兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 2

こんばんは~。
また少し間が空いてしまいましたが、二話目をお届けしようと思います。

また好き勝手書いています。
水月さんの性格がどんどん酷くなっていくような…。
ファンの方、すみません。

このお話の彼は、ちょっと悪者になってしまうかもしれません(*_*;


***




「…あれ?」

所用があってこのフロアに来ていた営業二課課長・浩大は、もうすっかり見慣れてしまった女性社員の姿を見付けて足を止めた。

経理課の入り口で彼女は男性社員と立ち話をしている。

「夕鈴ちゃん?と、あれは…。」

にこやかに談笑している二人を見て、浩大は眉間に皺を寄せた。
夕鈴と話している社員に、彼は見覚えがあった。

「氾水月、何でヤツが夕鈴ちゃんと…。これは報告しといた方が良いな。」

厄介な男が接触してきたなと、浩大は携帯を取り出しながら二人に背を向けた。


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 2


『氾の坊ちゃんが夕鈴ちゃんと接触。彼女の身辺、気を付けてやれよ?』

そんなメールが浩大から届いたのは、夕鈴が一課を出て少し経ってからだった。
経理課に水月がいる事はもちろん知っていたが、彼は経理課内では立場が上だ。他の課の人間が来ても、デスクを離れる事は滅多にない。
書類を渡して帰るだけなので大丈夫だろうと黎翔は思っていた。

氾水月は、親が勝手に決めた婚約者の兄だ。
年齢は黎翔より一つ下。いつも微笑みを絶やさない心優しい男。と、彼を知っている人間は口を揃える。
けれど黎翔は知っている。その穏やかな笑みの裏側では、何を考えているのか分からない食えない男だという事を。

婚約者から連絡が来ることは珍しくなかったが、ここ最近特に増えたような気がする。再三会いたいと言ってくる年下の婚約者を、仕事が忙しいと断り続けていた。
仕事が忙しかったのは嘘ではないが、黎翔としては彼女に会いに行くくらいなら、可愛い部下と一緒に食事に行く方が有意義だった。

好き過ぎてつい苛めてしまう可愛い部下に、嫌われていると誤解されて泣かせてしまった時。優しくしてやりたいのにどうすれば良いのか分からず、幼馴染でもある浩大に聞いた。
アドバイスをもらい、部下の汀夕鈴と一緒に食事に行くようになってこれで何度目になるのだろう。
彼女と共に二人だけで過ごす時間は、とても安らかで、心地良く楽しかった。

沢山の人間で賑わう居酒屋で、安い料理を笑い合いながら食べたり。
夕鈴は苦手なようだが、高級レストランで二人だけで向かい合って食事をしたり。
恋人、と言う訳では、まだないけれど。
惚れている女と、共にいる時間はとても幸せで。
一日の疲れが、それだけで吹き飛ぶようだった。

らしくないと思いながら、ついついエスコートしてしまうのは、やはり好きな女相手だからだろうか。夕鈴の少し複雑そうな、くすぐったそうな表情を見るのも好きだった。

レストランを出て駐車場に向かっていると、ふと何者かの気配を感じ振り返る。闇の中その姿は見えないが、誰かがこちらを窺っている。
狙いは自分か、それとも部下か。

「…課長?」

不安そうに声を掛けてきた彼女に、「何でもない」と誤魔化した。

車に乗り込み時間を確認すると、まだ21時。明日が平日とは言え、まだ早い時間帯。
出来るなら、もっと長く彼女と一緒に居たいというのが本音。
無理強いは出来ないと思いながら『時間はあるか』と聞くと、夕鈴は大丈夫だと答えてくれた。

緊張しているのか、俯いたまま小さな声で答えてくれた彼女の頭を、思わずクシャリと撫でる。
顔を上げてこちらを見て欲しかったのに、車が動き出してからも何故か俯いたままだった。

***

どこかに入るより、このままドライブでも良いかと思いながら黎翔は車を走らせる。
少し経つと夕鈴も緊張が解れ、二人はポツポツと会話しながら夜のドライブを楽しんでいた。

二人きりの時は、プライベートの事も少しずつだが話すようになった。夕鈴は黎翔の趣味の魚釣りの事とか、好きな本とか映画とか聞くのが好きで、黎翔は夕鈴の好みとか、得意な料理の事とか、好きな装飾品や雑貨とかを聞きたがった。

話をしながら、夕鈴はふと目をやったバックミラーに映る後続車が気になった。
レストランを出て大分たつが、ずっと後ろを着いてきているような気がする。
行き先が同じなだけかもしれないと思いながら、後ろを向こうとする夕鈴を黎翔の低い声が止めた。

「汀、振り向くな。…ずっとつけられている。」
「えっ!?」

ギョッとして課長の顔を見ると、彼は夕鈴を安心させるように微笑んだ。

「大丈夫だ。…ちょっとスピード上げるから、捕まっていろよ?」

そう言うと黎翔はアクセルを踏み込んだ。

相手の車を引き離し、夕鈴の知らない道を走る事一時間以上。ようやく彼女の知る景色が目に飛び込んで来て、夕鈴はホッと息を吐く。
黎翔は念の為、周辺の道をくるりと回って、不審な車や人物がいないかを確認してアパートの前で車を停めた。

