兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪その光に手をのばし ♯3【激震】

警告

このお話には、痛い表現が出てきます。
たとえ小説でもそんなの読みたくない!と思われる方は、閲覧をお控え下さい。

パスは付けませんが、閲覧は自己責任でお願い致します。




♪その光に手をのばし ♯3【激震】


塾に行っている弟・青慎から、友達と一緒にお昼を食べて帰ると連絡が来た。
父は出張でいない為、夕鈴は一人、簡単なものでお昼を済ませる。
食器を洗い終えた夕鈴は、早速正月に使った大皿などを片付け始めた。

あらかた片付けを終え、庭の隅にある倉庫を出ると、鼻先に白い物が降ってきた。

「寒いと思ったら、雪…。」

最近は比較的暖かい日が続いていたので、この冬初めて雪だ。
空を見上げると、チラチラと雪が舞い降りてくる。
このまま降り続いたら、明日の朝には積もるかもしれない。

倉庫の扉を閉め、家に戻った夕鈴は、エプロンを外すとリビングを覗く。

「ラブ~?」

お昼ご飯を食べ終わった後、彼はさっさとリビングに行ってしまった。
呼び掛けると、ソファの上にもぞもぞ動く茶色の毛並み。

「雪が降って来たから、早めにお散歩行こうか?」

ちょうど夕ご飯の材料も買いに行かなければならないので、買い物ついでにラブの散歩も済ませてしまおう。まだ三時過ぎだが、雪が降っているので暗くなるのも早いだろう。

青慎に早く帰るようにメールを入れて、夕鈴はコートを羽織りマフラーを首に巻くと、ラブの首輪に散歩用のリードを繋いだ。

「じゃあ、行こうか!」
「キャン!!」

散歩好きの彼は、すごく嬉しそうに尻尾を振った。

家を出て、一番近くのスーパーに向かう。
道を行き交う人々は寒そうに肩を竦め、白い息を吐きながら歩いていた。
傘は持ってきたが、これはさっさと買い物を済ませて、早く帰った方が良いかなと夕鈴は思う。
自分はともかく、ラブの小さな体が寒そうだ。
彼の茶色い毛並みが真っ白になる前に帰らなければ…。
夕鈴は歩くスピードを速めた。

大通りの交差点に差し掛かった頃、急にラブの歩くスピードが落ちた。
いつも小さな体で夕鈴を引っ張るように歩く、散歩好きの彼にしては珍しかった。

「どうしたの?行くよ?ラブ。」

立ち止まって、彼にお伺いを立てる。
けれどラブは「くう…」と小さく鳴いて、元来た道を戻ろうとする。
これ以上前には進みたくないとでもいうように。

「ダメよ、早くしないと、信号変わっちゃう。」

この交差点は交通量が多く、一度信号が変わるとしばらく待たなければならなくなる。

「…もう!困った子ね。」

仕方ないと溜息を吐き。夕鈴はラブを抱き上げた。
彼の気が変わるのを待つより、自分が抱いて運んだ方が早いと思ったのだ。

「きゅうん…」

抱き上げられたラブは、つぶらな瞳で夕鈴を見上げ、何故だか悲しそうに鳴いた。

横断歩道を渡る、歩行者の歩みが早くなる。
慌てた夕鈴が、一歩車道に足を踏み出したその時――。

キキキキ――――!!

耳障りなブレーキ音が、周囲に響き、

「……え?」

ドンっ!!と、身体が大きく跳ね上げられた。


「―――っ!?」

名を呼ばれた気がして、黎翔は足を止め振り返る。
ここにはいないはずの人の声で、当然振り返ってもそこに彼女はいない。

「どうしました?」
「Rei?…何かあったのか?」

一緒に移動していたメンバーの浩大と、マネージャーの李順が訝しげに声を掛けてくる。

「いや…何でもない…。」

黎翔自身、空耳だと思ったので、そう答えたのだが。

「ゆうりん…?」

どうしてこんなに、不安で胸が押し潰されそうになるのだろう?

「行きますよ。」
「…ああ。」

促され、黎翔は彼らと共に歩き始めた。


喉から出るのは、ヒューヒューと言う音だけ。
身体が痛くて、思うように動かせない。

一体、何が起こったの?

「事故だ―――!!」
「誰か、救急車を!!」
「大丈夫ですか!?」

周囲が騒然となる。バタバタと走り回る足音。
叫び声や悲鳴。

…事故?
ああ、私…撥ねられちゃったの…?

身体に感じる冷たい地面の感触。
うっすらと目を開けて、夕鈴は抱いていたはずの小さい命がいない事に気付いた。

「ラブ……?」

小さい声で、彼を呼ぶ。

「くうん……」

鳴き声が聞こえ、夕鈴はそちらに視線を動かす。
霞む視界に、小さな茶色い身体が地面に横たわっているのが見えた。

今にも消えゆきそうな彼の元に行こうと、必死に手を伸ばす。
視界に入り込んだ自分の手も、真っ赤な血で濡れていた。

「おとう、さん……せ、いしん……」

優しい父に、可愛い弟。
友達に幼馴染に、Creuzのメンバー達。

脳裏に、沢山の姿が浮かんでは、消えていく。

明玉
雪花
華月


几鍔
浩大さん
李順さん
方淵さん
水月さん

その先に、遠く離れた場所に、大好きな、愛しい男性(ひと)の姿が見えて。
夕鈴は震える手を、懸命に伸ばしたけれど。

「れい、しょう…さん……」

視界は真っ暗に染まり、
パタリと、彼女の手は力を無くし地面に崩れ落ちた。


続く






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  • posted by  
  •  
  • 2013.08/31 13:40分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: はじめまして。 

なつきりん様

初めまして!コメントありがとうございます!!
そうですか。あちらから来られましたか(^^♪
あっちはもう、更新をしていないので、こちらで楽しんで頂けたら嬉しいです。
Creuzシリーズの方も、ゆっくり読んで下さいね。
今は佳境な展開。なるべく早く続きをお届け出来たらなと思います♪
これからもお付き合い、よろしくお願いします!(^^)!
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.09/01 03:10分 
  • [Edit]
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