兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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可愛い部下の、好敵手(ライバル) 前編

書ける時に書きたいものを書く。
これを慧ネンのモットーにします

2ヶ月ほど前に最初だけ書いて途中で止まってましたが、急に降臨したので書いてみました。
一話で終わらせたかったのに、無理でした…。

次で終わらせたい、うん…

※注意※

夕鈴20歳(入社二年目)のお話です。
時系列としては、『意地悪上司の、失態』の後くらい?
二人はまだ付き合っていませんが、時々一緒に食事に行く仲です。

今回は新しい原作キャラが登場します。
誰とは言いませんが、原作のイメージを損なう恐れがあります。
各キャラに深い拘りをお持ちの方は、読まない事をお勧めします

軽~く読んで下さる方だけ、どうぞ!





可愛い部下の、好敵手(ライバル) 前編


暑い季節が過ぎ、短い秋が駆け抜け、朝夕の気温が下がり始めた11月の初め。
白陽コーポレーション第一営業課に、新しい社員がやって来た。

課長・珀黎翔のデスクの前に立ち、少し硬い表情で彼に頭を下げているのは、黒髪を一つに束ねた長身の男。
キュッと口を結ぶその顔はお世辞にも愛想が良いとは言えず、見るからに堅物そうな男だった。

「…この時期に配属なんて、珍しくないですか?」
「ああ、汀さんは初めて会うっけ?彼は元々うちの社員。手腕を見込まれて、営業成績が良くなかった子会社に出向してたのよ。あれは…一昨年の今頃だったかしら。」

こそっと先輩社員に聞いてみると、彼女はそう教えてくれた。
一昨年の今頃と言うと、夕鈴はまだ入社していない。と言う事は、彼は年上なのかと思う。

「皆、聞いてくれ。今日から一緒に仕事をする、新しい仲間だ。ある程度の仕事内容は理解しているから、細かいところをフォローしてやってくれ。」

立上って、一課の面々にそう声を掛ける珀課長。
その横で、彼は頭を下げた。

「柳方淵です。よろしくお願いします。」


「――彼、中々カッコいいと思わない?」

そう言ってくるのは、同期入社の女性社員だ。

「あ、私もそう思った。」

それに同意するのが、親友明玉。そして、「私も」と一緒にいる子全員が頷く。

お昼休み、安くて美味しい社員食堂は人気で、夕鈴達は隅っこの席で友達同士でテーブルを囲み、ご飯を食べながら会話に花を咲かせていた。
今日の話題は、新しく一課に配属された男性社員についてだ。

「『何か分からない事があったら聞きますので、よろしくお願いします。』って頭下げられちゃった。」
「彼の方が年上なのにね―。」
「コピーした書類持っていったら、『ありがとう』って、ちょっとだけ笑ってくれたんです!」
「普段ムスってしている人って、たまに見せる笑顔が良いよね♪」

皆は口々に彼を誉めるが、夕鈴としては少々複雑だった。

柳方淵

年齢は夕鈴の二つ上の22歳。
一昨年と言う事は、彼は20歳の時、すでに手腕を見込まれて出向したと言う事になる。
今の自分と同じ年だ。

とても優秀だったらしい彼とは違い、自分は未だにミスをしては課長に怒られている。
その事だけでも憂鬱になるのに。
さらに夕鈴を憂鬱にさせたのは、彼の自分に対する態度だった。

それは、課長からの紹介が済んだ後の事。
方淵は挨拶回りと称し、各席を回り一人ずつ挨拶をしていったのだが、夕鈴の席に来た時。

「初めまして、汀夕鈴です。」

名乗って頭を下げたのに、彼は無反応。
どうしたのかと思い顔を上げると、彼は眉間に深い皺を寄せて、夕鈴を見ていた。

「――貴女が?」
「は?」

言っている意味が分からず首を傾げるが、方淵は「いや、何でもない。」と言って、席を離れて行った。
何の挨拶も無しである。
他の社員にはにこやか…とは言えないが、きちんと挨拶しているのに、夕鈴にだけはそんな態度だった。
彼とは当然初対面で、何かした記憶もない。
どうしてそんな態度を取られるのか、夕鈴には分からなかった。

方淵はさすがに優秀で、初日こそ色々聞き回っていたが、全てを把握したのか、次の日からはその手腕を発揮していた。だからと言って、それを自慢するわけでもなく、ただ黙々と仕事をしている。
先輩社員達とは微妙な距離感で付き合っているので、愛想はないが、揉め事も起こらない。
そして、彼の夕鈴に対する態度も相変わらずだった。

