兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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上司と部下の、初キスは…

せっかくなので、何かお正月ネタで…と思い、一発書きしてみました。

2014年の最初のお話は、この二人で…!

※思ったより長くなってしまいました。糖度は高い方だと思います。
※原作ネタを含みます。ご注意下さい。





上司と部下の、初キスは…


12月31日

もうすぐ日付が変わり新しい年を迎えようとしている時間帯、夕鈴は明玉を初め仲の良い職場の同僚と、先輩達と神社に来ていた。ここで新年を迎え、初詣をしてから帰ろうという話になっている。

明玉の家で着物を着つけてもらったのだが、慣れない格好で動きにくいし、履き慣れている靴ではないの出歩きにくい。
何度も転びそうになって、夕鈴はハラハラしていた。

大勢の人で溢れている境内。
時計の針が真上で重なり、年が明けると、あちこちで新年を祝う歓声が聞こえる。

「おめでとう!」
「今年もよろしくね―!」

同僚や先輩達と、抱き着き合って新年を祝う。
今年もこのメンバーと、一緒に仕事をしたいと思う。

お参りを済ませ、「これからどうする?」と相談していた時、先輩の一人が目敏くその姿を見付けた。
人の波に埋もれていても、頭一つ分突き出た背丈と、誰もが目を奪われる端正な顔立ちは見間違えようがない。

「あ、課長!」
「課長もここにいらしていたのですね。」

声に反応した男は、ゆっくりと彼女達に近付いてきた。

「お前達も初詣に来たのか?」
「はい。」
「女ばっかりで?」
「それはお互い様でしょ?」

彼も一人で来ているらしく、周囲には連れらしき人物はいない。
楽しそうに話しているのを聞きながら、夕鈴はそっと明玉の後ろに隠れ、そっぽを向いた。

夕鈴が勤める、白陽コーポレーション第一営業課課長。
そして彼女の、直属の上司。
28日の仕事納めの日から、会うのは今日が初めてだった。

彼―珀黎翔と夕鈴は、微妙な関係だ。
たまに一緒に食事に行くが、付き合っているわけではない。

けれど、夕鈴は入社式で黎翔を見た時から、ずっと彼の事が好きで。
そして、黎翔も一から育て上げた可愛い部下の事が好きだった。

一課の社員全員が知っているその事実を、知らないのは当の二人だけ。

気恥ずかしくて隠れていた夕鈴を、明玉がほらほらと前に押し出す。

「ちょ、明玉!」

焦った声を出した時には、夕鈴は黎翔の前に躍り出ていた。

自分が似合わない格好をしている事は分かっている。どうせ鼻で笑われるだろうと思いながら、恐る恐る顔を上げて彼を見ると、珍しく驚いたように目を真ん丸にしてこちらを見ていた。

言葉もなく、お互いの顔を見詰め合っていると、グイッと彼の方に押し付けられた。

「私達はもう帰りますので、後はよろしくお願いします。」
「…え!?」
「ちゃんと送ってあげて下さいね、課長。」
「明玉、待って…!」
「じゃあね、夕鈴。またね~。」

好き勝手にそう言って、一緒に来た親友や先輩は手を振りながら帰っていった。

二人に沈黙が訪れる。
困ったように声を発したのは、黎翔だった。

「あ~、おみくじでも引いてから帰るか?」
「あ、はい…。」

くじ売り場に行っている時も、おみくじを引いている時も、何だか見られているようで彼の視線を感じて夕鈴は恥ずかしくて俯いていた。

そろそろ帰ろうと、階段を下りている時。

「きゃ…!」
「…汀!」

段差に引っ掛かり転びそうになった夕鈴の声に、一歩前にいた黎翔が振り返る。
彼が身体を支えてくれたおかげで転倒は免れた。
だが、思った以上に近付いた顔にえ?と思った瞬間、唇に感じたかさついた感触。

「あ…。」

夕鈴は思わず、自分の唇を押えた。
黎翔も唇にかすかに触れた柔らかい感触に戸惑っていた。

「わ、悪い…。」

決して故意ではなかった。
これは事故だ。

何だか泣きそうになっている夕鈴に、取り敢えず謝る。
けれど、さらにじわじわと涙が滲みだしてのを見て、黎翔は慌てた。

周囲の人間が、興味深そうに、または道の真ん中で立ち止まる二人を邪魔くさそうに見ている。
黎翔は夕鈴の腕を掴むと、無言のまま駐車場に向かって歩き出した。

助手席で俯いたままの夕鈴に、そんなに嫌だったのかと黎翔は凹みそうになる。
なかった事にするのは簡単だ。けれど、黎翔は嫌だった。

(柔らかくて、温かかったな…。)

