兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

意地悪上司の、失態 中編

中編をお届けします

課長の失態は、こういう事でした




意地悪上司の、失態 中編


私の美しさには、誰もが心奪われる。
私の能力は、誰にでも高く評価される。
この会社の中で、私は選ばれた存在。

――なのに。

「能力のない者を、私は部下とは認めない。」

白陽コーポレーション・第一営業課課長・珀黎翔。

憧れの彼は、冷たい声で私にそう言った。

入り口でぶつかった社員に苛立ち紛れに声を上げ、営業一課を後にする。そんな彼女の耳に、珀課長の声が聞こえてきた。

「大丈夫か!?」

応接室で話をした時の声とは、明らかに違う優しい声。
あの男性(ひと)は、こんな優しい声も出せるのか…。

「平気です。」と答えた声は、先程ぶつかった社員のもの。
長い髪をポニーテールにした、琥珀色の大きな瞳の、まだ子供のような女。

あの女が、珀課長の想いを独占しているの?

そう思うと、心の奥からふつふつと、どす黒い物が湧きあがってきた。
――珀課長を誑かすヤツは、誰であろうと許せない。


医務室から戻り、頼まれた仕事をこなしていると、あっという間に昼休憩の時間になった。
いつものように食堂で、明玉や先輩社員達とお昼を食べ、時間ギリギリまで楽しく話をする。

「ねえ、貴女。ちょっと良いかしら?」

休憩を終え一課に戻る途中、夕鈴は声を掛けられた。
振り返ると、午前中に課長と応接室にいた女性社員が立っている。
彼女は顎をしゃくり、ついて来いと踵を返した。

「…夕鈴~、どうしたの?」
「置いてくよ~?」

「ごめん!先に行ってて!!」

夕鈴はそう言うと、女性社員の後姿を追った。

休憩終了時間を少し過ぎ、一課に戻ってきた彼女の様子はおかしかった。
妙にそわそわしたり、ぼうっと物思いに耽っていると思ったら急にハッとして、キーボードを打ち始めたり。
いつもならそんな夕鈴に小言を言う課長は、間の悪い事に商談で外出中だった。


夕方5時、商談が終わり、社を出た黎翔は携帯をチェックする。
数件の着信とメール。

「××社の○○です。…の事でお話したい事があるので、折り返し御電話下さい。」
「×日の会議が、14時からに変更になりました。ご都合の方、如何でしょうか?」

『忙しいのは分かりますが、たまには実家にも帰っていらっしゃい。また連絡します。』
『元気か?今度同級生の奴らと飲むんだが、珀もたまには参加しろよ?』

取引先の社員からの留守電、義母や大学時代の親友のメールに混じり、

『夕鈴の様子が変です。』

部下の一人明玉から、そんなメールが届いていた。
彼女が変なのはいつもの事だと、何気に失礼な事を思った黎翔だが、今回の原因はこれか?と思う。
明玉のメールの前に、夕鈴からメールが入っていた。

『…今夜会えないですか?19時に、バー○○で待っています。』

夕鈴と出会って1年が過ぎ、彼女は入社2年目。
こうして時々だが、一緒に食事に行ったりするようになった。
だが、彼女からお誘いを受けるのはこれが初めてだ。
黎翔はフッと口角を上げた。

『了解』と返事を送り、黎翔は愛車のアクセルを踏んだ。


「――何故君がここにいるんだ?」

そう問い掛ける黎翔の声は低い。
可愛い部下からのお誘いで、高揚していた気持ちが一気に急降下する。
バーに入り、店内を見渡すが、夕鈴の姿は無かった。
時間には結構しっかりしている彼女が遅れるなんて珍しいと思いながら、開いている席に腰を下ろそうとした黎翔に声を掛けた女がいた。

営業三課の、例の女だ。

「偶然ですわね。こんな所でお会い出来て嬉しいですわ。」

一度帰宅し着替えてきたのか、胸元を強調するワンピースを着ている彼女の、真っ赤な唇がうっとりと言葉を紡ぐ。黎翔は夕鈴がいないのなら、ここには用が無いと踵を返した。

「彼女なら来ませんわよ?」
「…何?」
「今頃、まだ仕事をしているんじゃないかしら?」

届いていたメールは、確かに夕鈴からのものだった。
それなのに、この場所で黎翔が夕鈴に会う事を、彼女は知っている。

「汀に何をした…?」
「あら。私を疑っているのですか?心外ですわね…。彼女は『自分は貴方に相応しくないから』と、私に譲って下さったのです。ご自分の事をよく理解されていますわね。」

黎翔は、自分が嵌められた事に気付いた。
あのメールは、この女が夕鈴に送らせたものだろう。

何という事だろう。
彼女からの初めてのお誘いに舞い上がって、思わぬ失態をしてしまった。

「貴様……!」

とても大事な、大切にしている可愛い部下の、彼女の心をこの女は傷付けた。
クスクスと嘲笑う女に、湧いてくる怒りに拳を握りしめていると。

「あれ、課長!?」
「あ、ホントだ~!」
「課長もここで飲んでいたんですか?偶然ですね~。」

突然声を掛けてきた、賑やかな女性の集団。
明玉を含む、黎翔の部下達だ。

「お前達…。」

白々しく偶然を装ってはいるが、彼女達は黎翔がここにいる事を初めから知っていたようだ。
その上で、このバーに来て、このタイミングで声を掛けた。
その証拠に、彼女達の顔は意味ありげに笑っている。

「あら?貴女もいたの?」

古株の女性社員(黎翔命名・女豹)が、ソファに座る三課の女に声を掛ける。
さも今気付いたように笑顔で声を掛けた彼女の、目だけが笑っていない。

「たまには他の課の女性と飲んでみたかったのよ。」
「…あ、えっと…。私は…」
「――何?私達とは一緒に飲めないっての!?」
「いえ…。そんな事ないです…。」

女は女豹達に囲まれてタジタジになり、断れずにしぶしぶ頷いた。

「夕鈴は残業しています。早く行ってあげて下さい。」

席に着いた部下達に囲まれ女の視線がそれた瞬間、傍によってきた明玉がそっと声を掛けてきた。

「――悪い。」

明玉はいいえと首を振る。
チラリと優しい視線を向けてくる部下達が、ビールを注いだり、注文をしたりして女の注意を逸らしてくれている。

彼女達に感謝して、黎翔はバーを飛び出した。


続く


持つべきものは、頼りになる部下…?


関連記事
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

右サイドメニュー

プロフィール

高月慧ネン

Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

ご訪問中のお客様

現在の閲覧者数:

にほんブログ村ブログパーツ

ブロとも申請フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。