兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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My Sweet☆Home~クリスマスプレゼント~

2013年クリスマス小説をお届けします。

第三弾は『My Sweet☆Home』の二人+子供達です。

まだ本編の方が全く進んでないので、こちらは少し未来のお話と言う事になります。
先の話は読みたくないと思われる方は、無理せずバックして下さい。

オリキャラ(黎翔の娘・聖蘭(せいら)と息子・清良(きよら))が出ます。
ご注意下さい。

子供達がいるので、恋人(未満)の、と言うより家族のクリスマス話と言った感じになっています。
視点が入れ替わり過ぎて、読み難いかもしれません。
どんなお話でもドンとこいと言う強者だけ、お読み下さい。





My Sweet☆Home~クリスマスプレゼント~


夕方になると若い父母や、祖父母だと思われる年配の保護者が、珀聖蘭が通う保育園に子供達を迎えに来る。
次々に友達が帰っていく中、彼女はいつも遅くまで園に残っていた。

家庭を顧みない父親。子育てを放棄した放任な母親。

「…まだお迎え来ないの?」
「ええ。お母様には連絡がつかなくて、お父様の職場に掛けたのだけど。忙しくて、夜遅くになるって…。」
「珀さんちはいつもそうね。子供が可愛くないのかしら…。」

園の先生たちのそんな会話を聞きながら、聖蘭は泣き疲れて眠ってしまった弟・清良をギュッと抱き締める。

今夜はクリスマスイブ。
園には小さなツリーが飾られていて、「今夜はパーティーよ。」と言う母親の言葉に、嬉しそうに笑いながら友達は帰っていった。

聖蘭には、家族でパーティーをした記憶が無かった。
クリスマスプレゼントなんて、当然もらった事がない。

今夜もきっと、疲れ切った父が迎えに来て。
家族の温かさが無い、寒々しい家に帰って。
宅配ピザかインスタントのラーメンでも食べて。
いつもと同じ夜が更けるだけ。

プレゼントも、ツリーもケーキも、無縁な物。

――だったら。
クリスマスなんて、なければ良いのに。


12月23日

次々にお迎えに来る保護者の中に、明らかに目を引く若い少女の姿があった。
走って来たのか、彼女は鼻先を赤くして息を吐く。
遅くなっちゃったと焦りながら、夕鈴はそっと入り口から中を窺う。

「聖蘭ちゃん、清良ちゃん。お迎えが来たわよ。」

その姿を目敏く見つけた先生が、室内に残っていた子供に声を掛ける。
幼い弟を膝の上に乗せて、絵本を読み聞かせていた聖蘭は、パッと嬉しそうに顔を上げた。

「お姉ちゃんっ!」
「まぁま!」

二人に近寄った夕鈴は、自分に向かって手を伸ばしてくる清良を抱き上げ、聖蘭の頭を優しく撫でる。

二人の母親にしては若過ぎる夕鈴を、興味津々に見詰める保護者達。
それもそのはず、彼女は二人の母ではなく現役の高校生。
多忙の二人の父が雇った、珀家のハウスキーパー兼、ベビーシッターである。

暗くなる道を、清良を抱っこし、聖蘭と手を繋いで歩いていく。
腕にかけたビニール袋が、がさがさと揺れる音がする。

「今日のご飯はなぁに?」
「今夜はハンバーグよ。」
「ハンバーグ!?聖蘭、お姉ちゃんが作ったハンバーグ大好き!」
「きよも~っ」

嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねる聖蘭。
キャッキャッと歓声を上げる清良。
それはどう見ても、幸せな家族の姿だった。

この家の主人で二人の父親である珀黎翔は、今夜も遅くなると連絡があった。
二人にご飯を食べさせてお風呂に入れた後、リビングでアニメを見ている間に、片付けをして洗濯物を畳む。
寝かし付けるまでが、本来の彼女の仕事だ。
けれど、二人の父親が遅くなる時には、幼い姉弟を置いていくのが心配で彼が帰宅するのを待つ事もある。

清良を真ん中に、夕鈴と聖蘭は川の字で横になる。
絵本を読み聞かせ、清良が眠ったら、二人は小声で女同士の話をする。

「聖蘭ちゃんは、クリスマスプレゼント何が欲しい?」

唐突に、明日クリスマスイブだという事を思い出して夕鈴が問うた。
今年は聖蘭と清良に会って初めてのクリスマス。
高価な物はあげる事が出来ないが、何かプレゼントしたいと思いリサーチしてみた。

「プレゼント?」

聖蘭は首を傾げた。
今まで、プレゼントなんかもらった事が無い。
そもそも、自分が何が欲しいか分からない。

「聖蘭の家にはサンタさん来ないから、良く分かんない。」

サンタクロースが来たと嬉しそうに話す友達を、羨ましいと思った事もある。
けれど、彼女はいつの間にか、諦める事を覚えた。

「…そっか。」

子供らしからぬ言葉に、夕鈴は悲しくなって聖蘭の頭を撫でた。

その翌日、終業式を終えた夕鈴はおもちゃ屋さんに寄って、清良へのプレゼントを買い、文房具屋に行って聖蘭への贈り物を見繕った。
まだ高校生の自分のバイト代だけでは、大した物を買う事は出来ない。
けれど、可愛い二人の小さな友達に、何か形になる物を贈りたいと思った。

