兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 11

慧ネンです。

最近右肩から腕にかけて、痛みが酷いです。
筋肉痛と非常に似ていますが、特に何もしていません。
SS書いている以外は

毎日痛いので仕事の日には、市販の鎮痛剤を飲んでます(*_*;
早く治らないかな~

さて、婚約者(フィアンセ)の続きをやっとお届けできます

今回はちょっと早い展開です
そして水月さんが黒いです。
方淵も出ます。

色々ツッコミ所満載ですが、気にならない方だけどうぞ


***




レストランの前で呆然と佇む紅珠の前に、黒塗りの高級車が横付けされる。

「お父様…。」

乗り込んだ彼女は、父史晴に抱き着いた。

黎翔に置いて行かれた紅珠は、フロントでタクシーを断り、父親に迎えに来てもらった。黎翔がどうして突然帰ってしまったのかも分からない。

一緒にいても彼は全然楽しそうではなくて、会話も弾まず、ただ事務的に時間を共にしていると言った感じだ。
彼が、部下の女性――汀夕鈴と一緒にいる時に見せるような、あの優しそうな笑顔を見てみたいのに。

ジワリと浮かんできた涙を見られたくなくて、紅珠は父の胸に顔を押し付ける。
静かに泣いている娘を、史晴はそっと抱き締めた。


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 11


白陽コーポレーション第一営業課課長・珀黎翔に恨みを持つ男に、誘拐されそうになったあの日から5日が経とうとしていた。翌日は院長先生の言う通り仕事を休んだ夕鈴だったが、金曜日からは普通に出勤している。

一課の面々は夕鈴の身に起こる物騒な事件を知っているので、首に巻かれた包帯を見て心配し、労わりの言葉を掛けてくれた。

その週末は夕方病院に行った後、親友明玉の家で同僚数人とお泊り女子会を実施。
週明けて月曜日、慌ただしい一週間が始まった。

「…汀夕鈴さん。」

営業三課に書類を届けに行っていた夕鈴は、通路で男性社員に声を掛けられた。
振り返った夕鈴は、「あ…」と目を見開く。
先輩の旅費精算書を経理課に持っていったとき対応してくれた…。

「水月さん。」

夕鈴はぺこりと頭を下げる。
一緒に来ていた同僚は、にこやかに会話をする二人を見て危険はないと思い、夕鈴に「先に戻るね」と声を掛けると一課に戻っていった。

日常的な会話をした後、水月は夕鈴に頼み事をしてきた。

その日の業務終了後、近くの喫茶店のドアを潜った夕鈴は、奥のテーブルに手を上げる水月を見付けて歩み寄る。

「ごめんなさい、遅くなりました。」
「そんなに待っていないから大丈夫。こちらこそ急に変なお願いをしてごめんね。」

『――今日仕事が終わってから会ってほしいんだ。出来れば、珀課長に内緒で。』

課長の目を潜り抜けるのは大変だった。今日は社の同僚ではない友達と会うからと嘘をついてここに来ている。

「…それで、お話って何ですか?」


――どうやってマンションまで帰って来たか覚えていない。

「私の名前は、氾水月と言います。」
「氾…。じゃあ紅珠さんの…。」
「ええ、兄です。」

にこやかに微笑みながら、水月は妹・紅珠の素晴らしさを語っていく。

「あの子と珀課長は、そう遠くないうちに結婚する事が決まっています。汀夕鈴さん、お願いです。珀課長と別れてもらえませんか?」
「…わ、別れてって言われても…。私達、付き合っているわけじゃあ…。」

自分と課長はただの上司と部下で、恋人同士ではない。
今一緒に暮らしているのも、危険な目に遭っている部下を心配してセキュリティーがしっかりしているマンションに呼んでくれただけ。

言葉を濁す夕鈴に、水月は首を横に振る。

「貴女は何も分かっていない。…婚約者(フィアンセ)である自分より大事にされる女性がいる。しかも今、同じマンションで暮らしている。貴女が怪我を負った事を知った珀課長は、一緒にいた紅珠をレストランに置き去りにして貴女の元に行った。その時の妹の惨めな気持ちが分かりますか?」

