兎と狼のラビリンス

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上司と部下の、変化する関係 前編

慧ネンです。
珍しい時間に更新です。

前回終わらなかった、『可愛い部下の、好敵手(ライバル)』の続きになります。

ただの上司と部下だった二人。
その関係は、今後どのように変わっていくのでしょう…?

あまり難しく考えずに、軽く読んで下さる方だけどうぞ。

(今度こそ前後編で終わらせたい…)




上司と部下の、変化する関係 前編


「え~それでは、只今より白陽コーポレーション第一営業課、忘年会及び歓迎会を行おうと思います。」

全員が席に着き、各自に飲み物が配られると、幹事役の男性社員が立ち上がり声を掛ける。お決まりの課長の言葉を賜った後、それぞれがグラスを手に持つ。

「今年も残り僅か、皆さん本当にお疲れ様でした!――乾杯!!」
「「「かんぱ~いっっ!!!」」」

グラスをぶつけ合う音が響き、賑やかな忘年会が始まった。

主役は一課課長と、柳方淵。
二人の周りには、ビールを注ぎに来る社員で溢れ返っていた。
悪い男ではないが人付き合いが苦手な方淵は、眉間に皺を寄せながらも、同僚達の酌を受けている。

次々と注がれるビールを顔色一つ変える事なく飲み続けながら、黎翔の視線が向くのは、煌びやかな女性社員達が集まる方向。明玉の隣に、手を付けられずに置かれている一組の皿とグラス。

残業がある為遅れて参加する予定の、汀夕鈴の席だ。

安いのに美味しくてボリューム満点の、人気のある居酒屋自慢の料理が、所狭しとテーブルの上に置かれている。一課の面々はよく飲みよく食べるので、すでに綺麗に片付いている大皿もある。

あまり飲めないくせに、つまみのような料理が好きな部下。
枝豆や焼き鳥・唐揚げ。焼きビーフンやカニクリームコロッケ。

(汀がいたら喜んで食いそうだな…。)

夕鈴の笑顔を思い出し、黎翔の口元に笑みが浮かぶ。

明らかに食べるより飲む量が多い彼は、自分が無意識に空いた皿に料理を乗せていっている事に気付いていなかった。

「課長!今年もお疲れ様でした!」

社員達ががニコニコしながら黎翔のグラスに並々とビールを注いだ。
顔色も変えずにすぐ空にする彼を見てつまらなくなったのか、今度は冷酒を注ぐ者も現れた。

冷静沈着・容姿端麗。仕事も出来て、女にモテル。
何事にも完璧な課長の、違う一面も彼らは見てみたかった。
いつも以上に無口な課長。
無表情とは言わないが、今夜はあまり笑う事もない。

彼の前のテーブルに置かれた、料理が細々と乗せられている皿を見て明玉は溜息を吐いた。

「課長、そのお皿、どうするんですか?」

乗っている料理は、明らかに親友の好きな物ばかり。
そこで初めて、黎翔は無意識に集めてしまった彼女が好きな料理に気付いた。

「…ああ、食いたかったら食って良いぞ。」

何をやっているんだと思い、ちょっと焦る。
何でもない風を装い皿を動かしながら、黎翔はなかなか来ない部下が気に掛かった。
時計を見れば20時を回っている。

まだ一人で残業をしているのだろうか?
そんなに仕事が残っていたなら、自分も一緒に残り手を貸してやるべきだった。終わってから、彼女と一緒に参加する事だって出来たのに。

「汀から何か連絡は来てないか?」

夕鈴と明玉は幼い頃からの大親友。
残業を終え向かっているとか、何か連絡が入っているかもしれない。

渡された皿の料理は、すでに冷め切っている。
何も知らない課長が少し哀れになって、明玉はつい洩らしてしまった。

「…夕鈴は来ませんよ。」
「――何?」
「あの子、最初から忘年会に参加する気なんてなかったんです。課長、気付いてないでしょ?あの子の気持ち。」

すでに無礼講で各々好きな場所に移動し、好きなように飲んでいるので周囲は騒がしい。
小声で話す黎翔と明玉の会話に、無粋に聞き耳立てる者はいない。
明玉はチラリと離れた席で数人の社員と話している方淵を見詰めた。