例え事故でも、初めて触れた好きな女の唇の感触を忘れる事は出来ない。
なかった事には、したくなかった。

彼に悪気があったわけではないという事ぐらい分かる。
躓いてこけそうになった自分を助けてくれただけ。
彼を責めるのは間違っている。

ギュッと膝の上で両手を握り、俯く夕鈴の顔は真っ赤だ。

初めて触れた、好きな人の唇。
ただ唇が当たっただけ、けれどその感触は忘れる事が出来ない。

(かさついていたけど、課長の唇って意外と柔らかいんだ…。)

ドキドキしながら、彼が触れた自分の唇にそっと指を這わす。
事故でも、夕鈴は嬉しかった。けれど、彼はそう思っていないはず。

「…汀、お前には悪いが」
「わ、分かっています!」

だから、声を掛けてきた黎翔に声を上げてしまった。

「課長は、なかった事にしたいんですよね?」
「汀?」
「大丈夫です、あんなの、大した事ありませんからっ!すぐに忘れますから…!」
「汀、違う、誤解だ。」
「だって、あれは事故で、課長は私の事を何とも思っていなくて…」
「――汀!!」

グッと肩を押された。
いつの間にか車は止まっていて、自宅前に着いていた事に気付いた時には。

チュッと額に触れた温もりは、すでに離れていた。

目に涙を溜めたまま、夕鈴は自分の額に手をやる。

今触れた?
彼の唇が。
事故?
――ううん、違う。

「デコちゅう…。」

呟くと、目の前の彼の表情が歪んだような気がした。

「…なかった事になんて、私はしたくないからな。」

ぶっきらぼうに言う彼の姿が歪んで見えたのは、自分が泣いているからだと気付いた。
大きな手が、優しく目元を拭ってくれる。

彼の思いを、聞くのは怖いけれど。
自分と同じ気持ちなら嬉しいと思う。

変な所で不器用で意地っ張りな二人は、今までの関係をすぐに変える事は難しいのかもしれない。

目元は赤くなっているがようやく涙を止めた夕鈴を見て、黎翔はホッと息を吐いた。
身体を離し、ギシリと運転席のシートに深く凭れる。

「…着物。」
「え?…ああ、やっぱり似合っていないですよね?」

皆は褒めてくれたけど、こんな美しい着物、自分には似合わない。
そう思っていたから、同意を求めるように苦笑いをする。

「…似合っている、とても。――綺麗だ。」

なのに、
彼はそう言って笑った。

ほんの少し、その端正な顔を赤く染めて。

「ありがとう、ございます…。」

たとえお世辞でも、冗談でも。
好きな人が褒めてくれた事が嬉しかった。

車から降り、自宅に戻る。
玄関の扉を開けるまでそこで見守ってくれている黎翔に頭を下げ、夕鈴は部屋の中に入った。


部屋にある姿見に写っている、いつも見ている自分の姿が違う人間に見える。

「綺麗って、言われた…。」

唇に指を這わせ、頬を桃色に染める一人の女。
そこに写るのは、間違いなく夕鈴だ。

「嬉しい…。」

彼の言葉は魔法の言葉みたいだ。
たった一言で、こんな幸せな気持ちになれる。

ぺたりと床に座り込んだままぼうっとしていると、携帯の着信音が鳴り響く。

『今夜は楽しかった。おやすみ。』

黎翔からの、簡潔で短いメール。
それでも、とても嬉しい。

「おやすみ、なさい。」

返事を返して。
結い上げた髪を下ろし、着物を脱いで、お風呂に入って。
眠れるかな?と思っていたけれど。

パジャマに着替え布団に入ってから、夕鈴はすぐ眠りに引き込まれた。

大好きな彼とキスをして、「愛してる」と囁き合って、いつでも一緒にいる。
その夜夕鈴は、そんな幸せな夢を見た。


END


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  • posted by  
  •  
  • 2014.01/02 11:39分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

名無しの読み手様

やっぱり年の初めくらいはね~。
周囲の人間が見たら、まだ付き合っていないという事実に驚きそうな関係のこの二人。
甘々にしてみました♪
そして事故チュウであろうと、課長はなかった事にはしたくないのです!
だって相手が夕鈴ですからね☆
課長は新年早々良い思いをして、夕鈴は良い夢を見れて。
幸先良い年の初めです。
仕事が始まるまでのリフレッシュ中ですから、二人で悶々していればいいと思います(^^♪
最後の課長に対するエールにウケました♪
ホント頑張れ…!
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2014.01/04 23:23分 
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