夕鈴の顔色を窺うと、少し蒼褪めているように見える。

「…怖い思いをさせて悪かった。」

相手の狙いは恐らく自分の方だ。関係の無い彼女を巻き込んでしまい悪かったと思いながら謝る。
すると夕鈴は驚いたようにパッと黎翔を見た。

全く怖くなかったと言えば嘘になる。
けれど、思ったより落ち着いていられたのは、一人ではなかったから。
隣にいたのが、課長だったから。

なのに思い詰めたような表情で謝られて、夕鈴は驚いてブンブンと首を横に振った。

「か、課長がいてくれたから、怖くなんてなかったです…。」

頬を真っ赤に染めて、そう呟いた夕鈴。
黎翔はそんな彼女に引き寄せられるように、思わず顔を寄せていた。

課長の端正な顔がすぐ近くにあって、まつ毛長いなあ…とぼんやりしながら思う。
二人の唇が、重なりそうになった瞬間。

ピピピピピ…

車内に、携帯の着信音が鳴り響いた。

その音で二人はハッと我に返る。
もう少しでキスしてしまう所だった事に気付き、茹蛸のように顔を真っ赤にさせた夕鈴。
自分が何をしようとしていたかを知り、ちょっと呆然としてしまった黎翔。

「…じゃ、じゃあ帰りますねっ!送って頂いてありがとうございました!」

視線を彷徨わせながら、ワタワタしながら夕鈴は頭を下げる。

「あ、ああ…。お休み…。」

慌ててドアを開け、逃げるように飛び出していった彼女を、黎翔は呆然と見送るしか出来ず、未だ鳴り続けている携帯の通話ボタンを押したのだった。



「―――逃げられた?」
『…はい。申し訳ございません。途中で割り込んできたバイクに邪魔をされまして。』
「………。」

思案しながら髪を掻き上げていると、相手は彼が怒っていると思ったらしい。

『ど、どうしましょうか?』

不安げな声でそう聞いて来た。

「…ああ、もう戻って来て良いよ。ご苦労だったね。」

なるべく優しげな声で労い、通話を切る。
別に怒っていたわけではない。

相手は、あの珀黎翔。

最後まで気付かれずに尾行出来るとは思っていなかった。

「――さて。」

次はどうしようか。

妹の婚約者である珀黎翔が、ご熱心だと言われる汀夕鈴。
職場内だけでなく、プライベートでも良く一緒にいると噂のある二人。
高級レストランで共に食事をして、ドライブもするような関係。

汀夕鈴の身元を調査しようとしたが、社の住所録には彼女だけパスワードが掛けられていて見る事が出来ず。人を使って一課の面々にそれとなく聞き出そうとしても、誰もが口を閉ざす。
誰かが意図的に分からないようにしているのは明白だ。

「…彼女の方に揺さぶりを掛けてみようかな?」

要は珀黎翔から彼女を引き離せばいいだけの事。
彼にはすでに婚約者がいて、入り込む場所はないという事を彼女に教えてやらなくては。

会えなくて泣いている可愛い妹のために。
誰に何と思われようと、自分は彼女のために動く。

汀夕鈴

彼女の存在は、邪魔だ。

――彼の静かな刃が、何も知らない夕鈴に向けられた。


続く


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Comment

氾パパ!? 

水月さんが氾大臣化!?
血は争えない!?
と、ドキドキしながら読んでしまいました。
続きを楽しみにしております(((o(*゚▽゚*)o)))
  • posted by Norah 
  • URL 
  • 2014.03/04 23:06分 
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  • posted by  
  •  
  • 2014.03/05 17:58分 
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No title 

悪どい水月さんがとっても気になります
夕鈴がどんな事に巻き込まれるかハラハラドキドキです
あーどうなるんでしょうか…
正座して待ってます!
  • posted by 名無しの読み手 
  • URL 
  • 2014.03/05 20:43分 
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Re: 氾パパ!? 

Norah様

果たして水月さんはこのままヒール(悪役)で終わるのか!?
いやいや、さすがに氾大臣のように腹黒くはない…と思います(*_*;
比較的好きなキャラなので、後々出て来れなくなるような事はさせないように気を付けます(爆)
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2014.03/12 22:32分 
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Re: タイトルなし 

彩華様

コメントありがとうございます♪
ブラック水月、良いですか?
課長には負けずに頑張って頂こうと思います(^v^)
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2014.03/12 22:43分 
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  • [Res]

Re: No title 

名無しの読み手様

いつもコメントありがとうございます!
水月さんには彼なりの思いがあって、こんな事しています。
夕鈴の身に危険がせまったら、課長がきっと助けてくれるはずです(^^♪
正座じゃなくて、座布団敷いて足崩してゆっくりお待ち下さいね☆
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2014.03/12 22:58分 
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