淡々と話す水月はそれでも笑顔だった。
けれど夕鈴には、何故かその表情がとても恐ろしく見えた。


「…遅かったな。」

声を掛けられ、夕鈴はハッとして顔を上げた。
リビングの入り口に、壁に背を預け黎翔が立っていた。

「あ…只今、戻りました…。」

嘘をついて水月と会っていた手前、夕鈴は後ろめたくて俯く。
そんな夕鈴を見ていた黎翔は、溜息を吐きながら問う。

「――飯は?食ってきたのか?」
「あ、はい。」

喫茶店で水月に奢ってもらったけれど。
碌に喉を通らず、ほとんど食べれなかったのだが、今も食べたいとは思わなかったのでそう答える。

「そうか。じゃあ早くシャワーを浴びて寝ろよ。」

そう言って背を向けた課長が何だか素っ気なく感じて、夕鈴は唇を噛み締める。

「――あ、薬を塗って包帯巻き直すから、風呂出たらリビングに来い。」

思い出したようにそれだけを言うため戻ってきた彼の不器用な優しさに、何だか泣きそうになった。

次の日から、夕鈴は水月と会う事が増えた。
別に危害を加えられるわけでもなく、あの日のように「珀課長と別れて欲しい」と言われる事もなかった。
一緒に食事をして、黎翔のマンションまで送ってもらう。

夕鈴が水月といるので、黎翔は紅珠と共にいる時間が増えたようだ。
「妹が喜んでいる」と水月から言われ、夕鈴はこれで良いんだよね?と思う事にした。

課長を想う気持ちに、蓋をしてまで。

数日後、首の傷も良くなった夕鈴は、黎翔のマンションを出て自宅アパートに戻った。


「…良いのか?あれ。」

ちょうど水月に送られてアパートに戻ってきた夕鈴を、近くの道路脇に止めた車の中から見つめる浩大。
助手席にいる黎翔は、水月にエスコートされて車から降りた夕鈴を食い入るように見つめている。

「――あいつが決めた事だ。」

そう言う彼は、何だか泣きそうだった。

『アパートに戻る』と言った夕鈴を黎翔は止めたのだが、彼女の意志は固く無駄に終わった。

「――私の事なんかより、婚約者の紅珠さんを大切にしてあげて下さい。」

数日前、友達に会うと嘘をついて水月と会っていた夕鈴。
その後も一緒にいる事が増えた二人。
それに比例して、自分と紅珠が共にいる時間が増えた。

「奴に何を言われた?奴にそう言えと脅されたのか!?」
「違います!…課長は彼女を幸せにする義務があるでしょう!?」

頑なな彼女と喧嘩別れのようになって、夕鈴はその日、マンションを出て行った。

義務が何だ、親が勝手に決めた婚約者。紅珠に非があるわけではないが、黎翔が愛しているのは、傍にいて護りたいのは、紅珠ではなく夕鈴なのに。

その彼女は、婚約者を大切にしろと言う。

「私の気持ちも知らないくせに…。」

誰に言う訳でもなく黎翔が思わず呟いた言葉。

――気持ちを知らないのは、果たしてどっちだろうね…?

黎翔が知らない夕鈴の気持ちを知る浩大は、想い合いながらも擦れ違う二人が歯痒かった。


夕鈴が黎翔のマンションから出たという報告は受けていた。
その彼女を食事に誘い、黎翔と接する時間を少なくする。
そうすれば、彼は紅珠と一緒にいる事が出来る。

全ては自分の思うように事は進んでいて、水月は満足していた。

沢山の社員達と擦れ違いながら通路を歩いていた水月は、前方に見知った顔を見付けて足を止める。

「――やあ。」

声を掛けると、彼は水月が来るのを待っていたように近付いてきた。

「君の手腕は経理の方まで聞こえてくるよ?優秀な部下がいて、珀課長もさぞ満足しているんじゃないかな。」

にっこり笑う水月に対し、彼――柳方淵は嫌そうに顔を顰めた。

「…一体どういうつもりだ。」
「何の事かな?」
「――しらばっくれるな!」

イライラして方淵は声を荒げた。

「汀夕鈴に近付く理由は何だ?」

睨み付けると、驚いたように僅かに水月は目を見開いた。

「――驚いたね。君が彼女を気に掛けるなんて…。犬猿の仲だと思っていたけど。もしかして、愛情が芽生えちゃったのかい?」
「――馬鹿言うな!」

夕鈴との仲を疑われるなんて心外だと毒づく。

水月は少し考えるように宙を見つめて「そうだね…」と呟いた。

「君も知っている通り、私の父は使えない者には容赦ない人間だ。」

――氾史晴。氾エンタープライズの取締役。

方淵は彼の事を幼い頃から知っていた。
あの優しげな表情の裏に隠された、残忍な心も。

氾家長男として生まれた水月には、家督を継ぐ義務もあった。
けれど彼は会社勤めより、音楽や美術をいった芸術を愛し、のめり込んだ。
父が認めてくれなかった彼の生き方を認めて、励ましてくれたのが妹・紅珠だ。

