兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 15

こんばんは。
いつもの如く、夜分遅くに失礼します。

皆様が寝ていらっしゃるだろう時間にばかり更新する慧ネン。
完全に夜行性動物と化しています(*_*;

内容的には全く進んでいませんが、続きが出来たのでアップしてから寝ようと思います(^v^)

※フィアンセ14、コメントでご指摘があった誤字を修正しました。何カ所かに使用した言葉だったので、どこかな~?と探していたら、「全部かよっ!?」
多くの方にこんな醜態を晒していたなんてと思うと、物凄く恥ずかしかったです
こっそり教えて下さったT様。本当にありがとうございました

15では間違っていないはず…

では、どうぞ!

***


「オーライ、オーライ!」

キンと冷えた空気の中、男衆の元気な声が響き渡る。
暦は二月、朝はまだ寒いが昇っていく太陽は眩しく、今日は良い天気となるだろう。

本日取り壊し予定の廃工場には、沢山の重機とトラックが運び込まれ、老若問わず活気のある従業員が集まった。

「おーい、誰かいないか~?」
「こちらはOKです。」

手分けして工場内を点検し、中に人がいないかを確認する。

荒れに荒れた工場内は様々な死角が多数あり、二階の部屋の奥、地面に横たわる四人の男女の姿に気付いた者はいなかった。


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 15


レストランで食事をした後、課長は自宅まで送り届けてくれた。
危険だからかもしれないが、何者かに狙われるようになる前から彼はそうだった事を思い出す。
別に可愛い女の子でもあるまいし、過保護過ぎるんじゃないかなあと夕鈴は内心クスッと笑う。

通りに面したアパートの前は駐停車禁止になっているし、夕鈴は車を持っていないので駐車場も契約していない。
少し離れた場所に車を停めた後も、危ないからと言って玄関前まで着いて来た。
そこからアパートまで徒歩数分、しかも見える範囲にも拘らず。

大事にされていると思うと、夕鈴は嬉しい反面、何だかすごく恥ずかしかった。

半開きの玄関扉の前で、夕鈴は課長と向き合う。

「送って頂いてありがとうございました。お休みなさい。」
「…汀。」

頭を下げた夕鈴は名を呼ばれ、課長の顔を見やる。
彼はとても優しげな表情で、夕鈴を見ていた。

「課長…?」
「――護るから。」

戸惑う夕鈴に、彼は力強くそう言った。

「お前が呼んだら、私は全てを捨ててでも駆け付ける。それを覚えておいてくれ。」

宝石のような綺麗な瞳が真っ直ぐに見詰めてくる。
大好きな男性(ひと)にここまで言われて、嬉しくない女がこの世にいるだろうか。

「はいっ…!」

嬉しくて溢れた涙を拭う夕鈴の頭を、彼の大きな手が撫でてくれた。


――何かあったらすぐに呼べ。絶対にお前を護る。


ふと目を開けると、頬に感じるのは固い地面の感触。砂利や埃にまみれた床が目に入る。
自分がどこにいるのか全く分からなくて記憶を辿っていた夕鈴は、水月と会って話しているうちに強烈に眠くなった事を思い出す。

ハッとして身体を動かそうとしたら、何かに拘束され動けなかった。
手足は何かで縛られているようだ。

「…最悪な時に目を覚まされたようですね。」

ジタバタしていると、隣から落ち着いた声が聞こえてきた。
視線を向けると、同じように縛られて地面に横たわっている水月の姿が目に入る。
整っているが、どことなく女性的な彼の綺麗な顔には青痣があり、口元には血が滲んでいる。

「す、水月さん?大丈夫ですか!?」
「まあ、見ての通りです。」

困ったように水月は笑う。
痛々しい姿だが、命に関わるような傷は負っていないようで安心する。

「…貴女には申し訳ない事をしました。私の家の問題に、無関係の貴女を巻き込んでしまった。」
「水月さんの家の問題?」
「私の父には敵が多い。今、私達が捕まっているのも、父の政敵が関係しています。」

何だか良く分からない夕鈴だったが、ガタガタと大きな音が聞こえ始めて何だろうと思う。
心なしか、埃が舞っているような気もする。

「ここって…」
「今日取り壊される工場みたいですね。私を攫ったのは父への警告。邪魔な存在は、さっさと消すつもりなのでしょう。」

破壊音と共に、パラパラと瓦礫が落ちてくる。
自由な視線を動かすと、水月についている二人の男も捕まっているのが見える。屈強な二人は縛られたうえ、さらに鉄柱に括り付けられていた。二人共も相当痛み付けられたらしく、顔中血だらけだった。

『何かあったらすぐに呼べ。』

脳裏に課長の声が響き、夕鈴は腕時計の事を思い出す。
交差されて縛られた不自由な手首を必死に動かすが、左腕に付けていた時計が無い。
自分で外した記憶はないので、誰かに外された?

