兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 7

早く完結させて、次の話に進まなければ!と意気込んだら書けました。
この調子で進んでくれたら良いなと思います。

甘いのか暗いのか良く分からないないようになってしまいましたが、どんな話でも許せるオールマイティな方だけどうぞ!

こいつら何で付き合っていないの!?と度々頂くコメントを今回も頂きそうです(^^♪


***




部下から上がってきた報告書を見て、黎翔はイライラしながら指でトントンと机を叩く。

営業三課 ○○
庶務課 ××
総務課 ○×

そこには数名の男女の名が記されている。

黎翔が部下の夕鈴と共に出社したあの朝から、すでに社内では二人は同棲しているのでは?と噂が立っていた。自分はともかく夕鈴の身に何か危険があるかもしれないと、彼は自分の部下達に彼女を警護して欲しいと頼んだ。
この報告書には、夕鈴に何かしら仕出かそうとした者の名前が上げられている。

思った以上にその数は多く、黎翔は溜息を吐く。
ただでさえ危ない目に遭っているのに、夕鈴がこれ以上嫌な思いをするのだけは阻止しなければと思った。


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 7


大会社・白陽コーポレーション。そこで働く社員は多く、同じ建物内に居ながら顔も名前を知らないという社員もいる。
夕鈴はこのところ、初めて会う社員にいきなり声を掛けられたり、美人な女性社員にジロジロと不躾に見られたりする事があった。
原因は分かっているが、あまり気分の良いものではない。

そして彼女自身は気付いていないが、良からぬ事をしようとしてくる輩も増えた。
男性社員に言葉巧みに人気のない場所に誘い込まれそうになったり、階段上で女性社員に背中を押されそうになったり。

そのたびに近くに居る明玉達や、一課の男性社員が声を掛け今の所事なきを得ている。

黎翔のマンションで暮らすようになって、一週間がたっていた。
帰宅途中にスーパーに寄ってもらって、晩ご飯の材料を仕入れるのも日課になった。

マンションに来た初日はバタバタしていて、夜は外食で済ませ朝食も黎翔が作ったが、次の日から時間が取れれば夕鈴がキッチンに立っていた。

互いの生活には干渉しないという条件だったが、夕鈴は多忙な彼に出来るだけ迷惑を掛けたくなかった。
テーブルに並んだ料理に黎翔は目を丸くしていたが、食べてみて驚いたように「美味い」と言ってくれた。
好きな人に褒められて、夕鈴はとても嬉しかった。

三日目には残り物でお弁当も作ってみた。
キッチンのシンク下に、あまり使われた様子の無い弁当箱を見付けたからだ。
社員食堂も安くてボリュームがあるが、夕鈴は時々お弁当を持参していた。自分の分を作るついでだし、大して苦労もない。
渡した時、ちょっとだけ彼が狼狽えているように見えたのはきっと自分の気のせいだろう。
耳朶がほんの少し赤くなっていたのは、きっと自分の見間違いだろう。
うん。きっとそうに違いない。

そんな事を夕鈴が思っているとは知らず、黎翔は今日も渡された弁当を食堂の隅の席で広げていた。
共にいる部下の男性社員達の顔がニヤニヤしている。

「今日も美味そうですね~。」
「羨ましいっス。」

自分も愛妻弁当を突いているくせに、狙うように弁当を覗いてくる年上の部下。
作ってくれる恋人もおらず、今日も安い定食を食べている若い部下が羨ましそうに男泣きをする。

「お!今日も愛妻弁当!ちょっと分けてくれよ!」

呑気な声でそう言いながらやって来たのは、二課課長の浩大。
こちらも本日の定食をトレーに乗せている。

黎翔の隣に座っていた部下が、気をきかせて空けた席に浩大は座る。

「悪いな。」
「いえ。」

彼は近くの席から椅子だけ運んできてそこに腰を落ち着けた。

「…やらんぞ?」
「ちぇっ、ケチ~。」

ぶうぶう文句を言いながらそれでも諦めずに箸を伸ばしてくる浩大と、そんな彼から夕鈴が作った弁当を死守しようとする黎翔。
そんな二人を見て、テーブル席には絶える事無く笑い声が起こる。

こんな風に黎翔も部下達に冷やかされているという事実を、夕鈴はまだ知らない。


「…別に無理する事はないんだぞ?」

この日は残業をしていて遅くなったので、スーパーに寄ったのは20時を回っていた。
黎翔は店内をくまなく回る夕鈴を後ろを、カゴを持ってついて行く。
鮮魚コーナーで見切り品を吟味している彼女に、残業で疲れた日に無理して晩飯を作らなくても良いと声を掛ける。外食すれば手間も時間も掛からないのにと黎翔は思う。

