兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 1

な、何か新しい話が始動しちゃいました。

ホントはスィートホームより先に構想練っていて、書き始めたものの時間が無く途中放棄していたお話です。
やっぱりこのシリーズの方が、一度指が乗ったら止まらなくなりますね♪

今回は少し長めのお話になりそうな予感。
そして新しい原作キャラが出ます。
性格がちょっと違ってくると思うので、各キャラに深い拘りを持つ方は読まない事をお勧めします。
どんな話でもOKな強者のみお進み下さい。

今回は二人の関係に進展あるかな?
ってか、いい加減に進展してくれ…。

※コメント返信はもう少しお待ち下さい…!!

***



窓際に佇む美少女が、庭師自慢の広い庭を見ながら溜息を吐く。
冬の日暮れは早く、外はもう太陽が沈み掛けていて薄暗くなっている。

「今日もあの方は来て下さらなかった…。」

悲しげに俯く彼女の目尻には、ジワリと涙が浮かんでいる。

『会いたい』と連絡しても彼の態度は素っ気なく、『仕事が忙しい』とそればかり。
社会人である彼と、まだ高校生の少女は擦れ違ってばかり。

確かに彼はいつも忙しい人で、今までも滅多に会う事が無かった。
けれどここ一年前から、会う頻度はさらに減ったような気がする。

無愛想でぶっきらぼうな、年上の婚約者(フィアンセ)。
それでも。

「――お慕い致しております、黎翔様…。」


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 1


新しい年が明け、夕鈴が勤める白陽コーポレーションも年末休みが終り業務が始まった。
初詣に行った神社で上司で想い人でもある珀黎翔に、事故で口付けされたあの日から夕鈴は彼に会っていなかった。

数日振りに会う課長は、いつもと同じように見えた。
自分はあの日の事が忘れられず、課長の唇の感触を思い出して真っ赤になったり、『綺麗だ』と言ってくれた課長の声が耳元から離れないと言うのに。
平然としている彼を見ると、夕鈴は少し悔しかった。

各課にある大型テレビで社長代理の新年の挨拶を見た後、一課内は慌ただしく動き始める。
取引のある会社との商談、子会社との連絡、新企画に向けての会議など、時間はいくらあっても足りない。

「――汀、すまないがこれを経理の方に回してくれないか?」

先輩社員から渡されたのは、出張の旅費精算書。

「分かりました、すぐに行ってきます。」

ちょうど手が空いていたため、夕鈴は他の階にある経理課に向かった。

経理課は営業課と違って、課内はとても静かだった。
そして社員のほとんどが自分のデスクに着いて、パソコンと向き合っている。
仕事をしながら煩く会話している賑やかな一課とは大違いで、シーンとしている室内に入るのを躊躇ってしまう。

入り口で中の様子を窺っていると、夕鈴に気付いた社員がこちらに視線を向けた。
長い髪を一括りにした、とても優しい笑みを浮かべたその社員は、すぐに立ち上がりこちらに向かってくる。

「うちの誰かに用かな?」

パンツスーツの女性社員もいるため、パッと見、性別が判断出来なかったが、声を聞くと彼が男性だという事が分かる。首を傾げながら優しい口調で問われて、夕鈴はホッと息を吐いた。

「あの、一課の汀と言います。旅費精算書を持参したのですが…。」
「ああ、そっちね。これ君の?」
「いえ、先輩に頼まれて。」

書類に目を落とした彼は、「自分で持ってきたら良いのに。」とポツリと呟く。

「手が空いていたので。それに先輩のサポートも、後輩の仕事です。」

苦笑いしながら無理矢理押し付けられたわけじゃないと言うと、少し驚いたような表情をされた。どうしたんだろうと思っていると、ふわりと微笑まれた。

「これは受理しておくよ。」
「ありがとうございます。お願いします!」

ぺこりと頭を下げてから、夕鈴は経理課を後にした。

課の入り口で、歩いていく夕鈴の背中を男性社員はじっと見つめる。

「彼女が、汀夕鈴…。」

感情が顔に出やすく、分かりやすい。笑みを絶やさず礼儀正しい、営業一課の有名な女性社員。

「――噂通りの子だね。」

クスリ、と彼は笑った。


有名なレストランの、個室に二人きり。
課長と一緒に食事に行くのは、もう何度目だろうか。
こういった高級レストランに連れて行かれる事も増えた。

マナーとか良く分からない夕鈴には、こういう堅苦しい場所より居酒屋やファミレスの方が気が楽なのだが。クラシックが流れる静かな場所で、課長と向かい合って二人きりで食事とかドキドキして味が良く分からない事が多い。

――特に、事故チュウ(あんな事)があった後では。

完璧なテーブルマナーで料理を口に運ぶ課長は、とてもカッコいい。
いや、彼はいつでもカッコいいと思う。

ぽけっと見詰めていると、視線に気付いた課長がこちらを見た。

「…何だ?」
「な、なな何でもありませんっ!」
「?」

ばちっと視線が合うと、自分の顔が真っ赤になっていくのを感じた。
慌てて何でもないと誤魔化して、残っている料理にナイフを入れる。
挙動不審になりながら、夕鈴は何とか料理を食べ終えた。

割り勘で良いと言っているのに、課長はいつも自分でさっさと会計を済ませ、夕鈴から金を受け取ろうとはしない。外に出る時も、先に行って扉を開けると夕鈴が出るまで扉を支えてくれている。

そんな彼の行為が、夕鈴にはくすぐったくて、そして少し複雑な気持ちになる。

自分達が恋人同士なら、もしくは婚約しているとかなら、彼の行動は理解出来る。
けれど夕鈴と黎翔は、恋人ではない。
同じ職場で働く、ただの上司と、部下。

今夜は彼の愛車で来ていたので、課長はアルコールを飲まなかった。
並んで駐車場に向かっていると、急に足を止めた課長はふと元来た道を振り返る。

「…課長?」

どうしたのかと思い彼の視線を追うが、暗い夜道は視界が効かず、何も見えない。誰かいるのかな?と首を傾げていると、課長は「何でもない」と視線を戻し大股で先に車に向かうと、助手席の扉を開けてエスコートする。
入社当時から彼は意地悪だったが、最近はとても優しく接してくれるようになった。

車に乗るように促されて、夕鈴は彼の態度に戸惑いながら助手席に座る。
夕鈴が座ったのを確認してから、ドアを閉めると車を回り、スルリと運転席に滑り込んできた。

「…汀、まだ時間はあるか?」

シートベルトをしながら課長が聞いてくる。
腕時計を見ると、時間は21時過ぎ。
明日は平日でもちろん仕事があるが、今すぐ帰らなくてはいけないというほど遅い時間ではない。

「まだ、大丈夫、です。」

少しでも長く課長と一緒にいられる事は嬉しいけれど、恥ずかしくて夕鈴は俯きながら小さな声で答えた。
真っ赤になった顔を、見られたくない。
俯いたままでいると、大きな手でクシャリと頭を撫でられた。

エンジンが掛かり車が静かに動き出しても、夕鈴は顔を上げる事が出来なかった。


ねえ、課長。
どうしてこんな事するの?
――期待してしまうから、優しくしないで。


続く


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よろしくお願いします。

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