兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 5

眠い…。

こんな時間ですが、五話目をお届けします。
書ける時に書いて、さっさとアップしないとね!

あれれ?
今回も、水月さんも婚約者も出て来ません…。
どんどん長くなりそうな予感(*_*;

ツッコミ所満載だと思いますが、気にならない方だけどうぞ。
ご無理はなさらずに~。


***




寝間着からスーツに着替え、長い髪を梳き一纏めに括る。
うっすらと化粧を施し、鏡で自分の姿を確認した夕鈴は、覚悟したようにヨシッと頬を軽く叩いた。

時刻は朝の6時30分。
早く朝食を食べないと、出勤時間に間に合わなくなる。

大丈夫、大丈夫。
出張でホテルに泊まって、朝食を共にすると思えば良いわ…!

意を決して部屋を出たはずなのに、いざ入ろうとするとドキドキして尻込みしてしまう。
恐る恐ると言った感じで、入り口から中をそっと覗き込んだ。

コーヒーの香りが漂う、明るいキッチン。
そこには、入社当時からずっと好きだった上司の姿があった。


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 5


テーブルの上にはトーストとサラダとスープ。そしてミルで豆から挽いた、夕鈴が自宅で彼にいれたインスタントとは比べ物にならないほど香り豊かなコーヒー。

長い脚を組み、英字新聞を読みながら朝食をとっている彼から目が離せなくなる。
頬を染めぽうっと見つめていると、
「…おはよう。」
「おっ、おはようございますっ!」
「お前は何をしているんだ?早く来て飯を食え。」
いつまでもそこから動かない夕鈴に気付いた黎翔に、呆れたように声を掛けられた。

チンッと飛び出してきた焼き立てのトーストにバターを塗り、鍋からスープを注いだ夕鈴は『いただきます』と手を合わせて食べ始める。
豆をふんだんに使ったコーヒーは黎翔の好みで、夕鈴には苦すぎて飲めない。コーヒーは砂糖を何杯も入れて、クリームと牛乳を最後に入れる。と言うと、彼は「それはもうコーヒーじゃないだろ…」と顔を顰めてしまった。

白黒を基調としたシックな感じの広いキッチン。黎翔が座っている椅子の背には黒いエプロンが掛けられている。
食器洗い乾燥機付きのシンクはピカピカ光っていて、様々な調理器具も並び、高級感に溢れていた。
――そう、ここは彼の自宅なのだ。

何故夕鈴が上司である黎翔のマンションにいるかというと、その原因は昨日起こった出来事だった。


絶対に部屋から出ないように言われ、出て行った三人を待つ事一時間近く。
パトカーのサイレンの音や、沢山の話し声が隣から聞こえていたが夕鈴と明玉は彼らの言葉を守りじっと待っていた。
ようやく帰ってきた三人にインスタントではあるがコーヒーとケーキを出し、事の顛末を聞いた後。

「…汀、お前引っ越す気はないか?」

畳の上に胡坐をかいてコーヒーを飲んでいた黎翔がそう聞いて来た。

「え?どうしてですか?犯人も捕まったんですよね?」

隣の部屋の住人が下着泥棒の犯人だった事には驚いたが、夕鈴は気味悪さはあっても恐怖をあまり感じていなかった。逮捕されたその住人は、すぐにこのアパートを出る(というか追い出された)ようだし、その他にここに住んでいて不便な事はない。

「お前なあ…もっと危機感を持て。お前を階段から突き落とそうとした奴や、尾行している奴らはまだ捕まっていないんだぞ?」

狙われているのは夕鈴なのに、彼女があまりにもあっけらかんとしているので、黎翔は拍子抜けする。

「でも、課長達が護ってくれてますし、大丈夫ですよ?」

きょとんとしている夕鈴に、皆が呑気だなと溜息を吐く。

「防犯面が甘過ぎるんです。警備する側としても、もう少しセキュリティがしっかりしている所にいて下さる方が助かるのですが…。」

困ったように克右が言う。
ずっと家の傍で見張るという事は出来ない。こんな、すぐ侵入出来てしまうようなアパートでは、不安要素が多過ぎる。

「…私が、傍にいてやれたら良いんだが…。」

ポツリと呟いた黎翔に、夕鈴は真っ赤になって首を横に振る。

それはそうだろう。夕鈴の部屋はキッチンとバストイレ、そして六畳ほどの狭い一部屋だけ。アクシデントで一度泊まった事があるが、この狭い部屋に若い男と女が暮らすとなると、色々と問題も生じてくる。
夕鈴だって、いつも口煩い上司が同じ部屋に寝泊まりするなんて嫌だろう。

「ただでさえ忙しい課長に、そんな迷惑掛けられませんっ!」

ブハッと浩大が噴き出した。

(そっち!?そっちなの!?一緒の部屋にいて、襲われるとか思ったりしないの!?夕鈴ちゃん…!)

