兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪彼の事情と、彼女の事情 -二人とも、お年頃なのです-

続きです。

男の子も女の子も、色々と悩みがあります。


♪彼の事情と、彼女の事情 -二人とも、お年頃なのです-


「てめえは一体何をしたんだ?」
電話の向こうで呆れたように呟くのは、几鍔だ。

「夕鈴のヤツ、『信じられない!』って、叫びまくってるぞ?」

「あ~怒ってる?」

「怒っていると言うか…あれは恥ずかしがってるのか?…突然家に来たと思ったら、部屋の中で暴れまくってる。」

倒れた夕鈴は意識を取り戻したと思ったら、黎翔の言葉を聞く事無く部屋を飛び出していった。
その夕鈴が真っ先に向かった場所が…。

「…どうして夕鈴は君の所に行くのかな?…仲良過ぎて僕、妬いちゃうよ…」

シュンと、黎翔は肩を落とす。

「…で、あいつがお前を放ってまで俺の所に来た原因は何だ?」

「それが…」

黎翔が一部始終を几鍔に話すと、彼は。

「お前は馬鹿か?」

元同級生の彼は、黎翔に対して容赦がない。

「だって…」

最も、几鍔がそのように接してくれるからこそ、黎翔も素の自分を見せられるのだが。

「…写真のネガが残ってるか聞いてきたのはその為かよ。飽きれて物が言えねえ…」

几鍔は溜息を吐く。


新曲の10週連続チャート一位のお祝いに、几鍔は黎翔にアルバムを贈った。

贈ったのは彼の恋人、夕鈴の成長の記録だ。几鍔は幼い頃からカメラ小僧だった為、家族や親しい友人達の写真を沢山撮ってきた。家族ぐるみで付き合いがある汀家の写真も当然ある。

夕鈴が好きで好きで溜まらない黎翔なら、きっと喜んでくれると思った通り、彼は数日後お礼の電話を寄越してきた。

その時にネガの事を聞いてきたのはこの為だったなんて。

寝室に張り巡らされた自分の写真を見てしまった夕鈴の衝撃は、それは凄まじいものだっただろう。

「ま、アレだ。…その写真は片付けた方が良いな。」

「え~!?…ヤダよ。」

「…お前なあ、何れ夕鈴を寝室に連れ込むつもりなんだろ?…その時の事を考えてみろ。夕鈴は自分に見られながら、お前に抱かれる事になるんだぞ。」

「あ、そっか…」

「さすがにそれは、居た堪れないだろ…」

只でさえそういう事には疎く、色恋には慣れていない夕鈴だ。

「…分かった、考えてみる…」

しょんぼりした声で呟いて、黎翔は電話を切った。


携帯を降ろし、几鍔ははあーと盛大に溜息を吐いた。

几鍔が知る『珀 黎翔』という男は、何事にも動じず、縛られない人間だった筈だ。何かに執着する事もなく、ただ淡々と、生きてきた彼が。

恋人の写真を寝室に張り巡らすなんて。

「…ファンが知ったら泣くぞ…」

そうぼやくが、黎翔にとってファンなどどうでも良いだろう。彼にとって大事なのは、夕鈴がどう思うかだけだ。


「…ちょっと、几鍔。今聞き捨てならない事を聞いたんだけど?」

背後から、夕鈴の低い声が聞こえ、几鍔は驚いて振り返る。黎翔との話に気を取られて、部屋にいるはずの夕鈴がリビングに来た事に気付かなかった。

「あ、…今のはな、なんて言うか…」

ワナワナと震える彼女は、相当怒っているのが分かる。

「…どう言う事か、説明してもらえるかしら?」

(…黎翔のヤツ、恨むぞ…!)

にっこり笑う夕鈴を見ながら、心の中で思い切り悪態を付く几鍔だった。


「…だって、考えてもみてよ!…入った事がない部屋に自分の写真が沢山貼られていたら、あんただってイヤでしょ!?」

食って掛かる夕鈴の言葉を聞きながら、几鍔は「まあ、確かにそうだな」と言葉を返す。

寝室に写真立てを置くのは許されるだろうが、写真を引き伸ばして部屋中に貼るのはいくら恋人同士でもやり過ぎだろう。

と、言うか…。

「…普通のヤツはしないよな?」

それは黎翔が普通じゃない、と言う事だ。

「…黎翔さんがいつでも私といたいと思ってくれている事は、凄く嬉しいの。…でも、寝室のあの写真はちょっと…。普段何してるんだろ…って考えたら、居た堪れなくなって…」

いつも涼しい顔をして、夕鈴に対して優しく接してくれる黎翔。

「…私は寝室に入れてもらえないのに…」

寝室に入れてもらえない理由は分かっている。

最後の一線…。彼に最後まで抱かれるのは、夕鈴が高校を卒業してからー。

二人で決めた、約束事だ。

それなのに、夕鈴の写真を寝室に飾り、黎翔は一体何をしているのか…。

「…お前さ、まさかあいつの事、聖人君子だと思ってるのか?」

「…え?」

突然の几鍔からの問いに、夕鈴は首を傾げる。

「お前なんかに性欲を抱くあいつの気持ちは俺には到底理解出来ないが…。普通男が惚れた女部屋に上げて、ただ触れるだけで満足するとは思えないけどな。…お前を寝室に入れないのは、入れたが最後、自分で立てた誓いを破ってしまうからじゃないのか?」

自らの誓いを護る為、黎翔は夕鈴を寝室に入れないのだろう。

「お前が思っているほど、あいつは優しくないし、子犬なんかじゃない。」

夕鈴はよく彼を『子犬』だと言っているが、几鍔は知っている。黎翔は決して『子犬』ではない。夕鈴の前では人畜無害を装っているが、彼の本性は鋭い牙と爪を上手く隠した、-『狼』だ。

「…あいつの前で気を抜くなよ。ペロッと喰われるぞ。」

夕鈴の髪をグシャリと掻き回して立ち上がった几鍔は、その後の彼女の爆弾発言を聞かなかった振りをした。


聖人君子なんて、この世にいない。

誰にだって、色んな欲がある。


好きな人と共にいて、触れて欲しい、愛して欲しいと思うのは夕鈴も一緒で。

「…誓いなんて破っても、私は全然構わないのに…」

いつもクールな彼が、少し憎らしい。


彼にも彼女にも、色々と事情がある。


二人とも、お年頃なのです。



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よろしくお願いします。

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