「…水月さん、私の腕時計知りませんか?」
「腕時計?…ああ、珀課長が貴女に渡した時計ですか。それなら…。」

珀黎翔がGPS付きの腕時計を贈った事は知っていた。
彼女を睡眠薬入りのカクテルで眠らせた後、居場所を特定されないように部下に渡し、どこかに捨ててもらうつもりだった。

部下の胸ポケットに入れられていたそれは、今彼の足元近くに落ちていた。
恐らく犯人と揉み合った時に落ち、女性物の時計がまさかGPS付きだとは思わず、そのまま放置したのだろう。

「あの…!」

何て呼べばいいのか分からず、夕鈴は取りあえず声を掛けてみる。
ぐったりしているが意識はあり、水月の部下は夕鈴を見た。

『貴女に危険が迫った時、このツマミを引き抜いて下さい。』

腕時計には時刻を合わせるツマミとは別に、もう一つ突起があった。
時計を渡された時、李順が言った言葉。

『…ですが、もしかしたら身体の自由を奪われている可能性もあります。その時には――。』

「なっ…!?本気ですか!?」
「私は本気です。」
「…珀課長からもらった、大事な時計なのでしょう?」
「確かに大事ですけど、皆さんの命には代えられません。」

私の身に危険が迫ったら、私が呼べば、課長は必ず来てくれる。

水月は困ったようにふふっと笑う。
その笑みは高慢ではなく、どことなく諦めにも似た。

(私が危害を加えようとしていた事に、気付いているはずなのに…。)

もうすぐ死ぬかもしれない危険な目に遭っていると言うのに、その元凶を作った自分達をも救おうとしている。

「ほ、本当に良いのですか…?」

恐る恐ると言った感じで、水月の部下は夕鈴に確認を取った。

「ええ。…そうすれば課長が来ます。必ず助けてくれます。」

「い、いきますよ…?」

『――時計に強い衝撃を与えて下さい。そうすれば危険を察知し、SOS信号が発信されます。』

「…はい。時計(それ)を、壊して下さい。」

不自由な体制で上にあげた縛られた両脚を、時計に向かって振り下ろした。

力の加減が出来ず、時計は粉々になって壊れた。
それを見て少しだけ悲しげな表情をしたものの、夕鈴は励ますように笑顔を見せる。

「すぐに助けが来ますから、頑張りましょうね!」

危機的状況にも拘らず、彼女のその笑顔に、水月も部下の男二人も癒され、強張っていた顔に僅かに笑みが戻る。

自分よりも他人の事を気に掛け優先し、何の見返りも求めない。

教養や美しさで言えば、妹紅珠の方が遥かに上回る。
けれど、人間的な優しさや心遣いは明らかに夕鈴の方が上だ。

(――敵わない。)

珀黎翔が何故彼女に執着すのか、ようやく分かったような気がする。

殺伐とした世界で生きる彼も、彼女のこのような所に惹かれ、癒されるのだろう。

絶望の中でも希望を抱かせる、慈愛に満ちた彼女の微笑み。
それはとても優しく、そして温かい。

重機に破壊された天井から降り注ぐ、この太陽の光のように。


続く


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  • posted by  
  •  
  • 2014.05/20 05:48分 
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さすが夕鈴です(^-^) 

こんばんは(^-^)夕花です。

お久しぶりです(^-^)
続きの小説が読むことができて、嬉しいです!
夕鈴の微笑みは最強ですね(^-^)
見返りを求めない優しさがいいです!
さっさと黎翔さん達が来てくれることを
願います!
次回も楽しみにしております。
  • posted by 夕花 
  • URL 
  • 2014.05/21 23:50分 
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Re: お身体ご慈愛ください。 

聖璃桜様

仕事が遅番ばかりなので、これが通常運転です。
しっかり昼前まで寝ますけどね(^^♪
お互い、健康には気を付けましょう(*_*;
課長がカッコよく登場して、夕鈴を助けたら彼はヘタレ返上出来ますかね?
何気に良いとこを夕鈴に持っていかれている気がします。
カッコいい女性って、同性でも憧れますよね~♥
次回、ドキドキパートはあるか!?
  • posted by 高月慧ネン(聖璃桜様へ) 
  • URL 
  • 2014.05/25 03:17分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: さすが夕鈴です(^-^) 

夕花様

お久し振りです~(^^♪
コメントありがとうございます&返信遅くなってすみません(*_*;
何の見返りも求めずに行動するって難しいですよね。
でもそれが出来る人間はカッコいいと思います。
夕鈴は強い女性ですけど弱い所もあるから、そこは課長にしっかりとカバーして頂きたいと思っています。
早く来い、課長~っ!!(笑)

  • posted by 高月慧ネン(夕花様へ) 
  • URL 
  • 2014.05/25 03:22分 
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よろしくお願いします。

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