夕鈴の全く違った考え方に、浩大は口元を拭きながら思う。
色々突っ込みたかったが、黎翔に睨まれてしまったので諦めた。

結局、黎翔のマンションの方がセキュリティーがしっかりしているし、空いている部屋もあるという事で、夕鈴が彼のマンションに行く事になった。

家賃や食費・光熱費の事でまた一悶着あったのだが、食費だけを半分払うという事で落ち着いた。
今回の騒動が治まるまでの間だけで、そう長くいるわけではない。
黎翔としては払ってもらわなくても良かったのだが、夕鈴がどうしてもダメだと言い張った。
家賃と言ってもこのマンションは黎翔の持ち物なので、別に払ってもらう必要はない。だが金額を聞けば、夕鈴が卒倒するのは間違いないだろう。

「じゃあ、こうしよう。私は掃除が苦手だ。マンションにいる間、手の空いている時間だけで良い。部屋の掃除をしてもらいたい。」
「家政婦さんとか、雇っていないんですか?」
「どうしてもの時には雇うが、部屋には出来るだけ知らない人間を入れたくない。」
「…分かりました。」

押し問答の末、ようやく話が纏まった。

「課長の所ならセキュリティー万全だからな!」
「朝は課長が送って下さるので、私は情報収集の方に回ります。」

ホッとしたように笑った浩大と克右に、夕鈴もこれで良かったんだと思うようにした。

初めて訪れた課長の自宅。夕鈴は目を見開いて、そびえ立つマンションを見上げた。
最上階の彼の部屋までエレベーターで上がり、指紋照合なんて初めて見たと、夕鈴は何もかも珍しく、キョロキョロしながら課長の後ろを着いて行った。

確かに部屋は沢山あった。夕鈴は使われていない一室を与えられた。
所謂ゲストルームで、スプリングが程よく効いたダブルベッドが鎮座していて、バストイレもある。
至れり尽くせりだと、夕鈴は所在無さげにベッドに座り途方に暮れた。
高級ホテル並みの部屋を見て、これならビジネスホテルに泊まった方が良かったかもと思う。

夕食は外で食べてきたので、リビングで今後の話をした後、黎翔と別れて部屋に入った。
お互いの生活には干渉しない、という事になっているが、すぐ近くに好きな人の気配を感じて夕鈴は落ち着かなかった。
けれど、身体は疲れていたのだろう。
シャワーを浴びて、ベッドに横になったらすぐに睡魔は訪れた。

もそもそとパンを食べながら、夕鈴は向かいに座る黎翔を観察していた。
ネクタイをキチッと締めたいつものスーツ姿で、ただ上着を着ていないだけ。見慣れているはずなのに、どうしてこんなにドキドキするのだろう?

食べ終えて新聞から顔を上げた黎翔は、向かいに座る部下がトーストを食べながら自分を見ているのに気付く。

「…何だ?」
「いえっ、何でもありませんっ!」

ブンブン首を振られて、黎翔は「?」と思う。

自分のテリトリーに好きな女がいるのは落ち着かないが、彼女のあの狭い部屋で二人きりで過ごすよりはマシかと思う。
実際には、もう寝静まった時間に夕鈴がいるゲストルームに様子を見に行こうかと思ったのだが、彼女の寝顔を見て何もせずにいられる自信が無かったので止めた。

以前部屋に泊まった時と言い、自分を狙っている男が傍にいる事にも気付かずに呑気なものだと溜息を吐く。
信頼されているのか、そう言う対象として見られていないのか。
黎翔の悩みは尽きない。

コーヒーの代わりに昨日買ってきたオレンジジュースを飲んで、夕鈴は朝食を終えた。

「課長、私洗います!」

シンクに食器を運んで腕まくりしている黎翔に声を掛け、同じように食器を運んで彼の隣に立つ。

「じゃあ一緒にやるか。」

別に食器洗い乾燥機があるので、する必要なかった。
けれど。

「…こういうのも、たまには良いな。」

今までは自分一人だった場所に、彼女がいる。

好きな人と、共にいられる幸せ。
同じ時間を共有出来る事が嬉しい。

「そうですね…。」

思わず呟いた黎翔の言葉を聞いて、夕鈴は嬉しそうに微笑んだ。


続く


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  • 2014.03/17 21:57分 
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Re: こんばんはー♪ 

風花様

お久し振りです~。コメントありがとうございます!
お忙しそうですね…。ご無理なさらず、お身体ご自愛下さい。

5話はシリアスから一転、甘々な感じになってしまいました。登場人物が二人だけの方が、書きやすかったという事もあるのですが、楽しく書けました♪
二人の思いが通じ合って、一緒に住むようになるのはもう少し先ですかね。
まずは『告白』という、大事な手順が残っていますので(^v^)
もうしばらく、ジレジレな二人を見守っていて下さい。

地震、あれから余震もなくホッとしてます。
慣れない事があると(慣れるのもどうかと思いますが)ホントビックリします。
これから何事もない事を祈ろうと思います。
  • posted by 高月慧ネン 
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  • 2014.03/22 21:41分 
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  • 2014.04/30 20:22分 
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Re: 6が… 

通りすがりの読書好き様

コメントありがとうございます。
婚約者6が読めないと言う事で…。
もし、スマホからご覧になられているのでしたら、記事一覧ではなく、目次から各話に飛んで下さい。多分普通に読めると思います。
取り急ぎ、ご報告まで。
もしそれでも読めないようなら、恐れ入りますがご一報下さい。
  • posted by 高月慧ネン(通りすがりの読書好き様へ) 
  • URL 
  • 2014.04/30 20:36分 
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  • 2014.04/30 22:28分 
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Re: 早い対応ありがとうございます! 

通りすがりの読書好き様

ちょうど休みだったので、早くお返事出来ました(^^♪
用件だけと言う書き方が、かえって緊急性を感じました(笑)

慧ネンのスマホも読めない話があったりするんですよね(*_*;
記事一覧で見た時だったので、同じだ!と思ったのですが、逆でしたか(-_-)
色々あるのですね…m(__)m

また何かあるかもしれませんが、これにめげずに読んで頂けたら嬉しいです。
更新も頑張ります~(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(通りすがりの読書好き様へ) 
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  • 2014.05/03 21:47分 
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