クリスマスパーティーは、25日にする事にした。
二人の父親が、この日なら夕方に仕事が終わると言っていたからだ。
だからイブの夜はいつもと変わりなく、三人でご飯を食べて、夕鈴は黎翔が帰ってくるまで二人の面倒を見ていた。

すやすやと寝息を立てているのを確認して、夕鈴はキッチンに隠してあったプレゼントの包みを二人の枕元に置いた。少しでも喜んでくれると良いなと思いながら、布団から出ている聖蘭の右手を中に戻そうとしゃがんだ。

「…あれ?」

その彼女の小さな手に、何か握られているのに気付く。
起こさないように注意しながらそれを引っ張り出すと、聖蘭のお気に入りの、キャラクター物の小さな靴下。

『欲しい物を書いた紙を入れた靴下を枕元に置いておくと、サンタさんがプレゼントを入れていってくれるんだよ。』

園の友達から聞いたらしく、聖蘭は毎年実行していたらしい。

「でも、一度ももらえなかったの。」

寂しそうに笑う彼女を見て、夕鈴も辛くなってしまった。

靴下の中には、ノートの切れ端が入っていた。
諦める事を覚えてしまった聖蘭。
『何が欲しいか分からない。』と言っていた彼女は、欲しい物を見付けたのだろうか。

カサリと、それを広げた夕鈴は。
子供の字で書かれた、その望みに。
思わず、泣きそうになった。

深夜、静まり返った室内に、カチャリと玄関が開く音が響く。
黎翔は、玄関にある女性用の靴を見て眉を顰める。
離婚した妻には、この家に入る事を禁止しているため、その靴は最近シッターとして雇った高校生・夕鈴のものだと分かる。
けれど彼女は、こんな遅い時間までこの家にいた事はない。
自分の帰宅が遅くなっても、翌朝の事も考えて23時には出るようにしているらしい。

「まだいるのか?」

ネクタイを外しながら、子供達の寝室になっている、リビング横の和室に向かう。
襖を開けて中を覗いて彼は、思わず目を見開いた。

清良を真ん中に、夕鈴と聖蘭が眠っている。
三人が寄り添って眠る姿は、本物の家族のようだ。

夕鈴からのプレゼントだろう包みの傍に、子供用の小さな靴下が片方だけ置かれている。
それを拾い上げた黎翔は、中に入っていた紙に書かれた我が子の願いに目を見張った。
そして、困ったように小さく笑う。

聖蘭は手の掛からない子供だ。
大抵の事は自分でやるし、弟清良の面倒もよく見る。
5歳という年齢を感じさせる事が無かったから気付かなかった。
こんなにも、その存在を求めていたのか。

シャワーを浴びて、キッチンのテーブルに用意されていたご飯を食べた後。
彼は夕鈴に怒られるのを覚悟して、そっと彼女の隣に潜り込んだ。

翌朝。
背中に暖かさを感じながら目覚めた夕鈴は、何だろうと思いながら首を捻り、思わず叫びそうになったものの何とか思い止まった。

そこには、自分にぴったりと寄り添いながら眠る黎翔の姿があった。
朝までこの家にいた事はない。いつもは自分の寝室で休んでいるはずの彼がここにいる事に驚いた。
そっと布団から抜け出したが、疲れているのか黎翔は目を覚まさなかった。それどころか、隣が空いて寒くなったのか、コロンとまろんだ清良を胸の中に抱え込んだ。

きつい瞳が閉じられていると、黎翔も子供っぽく見える。
その顔は聖蘭と清良に良く似ていて、やっぱり親子なんだなと、並んで眠る3人を見て夕鈴は笑った。

キッチンで朝食の準備をしていると、背後に人の気配。
振り向くと、何だかバツの悪そうな黎翔が立っていた。

「おはようございます…。」
「…おはよう。」

良く口喧嘩をする二人。夕鈴の方もいつもと違う彼に調子を狂わされて居心地が悪い。

「まだ出来ませんから、座って待っていて下さい。」

そう言ってまた作業に戻った夕鈴を、黎翔が呼ぶ。
無視していたがしつこいので、思わず振り返った彼女の目の前に、紙袋が突き付けられた。

「…え?」

目が点になった。彼からプレゼントなんて、もらえる訳ないと思っていた。

「いつも子供達が世話になっている礼だ。」

開けてみると、暖かそうなマフラーとミトンの手袋。
長年使ってきたような少しくたびれたマフラーや手袋を使っているのを見て、寒くないだろうかと黎翔は思っていた。夜遅くに帰る日もあるのに、風邪でも引かれたら大変だ。

