兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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おおかみとうさぎと、小さなもみの木

2013年クリスマス小説をお届けします。

第二弾は、『おおかみとうさぎのお話』の二匹(ふたり)です。

今回も童話風に、拙いながら優しく幸せな気持ちになれるよう、頑張って書いてみました。

色々現実的に無理な事もありますが、そこはスルーお願いします。
「動物の世界に、クリスマスなんかある訳ない!」と思われる方は、無理をせずにバックして下さいね。





おおかみとうさぎと、小さなもみの木


チラチラと雪が舞い降りてきます。
おおかみとうさぎがいる森に、今年も寒く厳しい季節がやって来ました。

人が寄り付かない深い森は、都会と違って、あっという間に雪が積もっていきます。
おおかみとうさぎは、寒さを凌ぐためにくっついて眠りにつきました。

朝目を覚ました二匹がその日のねぐらだった洞窟を出ると、辺り一面銀世界でした。

「わあっ…!」

元気なうさぎは目を輝かせると、一目散に外に飛び出しました。
何の跡もついていない雪の上を、楽しそうに走り回っています。
小さなうさぎの身体は、深い雪に埋もれて今にも見えなくなってしまいそうで、おおかみは気が気ではありません。

「夕鈴、あんまり遠くに行っちゃだめだよ。」

声を掛けると、どこからともなく「はあい。」とうさぎの声が聞こえてくるのですが、その姿はおおかみがいる場所からは見えませんでした。

おおかみは溜息を吐いて、まるでモグラが通った土の中のような状態になっている雪の跡を辿り始めました。時々雪に鼻を押し付けて、スンスンと匂いを嗅ぎます。
大好きなうさぎの、甘く美味しそうな匂いがします。

うさぎの短い脚で進んだ距離は、おおかみの脚でなら、すぐに追い着きます。
真っ白の雪に見え隠れする、うさぎの茶色い毛並みが視界に入りました。

ぴょん
ずぼっ
ぴょん
ずぼっ

必死に雪の中を進んでいるうさぎですが、後ろから見ているおおかみの目には、雪に埋まっているようにしか見ません。

思わず、プッと吹き出してしまいました。

ハッと振り返ったうさぎが、
「黎翔さん!今、笑いましたね!?」
と顔を真っ赤にして叫びました。

そのヒクヒク動く鼻先にも、雪がついて真っ白になっています。

「ごめんごめん。夕鈴が可愛くて、つい。」

深い雪にも足を取られる事もなく、危なげなくうさぎに近付いたおおかみは、彼女の首元をそっと銜え、近くの岩場まで歩きました。
その上にうさぎをそっと下ろすと、おおかみはすぐ傍で伏せをします。
背中に乗るように促されて、もっと遊んでいたかったうさぎはしぶしぶ、おおかみの背中に乗りました。

世界を銀色に染めた雪は今は止んでいて、灰色の雲に覆われた空からは、時々弱い日差しが差し込みます。
おおかみの背中の上で、うさぎはゆらゆら揺られながら景色を楽しんでいました。

小川で喉を潤し、僅かな木の実や草で食事をします。
冬は、動物たちにとって、とても厳しい季節です。
お腹いっぱい食べる事が出来ない日が続きます。
特におおかみは、うさぎより大きな身体が災いして、毎日お腹を空かせています。
それでも、二匹は毎日を楽しく生きて、旅を続けていました。

大量の雪を乗せて重そうに垂れ下がる木々が少なくなり、周囲は急に景色を変えました。
前方には深い崖があり、おおかみの足が止まりました。
真っ白く霞む先、すごく遠くに、キラキラとした綺麗な灯りが見えます。
この寒い真っ白の世界に、赤や黄色の灯。
なんだかとっても暖かそうに見えます。

二匹の瞳に映るのは、街の灯り。
『人間』が住む世界です。

「そう言えば今夜は、クリスマスイブだったっけ。」
「くりすます?」

とっても博識なおおかみは、人間の世界にも詳しいです。

「昔の人の、誕生日…だったかな?クリスマスの日には、家族や好きな人とパーティーをするみたいだよ。」
「ぱー…てぃ?」

うさぎは首を傾げます。
『人間』の世界の言葉は難し過ぎて、彼女には良く分かりません。

「朝起きると、サンタクロースが届けてくれたプレゼントが枕元にあるんだって。」
「…それは、素敵ですね。」

おおかみは歩きながら、話を続けます。
彼の言葉は相変らずチンプンカンプンですが、『さんたくろーす』と言う人が、プレゼントを届けてくれるのだという事はなんとなく分かりました。

「それからね、…ああほら、これ。」

おおかみの歩みが止まり、彼は上を見上げました。
うさぎも、同じように視線を上に向けました。

「これ、もみの木ですよね?」

よく見れば、その周囲にも大小のもみの木が生えています。

「うん、そうだよ。この木に飾り付けをして、楽しむんだって。」

――せっかくもみの木があるんだし、僕達もやってみようか。

そう言って、おおかみは笑いました。

小さなもみの木には、背の高い木々のお陰であまり雪が積もっていません。
近くで見付けてきた南天の紅い実を乗せたり、黄色や茶色の葉っぱを差し込んでみたり。

おおかみの鋭い嗅覚で、雪の下から見付けた、小さな花。
この厳しい季節に美しく咲く一輪を頂いて、彼はそれを兎に渡します。
おおかみの頭に乗せてもらい、うさぎはその花をもみの木の出来るだけ高い場所に飾りました。

