兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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上司の失言、部下(達)の策略

お久し振りです
一ヶ月近くも音沙汰無しですみませんでした

久し振りの更新は、SNSの慧ネン宅で記念すべき5000hitを踏まれました、白友からあげ様に捧げたお話です。

最近こちらの更新が無かったので、「ブログに載せちゃうぞ?」と自己申告したところ、楽しみにしてますとのお返事を頂きましたので、アップしちゃいます

今回は初めて『上司と部下シリーズ』のリクエストを頂いて、ドキドキしながらも、楽しく書けました。

時間枠は、夕鈴は19歳(入社年)の秋頃のお話です。
相変らずな上司と部下をお楽しみ下さい




上司の失言、部下(達)の策略


オフィスビルが立ち並ぶ都会の一角に建つ大会社・白陽コーポレーション。
汀夕鈴が高校卒業後入社したこの会社は、季節を問わず年中忙しい。

そして彼女が籍を置く第一営業課は、今日も業務開始から課長の怒鳴り声が響いていた。
一課課長・珀黎翔は、夕鈴の直属の上司で、密かに想っている相手だった。

「はあ…」

長い説教が終り、化粧室で夕鈴は溜息を吐く。
鏡に映る自分の顔は、ぐったりしている。
また小さなミスが発覚して、朝から課長に怒鳴られてしまった。
いつまでたっても彼を怒らせてばかりいる自分が、少しだけ嫌になった。

「いつまでしょげてんの、夕鈴!」
「明玉…。」

ポンと肩を叩き、明るい声を掛けてきたのは親友で、同期入社の明玉だ。
仕事でもプライベートでも、何でも相談できる唯一の相手。

「明玉~。」

わーん、と、夕鈴は彼女に抱き着いた。

確かにミスがあったが、夕鈴は自分なりに頑張ったのだ。
なのに課長は、「ミスをしないのが当たり前」と、冷たい声でそう言った。
課長が夕鈴に冷たいのは、今に限った事ではない。
彼は夕鈴の教育係になった頃から、彼女に厳しかった。

好きな人に怒られるのは、やっぱり辛い。

「もう私、この会社で働いていけないかも…。」

すっかり自信を無くした夕鈴は、弱音を吐いて明玉に泣き付いた。

「ちょっと、ちょっと、夕鈴~?」

スーツに彼女の涙がしみ込んで、マジに泣いている事に気付いた明玉は焦りながら、親友の背を必死に撫で続けた。


キーボードを叩きながら、黎翔はパソコンの影で小さく溜息を吐く。
周囲の部下達が、ちらりちらりとこちらを見てくる。
好意的なものではなく、恨めしそうな視線。

その原因は、斜め前の席で必死に仕事をしている女性社員。
唇を噛み締めてパソコンに向かっている彼女の目は、兎のように真っ赤になっていた。

汀夕鈴。
黎翔の部下の一人であり、そして密かな想い人だ。

彼女を小さな事で叱るのは、決して彼女が嫌いだからではない。
好きだからこそ、苛めたくなる。
彼はどうしようもない人間だった。
そんな自分の態度が、彼女を苦しめている事に気付きもせずに。

