兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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上司と部下の、変化する関係 後編

大きな変化はなくても、少しずつ変わっていく二人。

果たして、進展はあるのか、ないのか?

後編をお届けします。

(今回のお話は妙に指が進んだなあ…。)




上司と部下の、変化する関係 後編


「ビックリした…。」

クッションの上に座り込み、夕鈴は真っ赤になった頬を抑える。

部屋の前の廊下に置き忘れていたコンビニ袋を回収した後、彼にシャンプー容器の説明をしていなかった事に気付き、特に何も思わずに扉を開けた。
風呂に入るために脱衣所にいるのだから、当然彼が裸になっていようが何の問題もない。

鏡に映った、課長の逞しい胸板。
初めて見る鍛え上げられた彼の身体に、思わず見惚れてしまった。

ようやく夕鈴は、自分がしている事に気付いた。
職場の上司とは言え、彼は男性。
一人暮らしの自宅に、不用心に彼を連れ込んでしまった。

彼の戸惑ったような表情の訳が、ようやく分かる。

(私って、ホント考え無し。)

もし近所の人にばれたら、変な噂になるかもしれない。
会社に知られたら、彼の立場が悪くなるかもしれない。

「どうしよう…。」

彼の迷惑も考えず、思い立ったまま行動した結果がこれだ。

「…汀。」

悩んでいた夕鈴は急に掛けられた言葉に飛び上がりそうになるくらい驚いた。
振り向くと、いつの間に出てきたのか、肩にタオルを掛けた黎翔が立っている。

「お前も早く入って温まって来い。」

バスタオルは用意出来ても、ここには男性用の服などない。
黎翔は当然スーツのワイシャツ姿のまま。
見慣れているはずなのに、二人切りの部屋で見るのは新鮮で、夕鈴はまた真っ赤になってしまう。
慌てて入浴の準備をし、そそくさと脱衣所に逃げた。

このまま帰るのもどうかと思い、黎翔は畳の上に胡坐をかいて座る。
部屋の中は相変らず片付いていて、女性にしては色気のない部屋だ。
目の前のこたつの上には分厚い辞書、様々な部類の本が積み上げられ、びっしりと書き込まれた紙が置かれている。
仕事の能力を上げるため、彼女が帰宅後もどれだけ頑張っているかが分かる。
そんな彼女の上司でいられる事が、黎翔の誇りだった。


狭いお風呂場は、いつもと何の変わりもないのに。

このシャンプーを、彼も使ったんだ。

とか、

課長も湯船に浸かったのかな?

とか。

そう思うと、胸がドキドキしてくる。

別に付き合っているわけでもないのに、恋人でもないのに。
こんなに胸が高鳴るのは、やっぱり彼の事が好きだからかなと思う。

あの逞しい胸板に、抱き寄せられて。
力いっぱい、抱き締められたら。

シャワーを浴びながら、つい想像してしまって。
身体の奥の深い場所が熱くなるのを感じ、「んっ…」と短い声を漏らす。

(私、こんなにエッチだったんだ…。)

彼に内緒で勝手に想像してしまった事に、夕鈴はすごく罪悪感を感じた。
だからお風呂から上がってもまともに彼の顔を見る事が出来ず、つい視線を逸らせてばかりいた。

風呂上がりの夕鈴は本人が自覚していないだけでかなり色っぽくて、黎翔の方も目のやり場に困っていた。本当は彼女が出てきたらすぐにお暇しようと思ってたのだが、一度窓の外を見た黎翔は自分の判断が遅かった事を悔やんだ。

外は吹雪になっていた。少し早い初雪は短時間で降り積もり、道路も真っ白になっている。
大通りまで歩けばタクシーを拾えるかもしれないが、そこに行くまでに雪だるまになる事は明白だ。

「…あの、泊まって行って下さい。」

俯き加減でそう言う夕鈴を見ながら、それはマズイだろうと思いながら、言葉に甘えるしかないかと諦める。
何か食べますか?と聞かれて首を横に振ると、夕鈴はキッチンで何やら作って盆にカップを二つ乗せて戻って来た。

部屋に広がる、ハーブの香り。

「…今度からコーヒーも常備しておきます。」

夕鈴は滅多にコーヒーを飲まないので、自宅にはストックが無い。
いつもブラックコーヒーを飲んでいる黎翔の口に合わないかと思ったが、ハーブティーや紅茶しか置いていないので仕方が無かった。

おずおずと差し出されたそれを、一口口に含む。
身体の芯から温まっていくような、優しい味とほのかな香り。

「…いや、これも悪くない。」

初めて飲むが、彼女が煎れてくれたものなら悪くないと思えた。


広くない部屋に、お客様用の布団を押し入れから引っ張り出して、自分の布団の真横に敷く。
女友達なら多少くっついても寝れるが、相手は密かに想っている上司。
やっぱりドキドキして、夕鈴は眠れるかなと思う。

けれど電気を消して瞳を閉じ、彼と小声で会話していると、少しずつ睡魔がやって来た。
彼の低い声はとても不思議だ。
まるで子守歌のように、安らかな眠りへと導いてくれる。

