兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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可愛い部下の、好敵手(ライバル) 中編

中編です。

前後編で終わらせたかったのに、終わらなかった…。

『楽しめるので、終わらなくて良いです。』と仰る読者様が…。
ぶるぶる(*_*;

後編が非常に長くなってしまいそうな、嫌な予感。

今夜はあまり夜更かし出来ないので、投下します!

※相変らず、拍手コメント返信が遅れてます。ごめんなさい。もうしばらくお待ち下さい…(*_*;





可愛い部下の、好敵手(ライバル) 中編


『職場での対人関係くらい、自分で解決してみせる!!』

そう意気込んだものの、十一月の初めに一課にやって来た社員、柳方淵の夕鈴に対する態度は十一月半ばになっても相変らずだった。

元々夕鈴は、誰にでも優しいため人受けが良く、大抵の人間と仲良くなれる。
ただ、白陽コーポレーションきっての有名課長・珀黎翔と親しいため、彼に好意を持つ一部の社員からの批判も多いのも事実だ。

課長を敬愛しているらしい方淵からも、事あるたびに睨まれ、目の敵にされていた。

そんなある日、第一営業課は新しいプロジェクトを手掛ける事になった。
メンバーは、珀課長が選出した男女10人。
そのメンバーに、夕鈴も選ばれた。

「良かったじゃない。課長があんたの事を期待している証拠でしょ?」

方淵の言葉に傷付き、本当に課長は仕事の能力を求めていないのだろうかと悩んだ夕鈴は、大親友で同僚でもある明玉につい愚痴を零してしまった。
それから彼女は、良く相談に乗ってくれたのだ。

「うん、まあ。そうなんだけど…。」

そのメンバーに、当然のように方淵も含まれている。
上手くやっていけるだろうかと不安になった。

「彼にも、認めてもらえるチャンスじゃない。」

そう励ましてくれる明玉に、夕鈴もそれもそうかと、良い方向に考える事にした。

それから忙しい日々が始まった。
通常業務に加え、メンバー達は新しいプロジェクトの仕事もこなす。
残業が続き、自宅にノートパソコンを持ち帰り、仕事をする日々が続く。
夕鈴も例に洩れず、他のメンバー達と同じようにアパートに帰ってからも仕事をして、企画案を練った。

もちろんメンバーに選ばれなかった一課社員達も全力でフォローするのだが、それでも疲労や睡眠不足で顔色が悪い者も出てきた。
けれどこの仕事が終われば、年末前までは暇な時期になるので、それぞれが自分なりに頑張っていた。

注意しなければ、足元がふらつく。
気を抜いたら、廊下で寝てしまいそう。
普段より濃い目のメイクで隠しているが、夕鈴の目の下にはくっきり隈が出来ていた。

「ちょっと、夕鈴、大丈夫~?」

今にも倒れそうで、明玉や他の同僚も心配して声を掛けてくる。それに苦笑いして「大丈夫」と返す。
他のメンバーも、条件は一緒。
女だからと特別扱いされたくないし、女だからついてこれないなんて思われたくない。


数日後、課長のデスクの前で、夕鈴はドキドキしながら彼が分厚い書類を捲るのを見詰めていた。

睡魔と闘いながら、自宅でも仕事をして企画案を練り、結構良いモノが出来たと自負している。
まだ入社二年目の新米。とてもベテラン社員のようにはいかないだろうが、今回は課長も良く出来ていると褒めてくれるはず。

だが…。

「――駄目だな。」

課長の冷たい声が、そう告げた。

「…え?」
「いや、お前にしては良く出来ている方だ。だが、決定的なものがな…。」

眉間に皺を寄せて、課長が言う。

「予算案とか、過去の案件の資料を見たか?」
「あ、はい…。去年の○○の案件を参考にしましたけど…。」
「それだけじゃ足りない。過去10年分のデータを確認した奴もいるぞ?」

パラパラと他のメンバーの書類を捲っていた彼は、ツイッと分厚い紙の束を夕鈴に向かって差し出した。

「方淵の企画案だ。見てみると良い。」

方淵に負けたくなくて、課長に認めてもらいたくて、ここまで頑張ったのに。

よりにもよって、それを、見せ、るの……?

