兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 13

夜分遅くに失礼します。

また数日停滞していましたが(誕プレのお礼SSを書いた後、羞恥で地底深くに潜っていました←嘘。)、ようやく続きを書く事が出来ました

こんな時間に何ですが、投下してから寝ようと思います。

ちょっと妙な展開になってきている婚約者(フィアンセ)話です

今回も新たな原作キャラが登場します。
原作のイメージを壊す恐れがありますので、各キャラに深い拘りをお持ちの方は閲覧をお控え下さい

深く考えない方だけどうぞ!

※コメントのお返事がまた少し溜まっています。もう少しだけ、お待ち下さい


***



あの夜から数日たったある日、書類を抱えて社の廊下を歩いていた夕鈴は不意に腕を取られ、未使用の会議室に引っ張り込まれた。

突然の事に身を固くした夕鈴だったが、ふわりと漂った香水の香りにホッと息を吐く。
背後から抱きかかえてくる腕から抜け出し、くるりと向きを変えると相手をジトリと睨み付ける。

「…見られたら誤解を与えるような行動は慎んで下さい。」
「――こうでもしないと、お前とプライベートな話が出来ないだろう?」

ちょっと怒ったような声でそう言った課長に扉を塞ぐように立たれて、逃げ場を失ってしまった。


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 13


ここ数日、彼が何か言いたそうに口を開くたびに、逃げていた夕鈴はそう言われると何も言い返せなくなる。
黎翔としても話をしようとするたび脱兎の勢いで逃げられて、少し傷付いていた所だった。

「…浩大から聞いた。怪我はなかったか?」

思わず視線を逸らした夕鈴に、優しい声で黎翔は問い掛けた。
こくりと頷いた彼女の頭を思わず撫でてしまったのは、もう癖になっているのかもしれない。

数日前の夜、氾水月と共に食事に行っていた夕鈴が、車に撥ねられそうになった事を聞いた時は心臓が止まるかと思った。もし、近くに浩大と克右がいなければどうなっていた事か。

犯人は捕まったが、黙秘を貫いている。

自分が傍にいてやれたら、身を挺してでも守るのに。
その役目を、今は浩大と克右に任せなければならないのが歯痒い。
早く今回の事にケリをつけて、この、素直じゃない可愛い部下を、少しでも安心させてやりたい。

「…私は今、氾家の娘と婚約解消出来るように動いている。」

頭上から降ってきた言葉に、夕鈴は驚いて顔を上げて彼を見上げた。

「課長!それはっ…!」
「――汀。」

彼が紅珠との婚約を解消しようとしているのは、自分のせいなのだろうか。
自分の存在が、二人を不幸にしているのではないかと夕鈴は悩む。

夕鈴がそんな不安に苛まれている事などお見通しのように、黎翔はそれは違うと否定した。

「彼女は…氾紅珠は本当に親同士が決めた婚約相手だ。私は彼女と結婚するつもりは全くない。」
「でもっ…!でも紅珠さんは家の事抜きで課長の事を想っています!」

彼女は課長の事を心から愛し、これから先の未来も、課長のサポートが出来るような職に就きたいと頑張っている。
そんな彼女に、課長は応えなければならないのではないか。

「…私は?私の想いはどうだって良いと言うのか?」

心から愛する女性は目の前にいるのに、その彼女から他の女を幸せにしろと言われる。
それがどれほど残酷な事か、彼女には分からないのだろうか?

「…課長?」

握り締められた拳が震えているのを見て、夕鈴は訝しんで彼の顔を見上げる。
――と、ぐいっと引き寄せられて、夕鈴は黎翔の胸に捕らわれてしまった。

「か、ちょうっ…?」

ギュウッと抱き締められ、夕鈴はパニックになった。

「や、課長!離して下さい!」
「私が…私が今どんな気持ちで…!」

彼女に初めて会ったあの日から、五年近く経つ。
離れていた間もずっと想い続けて来たのに、この女性(ひと)しかいないと思っていたのに。

――どうして。
この想いは届かないのか。

「やめて下さい…!!」

ドンッと胸を叩かれ、予期せぬ事に黎翔の足はふらついて数歩後ろに下がる。
ハアハアと荒い息をしながら、睨み付けてくる夕鈴の目には涙が溜まっていて、黎翔は驚愕に目を見開いた。

「どうして、どうしてこんな事するんですか…!」

課長の事は今でも大好き。
入社当時からずっと想ってきたのだ。

今すぐにこの気持ちを、無かった事には出来ない。
彼に対するこの想いを、忘れる事など出来ない。

けれど、課長に婚約者がいると知った時から、彼の事を諦めようと思っていた。
彼の隣に立つに相応しい女性がいるなら、自分の存在は、この想いは邪魔だけ。

彼を見るたび、この胸は張り裂けそうになるだろうけれど、いつか「そんな事もあったな」って、笑って思える日が来るかもしれない。

なのに、今になってどうして。
課長は私を、抱き締めるのだろう。

溢れた涙が頬を流れ落ちる。

「汀…?」

夕鈴の思いに気付いていない黎翔は、どうして彼女が泣くのかが分からない。
この想いは、彼女を苦しめるだけなのか?

