兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 9

こんばんは。

昨日、一昨日と、沢山の拍手を下さりありがとうございました

弱気になっていた心を奮い立たせてもらいました。
毎日更新と言う事は出来ませんが、書き上がったらアップ出来るように頑張りたいと思います
いつもの事ですが、拍手コメントのお返事はもう少しお待ち下さい

さて今回のお話ですが、少しだけ痛いシーンがあります。
血の表現などが苦手な方は、読まない事をお勧めします。

大丈夫な方だけ、どうぞ!

※このお話を書いている間に、34000hitを迎えていましたご訪問して下さる読者様、本当に感謝いたします


***



「…汀、悪い。今日も一緒に帰れないから、克右に送ってもらえ。」

終業時間を過ぎた後、まだ忙しそうにしている課長に呼ばれそう告げられた。

「――分かりました…。」

どんなに寂しくても、夕鈴にはそう返すしかない。

「多分遅くなるから、先に寝てて良いからな。…飯はちゃんと食えよ?」

心なしかシュンと落ち込んだように見えて、黎翔はそんな夕鈴に困ったようにそう言った。


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 9


課長の婚約者だと言う氾紅珠が会社に来た日以来、夕鈴は一人で帰る事を余儀なくされていた。彼の部下である徐克右や、営業二課課長・浩大にマンションまで送ってもらう日が続く。

課長と一緒に帰っていた時にはスーパーに寄って仕入れた食材で自炊していたが、彼と一緒に帰れない日は自分一人のために食事を作るのも何だかめんどくさくなって、ついつい軽い物ですましてしまう。

一人でいる事には慣れているはずなのに、課長が傍にいないだけでこれかと夕鈴は自嘲する。
なんだか、自分らしくない。

課長の帰宅が遅くなる原因、仕事が忙しいのも確かだが、夕鈴は気付いていた。
そこに、氾紅珠が関係している事に。


やってもやっても終わらない仕事にウンザリしながら、黎翔は溜息を吐く。
今までは仕事が終わればすぐに帰宅出来ていたのでまだ良かった。
部下の夕鈴の警備上・自宅マンションで共に住み始めてからは、一緒に帰るのも並んでキッチンに立って料理をするのも楽しかった。

憂鬱なのは、仕事が終われば氾紅珠と食事に行かなければならない事。
どういうわけか、今まで何も言わなかった彼女の父・史晴が頻繁に連絡を寄越すようになった。

氾エンタープライズは、社にとって大きな取引相手。
そこの取締役に「娘も交えて共に食事でもどうか?」と言われると、黎翔としても無下には断れない。

紅珠と食事をして、彼女を自宅に送ってから帰宅すると深夜近くになる。

紅珠が社に来たあの日、終業後共に食事に行って帰ると、夕鈴は晩飯も食べずに待っていてくれた。
「あまり食欲が無くて…」と苦笑いした彼女に、スマホでレシピを検索して雑炊を作った。
らしくない事をしている自覚はある。けれど、彼女のために何かしたかった。

同じマンションに住んでいるのに、最近は朝少ししか顔を合わせ事が無い。

もちろん社内では一日中顔を見れるが、仕事とプライベートは分けなくてはいけない。
なのに、彼女の顔色や表情が気になって仕方がない。

今日はこのまま帰ってしまおうかと車に向かっていると、目の前に高級車が滑り込んだ。

「…やあ、迎えに来たよ。」

顔を覗かせてそう言ったのは氾史晴。その隣に娘の紅珠も座っている。
憂鬱な気持ちになり、黎翔は二人に気付かれないように溜息を吐いた。


いつもと同じように定時で仕事を終えた夕鈴は、寄ってもらったスーパーで買い物をして帰宅した。
今日も食欲が無いが、食べないと課長に心配を掛けてしまう。
凝った物は作る気になれなくて、一人用の鍋の素と鍋用のカット野菜を購入した。一人で食べても味気ないし、簡単なもので済ませようと思う。野菜を切らなくても良いから、洗い物も少なくて済む。

