兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪君は僕の、サンタクロース

2013年クリスマス小説をお届けします。
クリスマスはとうに終わっているけど、気にしない気にしない~

最後は、『Creuzシリーズ』の二人です。

このシリーズらしく甘々にしようと思いながら書き始めたのに、あらぬ方向に行ってしまいました
途中かなり行き詰りましたが、何とか纏まったような気がします。

去年書いたのが二人が出会って初めてのクリスマスだったので、今年は二回目の(黎翔22歳、夕鈴18歳)のお話です。オリキャラ(黎翔の父)が出ます。
苦手な方はバックして下さいね。

どんな話でもOKと言う方のみ、お読み下さい





♪君は僕の、サンタクロース


「黎翔さんの馬鹿っ!もう知らない…!」
「――夕鈴っ!!」

今までの甘い空気が一変し、夕鈴の声が部屋に響く。
泣きながら黎翔を睨み付けた彼女は、自分の鞄を掴むと一目散に玄関に向かう。

「ちょ、夕鈴、待って!!」

慌てた彼の声を無視し、靴を履き扉を開けると。
芸能人である恋人がすぐに追ってこれないのを良い事に、彼女は玄関から外へ飛び出していった。

12月24日

夕鈴は溜息を吐きながら、自宅のキッチンで今晩のパーティーの準備をしていた。
せっかくのクリスマスパーティー。
どうせなら少し豪勢にしたいので、腕によりをかけて料理の下ごしらえをする。

本当なら今頃、黎翔のマンションでパーティーの準備に勤しんでいるはずだった。

黎翔と付き合い始めて、初めてのクリスマスだった昨年は、二人とも若葉マークで。
黎翔は仕事を入れ、夕鈴もバイトに精を出していた。

お節介(過ぎる)メンバーや親友達にお膳立てをされて、黎翔と夕鈴は初めての恋人同士のイブを過ごした。
翌日にも仕事を入れていたため、時間に追われてバタバタしたり、ゆっくり出来なかった。
だから夕鈴は、絶対に来年はバイトを入れないようにしようと心に決めていた。

そして同じように、芸能人として多忙な毎日を送っている黎翔も言っていた。

「来年のクリスマスは、絶対仕事入れない。」と。
そう言っていたのに。

夕鈴はクシャリと顔を歪める。作っているメレンゲの中に涙が落ちそうになった。

「…ごめん、夕鈴。24日、どうしても外せない仕事が入った。一緒にパーティー出来ない。」

なかなか言い出せず、彼は困っていたのだろう。
その日は妙に落ち着きが無く、そわそわしていた。
眉を下げ、しょんぼりとした彼からそう告げられたのが三日前の夜。

ショックでマンションを飛び出した夕鈴は、自宅に戻り自室に閉じ籠った。
数十分後に家に来てくれた黎翔に会おうとせず、掛かってくる電話やメールも全て無視した。

頬を流れる涙を、夕鈴は乱暴に拭う。

バンドグループ・Creuzのリーダーで、俳優業もしている恋人が忙しいのは今に限った事ではなく、今までにも急にオフの日に仕事が入ったり、約束を反故された事もある。

仕事なのだから仕方が無いと分かっている。
一緒にいられる時間が短くて、寂しいと思った事もある。
けれど、いつも「大丈夫」と笑っていた。

それなのに今回は、「私は大丈夫なので、お仕事頑張って下さい。」と言えなかった。

だって、約束したのに。
「来年のクリスマスも一緒に過ごそう」と、約束したのに。


19時から開始の催された大手出版社のクリスマスパーティーに呼ばれた黎翔は、ブリザードが吹き荒れている胸の内を仮面の下に隠し、メンバーと共に参加していた。

長い間一緒に行動を共にしているメンバー達は、数日前からリーダーの機嫌が最悪と言う事に気付いている。
そしてその原因は、彼が最愛の恋人と喧嘩してしまった事も分かっている。
たとえ本人が、今にこやかに同業者と会話をしていても。

声を掛けてくる政治家や俳優達に挨拶をし、ふと人の波が切れた時黎翔は小さく溜息を吐いた。
三日前の夜、恋人と喧嘩をしてしまった。
いや、喧嘩と言うより仲違い?
夕鈴が一方的に怒って、部屋を飛び出してしまったのだ。