「あのプロジェクトで、課長が方淵さんの企画案を参考にしろと言った事、夕鈴はすごくショックを受けていました。自分は、認められなかったんだって。」
「それは…!」
「分かってますよ。課長にそんな気なんてない。夕鈴だって、自分が未熟だって分かってる。――だけど。」

黎翔も夕鈴も、決定的に足りないものがある。
それが、二人の気持ちに誤解を生じている。

女だからと、特別扱いしているわけではない。
仕事の能力を、認めていないわけではない。
彼女が頑張っている事を、黎翔は知っている。
でも。

「課長、それをあの子に言いました?」

言葉にしないと伝わらない事があると言う事に、二人は気付いていない。
二人に足りないもの。それは会話だ。

立ち上がった黎翔は、コートを羽織り鞄を掴む。
輪になって笑い合っている幹事に、「悪い、先に抜けさせてもらう。」と万札を数枚手渡した。
驚いたように目をぱちくりしていた彼らだったが、すぐに納得したように頷いた。
今夜もいつものように楽しいけれど、少しだけ感じる違和感。

それは彼の隣に、彼女がいない事。

「…相変らず、鈍いよねえ。」
「汀もだけど、課長も相当なもんだ。」
「明玉ちゃん、あんたも策士ねえ。…夕鈴ちゃんが来ない事、知っていて教えなかったんでしょ。」
「言わないで欲しいって、あの子に頼まれていたので。でも、このままじゃ何も進展しないから。」
「――全く、世話の焼ける二人ね。」
「けど、そこが良いんじゃない。」
「「「言えてる!!」」」

慌てて座敷を出ていく課長の背中を見ながら、楽しそうに会話する。
席を立った方淵が、その彼を追って出ていく。

「彼もいつか分かるよ、きっと。」

二人が、一課にいなくてはならない存在だと言う事に。

「課長!待って下さい!!」

熱がこもる座敷内とは違い、通路は肌寒い。
呼び止める声に、黎翔は足を止め後ろを振り返った。
そこには、眉間に深い皺を寄せた方淵が立っている。

「…私には納得いきません。何故、彼女のような者のために、貴方がそこまで必死になるのですか?恐れながら、彼女の存在が一課に必要とは到底思えません。」

営業一課は白陽コーポレーション内でも一番大事な部署だ。
それなのに小さなミスを連発し、忙しい課長に迷惑ばかり掛けている社員。
入社したばかりならともかく、もう二年目を迎えているのにこの有様。
社に大きな損害が出る前に、彼女は切った方が良いのではないか。

「――方淵。」

黎翔は鞄から書類を取り出し、方淵に渡した。
何だろうと訝しむ彼を「読んでみろ。」と促す。
目を通していた彼の表情が、徐々に驚きに変わっていく。

「これは…。」

彼に見せたのは、例のプロジェクトの夕鈴の企画案だった。

確かに、方淵のものに比べたらまだまだだ。
全体的に幼稚な所もあるし、すぐに採用と言う事は出来ない。
けれど、もっと深い知識を得て、様々な可能性を見出す事が出来れば、もっと良い企画案を作れるのではないかと言う、そんな、将来が楽しみな彼女の企画案。

全く使い物にならないと、すぐに破棄する事など出来ないような大切なもの。
未熟ながら、それをカバーしようと体調を崩すまでやり遂げようとした彼女の頑張りが現れている。

方淵が一番驚いたのは、彼女が立てた予算だった。
自分が提示した金額より、はるかに低い。
この金額で、この企画を押そうとしていたのか…。

なるべく低予算で良いものを。
――それが夕鈴の持論で、それは入社当時から変わらない。

「…方淵。彼女に対しライバル意識を燃やすのは良い事だし、競い合うのも結構だ。だが、彼女を苛めたり、馬鹿にするのは許さない。」

同僚同士で競って、切磋琢磨して。
互いの能力を伸ばしていくのは良い事だと理解している。
けれど彼女が苦しむのなら、許す事など出来ない。

彼女の微笑みも、いじけたような表情も、そして泣き顔も。
自分以外の人間に見せたくない。
彼女の様々な表情を引き出すのも、見る事が出来るのも。
それは自分だけでありたい。

「――彼女を苛めて良いのは、私だけだ。」


もうそれが、上司と部下の関係から、大きく掛け離れていたとしても。


続く


もうちょっと良いタイトルが無いかなあと思案中…。
センス無し(*_*;


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よろしくお願いします。

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