兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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君の傍でなら、飲まれても良いかな?

夕鈴は臨時花嫁です。





君の傍でなら、飲まれても良いかな?


「大丈夫?ゆーりん…」

寝台でグッタリしている夕鈴に、黎翔は心配げに声を掛ける。

「うう…頭…痛いです…」

苦しげに呻く夕鈴の顔は真っ青だ。

「本当にごめんね…。夕鈴が口にする物に、僕がもっと気を付けてあげなければいけなかったのに…」

辛そうな夕鈴の表情を見て、黎翔は顔を曇らせた。



友好国の国王夫婦を迎えての食事会に黎翔の妃として出席した夕鈴だったが、王妃に進められるまま酒を口にしてしまった。

その国で作られた地酒で、王族も一般市民も簡単に手に入り、皆が嗜む物らしい。自国では子供でも飲めると王妃に言われ、それほど度数が高くないなら自分が飲んでも大丈夫かと夕鈴は思って口にしたのだが。

夕鈴は知らなかったのだ。その国の人間はほとんどの者が酒豪と言う事を。

夕鈴が口にした酒はかなり度数が高かった。

たった数滴口にしただけで、夕鈴は目を回し倒れてしまった。


この国の国王夫婦は黎翔とは親子ほど歳が離れているが個人的に仲が良く、彼らが夕鈴に害になる事はしないと黎翔は思っていた。

王妃もとてもよく出来た人物で、夕鈴と二人で仲良さそうに話しているのをみても何の心配もしていなかった。だから王と最近の状況などを報告しあっていたのだ。

王妃も自国では子供でも飲めるこの酒が、他国の人間にとってはきついものだとは思ってもおらず、悪気など少しもなかったのだ。


「二人もとても心配していたよ。…悪かったと伝えてくれと言っていた。」

特に酒を飲ませてしまった王妃は夕鈴の容態を心配していて、何かあればすぐに教えて欲しいと黎翔に言ってきた。それはまるで娘を心配する母親そのもの…。

「そうですか…。お二人は今どちらに?」

「客間にて休んでもらっているよ。もう夜も遅いからね。」

「ごめんなさい、陛下。…バイトとはいえ、貴方の妃としてきちんと国王夫婦を迎えなきゃいけなかったのに、こんな失態…」

ジワリと、夕鈴の目尻に涙が浮かぶ。

普段は気が強く余り涙を見せない夕鈴。黎翔は焦ったように彼女の涙を拭った。

「大丈夫だよ、夕鈴。王も王妃も、君の事を素晴らしい女性(ひと)だと褒めていた。僕の妃として、夕鈴はちゃんと隣に立っていてくれているよ。」

これは本当の事。


夕鈴。


いつか、いつの日にか、バイトではなく、偽者ではなく。僕の隣に君が立ってくれることを願うよ。

今はまだ、それを望む事は出来ないけれど。


黎翔の優しい表情を見て安心したのか、夕鈴は一度その瞳を閉じ、再び目を開けた。


「そういえば陛下は…お酒強いですねよ?」

「そうだね。飲める方かな…。宴に出ると飲まないわけにはいかないし、他の国の王族と杯を交わす事も仕事だからね。」

夕鈴の額に水を絞った布を乗せながら、黎翔は答える。

「…そうですよね。注がれた杯を飲まないわけにはいかないですしね…」


夕鈴には言わないが、酒に酔って自分を見失うわけにはいかない。隙を見せれば、相手に漬け込まれる。血生臭い話だが、命の危機にも関わる。


「僕の場合、色々な酒を飲むのが好きだから良いけど。要は『飲まれなきゃ』良いんだしね?」

「お酒は『飲む物』であって、『飲まれる物』ではない?ですか?」

「そうだね。…夕鈴の傍でなら、飲まれても良いよ?」

「な、何言ってるんですかっ」

「あはは、冗談だよ」

夕鈴を見下ろす黎翔はニコニコ笑っているけれど。


この人には沢山の敵がいる。他国だけではなく、この白陽国にも。誰にも隙を見せられない、弱みを見せられない孤独な王。


陛下。


いつか、いつの日にか、貴方が背中を預けれる、貴方を支えてあげられるお后様が。貴方の隣に立ってくれる事を祈ってます。

私では、そこに立つ事が出来ないけれど。


「陛下が…王様や王妃様と楽しそうに話したり、杯を交わしたりしているのを見て少し安心しました。…この城内では、まだ陛下の敵がいないとは言えないですし…。陛下の心が安らぐ場所があって良かったと……て、私何言ってんでしょうね…」

酒に酔っているからか饒舌な夕鈴は、普段から思っていた事を口に出してしまったようだ。

顔が赤いのは、酔っているから?それとも…


「さ、もう寝よう?…念のために待医に診てもらったけど、一日寝たら大丈夫だろうと言ってたから。ゆっくり休んで、夕鈴。」

「はい…」

夕鈴の瞼が、だんだんと下がっていく。


冷酷非情と恐れられる彼が、ゆっくりと夕鈴の髪を梳く。

とてもとても優しげに、愛しげに…。


心地良さに瞳を閉じた夕鈴は、黎翔の表情を見る事はなかった。



END
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Comment

No title 

何度読んでもいいです~♡

早くお互いに思いを・・・

陛下の敵がいなくなり庶民の夕鈴を隣におくことが出来たらいいな

二度目に来たらもうUPされていて

びっくりでした!!

「はやーい」と叫んでしまい、娘に

「慧ネンさんのブログ?」と速攻で突っ込まれました(笑)
  • posted by ぷーちゃん 
  • URL 
  • 2013.01/11 23:46分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: No title 

二度目の訪問、ありがとうございます♪
ぷーちゃんさんこそ、「はや~い」ですよ!
いつも読んで頂き、とても嬉しいです。

これからしばらくは、小説の移行が続きそうです。
これがまた大変で…。
根気よくやらないと…。

ぷーちゃんさんのコメントを力に頑張りますv-353
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.01/12 00:56分 
  • [Edit]
  • [Res]

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