「方淵さんって、仕事が恋人なのかしら…。」

そんな事を言いながら、テーブルに突っ伏す女性社員。
遊びや合コンに誘っても、全て断られるらしい。
それでも誘い続けるのだから、彼女は強かと言えるかもしれない。

「いかにも仕事人間って顔してるじゃない。もう諦めたら?」
「だってえ…。」

別の子が進言するが、その子は納得していない。

「ああ言う、愛想が無い男が好きって子もいるんだもん。他の課の子も、一緒に合コンしたいって言ってるし。」

彼女の熱意には感服するが、その努力が報われる事はないような気がする。
夕鈴は皆に気付かれないように、小さく溜息を吐いた。

社内に軽やかなメロディが流れると、休憩時間は終わり、午後の業務が開始される。

「――汀!ちょっと来い!」

14時から始まる会議に使う資料を纏めていた夕鈴を、課長の鋭い声が呼んだ。

「はい?」
「…ここ、桁が違っているぞ。」

トントンとその箇所を指で示し、課長が告げる。
新しい取引に関する書類の、予算案の桁が明らかに間違っているのに夕鈴も気付く。

「す、すみません…!」

夕鈴は青くなって、課長に頭を下げた。
その書類は会議に使用する大事な物。作成時に気付けばすぐ直せたのだが、すでに人数分をコピーした後。
修正後、またコピーして作り直さなければならない。

チラッと時計に目をやった課長は盛大に溜息を吐き、すぐ作り直すように言った。

「方淵、手伝ってやれ。」

時間は13時を回っている。誰かに手伝ってもらわないと、一人では難しいかもしれない。
一瞬、嫌そうに眉を顰めたものの、課長からの命令だからか、彼はしぶしぶ頷いた。

夕鈴が間違えた箇所をすぐ訂正し、人数分コピーした後、コピー室で二人は黙々と書類をホッチキスで纏めていた。テーブルを挟み、椅子に座ってただ手を動かすだけの二人。
そこに会話は一切無かった。

閉じる順番を間違っていないか確認し、きちんと人数分あるかもチェックする。

「ありがとうございました。」

何とか会議が始まる前に終わって、夕鈴はホッとして方淵に頭を下げた。
がたっと立ち上がった方淵は、夕鈴の顔をじっと見つめた後。

「…貴女は、こんな簡単な仕事すら、きちんとこなせないのか?」

冷たい声で、そう言ってきた。

「え?」
「何故あの方が、貴女のような者を傍に置くのか、理解に苦しむ。」

心底嫌そうな表情。
見下すような、目。

「あの方、って…。」
「貴女のつまらないミスのせいで、あの方がどれほど迷惑しているのか分からないのか?」

自分がミスをして、一番迷惑が掛かるのは、課長だ。

「仕事もまともに出来ないくせに、女だと言うだけで傍にいる事を許される。――実に不愉快だ。」

吐き捨てるようにそう言って、彼はカツカツと靴音を響かせながらコピー室を出て行った。
その背を見送り、夕鈴は呆然と立ち尽くす。

一課に配属されてからの、彼の態度の理由に合点がいった。
方淵の言葉が、夕鈴の頭の中をぐるぐる回る。

――課長は、迷惑している?

しているだろう。
小さなものであっても、部下のミスは全て彼に責任が掛かってくる。

――女だから、傍にいる事を許されているの?

そう、なのだろうか?
課長は私に、仕事の能力は求めていない?

悩み始めたら止まらず、夕鈴はずっと自問していた。


「…何かあったのか?」

ぼんやりとしていた夕鈴は、ハッとして顔を上げた。
向かいの席に座る課長が、心配げにこちらを見ている事に気付いて、彼女はようやく、彼と食事に来ていた事を思い出す。

今夜は高級そうなフレンチレストランに連れてこられた。
豪勢な食事を前に、フォークとスプーンを持ったまま、ぼうっとしていたみたいだ。

「会議の時も、心ここに非ずと言う感じだったな。その前は普通だったから、方淵に何か言われたか?」

核心を突かれ、夕鈴は少し動揺してしまった。

相変らずの課長の観察眼には脱帽する。
見ていないようで、彼は様々な事を見て、情報を得ている。
自分が取り仕切る、一課の部下達の事は良く把握していた。

「…悪口でも言われたか?あいつは口が悪いからな。」

『悪口』とは違う気がする…。
確かに口が悪いとは思うけれど、悪い人間ではないと言う事は分かる。
課長もそう言いながらも、「仕方が無いヤツだ。」と苦笑いしているから。

けれど、どうしても。

『あの方がどれほど迷惑しているのか分からないのか?』

――方淵の言葉が、夕鈴の胸を刺す。

涙が溢れそうになって、夕鈴はそれを隠すように下を向いた。

「汀、本当にどうした?」

急に俯いた夕鈴を見て、彼が驚いたように声を上げる。

「な、何でもないです…。」
「何でもない事ないだろ?…何を言われた?言ってみろ。」

言える訳が無い。
方淵の言葉を鵜呑みにして、こうやって優しい言葉を掛けてくれる課長を、疑っているなんて。

最低な人間だと自分を罵りながら、泣く資格なんてないと俯いたまま涙を拭い、首を横に振った。
それを見て、課長は溜息を吐く。

「…私の方から、方淵に注意しておこう。」
「――いえっ!それには及びませんっ!!」

ガバッと顔を上げて、課長を見る。
こんな事で、忙しい課長の手を煩わせたくない。

仕事の能力を認めてもらえないなら、努力をして、良い業績を上げて、認めさせるまで。
そうすれば、方淵も突っかかったり、文句を言ってきたりはしないはず。

職場の対人関係くらい、自分で解決してみせる!!

夕鈴はそう決意して、グッと両手に力を入れた。


続く

お、終わらなかった…。


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よろしくお願いします。

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