くるっと振り返った夕鈴は、ちょっと怒ったように口を尖らす。

「自分で作った方が安く済みます!課長は外食にお金を使い過ぎです!」

彼はよく高級レストランに夕鈴を連れて行く。
確かに初めて食べる料理ばかりでとても美味しいけれど、節約を趣味にしている夕鈴は勿体無いとも常々思っていた。

今夜はとても冷えるので、寄せ鍋にでもしようかと思う。
すぐ作れるし、確か土鍋もあったはず。
卓上コンロがあればこたつに座って鍋を突けるのだが、生憎卓上コンロもこたつも彼の部屋にはない。

(今度買ってもらおうかな…。)

思わずそう思ってしまって、夕鈴は慌てて首を振る。
恋人ならともかく、今だけ厄介になっている身。
最近課長が優しいから、つい欲が出てしまった。
恋人同士なら、それも許されるだろうけれど。

(バカみたい…。)

赤くなった頬を抑える。
自分の考えに凹んで、涙が出た。

カサカサと腕に掛けたビニール袋が音を立てる。
夕鈴は必死に自分が持つと言ったが、それをさせる黎翔ではなかった。

スーパーの袋から白菜や水菜など、背の高い野菜が顔を覗かせている。
遅くなる時には大抵外食で済ませるので、こんな時間に、しかも普通のス-パーに来る事もなかった。
駐車場に向かう自分の隣には、密かに想いを寄せる部下の女性。

これから一緒にマンションに帰って、共に食事をして…。
そう考えて、黎翔は少し苦笑いをする。

この想いを、まだ伝えてもいないのに。
ただの上司と部下の関係なのに。
家族でもない者と、同じ家に帰って一緒に食事をするなんて何だか変な感じだ。

今まで付き合ってきた女達は、誰一人としてマンションに連れて来た事はない。
黎翔にとって、心から愛する女性がいなかったからだ。

あの日、彼女に出会って。
黎翔の心の中に、静かに住み着いた。

社会人になった彼女と再び会って、共に仕事をして。
今のような関係になるまで一年、再会してもうすぐ二年が経とうとしている。
彼女への想いは、どんどん大きくなっていく。

この想いを伝えた時、彼女がどう反応するのか。
それが怖くて、なかなか動けずにいるなんて。

(私らしくない…な。)

こんな私を、汀は哂うだろうか?

隣を歩く彼女の表情からは、その心を読めない。
そう思いながら、黎翔は自嘲した。

購入した食材を後部座席に置き、運転席に乗り込む。助手席に座った夕鈴がきちんとシートベルトをしたのを確認してから、黎翔は車を発進させた。

その直後、少し離れた場所からスーパーには不釣り合いな黒塗りの高級車が音も無く動き出した。
そして適度な距離を保ち後ろを着いてきていた事に、黎翔と夕鈴は気付かなかった。


目的の車は何処にも寄らずに、真っ直ぐに一つのマンションの地下駐車場に滑り込んでいく。
運転手に命令してマンションの傍に車を停車させた水月は、隣に座る妹の横顔を見詰めて心を痛めた。

今にも泣き出してしまいそうなほど、悲しげな表情。
それはそうだろう。
自分の婚約者が、別の女性と共に帰宅して来たのだから。
しかも仲良くスーパーで買い物をして。

妹の婚約者である珀黎翔が、ご熱心だと言われている汀夕鈴。
彼女の身辺を調べているうちに、自分以外にも周辺をうろついている輩がいる事に気付いた。

彼女の身に危険が及ぶ事を恐れた黎翔が、目の届く場所・自宅マンションに連れ帰ってしまった。彼女の傍には、いつも彼の存在がある。
お陰で水月も、思うように動けなくなった。

このままではいけないと思う。
早く二人を引き離さなくては。

妹・紅珠はとても可愛く、教養も兼ね備えた素晴らしい女性。
珀黎翔にはすでに婚約者がいるという事を、汀夕鈴に思い知らさなければ。

黎翔が汀夕鈴を手放さないのなら、彼女の方から離れていくように仕向けよう。
そのためには、紅珠の力が必要不可欠だ。

昏い感情が心を埋め尽くしていく。

この子が幸せになれるのなら、私は何だってしよう。

水月は隣にいる妹の肩に手を回し、そっとその身体を抱き寄せた。


続く


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  • posted by  
  •  
  • 2014.04/03 12:35分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: No title 

名無しの読み手様

いつもコメントありがとうございます!
原作ではニート気質な(笑)彼が動き始めます。でも彼らしく表だってはせずに裏から?
紅珠の性格は、好きなキャラなのであまり酷くないものにしたいなあと思っています。

課長はご存じの通りヘタレなので、ご希望通りにはいかないかも?
せっかく両想いなのにねえ…(*_*;
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2014.04/09 18:46分 
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