兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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-相 棒-パートナーⅡ

SNSからのサルベージ第二弾、『-相 棒-パートナー』の続き(?)です。
このお話は、これで終わりになります。

【設定】
現代パラレル
刑事モノ


珀黎翔…凶悪犯罪を扱う刑事課の刑事。射撃の腕は超一流。『レッドウルフ(紅い瞳の狼)』の異名を持つ。

汀夕鈴…元刑事で黎翔の相棒。退職後は黎翔の人生のパートナーに。現在彼の子を妊娠中。あだ名は『兎ちゃん』


では、どうぞ!




-相 棒-パートナーⅡ


朝食が終わり夫を送り出し、炊事・洗濯・掃除を終え、ホッと一息ついた後。
新聞の折り込みに入っていたスーパーのチラシに、『特売』の文字を見つけ、暇潰しに買い物に行く事にした。

お財布とエコバックを持って家を出た夕鈴は、そう遠くでもないので徒歩で行く事にする。

妊娠中の今、ただでさえ心配性の夫はさらに過保護になり、夕鈴が動き回ったり歩いて買い物に行くのをあまり許してくれない。

けれど元々身体を動かすのが好きな夕鈴は、ジッとしているのが苦痛で夫の目が無い時に少し運動するようにしていた。
夫にとても大事にしてもらっているし、心配してくれるのも嬉しいけれど、気にし過ぎじゃないかな~?と思うのだ。

いくら妊娠中でも、適度な運動は必要。
家に閉じ籠ってばかりでは、気が滅入ってしまう。

少しだけ膨らんできたお腹を撫でて、「貴方のパパは本当に心配性だよね~?」とまだ見ぬ子に囁きながらクスッと笑う。

頬に当たる風がとても気持ちいい。

――夫と共に犯罪者を追いかけていた頃は、こんな日溜りのように幸せな日が来るなんて思ってもいなかった。

***

買い物を終え、夕鈴は日傘をさして歩道を歩いていた。
お肉も卵もお野菜も安く買えて、彼女はホクホクする。本当は日用品と夫が飲むビールも買いたかったのだが、さすがに重たくなるので後で夫と車で来ようかな、と思う。

もっとも、今日夫が早く帰ってこれるかどうかはまだ分からないのだが。

もう少しで自宅―という頃。

「…きゃあ――!!誰かあ――!!」

どこからか、甲高い女性の悲鳴が上がった。
元刑事の感か、夕鈴はバッと背後を振り返る。
数百メートルは離れている辺りを、一人の男が歩行者を押しのけながらこちらに向かって走ってくるのが見える。

「…その男は引ったくりです!!」
「誰か、そいつを捕まえろ!!」

歩道に座り込んだ被害者の女性に駆け寄る人々、逃げ惑う歩行者、逃げる男を捕まえようとする男性もいたが、男は暴れ強引に逃亡する。

そして男は、一直線に夕鈴に向かってきた。

***

「――はい、刑事課。」

正午前、黎翔が所属する刑事課に連絡が入った。

「はい、はい。…は?あ~、はい…。」

電話を受けたベテラン刑事は彼にしては珍しく、怪訝な顔で対応をして受話器を置く。

「…おい、珀。」
「はい?」

愛しの妻が作った(ちょっと焦げている)愛妻弁当を広げようとしていた黎翔は、呼ばれて顔を上げた。

「今、警察病院から電話でな、お前の奥さんがひったくり犯に襲われて怪我を―」

そこまで聞いて、黎翔はすごい勢いで飛び出していく。

「――させちゃったみたいなんだが、ま、良いか…。」

誤解したまま飛び出していった若い後輩刑事に、ちょっとだけ憐みの視線を贈り、彼は頭を掻いた。

***

妻が、怪我をした。

自分の子を身籠っている、愛しい愛しい妻が。

怪我の具合は?
お腹の子供は、大丈夫なのか?

受付で場所を聞き、勝手知りたる病院内を走り抜けながら、黎翔は気が気でない。

もし彼女の身に何かあったら自分は…。

「――夕鈴っっ!!!」

告げられた部屋に辿り着いた黎翔は、妻の名を叫びながら中に飛び込んだ。

「黎翔さん…。」

夕鈴は、数人の警察官に付き添われ、椅子に座っていた。

仕事柄、顔見知りの彼らが、黎翔に敬礼を寄越してくる。が、彼らの顔は、何だが笑っているように見える。
嫌な笑みではなく、少し困ったような、同情めいたような、そんな、苦笑い。

「夕鈴、怪我したって聞いて…。」

駆け寄り、彼女の身体を確認するが、どこも怪我をしてる様子が無い。
首を傾げていると、警察官が恐縮そうに話し出した。

***

「…女!どけええええ!!!」

その瞬間、夕鈴は反射的に動いていた。

スッと身を躱すと、掴みかかるように突き出された男の腕を掴み、まず動きを止める。
怯んだ相手の急所を蹴り上げ、男が悶え力を無くした瞬間、その細腕で男の身体を背負い投げ飛ばした。

地面に叩き付けられた男は、ぴくぴくした後ガクリと気を失った。

シ――ン……、と周囲に沈黙が走った後。
ふうっと、夕鈴が息を吐いたのと同時に大歓声が沸き起こり、夕鈴はそこで初めて自分が何をしたのか気付いたのであった。

「体が勝手に動いちゃったの……。」

恥ずかしそうに目を伏せる夕鈴を、黎翔はポカンとした表情で見詰める。

「…久し振りだったから、加減出来なくて。」

同じ病院内にいる犯人の男は、まだ目が覚めていないらしい。

夕鈴が刑事を辞め、黎翔と結婚してまだ半年足らず。
数年間、凶悪犯達と向き合っていた彼女は、襲い掛かられて反射的に身体が動いてしまったのだろう。

その証拠にその時にはお腹の子供の事も、自分が手に持っていた荷物の事も忘れていて。

周囲の歓声にハッと我に返った夕鈴は。

「あ――!?卵がああ…!!」

ぐちゃぐちゃに潰れた卵を見て、悲鳴を上げてしまったらしい。

「いやはや、退職されたとはいえ、さすが珀刑事の奥様ですね。」

もちろん夕鈴も見知っている警察官に言われて、彼女はますます身を小さくする。

『兎ちゃん』と可愛らしい愛称で親しまれていても、もとは凶悪犯も相手にする刑事課の刑事。
身に染みた防衛反応と、犯罪を許さないと言う心は、結婚しても変わらないらしい。

見送ってくれた警察官に頭を上げ、二人は手を繋いで駐車場に向かう。

――その時黎翔は、夫婦喧嘩は絶対しないようにしようと、可愛い奥様を見ながら心に誓ったのだった。


END


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よろしくお願いします。

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