その日の就業時間を少し過ぎ、夕鈴はミスを見直した書類を課長に再度提出した。
パラパラと確認してOKだと頷くと、彼女はホッと息を吐いた。

目の赤みは大分引いていたが、その表情は覇気が無く暗い。
いつも笑みを絶やす事の無い彼女の、そんな表情に黎翔の心はざわついた。

夕鈴はぺこりと頭を下げ、「帰ります。」と告げると自分の席に戻った。

「――課長。」

手早く帰り支度を終えた夕鈴が一課を出て行った後、すでに帰宅したはずの明玉が顔を出し黎翔を呼んだ。

「帰ったんじゃなかったのか?」
「ちょっと気になる事があって…。」

基本、サービス残業禁止、どうしても必要な場合は必ず申告が原則の会社の為、一課には誰もいない。
明玉はチャンスとばかりに、課長に食って掛かった。

『あの子にたまには優しくしてあげて下さい。…夕鈴ったら、すっかり自信を無くして、ここでやっていけないかもって…。』

生活があるのでせっかく入社した会社を辞めたりはしないだろうが、部署替えを希望する可能性もある。
そうなると、もう彼女は自分の直属の部下では無くなってしまう。

「――どっとも不器用なんだから。」

一課を飛び出していった課長を見やって、明玉は溜息を吐く。
好き合っているのに、周囲から見ればバレバレなのに、どうして二人は擦れ違ってばかりなのだろう。

「行ったか。」
「行ったわねえ…、凄い勢いで。」

わらわらと、どこからともなく現れたのは、帰宅したはずの一課の社員達。

黎翔と夕鈴は、社内では知らぬものはいないと言うほどの、一課の名物コンビ。
そして、互いの気持ちを知らず擦れ違ってばかりの二人は、一課社員にとって応援したくもなるし、冷やかしたくもなる、そんな存在。

誰にでも優しく、明るい性格の夕鈴は皆に好かれているし、仕事も出来て、何でもパーフェクトにこなす黎翔は、彼女の事に関しては余裕がない。

そんな二人と一緒に仕事をするのが、彼ら、彼女達の、楽しみであり誇りでもあるのだ。

「これで少しは進展有るかな?」
「あってもらわないと困る。」

楽しげに笑い合う。

「汀には悪いけど、あれは俺たちの楽しみでもあるんだ。」

どちらが欠けても、きっとつまらない。

「さあ、飲みに行こう!」

二人の進展を願い、彼らは連れだって居酒屋に向かった。

彼女の小さな背中を見つけたのは、もうすぐで裏口と言う場所。

「――汀!!」

聞こえたはずなのに、びくりと身体を震わせた夕鈴は歩みを止めず、歩いていく。

「汀、待てっ!」

コンパスは明らかに黎翔が勝る。
あっという間に追い着き、その細い腕を掴んだ。
前に回り込み顔を覗き込んだ黎翔は、目を見開いた。

――彼女の瞳は濡れていた。
溢れた涙は静かに頬を流れ落ちる。

「あ…」

その悲しげな表情に驚愕し、力が緩んだ彼の手を夕鈴は振りほどいた。
そして彼の横を通り抜け、裏口に向かう。

「…汀!」

離れていく背に向かって、黎翔は叫ぶ。

「私がお前を叱るのは、決してお前が嫌いだからじゃない!…お前がどうでも良い部下なら、一課に必要ない人間だったら、私は構ったりしない!」

彼は必死だった。
もし彼女が一課を去ったら、自分はどうしたら良いのだろう?
これほどにも心を掻き回す、愛しい彼女が…。

初めて聞く課長の必死の叫びを聞きながら、夕鈴は足を止め、俯いた。

彼女には分かっていた。
彼は立場上、部下がミスをすればその責任を負う必要がある。
まだ社の損益に関わるような大きな仕事でミスはないが、今後は何があるか分からない。
彼が自分を叱るのは、部下として期待してくれているから。