くるりと背を向けた夕鈴が、扉を開けて外に飛び出していく。

「汀っ、待て…!!」

夕鈴を止めようと伸ばした腕は空を切り、黎翔が会議室から通路に出た時には、彼女の後姿がずっと先に見えるだけだった。


「…暗いわね。」
「暗いなあ…。」
「…二人共だし、何かあったのかな…?」

各々の仕事をしながら、ひそひそと囁かれる声。
忙しい営業一課内で、頭上に暗雲を乗せて仕事をしている人間が二名。
一課課長・珀黎翔と、彼の斜め前の席にいる汀夕鈴。

珀課長の婚約者だと言う氾紅珠が現れてから、微妙だった二人の空気がさらに悪化しているような気がする。
朝はまだ普通だったのに、一体何があったのか知らない他の社員達は気が気でなかった。


その日の業務が終り、本日も残業確定の忙しい課長を尻目に定時で上がった夕鈴の携帯が、社を出る直前で鳴る。
知らない番号だった為、誰だろうと思いながら出た夕鈴は、電話の主に驚いて携帯を落としそうになった。

「急に呼び出ししてすみませんでしたね。お帰りになる所だったのでしょう?」
「は、はあ…。」

彼が言ったその通りだったが、夕鈴としては何故自分がこの男性に呼び出されたのかが不思議でならない。

人目に付かないようにと念を押され、専用のエレベーターで最上階にあるこの部屋までやって来た。
テーブルに紅茶を注いだカップを置き、夕鈴の向かい側に座ったのは。

「…こうやって、直にお話するのは初めてでしたか。」
「はい…。」

緩くウェーブが掛かった髪を一括りにし、細いフレームの眼鏡を掛けた理知的な男性――。
白陽コーポレーション社長代理・李順。

夕鈴も入社式と、年初めなど特別な時に、遠くから姿を見たり、声を聞いたりしたくらいだ。
そんな人物が、何故自分を呼び出したのか。

考えて、夕鈴はハッとする。
まさか自分と課長の事で、何か言われるのではないか。
彼の傍にいるのを目障りと思われているのか、まさか異動辞令!?

考えれば考えるほど、悪い方向に向かって行く。

カップを持つ手が震えている。
若干蒼褪めている夕鈴を見ながら、李順は眼鏡を押し上げ、溜息を吐く。

――正直、彼の人がどうしてこれほど執着するのか理解が出来ない。

先が楽しみな社員ではあるが、業績も極めて普通。
目を見張るほどの美貌と言う訳でもなく、金持ちでもなく、何の後ろ盾もない。
真面目で誠実なのは認めるが、どこにでもいるような至って普通の女性だ。

それなのに、彼の人をここまで惹きつける魅力は何なのか。

この女性のために、彼は由緒正しき家柄の婚約者と婚約破棄し、実家をも敵に回そうとしている。

ただ一人の人間を五年間も愛し続けてきた彼は、「どうしてそこまで想い続ける事が出来るのですか?」と聞いた自分に、「お前もいつか分かるよ。」と穏やかに笑った。

(私には…今でも分かりかねますよ、黎翔様。)

そこまで深く愛せる女性がいない李順には、まだ理解出来なかった。

けれど、頼まれた事はきちんとしなくては。
閉じていた瞳を開き、李順は夕鈴を見た。

「…これを。」

ビクッとして姿勢を正した彼女の前のテーブルの上に、縦長の箱をスッと乗せる。

「これは…?」

箱と自分を交互に見やる夕鈴に、李順は箱を開けるように促した。
何だろうと思いながら開けると、薄い水色の可愛らしい腕時計が入っている。

「GPSが内蔵された、特殊な腕時計です。」
「じっ…GPSぅ…!?」

見た目は普通の腕時計なのに、そんな物が内蔵されているのかと夕鈴はビックリする。

「貴女を狙っている犯人は、まだ捕まえ切れていません。今後、警護する者達の目が届かない場所で誘拐されたり、襲われる事があるかもしれない。」

数日前の夜の出来事を思い出し、ぞくりとする。
あの時、浩大が引っ張ってくれなかったら、自分は死んでいたかもしれないのだ。

「出来れば肌身は出さず身に付けて頂きたいです。ああ、多少の防水にはなっていますが、お風呂の時は外して下さいね。」
説明をした後、李順はそう付け加える。

「あの…。どうして私のために、ここまでして下さるのですか?」

一社員のために、社長代理の彼までが動いた。
それが不思議でならない。

「――頼まれたからですよ。」
「頼まれた?」
「…ええ。貴女の直属の上司からね。」

(課長が…?)

意地悪だけど時々優しくて、大好きな彼の姿が浮かぶ。
あんな態度をとったのに、突き放したのに、どうしてここまでしてくれるの?

ジワリと触れた涙を拭うと、夕鈴はしていた腕時計を外し、それを付けた。
冷たいようで優しい色合いの腕時計。
まるで、彼のような…。

ふふっと、小さな笑みが零れた。

「社長代理は、課長と親しいのですか?」
「…幼い頃からの知り合いですよ。」

込み入った事を聞いてしまったかな?と思ったが、普通に答えてくれた。

「課長に、『ありがとうございます』と伝えて下さい。」

傍にいられなくても護ろうとしてくれる。
そんな課長がやっぱり好きだと思う自分は、身勝手で都合の良い女だろうか?

そう思いながら夕鈴は李順に頭を下げ、社長室を出て行った。


続く

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Comment

NoTitle 

か、課長!そこは押し倒してでも詰めないと!と一人叫びました、うーんこれじゃ夕鈴心は傷ついた儘です
本当に…
先が先が気になります
  • posted by 名無しの読み手 
  • URL 
  • 2014.05/02 11:00分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: NoTitle 

名無しの読み手様

ヘタレですから…!!
もっと積極的になれば、二人の関係も早く進展すると思うのですけど(ー_ー)!!
慧ネンももうそろそろ…と思っています。
  • posted by 高月慧ネン(名無しの読み手様へ) 
  • URL 
  • 2014.05/03 22:38分 
  • [Edit]
  • [Res]

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