兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪どんな貴方でも、私は貴方の傍にいる

Creuzシリーズです。

大好きな彼の事を、もっと知りたい彼女がした事は…?

♪どんな貴方でも、私は貴方の傍にいる


『…その件は迅速に対応しろと言った筈だ!』
『も、申し訳ありません…!』
厳しい表情をした『彼』が、数人の部下に声を荒げている。


「ねえ、ねえ~。ゆーりん。」


『これ以上長引くようなら責任者を降ろし、有能な者に対応に当たらせろ!…無能な者に割く時間などない!!』
『ははっ』
若い官吏達は、青褪めた顔でその場を離れていく。


「ねえ、…ゆ~りんってばぁ…」


その場に一人残された『彼』は、昏い瞳で彼らが去った回廊の奥を見ている。

その瞳に映っているのは、一体何なのか。

国の行く末か、自らが進む修羅の道か。


「も~、私今これ見てるんですから、ちょっと静かにして下さいよ。」

夕鈴が『彼』に見入っていると、先程から執拗に声を掛けてくる彼。

「……夕鈴ってば酷いよ…」


テレビの画面の中で薄く笑う『彼』と。

自分の横でしょげ返っている彼が同一人物なんて。

一体誰が思うだろうと夕鈴は溜息を吐く。


人気バンドグループ・Creuzのリーダー・Reiこと珀 黎翔
バンド活動の傍ら、俳優業もこなす彼は、夕鈴の恋人だ。

彼は夕鈴の前ではいつも穏やかで、ニコニコ笑っていてとても優しい。
だが彼には、夕鈴の前では決して見せないもう一つの顔がある。
まるで『光』と『闇』のような、反する二面性を彼は持っている。

そんな『彼』の演技を、夕鈴はきちんと見た事がなかった。

自分が見た事がない黎翔を、少しずつでも良いから知りたくなり、『彼』が出ている作品を借りてきたのだ。

ブラウン管の中で演技をしている『彼』は、確かに見た事もない表情をしている。食い入るように『彼』の演技を見ていたのだが、途中で帰宅した黎翔は、それが気に食わないらしい。

「夕鈴ってば酷いよ…。僕がここにいるのに、テレビばかり見るなんて…。」
僕達、数日振りに会うんだよ…?と、黎翔は今にも泣きそうだ。

この所、黎翔は新しいドラマの撮影も始まり、忙しい日々が続いていた。彼の言う通り、二人は久し振りに会う事が出来たのだ。

黎翔は帰ってきて画面に見入っている夕鈴を見るなり、少し眉を顰めた。ブラウン管に映るのは、俳優業を始めたばかりの自分。

夕鈴が見ていたのは、黎翔が乱れた内政を粛清し、見事祖国の王になった若き王子を演じた、俳優としての初仕事、主演のドラマだ。

熱心に見ている夕鈴の隣に座り、何とか彼女にこちらを見てもらおうと声を掛けるのだが、あしらわれるばかり。

彼女が見ているのが例え自分であっても、いや、自分であるからこそ悔しい。

今、自分はここにいるのに。

黎翔は思わず、夕鈴の頬を両手で包みこちらに顔を向けさせた。

「れっ…黎翔さんっ?!」

驚いたように声を上げる夕鈴を見ながら、黎翔は妖艶に微笑んだ。

「…他の男に魅入るなんて、許さないよ?」

「んなっ!?…どちらも貴方じゃないですかっ!」

夕鈴はあたふたしながら顔を真っ赤にさせる。

ブラウン管の中で演じている『Rei』も、今目の前にいる『黎翔』も、夕鈴にとっては同じ人間だ。

それなのに、黎翔にとっては違うようだ。

「…あれは私であって、僕じゃない。」

至近距離で夕鈴を見詰める黎翔の目が、悲しげに揺れる。

「『Rei』は周りの人間が勝手に作り上げた人物。…彼らが望む私の姿、作り上げられた虚像の『私』。…本当の『珀 黎翔』と言う人間は、今夕鈴の前にいる僕だよ?」


だから、ねえ夕鈴?


「お願いだから、僕を見て?」

夕鈴は自分の頬を包む黎翔の手に、そっと両手を添えた。

彼の揺れている紅い瞳を見ていると、なんだか捨てられた子犬のように見えてくる。

「…困った人ですね。」

クスリと笑って、夕鈴は見ていたDVDのスイッチを切った。部屋に静寂が訪れる。

「ブラウン管の中の『Rei』も、今目の前にいる貴方も、私にとってはどちらも黎翔さんです。」

夕鈴にとって、Reiも黎翔も同一人物だ。

彼には二面性があるが、確かに二人は同じ人物で、どちらが欠けていても『珀 黎翔』と言う人間は成り立たないと夕鈴は思う。

夕鈴が愛するのは、Reiであり、黎翔でもある。

「…どちらが、と言うわけではありません。私は『珀 黎翔』という、一人の人間を愛しているんです。」

だからそんな顔、しないで下さい。

夕鈴の手を掴み、黎翔は彼女を自分の胸に引き寄せる。

「…自分にヤキモチ焼くなんて、おかしいですよ?」

「うん…。」

「貴方の事をもっと知りたくなって、つい借りてきちゃったんです。…でも、貴方が傍にいるのに、ドラマに夢中になってしまった事については謝ります。ごめんなさい。」

「ううん、…夕鈴は全然悪くないよ。」

自分の事をもっと知りたくなって、なんて言われて、誰がこれ以上文句を言えるだろう。

「…これからは貴方といられる時には、貴方の事だけを見て、貴方の事だけを考えるようにしますね。」

ドラマの方は、貴方がいない時に見ます、と夕鈴は笑う。

「それはなんかズルイ…」

「え?」

「だってさ、夕鈴はいつでも僕と一緒にいれるのに、僕は仕事の時、夕鈴に会えなくていつも一人ぼっちなんだよ?」

む~と悔しそうに唸る子供染みた黎翔の表情に、ああ、やっぱりどんな彼でも好きだな、と夕鈴は思う。


Reiの時の少し冷めた表情も、子供のように駄々を捏ねる黎翔も。
様々な彼の表情(顔)を、これからも一番近くで見ていきたいと思う。

「じゃあ、黎翔さんはいつでもどんな時でも、私の事を見て、私の事を想って下さいね?」

夕鈴は自分の携帯電話を取り出すと、黎翔に向かって微笑んだ。

「…私が傍にいない時にも、これを見て私の事を考えられるように。写真を撮りましょう。」

「それは良い案だね。…それならいつでも一緒にいられる。」

夕鈴の提案に、黎翔は一も二もなく頷いた。


それから。

穏やかに笑う夕鈴の写真は、黎翔の携帯の待受画面に設定され。

黎翔が仕事で彼女の傍にいられない時の、彼の夕鈴補給の為に大いに役に立っているそうだ。


END
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よろしくお願いします。

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