少し離れた場所でもみの木を見渡して、二匹は満足げに頷きました。

緑の葉に、赤や黄色、茶色の飾り。
煌びやかとまではいかないけれど、もみの木に積もった雪も綺麗な飾りになっていて、なかなか見栄えの良い物が出来上がりました。

「クリスマスツリーの完成だね。」
「くりすます、つりぃ…。」

うさぎは、本当のクリスマスツリーを見た事がありません。
けれど、知っているらしいおおかみが満足そうにしているので、似ているのかもしれません。

でも、彼女は。

似ていても似ていなくても、おおかみと一緒に飾り付けをした時間がとても楽しかったので。
ただそれだけで、とても幸せな気持ちになりました。

「さあ、夕鈴。そろそろ行こうか。」

おおかみがそう促します。

「…はい。」

深い森は、すでに暗くなってきています。
夜行性の凶暴な動物たちの活動時間になる前に、今夜のねぐらを探さなければいけません。

再びおおかみの背中に乗ったうさぎは。

名残惜しそうに、後ろを振り返って遠くなっていくもみの木を見詰めていました。


――その日の夜。

うさぎは、とても不思議な夢を見ました。
とても温かい部屋の中で、背の高い人間の男と人間の女が笑いながら食事をしている夢です。

その傍には、大きなクリスマスツリーがありました。
チカチカ光る物が巻き付いていて、とても綺麗だなと思いました。

そして不思議な事に、男の瞳は大好きなおおかみと同じ色をしていて、女の髪は自分の毛と一緒の色でした。

今日もおおかみの暖かい身体に包まれて、うさぎは目を覚ましました。
おおかみの前脚をぺろりと舐めると、彼も目を覚ましたようです。
お返しとばかりに、大きな舌が顔を舐めてくれました。

「おはよう、夕鈴。」
「おはようございます、黎翔さん。」

今朝は、冷え込みが厳しくありません。
雪も降っていないようで、僅かな日の光りが洞窟の入り口から差し込んでいます。

その時、二匹は入り口に何かを見付けました。
残っている雪の上に、ちょこんと乗っかっているそれは。
どんぐりを初め、木の実やキノコなど、この季節には貴重な食料です。

ゆっくりと近付くと、その周辺には小さな足跡が残っていました。

「リスさん達かな?」

昨日、このねぐらを見付ける前に、襲われていた親子らしきリス達を助けました。
匂いを嗅いでいたおおかみが、「そうみたいだね。」と笑います。
うさぎにお願いされて、敵を追っ払い、リスの親子を助けたのはおおかみです。

お礼に来たのでしょう。
けれど、喰われる存在のリスにとって、おおかみの存在は恐怖の対象。
ねぐらに来たものの、さすがに中には入れず入り口に置いていったみたいです。

枕元ではなかったものの、おおかみとうさぎにとって嬉しいプレゼントが届きました。

「くりすますぷれぜんと、ですね。」
「…そうだね。」

うさぎが幸せそうに笑います。
そんな彼女の笑みを見て、おおかみも嬉しくなりました。

二匹の脳裏に浮かぶのは、昨日一緒に飾り付けをした、森の中の小さなもみの木。
もうきっと見る事が出来ないけれど、ずっと忘れずにいようとおおかみもうさぎも思いました。

寒い寒い季節に、心温まる贈り物が届いたクリスマスの朝。

今日も、二人の旅は続きます。


END


小学生の頃、クリスマスの時期になると、亡き祖父が山からもみの木を一本切ってきてくれて、毎年クリスマスツリーを家の外に飾っていました。
イルミネーションも綺麗でしたが、綿(?)を雪のようにもみの木の上に置くのがとても好きでした。
ある年の風が強い夜に、それが全部飛ばされてしまった時に笑いましたけどね(^v^)


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  • posted by  
  •  
  • 2013.12/12 09:59分 
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  • [Res]

Re: 温かいですね! 

風花様

こんばんは(^^♪
いつもコメントありがとうございます。

今回も寒い冬に心だけでも温かくなれるよう、童話風に頑張って書いてみました。
小さなうさぎは雪に埋もれて、それでも楽しそうにはしゃいでるんだろうな。
おおかみは、そんなうさぎが心配で堪らないんだろうな、とか。
厳しい季節を共に生きる種族の違う二匹(ふたり)を想像して頂けたら嬉しいです。
深い森の中には、当然もみの木も生えているはずだし、自然にあるものでツリーを作るのも楽しいかもしれないと思い、二匹(ふたり)に即席で作ってもらいました(^v^)
二匹(ふたり)にとって、幸せなクリスマスになったと思います♪

最近、寒くなりましたよね。
風花様も、お風邪などひかれませんよう、お身体ご自愛くださいね。
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2013.12/18 18:08分 
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