兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪ドラマのような、出会いじゃなくても

Creuzシリーズ・二人の出会い編です


今こそ夕鈴大好きな黎翔ですが、以前の彼はこんなヤツだったんです

どんな内容でも大丈夫と言う方のみ、閲覧をお願いします。



土曜日の午後。夕鈴は恋人の黎翔と共に、ソファで寛ぎながらドラマを見ていた。

ここ数日間、マンションに帰る事も出来ないほど忙しかった黎翔は、ようやくもぎ取ったオフを満喫したいらしく。隣に座る夕鈴の肩を抱いて抱き寄せたまま、先程から離れようとはしない。

夕鈴も久し振りに感じる彼の体温に、ホッと息を吐いて寄り添っていた。


二人が見ているドラマは、今人気の若手俳優が主演を演じている恋愛ドラマだ。

黎翔はオフの日に、よく様々なドラマを見ている。

彼曰く- 『アーティストとしては人気があっても、俳優としてはまだまだ、だ。』

俳優業を始めてまだ日が浅い黎翔は、沢山のドラマを見て、他の俳優達の演技を見て学習している。
ベテラン俳優、若手の俳優達の演技を見て、日々切磋琢磨している。

そんな黎翔を、夕鈴は恋人として誇りに思っていた。


『君と出会えた事を、俺は運命だと思っている。』

ブラウン管の中で、主演男優が恋人役の女優に向かって叫んでいる。
出会う筈も無かった境遇の二人が、ある日偶然出会った所から始まったこのドラマ。

二人の出会いは、まさに『ドラマ』のように、運命的でー。


夕鈴がクスッと笑ったのを、黎翔は聞き逃さなかった。

「…何?」

「…別に何も。ただ、貴方と初めて会った日の事を思い出したんです。」
クスクス笑う夕鈴を見ながら、彼女との出会いを思い出した黎翔はム~と口を尖らせる。

「…やめてよ。僕にとっては、最大の汚点なんだから。」
黎翔にとっては、あの日の事はなかった事にしたい過去だ。

だがあの日が無ければ、二人が出会う事は無かったのは事実。

二人の出会いは、『ドラマ』のようにドラマチックでも、運命的でもなかった。


♪ドラマのような、出会いじゃなくても


ようやく気温が暖かい日が続き始めた3月の終わり、一人の少女が広い建物内の掃除に勤しんでいた。

彼女の名は、汀 夕鈴。  

花の女子高生だが彼女にそんな事は関係なく、生活費と弟の学費を稼ぐ為、日々バイトに明け暮れていた。この春から二年生に進級だが、新学期への期待も不安も特に無く…。

彼女は目下、稼ぎ時の春休みに如何に高時給のバイトで稼げるか、そればかりを考えていた。

親友から紹介してもらったのは、あるテレビ局での仕事。業務内容が主に清掃だった為、特に資格も要らず、親友の父親が局に勤める大物だったので、秘密厳守と言う事で高校生の夕鈴でも雇ってもらう事が出来た。

春休みに入ってすぐ始めたバイトだったが、元々家事全般得意な夕鈴には合っていたようで、特に問題もなく日々黙々と作業をしていた。


そんなある日、夕鈴は最上階フロアの部屋の掃除を任された。午後から様々なアーティストが集まって収録する番組があるらしく、控え室として使用するとの事だった。

壁のあちこちに、バンドグループのポスターが貼られているのを見て、夕鈴はふうん…と呟く。

(…明玉がいたら、目を輝かせて写真を撮りまくってるわね…)

夕鈴の大親友・明玉は、とあるバンドのファンでおっかけをしている。夕鈴と同じように彼女もこの春休み中バイトをしているが、その理由は大きく違っていた。

夕鈴は家庭の為に、明玉は自分の趣味の為に。

(ま、私には関係無いけど。)

芸能人に興味がない夕鈴は、明玉が好きなバンドグループの名すら思い出せなかった。


一部屋ずつ丁寧に掃除を済ませ、残る部屋は後一つとなった。時間は正午近く。一時までに終えて欲しいと言われていたが、部屋数が多かった割に何とか終わりそうだ。

一番奥の、一番広い部屋。清掃道具を持って部屋の前に立った夕鈴は眉を寄せた。中から、人の声が聞こえるからだ。

おかしい…。このフロアの使用は午後からと聞いている。この時間帯に誰かが使用しているとは思えない。部屋から聞こえるのは、若い男女の声。

始めにこのフロアに上がってきた時には、確かにここには誰もいなかった。局の人と、まず一部屋ずつ中を確認したからだ。
夕鈴は自分が別の部屋を掃除している時に、誰かが上がってきたのだろうと考えた。

扉を挟んでいるので二人の会話は聞こえず、夕鈴は中に入る事に躊躇する。何か大事な話をしていたらどうしようと思ったが、こちらも仕事なのだ。

この部屋だけ掃除をしないというわけにはいかない。

それに、このフロアの出入り口には『清掃中に付き、出入り禁止』の札を立てた筈だ。それなのに勝手に中に入って、話をしている二人が悪い。

(…そうよ、どうして私がこんなに悩まなくちゃいけないの?)

