な自分より、課長の隣に立つに相応しい女性。
フウッと、知らず知らず溜息を吐いていた。

二人の姿が見えるから余計気になるのだと思い、夕鈴は席を立つ。
化粧室にでも行って、少し気分を変えてこよう。

「――汀、悪いが今日中にこれ纏めておいてくれ。明日の会議に使うんだ。」
「あ、はい。」

掛けられた言葉に反射的に返事して、渡された資料を積み上げられた書類の上に置く。
そしてもう応接室を見ないように、夕鈴は一課を出て行った。

「…このような企画案では、上に通すわけにはいかない。」

一方その頃応接室では、黎翔がバッサリと女の案を切り捨てていた。
営業三課では有名な社員らしいが、黎翔の記憶には全く入っていなかった。
彼女が提示した資料を読んでみたが、高い予算でより良い取引を結ぼうとしている物ばかり。

「どうしてですの!?」

納得がいかないと言うように、女が眉間に皺を寄せた。
必ず通ると思っていた自分の企画案を、まさかバッサリ切られるとは微塵にも思っていなかったからだ。

「君の案は、社の経営方針に沿っていない。まだ一課の若い社員の方が、もっと低い予算で良い案を持ってくるぞ?」
ばさりと、彼女に資料を突っ返し、黎翔はもう話は終わりだと腰を上げる。

「待って下さい、珀課長!!」

女は立ち上がると、黎翔に近寄り自慢のバストを彼に押し付けた。
もちろん、ガラス張りになっている一課内に見えないようにそちらに背中を向ける。

「私、貴方のお役に立ちたいんです!ぜひ私を、一課に置いて下さい!!」
「――悪いが。」

鬱陶しいと、縋り付く女の腕を振り払った。

「能力のない者を、私は部下とは認めない。…お引き取り願おうか。」

冷たい紅い瞳が、無表情に女を見下ろす。女はその瞳に恐れをなして唇を噛み締めた。
――が。

「…私、諦めませんから!!」

そう宣戦布告して、カツカツとヒールの音を立て一課内を通り抜ける。
丁度入り口で課内に入ってこようとしていた社員にぶつかりそうになるも、「…邪魔よ、どいて!!」怒り任せに押し退けて一課を出て行った。

「――きゃっ…!?」

押し退けられた夕鈴は、バランスを崩し傍にあるコピー機にぶつかった。

「――汀っ!!」
「夕鈴っ!!」
「夕鈴ちゃん、大丈夫!?」

親友の明玉や、課内の社員達が慌てて駆け寄ってきた。

「大丈夫か!?」

少し蒼褪めた課長が、夕鈴の腕を取り身体を起こしてくれた。

「あ…へ、平気です…。」

ビックリしてバランスを崩しただけなので、ぶつけた腕が少し痛むくらいだ。

「腕、痛いんだろ?…医務室に行って湿布貼ってもらえ。」
「…いえ、本当に大丈夫です!」

痛みにほんの少し顔を歪めただけなのに、課長はすぐに気付き、「大丈夫です」「ダメだ、行って来い」と押し問答になった。

――結局。

親友明玉に引っ張られるように、夕鈴は医務室に連れて行かれた。
なかなか首を縦に振らない夕鈴に課長が痺れを切らし、面白そうに周囲で傍観していた社員達に、
「――誰か!汀を医務室に連れていけ!」
そう命令したからだ。

「はいは~い!…明玉、課長命令を確実に遂行いたします!」

ニヤニヤしている彼女に、夕鈴は強制連行された。

「――課長…。」
「…分かっている。あの女については、私も調べてみる。」
「ああいう女は、自分が誰よりも秀でていると思い込んでますからね。」
「汀が目を付けられなきゃ良いんですが…。」

二人が去った一課内で、課長と同僚達がこんな話をしていた事を、夕鈴と明玉は知る由もなかった。


続く

ちょっと短めになりました


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Comment

NoTitle 

おお!?
上司の失態とはなんですか!?なかなか隙を見せないあの人がやらかしちゃうんですね~
夕鈴がらみだと思いますがw
上司の失態を楽しみにしています←
  • posted by からあげ 
  • URL 
  • 2013.08/23 16:42分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: NoTitle 

からあげ様

コメント、ありがとうございます(^^♪
上司の失態は、夕鈴がらみの事ですよ。
彼にとって、彼女以外の事で悩んだり、何かしてしまったりするわけありませ~ん☆
周囲から見れば、「それは失態と言うのか!?」っていう内容ですけどね…。
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.08/25 01:30分 
  • [Edit]
  • [Res]

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