兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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ハラハラ?波乱な慰安旅行 後編

慧ネンです、はい…。
いつもの事ですが、お久し振りでござます。

一体いつから更新していないんだと言う話ですよね(*_*;

前編から間が空く事、二週間近く。
お待たせ致しました。(待っている方いるの?)
後編をお届けします。

お遊びSSなので、広い心で読んで頂けたら嬉しいです。




ハラハラ?波乱な慰安旅行 後編


「ん…。いたたた……。」

少しの間だけ意識を失っていたらしい夕鈴は、身体を起こし頭を振った。
幸いにも頭は打っていないようでホッとする。
けれど、左腕に鋭い痛みを感じる。
近くに転がっていた懐中電灯を手繰り寄せ照らしてみると、服には血が付いていた。
怪我の酷さも気になるけれど正直見たくなくて(凄い怪我だったら嫌だ。)袖は捲れなかった。
足にもすり傷や切り傷があるようでヒリヒリするが、歩けない事はなく、夕鈴はじっとしていられなくて歩き始めた。

誰にも言わず出てきたので、帰りが遅かったら皆に心配を掛けてしまう。
心配どころか一課の面々は大騒ぎをしていたのだが、今の夕鈴はその事実を知りようもない。
懐中電灯と言う僅かな明かりで暗い森の中を進み始めた彼女は、旅館への帰り道を探しているうちに、いつの間にか奥深くへ入り込んでいた事に気付いていなかった。

その頃黎翔は、一匹の獰猛な獣と対峙していた。
黎翔は近くに転がっていた太めの木を竹刀代わりにして構えると、飛び掛かってきた獣に向かって振り下ろす。
ギャンっと声を上げた獣は、敵わないと見たのか一目散に去っていった。
剣道をはじめ、柔道、合気道など様々な武を嗜んでいる彼だが、さすがに本物の獣を相手にするのは初めてだった。木を投げ捨てると、額の汗を拭い息を吐く。

そんな彼に、ぴょんぴょんと一羽の小動物が駆け寄ってきた。

獰猛な狼の姿を見付けた時、黎翔は隠れてやり過ごすつもりだった。
出て行かざるを得なかったのは、その狼の獲物が、小さな一羽の兎だと気付いたからだ。

「大丈夫か?」

しゃがみ来んでそっと手を差し出すと、兎は警戒した様子もなく駆け寄ってきて、黎翔の手のひらに鼻を寄せ、クンクンと匂いを嗅いだ。
茶色い毛並みの、小さな瞳がくりくりとした可愛らしい兎。
その時になって彼は気付いた。
その兎が、数年前に一度だけ会社に姿を見せたあの兎だと。

「…今日はあの狼は一緒じゃないのか?」

抱き上げると嫌がらずに腕の中に納まる。
反抗しても最後は縋ってくる、可愛い部下のようだと黎翔は思う。
大切な彼女は、一体どこに行ったのだろうか。

「私の可愛い兎が、どこに行ったか知らないか?」

黎翔の問いに、兎は鼻をひくひくさせた。


生い茂る木々に月明かりが遮られ、森の中はどんどん暗くなった。
遠くで動物の遠吠えがしたり、近くの茂みががさがさと揺れるたび、夕鈴はびくりと震え歩みを止める。
暫くさまよった後、自分が森の奥深くに入り込んでしまったと気付いたが、四方を見渡しても同じような景色ばかり。彼女はすでに方向感覚を見失っていた。

怪我をしている腕は触れるとぬるりとしていて、まだ血が止まっていない事が分かる。
大木に凭れ掛かり、このままここで朝を待ち、助けが来るのを待った方が良いのかなと考え始める。
瞳を閉じると、浮かんで来るのは黎翔や一課の皆の姿。
皆心配してるだろうなと思いながら、案外課長は清々しているのではないかと凹む。

(ほっぺた、引っ叩いちゃったし…。)

黎翔は一緒にいると、必ず身体を求めてくる。
夕鈴としては、ただ何もせず、寄り添って過ごしたい時もあるのだ。

こういう事は、やはり男と女では違うのだろうか?

フウッと溜息を吐いた時、がさりと近くの茂みが大きく揺れて、夕鈴は反射的に懐中電灯を向けた。
けれど何も反応が無く、気を抜いたその時。

ウ~~
グルルル…

四方から、獣の声が聞こえてきた。
気が付くと、暗闇の中に沢山の二つの目が光っている。
血の匂いにひかれて、集まって来たらしい。
ガサッと音がして、その中の一匹が飛び掛かってきた。

「きゃああ!!!」

悲鳴を上げて蹲ると、傍を風が通り抜けた。

ギャン!
ガウガウ!