彼の下で働いてきて、ようやくそう思えるようになった。

夕鈴はくるりと振り返り、課長の顔を見る。
そして無理矢理、その顔に笑みを浮かべた。

「…大丈夫です!会社を辞めたりなんかしません!明日には、いつもの私に戻ります!」

いつも元気に、笑顔を絶やさず、課長と口喧嘩出来る、強気な私に。
でも、今日は――。

「今は…課長と一緒にいたくありません…。」
「汀…。」

呟かれた言葉に、黎翔は力なく彼女の名を呼ぶ。

彼が自分を思ってしてくれる事なのに、それが辛いなんて。
これ以上傍にいると、また泣いてしまいそうで…。

「――っ、失礼します!」

また涙が溢れそうになって、夕鈴は慌てて背を向けた。
そして呆然と立ち尽くす彼を振り返る事なく、裏口を潜り外に出て行った。


「…飲み過ぎだぞ。」

不意に声を掛けられ、隣の席に誰かが座る気配。
馴染みのバーで、もう何杯目か分からないグラスを、一気に煽る。

「飲まなきゃ、やってられないんだよ。」

タンっとグラスを置き、またオーダーする。
バーテンダーが黎翔の目の前に置いたグラスを、横から伸びてきた手が奪っていく。
止める間もなく、彼はそれを飲み干した。

「ぷはー、仕事の後の酒は格物に美味いな。」
「――おい。」

人の酒を勝手に飲んでおいて、呑気な声を出す浩大を睨み付ける。

「そんな気分で飲んだって、美味くないだろ?もうその辺にしとけよ。」

彼のいう事はもっともだ。今夜はどんなに飲んでも、ちっとも美味いと思わない。
黎翔は行儀悪くテーブルに突っ伏す。

「夕鈴ちゃんの事だろ?」

どうやら騒ぎは知っているようで、核心を突いてくる浩大を恨めしく思う。
彼女に対するこの気持ちを、何気に応援してくれているらしい部下達が言っている事は分かるのだが、どうすればいいのかが分からない。

「――浩大。」
「あん?」
「優しくするって、どうすれば良いんだ?」
「…ぶはっ!!」

すでに二杯目を飲んでいた彼は、盛大に吹いた。
ヒーヒーと腹を抱えて笑う浩大を睨み付け、聞く相手を間違えたと黎翔は思う。

ひとしきり笑った浩大は、笑顔のまま、黎翔の肩を叩いた。

「別に難しく考える必要なんてないんじゃねえの?…ミスを叱るだけじゃなく、たまには褒めてやるとか、仕事が終わった後、一緒に飲みに…は未成年だから無理か、飯食いに行ったりしてプライベートでも仲良くなるとか。」

基本的に、この二人は会話が足りないんだよな…と浩大は思っている。

「…ほら、彼女の親友の明玉ちゃん。どんな店が好きとか、好きな食べ物とか色々知ってるんじゃね?アドバイスしてもらったらどうよ?一課の奴らも、協力してくれるんじゃねえか?」

仲が良い営業一課の面々は、良く一緒に食べに、飲みに行ったりしている。

浩大は早速その一人と連絡を取り、彼が偶然にも明玉を含む数人と一緒にいると言うので、来てもらう事にした。
連れ立ってやって来た部下達は、見る影もないほど凹んでいる上司の姿を見て、夕鈴と何かあったのだろうと見当をつける。
そして浩大が提案した策略に、皆が積極的に協力する事にした。

翌日、出勤してきた夕鈴は昨日言った通り、普段の彼女に戻っていた。
むしろ後を引き摺っているのは黎翔の方で、飲み過ぎも相まって、酷い二日酔いに悩まされ、朝からぐったりしている。夕鈴の事が気になり、パソコンの画面と彼女のデスクを視線が行ったり来たりしていた。

「――夕鈴ちゃん。」
「あ、先輩。おはようございます。」

朝から爽やかな笑顔で近付いてきた美人な女性社員に、夕鈴は頭を下げて挨拶をする。

「おはよう。…あのね、今日の夜、空いてる?」
「え…と、はい。大丈夫です。」

手帳で用事が入っていなかったか確認して、何もないのでそう答える。

「――じゃあ、空けといてくれないかな?」

にっこり笑う彼女に怪訝な顔で頷いた夕鈴は、まさか待ち合わせの場所に課長が現れるなんて、この時全く思ってもいなかった。


END

→そしてこの時期から、課長と夕鈴はたまに一緒に食事に行くようになります。

リクエスト内容【意地悪上司と可愛い部下シリーズで、番外編的なのでも未来話でもなんでもオッケーですので
つい、上司が意地悪をしちゃう話を(^^♪
Creuzと迷いますけどこっちが今のマイブーム?なので!】

素敵なリクエストを、ありがとうございました




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『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
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原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

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