兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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狼陛下の『花嫁』選び・其の二

其の一をアップした途端、沢山の拍手やコメントを頂きとても嬉しいです。

古い作品にも拘らず、根強い人気。
続きを希望して下さる方も沢山いらっしゃいます。
ご期待に沿えるか分かりませんが、出来る限り頑張ろうと思います。

それでは二話目をお届けします。

※間もなく33000hitを迎えます。
ご訪問して下さる皆様、本当にありがとうございます


***



狼陛下の『花嫁』選び・其の二


色とりどりの花が咲き乱れる後宮の庭、の片隅で。夕鈴は地面に座り込んで一人の青年との会話を楽しんでいた。ピチピチ、チュンチュン…小鳥のさえずりが聞こえる、暖かい午後。

あの満月の日から一週間が過ぎていた。

怒涛の日々だった、と夕鈴は思う。朝起きれば夕鈴に付いている二人の侍女に、衣装を着せられ髪を結われ、国王・珀黎翔と他の六人の妃候補者達と大広間で朝食。

国王が政務中の間は自由な時間が与えられるが、後宮より出る事は禁止されている。お妃教育もさせられ、慣れない事尽くしの夕鈴は毎日夜にはグッタリと寝台に突っ伏していた。

『私は妃になんてなるつもりはないから、お妃教育なんか必要ない!』

「…なんて、言える訳ないものね…」

清潔で柔らかいシーツに頬を押し付け、夕鈴は一人ごちた。そんなことも言おうものなら、何故参加したのかと言うことになり、不審な者として拘束されるかもしれない。

他の候補者達は自分磨きに余念がなく、後宮を訪れる商人などから新しい衣装や簪を見繕ったりしていた。だが夕鈴は、そんなものには興味がない。

時間と暇を持て余し、このまま部屋に閉じ篭っていては可笑しくなりそうだと思い、許可を貰って庭に下りた今から3日前、夕鈴は一人の青年と出会う。


今日と同じようにぽかぽかと暖かい日の午後、庭に下りた夕鈴は細い猫の鳴き声を聴き周囲を捜索した。庭の少し奥まった場所、一本の樹を見上げると、そこには幼い子猫が。どうやら登ったのは良いが、降りれなくなったようだ。

「大丈夫。すぐに助けるからちょっと待っててね。」

衣装はヒラヒラして登りにくいが、木登りには自信がある。危なげなく子猫の場所に辿り着き、夕鈴は震える小さな身体を胸に抱き寄せた。

「動かずに待っててくれたのね。良い子ね。」

落ちないように小さな命を胸に抱え、さあ降りようと思ったその時。

「――そこで何をしている。」

突然掛けられた低い声に夕鈴はビクリと震えた。枝に掛けていた足が、ズルリと滑る。

「きゃあ!!」

落ちる、と思った瞬間には、夕鈴の身体は宙に投げ出されていた。

子猫がいたのが高い位置だったので、地面までかなりの高さがある。ここから落ちたら、こんな小さな命など消えてしまうかもしれない。

(…この子だけは守らないと…!)

