兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪その光に手をのばし ♯4【現実】

お待たせ致しました(待っている方、おいでるのかな?

リクエスト小説の続きです。

そしてストックが無くなったので、これからさらに更新ペースが落ちます
ごめんなさい

気長に待っていて下さったら、嬉しいです





♪その光に手をのばし ♯4【現実】


ライブコンサートの最終日の今日、CreuzリーダーでヴォーカリストでもあるReiは、朝から様子がおかしかった。
元々彼は感情をあまり表には出さないので、それに気付いたのはメンバーとマネージャーの李順くらいだ。ツアーを支えている大勢のスタッフ達は、誰一人として彼の変化に気付いていない。

ツアー最後のナイトコンサート直前の休憩時間にも、黎翔は出された食事に碌に箸もつけなかった。
部屋の隅のソファに座り、携帯を仕舞いながら溜息を吐いている。

「本当にどうしました?Rei」

そんな彼に、朝と同じ質問を李順は投げかける。

「姫ちゃんに何かあったのか?」
「そう言う訳ではないが…。」

浩大に問われても曖昧な答えしか返せないのは、黎翔自身、良く分からないからだ。
あの夢を見てから、胸騒ぎが治まらない。
たかが夢だと思っても、不安が消えない。

「連絡が取れないのですか?」

水月に聞かれて、頷く。
昼過ぎに送ったメールには、すぐに返事があった。
なのに、先程から何回も携帯にコールしてみても、夕鈴が出ないのだ。

「…食事の支度をしていて、気付いていないのでは?」

方淵が言う事も、もっともだ。
丁度晩ご飯の支度をする時間でもある。携帯を部屋に置いたままキッチンにいて、気付いていないだけだろう。
無理矢理、自分をそう納得させた。

***

「…一体、何があったんだ?」

そうボヤキながら、几鍔はCreuzのメンバーがいるだろう、彼らの控室に向かって長い通路を歩く。
専属カメラマンとしてツアーに参加している彼も、黎翔のわずかな変化に気が付いていた。

歩きながら、ライブ中マナーモードにしていた携帯が、何度も震えていた事を思い出す。
胸ポケットから取り出し、確認した几鍔は目を見開いた。

「な、何だこりゃ…」

沢山の着信履歴が並んでいる。
相手は、幼馴染の夕鈴が溺愛している、彼女の弟・青慎。
几鍔にとっても、可愛い弟のような存在だ。

そして、彼の携帯の番号に混じり、何故か公衆電話からも着信が残っていた。

青慎は、非常に真面目で常識ある子だ。
彼は几鍔がカメラマンの仕事をしているのも知っているし、意味もなくこんな事をしたりしない。
何かあったのかと思い、履歴を呼び出し、青慎の携帯に掛けた。

『几鍔さんっ!良かった!今掛けようと思っていたんですっ!!』

すぐに出た青慎は、捲し立てるように言う。
彼らしからぬ話し方に、几鍔は「どうした?」と問う。

『ね、姉さんが…!几鍔さん、姉さんがぁっ……!!』
「夕鈴?…姉貴になんかあったのか?」

嗚咽を漏らしながら話す青慎の言葉を聞き、几鍔の眉間に皺が寄り、表情が険しくなった。

「落ち着け、青慎!親父さんには連絡したか?」
『お、お父さんは、掛けたけど繋がらなくて…』

二人の父・岩圭は出張だと聞いている。
会議中か移動中で、出られないのかもしれない。
母親がいない二人にとって、身近な親族は父親だけだ。
まだ中学生の青慎は、一人では心細いに違いなかった。

几鍔はノックも忘れ、話しながらCreuzの控室の扉を開けた。


「さあ、行きますよ!!」

休憩も終わり、ツアー最後のライブコンサートの会場に向かう時間となり、李順が手を叩き、メンバーを促す。
テレビの電源を消そうとそちらに顔を向けた黎翔の手から、リモコンが滑り落ちた。

「おわっ!…ビックリした!!」

開けようとした扉がいきなり外側から開いたので、浩大は驚いて一歩下がる。

「――親父さんに連絡を取り続けろ。すぐに俺が行くから、それまで一人で頑張れるな?」

入ってきたのは几鍔だった。彼は険しい表情で、誰かと携帯で話している。

その時、後ろでごとりと音がした。
振り返ると、黎翔が呆然とテレビの画面に見入っている。

『本日午後一時過ぎ、○○で歩行者の列に車が突っ込む事故があり…』

――うそだ。

『数人が病院に運ばれ手当てを受けています。』

これは夢だ。
現実じゃない。

『うち一人が、意識不明の重体…』

―――誰か、これは夢だと言ってくれ。

「ゆう、りん……」

交通事故を伝えるニュースのテロップに、見知った名前が出ていた。

「…黎翔!」

几鍔に名を呼ばれ、黎翔はハッとして振り返る。
すでに通話を終えていた彼は、厳しい顔つきで黎翔を見据える。

「――悪い、俺は戻る。撮影は他の奴に頼んでおく。」
「夕鈴…夕鈴は…?アレは、本当なのか?」
「残念だが現実だ。あいつの弟から連絡があった。今病院で手術中らしい。」

弟君から連絡…ああ、本当なんだ。
朝のあの夢が、現実になるのか?
僕は、彼女を、夕鈴を失うのか?
彼女がいなかったら、ぼくは…

「おい!…しっかりしろ!!」

几鍔に強く肩を揺さぶられた。
焦点が合っていなかった瞳に、彼の姿が映る。
現実が、見える。

「お前は、お前にしか出来ない事をしろ。あいつは大丈夫だ。そう簡単にくたばるタマじゃないだろ?」

黎翔にはReiとして、やらなくてはいけない事がある。
沢山のファンが自分を、自分達を待っている。

「…黎翔。」
「「先輩」」
「Rei…。」

彼女の傍に、今すぐ飛んでいきたいのに。
そうする事も出来ない、現実がある。

黎翔は自分の肩を押える几鍔の腕に、手を乗せて押し戻す。
現実を、受け入れるために。

「――分かった。」

たとえそれが、心から望んでいない事だとしても。


続く


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  • posted by  
  •  
  • 2013.09/03 06:34分 
  • [Edit]
  • [Res]

待ってました♪ 

初コメ失礼しますm(__)m
さきです。

前回「ゆ、ゆーーりーーんーーっ!」と叫んでいました…
夕鈴どうなっちゃうの…(>_<)…?
黎翔さんも苦しいでしょうね…

続き、気長に待てしてます(^_^)
  • posted by さき 
  • URL 
  • 2013.09/03 11:47分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

ますたぬ様

コメントありがとうございます。
いつもお待たせしてすみません。ストック溜まったら、また放出します。
咳は酷くなる一方なので、病院行ってきますm(__)m
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.09/03 22:13分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: 待ってました♪ 

さき様

こちらでは初めまして。
コメントありがとうございます。
まさかの展開に、慧ネンもドキドキです。
けれど、大丈夫!
慧ネンはハッピーエンドが好きなので、夕鈴も無事なはず。
早く黎翔さんを安心させてあげなくちゃ(^^♪
続き、頑張りますね!
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.09/03 22:35分 
  • [Edit]
  • [Res]

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よろしくお願いします。

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