「…私が好き勝手やっていられるのは、紅珠のお陰なんだよ。」

だから紅珠の幸せは私が護る。
回りに何と思われようと、偽善者だと罵られようと。

「――妹の幸せのために、何の罪もない善良な人間が傷付いてもか?」

汀夕鈴はとても真面目で、裏表のない人間だ。
彼女が黎翔の傍にいる事に、何の罪もない。
確かに方淵は夕鈴の事を認めたわけではないが、課長のために毎日頑張っている事を知っている。

そんな彼女を傷付けてまで、この男は妹を守ろうと言うのか。

「…分かってもらえるとは思ってないよ。」

水月は微笑む。
その笑顔の裏に、父親に似た残忍な心を隠して。

二人を引き離すために、この男は手を染めるかもしれない。

漠然とした不安が、方淵を襲う。

汀夕鈴が珀課長の周りをただ付き纏うだけの目障りな存在だったら、方淵も水月と同じように二人を引き離しただろう。けれど最近の二人を見ていると、むしろ依存しているのは課長の方ではないか?と思うようになった。

それならば、彼女を引き離しても課長は何処までも追い縋るのではないだろうか?

執着にも似た、激し過ぎる愛情。
では、彼女の身に何かあった時、課長はどうなる?

考えれば考えるほど悪い方向に向かってしまって、冷や汗が流れるのを感じる。
ぼんやりしていて横を水月が通り過ぎた事に気付かなかった。

「――とにかく、邪魔はしないでくれ。」

「…おい、待て!!」

ハッとして振り返り、その背中に向かって叫ぶも。

「じゃあ、またね。」

水月は片手を上げてそう言うと、足を止めずに去っていく。
その後ろ姿を、方淵は呆然と見送った。


続く


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No title 

ハラハラして読んでます
水月さんが黒い!でもその黒さには妹紅珠への愛情があるなんて…私好きです!
方淵さんの真っ直ぐな所も良いですけど
水月さんの屈折した愛情も悶える程良いです
でも早く…早く黎翔さん言っちゃえー!
告白しちゃえー!と毎回黎翔さんにも叫んでる私です
更新楽しみにしてます
早く身体を治してください
  • posted by 名無しの読み手 
  • URL 
  • 2014.04/22 23:43分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: No title 

名無しの読み手様

いつもコメントありがとうございます☆
ブラック水月が降臨しました。けれどただ黒いのではなく、そこには妹紅珠への深い愛情が…。
けれど、だからと言って夕鈴を傷付けて良いと言う訳ではありませんm(__)m
方淵はいつでも彼は真っ直ぐで、どんな理由があろうと、間違った事は違うと言う男だと思っていますから☆
水月さんは、原作でも何考えているのか分からないところがありますしね。
課長も相変わらず…。
この話が終わる頃には、誰かの何かが変わると思いたいです。

腕、早く治したいです~。この話を書いた後、また酷くなっていました(*_*;
  • posted by 高月慧ネン(名無しの読み手様へ) 
  • URL 
  • 2014.04/23 01:45分 
  • [Edit]
  • [Res]

はじめまして 

こんばんは。はじめましてm(_ _)m
夕花と申しますm(_ _)m

狼陛下の花嫁が大好きでして、小説を読ませて頂きました。
どの話もとってもよくて、立て続けに読ませて頂いております。
どうか、黒水月が暴走しないように祈っていますm(_ _)m
夕鈴を傷つけないでほしいです。

肩こりが早く治るといいですね。
ではまた(´▽`)ノ
  • posted by 夕花 
  • URL 
  • 2014.04/23 20:49分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: はじめまして 

夕花様

初めまして~(^v^)
拍手コメント、記事コメント両方にありがとうございます(^^♪
立て続けに読んで頂いて嬉しいです。
が、ご無理はなさらないで下さいね(*_*;
文字の羅列ばかりで、目に負担が行きますよ~。

ブラック水月さんを、あまり暴走させないようにしますね。
夕鈴がなるべく傷付かないようにしようと思います(汗)
肩こりは職業病みたいなものなので、完治は難しいかもしれません。
様子を見てみます(*_*;
  • posted by 高月慧ネン(夕花様へ) 
  • URL 
  • 2014.04/26 03:05分 
  • [Edit]
  • [Res]

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