追い掛けようとした黎翔は、ハッと我に返る。
今の姿のまま外に出れば、自分がCreuzのリーダーで俳優Reiだと言い触らすようなもの。
泣きながら帰っていった恋人を、すぐに追う事も出来ない不甲斐ない自分。
望んでこの世界に入ったはずなのに、今は普通の恋人同士のように彼女と一緒にいられない身の上が煩わしかった。

夕鈴は今、何をしているだろう。
誰と、どこにいるのだろう。

あの日から連絡が取れない彼女が、今どうしているのか気になって仕方が無い。

もし、自分以外の男と一緒にいたらどうしよう。
クリスマスイブに急に仕事が入るような恋人ではなく、どんな時にも傍にいてくれる存在が現れたら?
夕鈴は、別れたいと言ってくるかもしれない。

不安で堪らない黎翔は、悪い事ばかり想像してしまう。
壁に凭れ、もの悲しげな表情をしている彼を、沢山の女性達が頬を染めて見ていた。


立派なホテルを見上げて、夕鈴は中に入るのを躊躇う。

忙しい恋人が仕事の合間を縫って連絡をしてくれたり、会いに来てくれたのにずっと無視をしてしまった。
今夜会えなくなったのは、彼の自分勝手な理由ではなく急遽入った仕事なのに、一人で拗ねて大人げない事をしてしまったなと夕鈴は反省した。

家族で行ったパーティーが終わって後片付けをした後、彼の好きなケーキを焼いた。
シンプルな箱に詰めて、黎翔が参加しているはずのクリスマスパーティーが行われているホテルに、やって来たのだが…。
いかにも高級ホテルと言った感じで、中に入るのにも勇気がいった。
パーティー会場には入れなくても、せめてCreuzマネージャーの李順にでも会って、このケーキを託せないだろうか?

フロントに向かっていた夕鈴の前に、警備員が立ちはだかった。
タキシードやドレスなど豪華な衣装を着た客で溢れ返るロビーに、いかにも一般庶民の格好をした夕鈴はかなり浮いていたのだろう。

怪しむように上から下まで見下ろし、持っている箱の中身を見せるように言う。
「最近はプレゼントと言って、危険物を持ち込む輩も増えていますから。」
無理矢理奪われそうになって対抗した際、その箱は真っ逆さまに床の上に落ちた。

箱の中を見なくても分かる。
崩れたケーキは元に戻せないように、夕鈴の心にも深い傷がついた。

芸能人の彼に、相応しくない自分。
どうして、今自分がここにいるのかもわからなくなった。

ポロリと零れた涙に、警備員の顔が驚きに歪む。
しゃがんで床に落ちた箱を引っ掴むと、夕鈴は脇目もふらず外に飛び出した。
そんな彼女の前に、一台の車が滑り込んで来て音も立てずに停車した。


「…何か場違いな女がいたわね。」

そんな言葉が聞こえて、黎翔の眉がピクリと動く。
視線を向ければ、そこには友達同士と思われる数人の女性。

「いかにも庶民丸出しって感じの格好で、恥ずかしくないのかしら。」
「それにあの箱…。一体どなたに渡すつもりだったのでしょうね。」
「庶民が作ったものなど、口にしたくもありませんわ。」

とても豪華なドレスを着ている上流家庭のお嬢様と言った感じだが、その口から出る言葉は品が無く、人を貶めるようなものばかりだった。

「けれど珍しい金茶の髪をしていたわね。」
「手入れしていないから、野生の動物みたいでしたけど。」

おかしそうに笑う彼女達に背を向け、黎翔は一階のフロントに向かう。
そこで見たのは、警備員と向かい合っている夕鈴だった。

「ゆ」
「――止めろ、Rei」

思わず声を上げかけた黎翔の肩を掴み止めたのは、突然走り出した彼を追い掛けてきた浩大。

「止めるな、Hiro」

床に落ちた箱を見て、夕鈴の目に涙が溢れるのが遠目にも分かって、黎翔は歯を噛み締める。

「今ここで割って入ると、姫ちゃんがますます注目される。人々の好機の視線にこれ以上彼女を晒しても良いのか?」

――良く考えろ。

浩大の言葉が、胸に刺さる。

俳優Reiの恋人は、トップシークレット。
Creuzのメンバー全員の私生活が謎に包まれているように、夕鈴の存在も厳重に隠している。
きちんと手順を踏んでお披露目をしないと夕鈴とその家族にも危険が及ぶ可能性がある為、実家とも話し合って夕鈴が高校を卒業したら…という事にしている。