大木の根元に身を小さくして蹲る夕鈴の周囲で、獣同士の喧嘩が始まった。
直視しないように視線を伏せて、獣たちが去ってくれるのをじっと待つ。
やがて遠吠えが響き、周囲が静かになった。

恐る恐る顔を上げると、目の前に一匹の狼が立っていた。
ひたひたとゆっくり近付いてくる狼を見て、夕鈴はもう駄目だと思った。
意地悪だけど時々優しくて、大好きな課長の姿が浮かび、もう彼に会えない事が一番辛いと思う。
恐怖で声も出せない中、狼がすぐ近くまで歩み寄り、夕鈴はギュッと目を閉じる。

けれど、襲い掛かってくると思った狼に、頬を流れる涙をペロリと優しく舐められた。
驚いて顔を上げると、そこには思った以上に優しい瞳をした狼が立っている。
懐中電灯を向けると、眩しそうに目を細めた狼は、大好きな彼と同じ宝石のような紅い瞳をしていた。

「あなた、あの時の…?」

夕鈴は思い出した。
数年前、会社のエントランスで暴漢に襲われた時助けてくれた狼の存在を。

「今日は兎さんは一緒じゃないの?」

悲しそうに目を伏せた狼を見て、逸れてしまったのかなと思う。
それとも、自分達と同じように喧嘩でもした?


まるで乗れと言うように目の前で伏せをする狼。
少し躊躇った後、狼の背中に乗り、首にそっと背を回す。
重くないかなと思ったが、狼は気にした様子もなく立ち上がるとゆっくりと歩き始めた。

「私、大好きな人と喧嘩しちゃったの。」

ゆらゆらと揺られながら、夕鈴はポツポツと話し始めた。
動物が人間の言葉を理解出来るわけないと思いながら、数年前この狼と茶色い兎に会った時、彼らは人間の言葉をまるで理解していたようだったから。

「課長にとって、私ってどういう存在なんだろ…。」

返事はもちろん返ってこない。けれど、誰にも言えなかった気持ちを聞いてほしくて、止まらなかった。

「ただの性欲の捌け口なのかな?」

ずっと、彼と関係を持った時から感じていた。
でも、怖くて彼自身にも聞けなかった。

温かい毛並みに顔を埋めて、夕鈴は静かに泣いた。

心地良い揺れと疲れからうつらうつらしていると、狼が歩みを止め、グルグルと喉を鳴らした。
目を覚ますと、周囲はすでに薄明るくなっていた。
顔を上げると、遠くにこちらに向かって歩いてくる男性の姿。

「課長…?」

呟きは聞こえるはずが無いのに、彼は顔を上げこちらを見た。
驚いたように目を見張り、慌てて駆け寄ってくる。
夕鈴を降ろすためにまた伏せをしてくれた狼の背から降りると、夕鈴は足を縺らせながら走り出した。

小さな兎を腕に抱え、黎翔は森の中を歩き回っていた。
狼と逸れてしまったらしい兎を一羽(ひとり)そこに置いていくわけにもいかず、連れて行く事にした。夕鈴を失うかもしれないと言う恐怖を感じる中、黎翔にとって兎の温もりは心の支えになった。

「…喧嘩でもしたのか?」

円らな瞳はうるうるしていて、まるで泣きそうだ。

「私達も、喧嘩してしまった。」

喧嘩して(夕鈴が一方的に怒って)離れ離れになった自分達と、狼と兎を重ねてしまった。

「――大事なのに、愛しているのに。…いつも泣かせてしまうんだ。」

誰にも言えない気持ち(本心)を、ポツリと漏らす。

優しくしたいのに、つい苛めてしまう。
二人きりになると、どうしても抱きたくなってしまう。

「どうしたら良いんだろうな…。」

黎翔は、自嘲気味に笑った。

彼の話をじっと聞いていた兎は、その長い耳をピクリと振るわせて、鼻先を黎翔の胸に押し付けた。
そして、『見て。』と言うように、視線を前方に向ける。

夜明けが近いのか、周囲はすでに薄明るくなっている。
遠くに、大きな動物と、その背中に乗る、愛しい女性の姿が確認出来た。
突然走り出した黎翔に驚いて、兎は慌てて飛び降りたが、彼にはもう夕鈴しか見えておらず、兎の姿は視界に入っていなかった。