「君は宝石とかより、こういうものの方が良いだろう?」

この気持ちを、素直に言葉にする事は出来ないけれど。

ぶっきらぼうに言う彼に、夕鈴も「私も少し素直になろう」と思った。
今夜のパーティーが終わって帰る時に、彼の寝室にこっそり置いていこうと思っていた包みを鞄から取り出す。

「…安物で申し訳ないですが、良かったら使って下さい。」

今度は黎翔が驚く番だった。
まだぎこちない関係の二人。
けれどお互いに何か贈りたいという気持ちは、同じだったなんて。

「…ありがとう。」

彼女が選んでくれた、色合いの優しいネクタイ。
安物だろうがなんだろうが、その気持ちが嬉しかった。

「私も、素敵な物を頂けて嬉しいです。ありがとうございます。」

笑い合う二人の関係も、徐々に変わっていくだろう。

毎朝、目を覚ましたら。
微笑む彼女の姿を、一番最初に見たい。
この家で。この場所で。

――そう遠くない未来に、黎翔は思いを馳せた。


程よく暖房がきいた暖かい部屋の中、聖蘭は目を覚ました。
まだ子供が起きるには少し早い時間。目を擦りながら周囲を見渡した彼女は、枕元に置かれた4つの包みを見付けて目を見開いた。

自分の枕元にあった2つの包みを、ドキドキしながら包装を剥す。
大きな四角の包みは、スケッチブックと30色の色鉛筆。
小さくて軽い包みは、もこもこの温かそうなコートだ。

「清良、起きて?」

姉の声に目を覚ました清良の前で、聖蘭は彼の枕元に置かれてある包みを解く。
2つとも大きくて、とても軽い。

「うさちゃんと、わんわん!」

清良は兎のぬいぐるみを抱き締め、自分の身体よりも大きな、彼曰く犬のぬいぐるみに抱き着く。

「清良、わんわんじゃなくて、狼だよ。」
「う?」

良く分かっていなさそうな弟に、それでも良いかと聖蘭も笑う。
片手に兎のぬいぐるみを持った清良の手を引いて、聖蘭は美味しそうな匂いが漂ってくるキッチンへ向かう。
母親がいなくなってから、いや、母親がこの家にいた頃から、朝ごはんの香りがする事はなかった。
ドキドキしながらキッチンを覗くと、二人の小さな姿に気付いた影がこちらを見て微笑んだ。

「おはよう、聖蘭ちゃん、清良ちゃん。」
「おはよう、二人とも。」

初めてだった。
慕っている夕鈴が、朝までこの家にいてくれるのも。
仕事が忙しい父親が、こうやって朝の挨拶をしてくれるのも。

ずっとずっと、望んでいた。


4人で食卓を囲み、温かい手作りの朝食を食べる。
父の、母の、弟の笑顔が、笑い声が、キッチンに響く。
今は偽りの姿であっても、いつの日にか本当の家族になりたい。

「――いつか、本当のママになってね。」
「?…聖蘭ちゃん、今なんて言ったの?」
「ううん!…何でもない!」

誤魔化すようにそう言って、聖蘭は笑った。


『サンタさんへ

新しいママが欲しいです。

聖蘭』


END



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  • posted by  
  •  
  • 2013.12/19 09:10分 
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うぅ…(つд;*)
なんて切ないお話…!

聖蘭ちゃん…まだお母さんが恋しい年だもんね…(>_<)

夕鈴と聖蘭ちゃんと清良くんには幸せになって欲しいです!(黎翔さんは?)
  • posted by さき 
  • URL 
  • 2013.12/19 11:41分 
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Re: タイトルなし 

ますたぬ様

まだシリーズとしてカテゴリが無いこのお話が好きと言って頂いて、すごく嬉しいです。
夕鈴に対する態度が最悪な黎翔さんですが、すぐに彼女の魅力に気付き、好きになっていくんですよ(^^♪
そしてどう接して良いか分からず、子供達に助けてもらうんです♪
二人の関係が変わっていくのを、ゆっくり書いていこうと思います☆

  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2014.01/01 19:15分 
  • [Edit]
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Re: タイトルなし 

さき様

どんなに大人ぶっていても子供っぽくなくても、聖蘭はまだ五歳。
きっと誰にも言えない寂しさとか思いがあると思うんです。
遠くない未来に夕鈴が二人の母親になって、その隙間を埋めてくれると思います。
お父さんはどうでも良いや(←え?)
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2014.01/01 19:33分 
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  • posted by  
  •  
  • 2014.06/29 18:49分 
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Re: タイトルなし 

お名前無しのお客様

コメントありがとうございます!
My Sweet☆Homeの続きが気になるという事で。
読んで下さってとても嬉しいです。
飽きたいものを書くという気儘更新なので、筆の神の降臨をお待ち頂けたらと思います。
いつになるかは分かりませんが、必ず書きますので…。
  • posted by 高月慧ネン(お名前無し様へ) 
  • URL 
  • 2014.07/07 02:41分 
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