けれど、こんなにも近くで最愛の女性(ひと)が泣いているに、手を差し伸べる事も出来ないなんて。

黎翔の見ている前で、彼女は泣きながら外に飛び出していった。


会場に戻ったものの、さらに機嫌が急降下し不穏な空気を晒し出している黎翔に、マネージャーの李順が歩み寄り耳打ちする。
黎翔は驚いたように目を見開き、李順が頷くと誰にも気付かれないようにそっと会場を抜け出した。
李順が手配してくれていた車に乗り、珀本家に向かう。

ちょっと怒ったような父親に迎えられ、案内されたリビングに夕鈴はいた。
ソファに座っている彼女は目を真っ赤にしていて、隣に座っている義母に慰められている。
声を掛けるとプイっとそっぽを向かれてしまい、しょんぼりと落ち込んだ黎翔を見て両親に苦笑いされてしまった。

出会った時から、黎翔は芸能人で自分は一般人。
オフに仕事が入る事も良くあるし、普通の恋人同士のようにデートも出来ない。

そんな事分かっていたはずなのに、今頃になって再び黎翔の存在を遠く感じた。
自分なんかが傍にいてはいけない、手が届かない存在。

愛してくれているのに。
彼が愛してくれているのは分かるのに。
傍にいて、良いのかな?

「そう思ってしまった自分が嫌なの…。」

泣き続ける夕鈴を、ギュッと抱き締める。

「自分にとって、彼女にとってどうすれば一番良いのか、二人のこれからを考えなさい。そのためなら、私は協力を惜しまない。」

自らマンションに送ってくれた父は、息子に向かって厳しい声で言う。
ミラーに映る彼の視線を、黎翔は怯む事なく見返して、頷いた。

セキュリティーが万全な高級マンションの地下駐車場で二人を下ろした彼は、車内から黎翔に声を掛けた。

「…ずっと昔、お前が三歳の時か。プレゼントは何が欲しいと聞いたら、お前は『サンタさんに会いたい』の一点張りで。母さんと二人で、どうしようかとすごく悩んだぞ。」

父から聞く初めての幼い頃の話。黎翔は恥ずかしくなって少し頬を染めたが、隣にいる夕鈴の方が話に喰い付いた。

「それで、どうしたんですか?」
「妻が上手い事言って、諦めさせた。」

おかしそうに笑いながら、「会えただろう?」と黎翔に問う。

「――ええ。」

隣に立つ夕鈴の肩を抱き寄せて、黎翔は照れくさそうに笑った。


二人で過ごす、クリスマスイブ。
二回目の今年は、黎翔のマンションで。

夕鈴がササッと作った生ハムのサラダと、温めただけのコーンスープ。
冷蔵庫に冷やしてあったシャンパンで乾杯して。
そして食後に、崩れてしまったケーキを食べた。

その頃には、夕鈴の赤かった目元は元に戻り、笑顔を見せるようになっていた。

ソファに並んで座り、黎翔は子犬のように夕鈴に甘える。

「ねえ、夕鈴。…もう学校休みだよね?今日、泊まっていってくれる?」
「良いですよ?…あ、でも。プレゼント家に置いてきちゃった。」
「…明日、渡してくれる?今夜は夕鈴と一緒にいたい。」

スリスリと身体を押し付けてくる図体だけはでかい恋人の頭を撫でて、夕鈴は仕方ないなあと笑う。
もっともっと、大好きな彼と一緒にいたいから。

ソファの上に押し倒すように自分に伸し掛かってくる男の瞳が、情欲を湛えている事に夕鈴は気付かない。
黎翔の髪の毛が首筋に当たり、くすぐったいと身を捩りながら夕鈴は笑う。

そんな彼女の香りや体温を堪能しながら、黎翔は唐突に思い出した。
ずっと忘れていた、優しい母の声、彼女の言葉。

遠い昔の、懐かしい記憶。

『大きくなったらきっと会えるわ。貴方だけのサンタクロースに。』

――見付けたよ、母さん。
僕だけのサンタクロースを。

色々な感情を与えてくれて、一緒にいるだけで幸せに思える。
そんな存在は、彼女以外いないから。

「ずっと一緒にいてね。」

ゆうりん。

君は僕の、サンタクロース。


END


『○○はサンタクロース』と言う、有名な歌を思い出しました

このシリーズで、2013年クリスマス小説はお終いです。
皆様、お付き合いありがとうございました


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