よろよろとこちらに向かってくる夕鈴に駆け寄り、思い切り抱き締める。

「――夕鈴っ!!」
「黎翔…!」

ひとしきり抱き締めあった後、黎翔は夕鈴の身体を確認し、怪我の具合を見る。
頬やあちこちに擦り傷と切り傷、腕に木が刺さったのか裂傷があるが、命に関わるような大きな怪我をしていない事にホッとする。

「ごめんなさい、黎翔…。」

抱き締める彼の腕が震えている事に気付いて、どれほど心配を掛けたのだろうと夕鈴は素直に謝る。
頬を叩いてしまった事、誰にも言わず勝手に旅館を抜け出した事。

「――謝るな、あれは私が悪かった。…本当に、無事で良かった。」

旅館で待機するように伝えた部下達も、皆心配している事だろう。

抱き合う二人の傍で、こちらも喜び合ってじゃれていた二匹に、黎翔と夕鈴は礼を言う。
狼と兎が居なかったら、もしかしたら二人は二度と会えなかったかもしれない。

暫くして、二人を探しに森に入った警察官に、黎翔と夕鈴は保護された。
チラリと後ろに視線を向けると、遠くに狼と兎の姿が。
ジッとこちらを見ている狼の背中の上で、兎が楽しそうに飛び跳ねていた。

心の中で「ありがとう」と礼を言い、黎翔は夕鈴の身体を支えて歩く。
周囲に人がいるのに、夕鈴は珍しく黎翔に縋り、そっと寄りかかる。

――彼らのお陰で、二人は少しだけ素直になれそうな気がした。

旅館のロビーで眠れない夜を過ごした一課の面々も、二人が発見されたと連絡を受け、ホッと胸を撫で下ろした。
今年の慰安旅行は、二人を初め、社員達にとって忘れられないものになったのは言うまでもない。


END

この後、おおかみとうさぎサイドのお話も書きたい…。(需要あるのか?)


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  • posted by  
  •  
  • 2013.10/24 23:04分 
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良かったですo(T□T)oハラハラシタ

勿論です狼と兎サイドも読みたいです♪

是非お願いします♪(*´ω`*)
  • posted by 虹ママ 
  • URL 
  • 2013.10/25 22:44分 
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  • posted by  
  •  
  • 2013.10/26 08:32分 
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NoTitle 

お久しぶりですね~^^
ドキドキしながら読んでたんですけど、すっごく穏やかな気持ちになって来るお話でした(*^^*)

もちろんおおかみとうさぎサイドのお話も読みたいです!
ぜひ、お願いします(^O^)

あちらではいつもお世話になっています~(ここで言うな)
いつもすれ違ってばかりで・・・・(´;ω;`)泣
最近はゆっくり参加しております(*´∀`*)
また、お話できたら嬉しいですO(≧▽≦)O



  • posted by ぷーちゃん 
  • URL 
  • 2013.10/26 22:25分 
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Re: NoTitle 

ますたぬ様

清き一票をありがとうございます!
そうですよね、このシリーズは課長の態度が誤解を生む原因。
夕鈴も大変です(*_*;

台風は大した事なかったです。
ますたぬ様もし○く?
意外と近くにいらっしゃったのですね♪
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.10/28 18:11分 
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Re: タイトルなし 

虹ママ様

何とか無事に再会出来ました。
これで少しでも二人の気持ちが近付けたら良いなと言う感じ。
おおかみとうさぎサイド、結構人気ですね(^^♪
書けたら頑張ります。
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.10/28 18:12分 
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Re: よかったですねー☆ 

風花様

不器用な人間二人は、仲が良い動物たちを見習って、もう少し進展したら良いと思います。
夕鈴も大きな怪我をしてなかったし、課長はこういう時だけ(夕鈴が見ていない時)カッコいいところを見せるダメ男ですが。
無事に再会出来ました(^^♪
おおかみとうさぎサイド、が、頑張ります…(汗)
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.10/28 18:16分 
  • [Edit]
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Re: NoTitle 

ぷーちゃん様

お久し振りです(^^♪
あちらではたまにお見かけしても時間が無くて素通りですみません(*_*;
まあお互い、生存確認にはなりますけどね(^^♪

ああ、また清き一票が…。
おおかみとうさぎ、何気に大人気ですね。
ご期待に応えられるよう頑張ります。
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.10/28 18:18分 
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