「汀?…寝たのか?」

黎翔の問い掛けに、夕鈴からの返答はない。
静かな部屋に、すうすうと安らかな寝息が聞こえる。

そっと彼女の布団の方ににじり寄り、静かに身体を起こす。
闇に慣れた目に映るのは、子供のようにあどけない寝顔。

「…安心しきった顔しやがって。」

思わず呟く。

信頼してくれているのを素直に喜ぶべきか、彼女の鈍さに呆れるべきか。
それともやはり、男として認識されていないのだろうか。

後者だったら、かなり凹むが。

「私の気持ちを全然分かっていない、お前が悪いんだからな。」

夕鈴の顔の両側に手を付き、じっと寝顔を見詰めた後。
薄く開かれた唇に、黎翔は彼女にも秘密の口付けを落とした。

その後、すぐ隣から聞こえてくる愛しい女性の寝息に、理性を総動員して彼は一夜を過ごした。

翌朝、まだアパートの住人達が起き出す前、少し早い時間に黎翔は夕鈴の部屋を後にした。
夢現の状態で唇に感じた僅かな熱を不思議に思い、首を傾げながら夕鈴は黎翔の後姿を見送る。

何だかすごく眠そうな彼が、結局一睡もしていない事に、鈍い彼女は気付く事はなかった。


『…で、課長に何かされた?』

外は雪が積もっていて出ていけないので、夕鈴はせっかくの休みを掃除に費やす事にした。
そんな土曜日の午後に、掛かってきた電話。

顔は見えないが、携帯の向こうで親友が笑っているのが見えるようだ。

「何かって、何よ!?何もされてないわよっ!!」
『え~?だって、課長泊まっていったんでしょ?』
「確かに、泊まって、いったけど…だけどっ!」

彼が泊まっていった形跡は、狭い部屋のそこかしこに残っていた。

流しに置いたままの、彼が口を付けたマグカップ。
彼が使ったバスタオル、彼が眠ったお客様用の布団。
思わずそこに顔を埋めて、彼の香りを堪能してしまった事は、誰にも内緒だ。

『密室に、若い男と女が二人だけ。…何かあったんじゃないの?』
「本当に何もないったら…!」

「バカバカ!明玉の馬鹿っ!!」

まだ何か言いたそうな親友の言葉を無視し、夕鈴はぶちっと通話を切った。

夕鈴だって、好きな人と二人きりになって、少しは期待していたのだ。
けれど、結局課長は何もしてこなかった。

「私、女としての魅力が無いんだ…。」

課長にとって、自分は部下としてしか見られていない。
だから、課長は平然としていられる。


「もっと酒ないのか?」
「何だよ、いきなり人の所に来たと思ったら、昼間から飲んだくれやがって。」

浩大はソファの上に自宅よろしくふんぞり返っている黎翔を嫌そうに見る。
結局、黎翔はタクシーを拾った後、自宅に戻らず浩大のマンションに来ていた。

飲まずにはいられなかった。
そうしなければ、彼女のパジャマ姿とか、風呂上がりの良い香りとか、可愛らしい寝顔が頭から消えない。

隣に、自分を虎視眈々と狙っている男がいる事に気付きもせず、無防備に寝息を立てる彼女を恨めしく思えた。


「…課長って意外と忍耐強いんだ。それともただヘタレなだけかしら?」
「鉄の理性で、夕鈴ちゃんを襲うのは阻止したか。…でもそれ、いつまでもつかな?」

部下と腐れ縁の親友に、好き勝手言われている事を、不貞腐れている黎翔は知る由もなかった。


END

ヘタレが勝ったようです…。

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  • 2013.11/27 09:10分 
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  • 2013.11/27 14:29分 
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  • 2013.11/27 23:31分 
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  • 2013.11/28 02:03分 
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Re: タイトルなし 

ますたぬ様

このヘタレ課長を、『紳士』と言うお心の広さ。
感服でございます(^^♪
でも彼の曖昧な態度が、夕鈴に誤解を与えてますが?
一課メンバーと共に、これからも二人を応援してあげて下さい。
  • posted by 高月慧ネン 
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  • 2013.12/02 02:40分 
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Re: タイトルなし 

名無しの読み手様

所有印…!それは浮かびませんでした(*_*;
美味しい設定逃した感じm(__)m
夕鈴気付いてなくて、明玉辺りに気付かれて冷やかされて、「何の事?」みたいな。
そして課長も一課メンバー女性陣から猛攻撃を受けたら良い。
このネタ今度使いたいですね(^^♪
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.12/02 02:44分 
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Re: タイトルなし 

慎様

後一歩どころか、百歩ぐらいかもしれません。
道のりは遠いですよ。
二人とも言葉が足りないんですよね~(*_*;
いつの日か、甘々な二人のお話を…!
  • posted by 高月慧ネン 
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  • 2013.12/02 02:46分 
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Re: こんばんはー☆☆ 

風花様

ちょっとは関係変わったでしょうか?
互いに好き合っているのに、言葉が足りない二人はまだまだと言う関係です。
この課長にどこかの上司を足して2で割ったら、程よい課長が出来そうですね(^^♪
ヘタレすぎるのも考え物です☆

けれどこのスローペースが、仰るように二人「らしい」。
ジレジレゆっくり、周囲の人間を巻き込みながら進んで行く事でしょう。

ご心配して頂いてありがとうございます。
無理なく、のんびり、書きたい時にちまちまやっていきます。
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.12/02 02:51分 
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