だんだんムカついてきた夕鈴は、ドアノブを握ると思い切り扉を開けた。

広い室内、中に入り込んだ夕鈴は目を丸くした。

他の部屋とは違い、まるで応接室のように真ん中に置かれたテーブルとソファ。
そのソファの上で、若い男が女を組み敷いていた。

「な、…ななななっ!?」

ドサリ、と手に持っていたバケツを落としてしまった。水が入ってなかったのが、不幸中の幸いだ。カーペットが敷かれた床が、無残にも水浸しになる所だった。

夕鈴が顔を真っ赤にしながらあわあわしていると、女に覆い被さっていた男がチラリと視線を寄越した。

濡れるような漆黒の髪、冷たい紅い瞳。端正な顔立ちの、まだ若い青年だ。自分より少し年上かな?と、夕鈴は思う。

彼は夕鈴を見詰めた後、瞳を閉じフウッと溜息を吐き、

「…萎えた。」

自分が組み敷いている女に向かってそう呟くと、身体を起こした。

「…ちょ、ちょっと、Rei?」
組み敷かれていた美女は肌蹴た胸元を気にする事も無く、ソファから身体を起こして男の腕を掴む。

「触るな…!」

男は低い声で怒鳴ると、自分の腕を掴む女の手を振り解いた。

「…出て行け、もうお前に用は無い。」

冷たい声に女は慄くと、胸元を掻き合わせ弾かれた様に立ち上がり扉に向かって歩いてくる。
そして夕鈴をギッと睨み付けると、カツカツとハイヒールの音を響かせて部屋を出て行った。

バタンッ、と彼女の苛立ちを示すように閉まった扉を呆然と見ていた夕鈴は、部屋に残っていた男がすぐ傍まで来ている事に気付かなかった。

「ねぇ…」

「…ひぇっ?」

突然声を掛けられ、その声のあまりの近さに夕鈴は飛び上がった。

振り返ると、目の前に彼の端正な顔。

「…君は誰?…ここには何しに来たのかな?」

「わ、私は…、えっと……」

素直に『掃除をしに来たバイトです』と言えば良かったのだが、間近に迫る男の妖艶な顔に、唇は震え言葉を紡ぐ事が出来ない。

「…あのね、君のせいで彼女とする気が失せちゃったんだ。」

「す…するって?」

「ん?…言わないと、分からない…?」

スイッと顔を近付けられ、耳元で囁かれる。

「…SEX。」

「…セッ!?」

夕鈴の顔が、ボンッと一気に赤くなる。ダラダラと嫌な汗が身体を伝うのを、夕鈴は感じていた。


目の前に立つのは、確かに極上の男だ。

冷たい紅い瞳は意志が強く、人の上に立てる技量を持っている。

男は優しげに夕鈴に向かって微笑んでいる。

だが夕鈴は気付いた。彼は笑っているが、その紅い瞳は、全然笑みを湛えていなかった。

「彼女とSEX出来なくって、…私は今、気が昂ぶっている。」

男は夕鈴の腕を掴むと自分に引き寄せ、顔を覗き込んでニヤリと笑った。

「…今度は君が、私の相手をしてくれないか?」

夕鈴は目を見開くと、男の手を振り払う。

「なっ、何、変な事を言って…」

「…変な事?…変な事かな?…君だってそのつもりで、この部屋に来たんじゃないの?」

「はあっ!?」

男の言葉に、夕鈴は驚愕して素っ頓狂な声を上げる。

「この私に抱かれるんだ。…これ程名誉な事はあるまい。」

男の言葉に、夕鈴は今度こそ絶句した。

何を言っているのかと、夕鈴は男を睨む。
確かに今まで見た事も無いほど、カッコイイのは認める。
だが、何もかも自分の望み通りになると、考えているような彼の表情が気に食わない。

自意識過剰にも、程がある。

広い部屋に、パンッと音が響いた。

男は叩かれた頬を押さえて、感情が篭っていない冷たい瞳で、夕鈴を見下ろしてくる。

「…ふざけないで下さい。」

夕鈴は男を叩いた手をブルブル震わせながら、男を睨み付けた。

「貴方が何者か知りませんけど、人を馬鹿にするのもいい加減にして下さい。誰もが貴方の言う事を聞くと思ったら、大間違いです。」

夕鈴が吐き捨てるように言うと、男は目を丸くした。

「…私を知らないのか?」

「知りません。」

テレビ局内にいるのだから、局の関係者、もしくは芸能人の一人かもしれない。だが夕鈴は芸能界に興味はないし、男の素性を知りたいとも思わない。

即答した夕鈴に、男は少し困ったように眉を下げた。

「…私もまだまだ、と言うわけか…」

そう言いながらも、彼は少し嬉しそうだ。

「私、この部屋の掃除を任されているんです。…邪魔なので、早く出て行ってもらえませんか?」

時計を見ると、十二時半。一時まで、もう時間がない。

夕鈴は男にきつい声で言うと、扉に向かって指差した。

「…分かった、私の負けだね。」

『邪魔』とまで言われた男は、諦めたように扉に向かう。

「…ねえ、君の名前を聞いて良いかな?」
ドアノブに手を掛けた男は、そこで足を止め夕鈴を振り返った。

「貴方に教える義理なんてありません。」

「手厳しいね…」

寂しそうに呟いた彼からは、先程までの冷たい笑みが消えていた。

その後、短い時間で掃除をしければならなくなった夕鈴は、部屋から出て行った男に心の中でブツブツと文句を言いながら、黙々と作業を続けた。

結果的に夕鈴に部屋から追い出された男は、その顔に楽しげな笑みを浮かべながらフロアを歩いていた。擦れ違う局の関係者達は、初めて見る彼の笑みに驚きを隠せず、思わず振り返ってその後姿を凝視する。

「…また、会いたいな。」


バンドグループ・Creuzのリーダー・Reiと、女子高生・夕鈴の出会い。

互いの名すらまだ知らない、本当の始まり。


「私、二度目に会った時、詐欺だって思いましたから。」

「もう、勘弁して…夕鈴。」


二度目の出会いはそれから、数日後の事だった。



続く
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よろしくお願いします。

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