自分の身体が地面に叩き付けられるのを覚悟で、夕鈴はギュッと子猫を胸に抱き込んだ。

次に夕鈴の身体が感じたのは、叩き付けられる筈の硬い地面の感触ではなく、暖かい人の感触。そして、「大丈夫?」と言う心配げな声。

恐る恐る下敷きになっている人を見ると、多少の痛みがあったのか「いたたた…」と呟く一人の男。

「ご、ごごご、ごめんなさーい!!」

状況を確認し、夕鈴は男の上から飛びのいた。

「あ、平気平気。僕の方こそきちんと受け止めてあげられなくてごめんね。」

よいしょ、と身体を起こした男は、夕鈴に笑みを向けた。

「え、えっと、貴方は一体…」

夕鈴は困惑しながら青年に聞いた。助けてくれた彼は命の恩人だが、ここは白陽国の後宮。本来国王・珀黎翔以外男は入ってはならない。それなのに何故、彼はここにいるのか。

夕鈴が困惑するのには、もう一つ訳があった。目の前の青年は、珀黎翔に瓜二つなのだ。着ている衣装は豪華なもので、その紅い瞳も同じ。

だが決定的な違いが一つ。冷酷非情と言われる珀黎翔が見せない、暖かな笑みだった。

困惑する夕鈴に、青年はにっこり笑って告げた。

「僕は珀 黎夾(れいきょう)。この国の王、珀黎翔の弟だよ。」

その日から、夕鈴は午後のこの時間帯に、黎夾と会って話をするようになった。


夕鈴の膝の上には黒い毛並みの子猫。夕鈴が樹の上から助け出したあの猫だ。身体に付いていた土や汚れを落とすと、子猫は真っ黒な美しい毛並みの雌猫だった。

いつの間にか黎翔に話がいったらしく、後宮の夕鈴の自室で飼う事を許された。

彼女の名は黎鈴(れいりん)。

――自分達の出会いのきっかけになったから、と黎夾が名付けた。

野良である筈の黎鈴を後宮で飼うことが許されたのは、きっと隣に座ってニコニコしながら自分に話しかけてくるこの青年が、陛下に掛け合ってくれたのだろうと夕鈴は嬉しく思う。

チラリと、夕鈴はその正端な横顔を見る。

「何?」

見ていた事に気付かれた夕鈴は、焦ったように顔を真っ赤にする。

首を傾げ夕鈴を見る表情はまるで子犬のよう…なのだが。

「いえ…、黎夾さんって、ホント陛下に似てるなって思って…」

「まあ、弟だしね…。『血は水よりも濃い』っていうし、似ているのは仕方がないよ。」

「でも双子でもないのに似過ぎじゃないですかっ?私初め陛下かと思って吃驚したんだからっ」

プウッと膨れる夕鈴に、黎夾は「ごめんごめん」と謝る。

その日は翌日に会う約束をして別れ、二回目に会った黎夾は。下々の人間が着るような質素な服に身を包み、出会った場所で夕鈴を待っていた。

「待ってたよ、夕鈴!」

ニコニコ笑う彼はとってもとっても嬉しそうで、ご主人様に会えたのが嬉しくて堪らない子犬そのものに見えた。

あの時掛けられた冷たい声や、豪華な衣装に身を包んだ彼は確かにあの『狼陛下』に見えたのだが、今の彼を見ていると別人のように思えてくる。

何故なら黎夾は、良く話すし良く笑うのだ。

黎夾は何故か夕鈴の話を聞きたがるので、自分の話のどこが面白いのだろうと思いながらも彼に話してあげた。自分の事、家族の事、友達の事、今までの生活の事。

黎夾は時々相槌を打ちながら、嬉しそうに夕鈴の話を聞く。
彼に出会ってたった数日で、夕鈴にとって黎夾と会えるこの時間は大切な時間になっていた。

「…それにしても夕鈴って、変な子だよね。他のお妃候補者達は自分磨きに金を掛け、兄(陛下)に媚を売っているのに。全くそれをしないで、読書に掃除、僕とこうして話をするのに時間を割いてくれる。」

王族である彼は兄・黎翔の周囲の事も把握しているようで、不思議そうに夕鈴に聞いてきた。

やっぱり周りから見たらそう思われるのかな…と思いつつ、夕鈴は苦笑いしながら言葉を返した。

「…私、そういうの興味ないんです。今回だって父に頼まれて仕方なくだし、自分にお妃様になれるような技量とか教養とか無いって分かってるから。こうやって黎鈴を膝に抱いて、黎夾さんとお話しする方が楽しく過ごせます。」

「ね?」と、黎鈴の小さな頭を撫でる夕鈴。そんな彼女を黎夾は眩しそうに見つめる。

「…いいな…」

小さな呟きに反応し夕鈴が顔を上げると、羨ましそうな表情の黎夾。紅い瞳が『僕も撫でて』と言っているようで、夕鈴はふわりと微笑んで見た目より柔らかい彼の頭を撫でてあげた。

完全な不意打ちに、黎夾は目を点にした後、少し頬を染めて困ったように笑った。


ああ…、こんな日が、いつまでも続けばいいな…

感じた事が無い暖かさに包まれ、黎夾はそう思った。


続く


黎夾って誰?オリキャラ!?って思う方もいるかもしれませんが、分かる方には分かる筈…(^^♪


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Comment

 

其の二がこんなに早い更新だなんて、嬉しいです^_^
ありがとうございます💕
  • posted by まぎっち 
  • URL 
  • 2014.04/09 23:33分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

まぎっち様

コメントありがとうございます♪
実は以前のブログからコピペしているだけなので、早いのです…。
待っている方がいらっしゃるので、早めにアップしていきます(^^♪
  • posted by 高月慧ネン 
  • URL 
  • 2014.04/10 00:14分 
  • [Edit]
  • [Res]

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