ぐらりと世界が歪む。
課長が何か叫んで、焦ったように手を伸ばしてきたが、そこで夕鈴の意識はブラックアウトした。


「睡眠不足と貧血…、軽い栄養失調ね。」

こちらも社内で有名な美人女医・珀瑠霞が、その美しい顔を顰めた。

「…ここの所、あまり寝てないんじゃないのかしら?部下の健康管理も、上司の仕事の一つよ。」
「分かっている。」
「その割には、彼女が無理していた事、気付いてなかったみたいね。職務怠慢じゃなくて?」

グッと言葉に詰まる。

新しいプロジェクトの件で黎翔自身も忙しくなり、彼女と一緒に食事をしたのは、あのフレンチレストランに行った日が最後。
それから、もうすぐ一月がたつ。

ベッドで寝ている夕鈴の顔は確かにやつれていて、目の下の隈も良く見たら酷い。
化粧で隠していたようで、忙しさにかまけて擦れ違ってばかりだったせいで気付けなかった。

「少し熱があるから、今日はこのままここで休ませるわ。熱が上がるようなら、帰りに病院に連れて行くけど…。」
「――私が行く。」
「はいはい。」

夕鈴の事を他の人間に任せたくない。
黎翔の子供のような独占欲に、瑠霞は呆れたように溜息を吐いた。

少し苦しそうに寝息を立てている夕鈴の髪が頬に掛かっているのを見て、黎翔は手を伸ばし、そっと払ってやった。その時、コンコンと遠慮がちなノックの音が響く。

「はい?どうぞ。」

瑠霞が声を掛けると、からりと扉が開く。
顔を見せたのは、明玉だ。

「夕鈴、どうですか?」

今は業務時間中だが、心配でちょこっと覗きに来たらしい。
黎翔は特に咎める事はしない。

「大丈夫よ。休めば良くなるわ。」

瑠霞の言葉に、明玉はホッと息を漏らし、安堵の表情を見せた。
そして黎翔の方を向き直ると、硬い表情で声を発した。

「課長、ちょっとお話、良いですか?」


その日、夕鈴の熱は上がる事はなかった。けれど意識の無い彼女を一人で自宅に帰すわけにはいかず、さらに黎翔が自宅マンションに連れ帰るわけにもいかず、結局明玉の家で見てもらう事になった。

課長自らが車で明玉の家まで送った上、車から家の中まで大事そうに抱き上げて夕鈴を運ぶ彼を見て、どうしてこの二人は未だくっつかないんだろ?と明玉は不思議に思った。

自宅マンションに帰りながら、黎翔は部下の明玉の言葉を思い出す。

『夕鈴は貴方に、仕事の能力は求められていないと誤解しているんです。』

何故そんな事を…と言うと、柳方淵が関係していると彼女は言う。

『方淵さんも、別に夕鈴を陥れようとか、そういう風に考えているわけではないと思うんです。けれど彼の言葉で、夕鈴はすごくショックを受けていて…。今回のプロジェクトで、課長に認められるようになりたいって意気込んでました。』

それで寝る間も惜しんで、懸命に企画案を仕上げた。
方淵にはとても及ばないが、今まで以上の出来だったのは間違いない。

「追い詰めたのは私か…。」

黎翔は自嘲する。

決して、劣っていると言いたかったわけではない。
他の社員の案も参考にして、もっと良いものを仕上げて欲しかった。
ただそれだけ。

けれど、よりにもよって方淵の企画案を差し出したせいで、夕鈴の心の糸はプツリと切れてしまったのだろう。

入社当時からずっと見つめてきた可愛い部下が、少しずつ成長していくのをとても楽しみにしているのに。


「上手くいかないものだな…。」

悲しげな呟きは、夜の闇へと消えた。


続く


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