兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪その光に手をのばし ♯5【慟哭】

ストックが無くなったので、更新はゆっくりになりますとか言っておきながら、早速アップしちゃっている慧ネンです。

嬉しい事に「待ってます。」と仰って下さる方々がおいでるので、書き上がったらすぐ放出します

※このお話の、ライブコンサートについては捏造です。行った事ないので、どんな様子か分かりません

日参しているSNSに入れなくて、落ち込んでます…。
サーバー障害とか。
直るのを心待ちにしております




♪その光に手をのばし ♯5【慟哭】


溢れる熱気
止まない歓声

今年初めてのCreuzのライブツアーを楽しみにしていたファン達で、広い会場は埋め尽くされている。
Reiをはじめ、メンバーがステージに姿を見せると、さらに観客達の興奮は高まった。

『お前は、お前にしか出来ない事をしろ。』

ステージの上から観客席を見渡しながら、黎翔は几鍔の言葉を思い出した。

分かっている。
このツアーを成功させるため、大勢のスタッフたちが動き回った事も。

分かっている。
今この会場にいるファン達が、どれほどライブを楽しみにしているかも。

分かっている。
自分はCreuzのリーダー。メンバーをまとめ、引っ張っていく責任がある。

―――そんな事、全部理解(わかって)いる。


眩しいほどのスポットライトが当たる。
ツアー最後のコンサートが、幕を開けた。

鳴り響くドラム、掻き鳴らされるギターの音色。
曲の前奏が流れ始め、Reiはマイクを握り締める。

こうやって、歌うのが夢だった。
歌を歌う事が、好きだった。

けれど、この世界に入り名が売れ始めて、ファン達が望んでいるのは『珀黎翔』ではなく、作り上げられた存在『Rei』だという事を知った。
いつしか歌う事が苦痛になり、自分が何のために、誰のために歌っているのか分からなくなった。

そんな時だった。
一人の少女に、出会ったのは――。

Reiにとって、自分の事を知らなかった彼女は、特別な存在だった。
人を疑う事を知らない、真っ直ぐで、明るくて、優しくて、とても純粋な少女。

『どうしてそこまでして、自分を偽ろうとするの…?』

そう言ってくれたのは、誰だった?

自分のために涙を流してくれたのは、誰だった?

『…歌う事が好きなら、もっと楽しげに歌って?…歌うのが苦痛なら、止めた方が良い。貴方の本質を出せないなら、それには何の意味もないもの。』

誰も気付く事が無かった虚しさや苦しみを、分かってくれたのは、少女――、夕鈴だった。

彼女を、もし失う事があったら、自分はもう誰のために歌を続けていくのか分からなくなる…。

ざわざわと、会場内が騒がしくなる。
曲は前奏を終え、もう歌い始めなければいけないのに。
―――声が、出ない。

歌おうと口を開いても、歌詞(言葉)が、出てこない。

歌えるはずが無い。
彼が歌い続ける意味――その存在が、失われるかもしれないのに。

「Rei~?」
「どうしたの――!?」

マイクを持ったまま微動だにしなくなったReiを見て、ファン達が声を上げる。

「おい、Rei。」
「どうしたんですか?」

曲が止まり、楽器から手を離したメンバー達が、小声で黎翔を促す。

きっと誰も、分かってくれないだろうと思う。
だが、この思いを、この恐怖を、誰かに理解してもらいたかった。

黎翔はギュウッとマイクを握り締め、震える唇を開く。

「――私の、一番大切な女性(ひと)が、」

怖いんだ。彼女を失う事が、こんなにも怖い。

「事故に遭って、病院に運ばれた。」

一度手にした光りは、失う事の出来ぬ存在になっていて。

「大丈夫かもしれない、大した事はないかもしれない。
…でも。」

もしその光を、失う事があったら。

「彼女がいないと、私は歌えない…!
――息も、出来ない…!!」

頬を流れる一筋の涙が、ライトに反射してキラキラ光る。
彼の慟哭が、マイクを通じて会場中に響いた。

「やだー」「Rei~、泣かないで――!」「Reiぃ――!!」

ファンの前で、初めて見せた彼の涙。
会場中がしばらく騒然とし、やがて静かになった。

シン…と静まった会場に、Reiが苦しげに瞼を伏せた、その時。

「……行ってあげて下さいっ!!」

細く、それでいて良く通る声が会場に響いた。

黎翔は、ハッと顔を上げる。
この静寂の中、勇気を出して思いを伝えた一人のファンの声は、真っ直ぐに黎翔に届いた。

「行ってあげて!Rei!!」
「彼女の傍にいてあげて下さい!」

一人の声を皮切りに、沢山のファンが黎翔を送り出そうとしてくれる。

「――Rei。」

ポンッと、Hiroに肩を叩かれた。振り返ると、彼だけではなくRyuとSuiも傍にいて、三人は無言のまま頷く。
行けと、行って来いと、彼らはそう言っているのだ。
この大事な舞台で、リーダーである自分が抜ける事。
それがどんなに大変な事か、黎翔は分かっているし、もちろん彼らも分かっているはずだ。
分かっていながら、黎翔を夕鈴の元へ行かせようとしている。