毎日自分を警護してくれる克右に、エレベーターの前で「ここで良いですよ?」と微笑む。

「いや、しかし…。」
「大丈夫です!エレベーターを降りたら部屋まですぐですから!」

渋る彼に平気だと返す。
夕鈴は知っている。自分をここに送り届けた後も、克右は遅くまで仕事をしている事を。それはもちろん今回の事件の犯人を調べているのだ。

それなのに、長々と彼の貴重な時間を奪ってしまって申し訳ない。
小さな子供でもあるまいし、後はエレベーターに乗って部屋に入るだけだから一人でも大丈夫だ。

頭を下げる克右に手を振って別れて、夕鈴はエレベーターに乗った。

エレベーターの僅かな揺れに身を任せていると、階の途中で男が一人エレベーターに乗ってきた。
マスクをしていて顔は見えないが、おそらく4、50代くらいの中肉中背の男だ。

このマンションに来てからここの住人と顔を合わした事が無かったため、夕鈴は少し驚きながらも小さく会釈した。

黎翔の部屋がある最上階に着き、男に頭を下げてからエレベーターを降りようとした夕鈴は、

「―――っっ!!?」

グイッと腕を引かれ、再びエレベーターの中に引き摺り込まれた。

後ろから羽交い絞めにされ、口を塞がれる。突然自分の身に起こった危機に呆然とする夕鈴の前で、無情にも扉は閉まり男と二人、中に閉じ込められてしまった。

「ん~っ、んぅ~っ!」

「…静かにしろ。」

ジタバタ暴れる夕鈴の喉元に、小さな果物ナイフがピタリと当てられる。
チクリとした痛みに蒼褪めた夕鈴は抵抗を止めた。

「…珀黎翔の女だな?」
「――っ!?」

男の口から出た上司の名に、夕鈴はビクッとする。

「あんたには何の恨みもないが、ヤツを誘き出す人質になってもらう。」

男は防犯カメラに写らないように上手く死角に入ると、一階のボタンを押した。

(この人の狙いは、私じゃなくて課長なの?)

『彼を誘き出す人質』と男は言った。自分を誘拐して、助けに来た課長に危害を加えようと言うのか。
自分の存在が、課長を危険に晒す。

(――そんなのは嫌っ!!)

彼の枷になるくらいなら…!

ギッと、夕鈴の瞳に力が宿る。

ポーンと音を立て、一階に着きエレベーターが止まった。
ナイフを当てたまま、夕鈴に一緒に下りるように促す。羽交い絞めした腕を解き横に並べば、カメラにはたまたま出くわした住民同士が共にいるようにしか映ららないだろう。
歩き出した男は、彼女が足に力を入れ踏ん張った事でたたらを踏んだ。

機会を窺っていた夕鈴は、その一瞬を見逃さなかった。

男に襲われた時も運よく落とさなかったスーパーの袋を、男に向かって振り回す。喉に鋭い痛みが走ったが夕鈴は気にしなかった。このままこの男を、野放しにするわけにはいかない。

いきなりの攻撃に驚いて離れた男の急所を、容赦なくハイヒールで蹴り上げる。
痛みにもんどり打っていた男は、バランスを崩して倒れ込んだ夕鈴を血走った眼で見た。

「こンの、アマ…!!」

殺意に満ちた目に夕鈴がゾッとした時、帰宅して来たらしい住民の悲鳴がエントランスに響く。
男は舌打ちすると、顔を伏せて走り出した。

黎翔の自宅マンションの傍に止めた車に背を預け携帯電話で話していた克右は、突然響いた悲鳴にハッとした。
何事かとマンションのエントランスを見ると、少し腰を曲げた男が飛び出してくるのが見えた。
男は克右の姿を見て焦ったように向きを変え、反対方向に向かって走り始める。

慌ててエントランスに向かうと、飛び出してきた夕鈴とぶつかりそうになった。
彼女の首からは血が流れていて、克右はサッと表情を変える。

「娘さん!…何があった!?」
「――克右さん!!」

まだ克右がここにいた事に驚いたが、夕鈴は力強い味方を得てホッとする。
キョロキョロと視線を動かすと、道の先によろよろと走る男の後ろ姿が見えた。

「あの男を逃がさないで…!!」

男を指さし、捕まえてくれと克右に頼む。
課長に仇なす男を、このまま逃がすわけにはいかなかった。


続く


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よろしくお願いします。

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