黎翔は唇を噛んだ。
こんなのは自分勝手な思いだ。
本当なら、許されない事。

なのにここにいる者達は、許してくれるのか――。

くるりと向きを変え、Reiは会場にいる全てのファン達を見渡す。
涙で濡れた紅い瞳を隠そうともせず、Reiは自分を送り出してくれる皆に頭を下げ、

「――ありがとう…!」

笑みを浮かべ、感謝の言葉を述べた。

肩に掛けていたギターを下ろすと浩大に渡し、黎翔はファン達の黄色い悲鳴を受けながら会場に背を向けた。

ステージを降り裏に下がる扉の前には、一人の男が立っていた。

「李順…。」

マネージャーである彼は、この場を離れる事を許してくれないのだろうか?
不安に思った黎翔に、李順が一枚の紙を手渡した。

「夕鈴さんが運ばれた病院です。会場の裏口にスタッフがいますので、隣のビルに移動し、屋上に行って下さい。ヘリを待機させてます。」

意外だった、仕事一筋のこの男は、反対すると思っていたのに。

「雪がちらついているので時間は掛かるかもしれませんが、車よりは早いでしょう。」

そう言った李順は黎翔の物言いたげな視線に、嫌そうに顔を逸らせた。

「…私だって、鬼じゃありません。彼女の事は、失ってはいけない存在だと思っています。これでも心配しているんですよ?」

外は寒いので、と言って、李順は黎翔にコートを手渡して、送り出した。


一方、Reiが去った会場はキャーキャーと黄色い悲鳴が飛び交っていた。

「――どうするよ?これ。」

そう言って笑うHiroに、RyuとSuiも苦笑いする。


――Reiの艶のある端正な顔に浮かんだ微笑みは、破壊力十分で。
ファン達の興奮は、なかなか収まりそうにない。

この日、Reiは初めて、ファン達の前で偽りのない笑みを見せた。



続く


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  • posted by  
  •  
  • 2013.09/04 05:32分 
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  • posted by  
  •  
  • 2013.09/04 08:16分 
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ファンの方たちが…(>_<) 

うう…良いファンの方たちで…泣けます(T_T)/~~~
黎翔さん、夕鈴のもとに早く~!

サーバー障害だったんですね。
何事かと思いました^_^;
もう閉じちゃったのかと(´・_・`)
  • posted by さき 
  • URL 
  • 2013.09/04 08:53分 
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Re: タイトルなし 

ますたぬ様

お優しいお言葉、ありがとうございます!
咳は相変らず止まってませんが、びょーいん行ってお薬もらったので、これ以上の悪化は防げると思います。ご心配かけて、申し訳ありませんでした<m(__)m>

黎翔さんにとって、夕鈴は光。彼女の安否が気になって、歌えませんでした<m(__)m>
李順さんはいつでも抜かりないですね。それでこそ、敏腕マネージャー。
慧ネンの書くお話ですので、アンハッピーで終わったりはしません。
大丈夫ですよ!
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.09/04 21:17分 
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Re: シクシク 

ボロ様

今までReiがファン達に見せていたのは、作った笑みでした。
本当に心の底から微笑んだのは、今回が初めて。
彼なりの、ファン達への感謝の印です。
蕾が満開の花になった…確かにそうなんですが、対象が黎翔さんだと何だか笑ってしまう。

SNS、復旧して良かったですよね!
もう日常生活の一部になっていて、なくてはならない場所となっています(^^♪
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.09/04 21:20分 
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Re: ファンの方たちが…(>_<) 

さき様

何万もいる沢山のファンの全てが良いファンかどうかは分かりませんが、Creuzのファンの方達は、比較的こんな感じの人が多いと思います。
何より、「Reiが好きだから、彼のために何をすれば良いか?」そう考えているのではないかと。
お蔭で黎翔さんは、夕鈴の元に行けます(^^♪

SNS、復旧して良かったです。
入国できないのが慧ネンだけなのかと思い、昨日は焦りました…。
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.09/04 21:31分 
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