兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 16

こんばんは。

溜まっていた拍手コメントのお返事も全てお返し出来て、ホッと一息ついてる慧ネンです。
不義理ばかりで申し訳ございません

ブログを再開し、SSSを書き散らかしているうちに、訪問者数が40000人を越えました
不甲斐ない慧ネンは、リクエストすら受け付ける事が出来ませんが、いつも感謝しております。
本当にありがとうございます

***

さて、婚約者(フィアンセ)の続きが出来ましたので、早速お届け致します。
このお話も16話目。
そろそろラストが見えて来たかな~?と言う感じです。
内容がおかしいのはいつもの事なので、気にならない方だけお読み下さい

***



取り壊し作業が進む廃工場の敷地内に、場に似つかわしくない高級車が走り込んできた。
土埃を上げ、砂利を弾き飛ばしながら急停車した車から、三人の男が飛び出してくる。

浩大は真っ直ぐに責任者らしき男に向かって走り出す。

「おい!機械を止めてくれっ!!」
「な、何だね!?君達はっ!!」

胸倉を掴まれた彼は、突然現れた男達に驚愕する。

「まだ中に人がいるんだっ!!」

長身の克右に肩を掴まれガクガクと揺さぶられた別の作業員は、蒼褪めた表情で建物を振り返った。

「な、何だって!?」
「おい!作業中止!!重機を止めろ!!」

怒声が飛び交い、その場は騒然となった。


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 16


後部座席から勢いよく外に飛び出したものの、黎翔はその場から動けなくなった。
作業を止めるように言う浩大や克右の声が、どこか遠くで聞こえる。

土煙で霞む視線の先に、もう半分以上壊された建物が見える。
元は頑丈な建物だったであろう工場は、その鉄組すら残していない場所もある。

もし夕鈴が、あの崩れた場所にいたとしたら。
もう、瓦礫の下敷きになってしまっている。

重機で破壊された天井や外壁の大きな破片が、彼女を押し潰して…。

――待ってます。

嫌な思考に取りつかれていた黎翔に、夕鈴の声が聞こえた。

『課長の事、信じていますから。』

必ず護るから、何かあったらすぐに呼べと言った自分に、彼女はそう言って笑った。
黎翔が大好きな、あの、笑顔で。

「――っ!!」

走り出した黎翔は、脇目も振らず工場内に向かって駆けていく。

「君っ!入ったらいかん!!」

止めようとする声も、今の黎翔には届いていない。
そんな彼の背中を追うように、引き止める腕を振り払い、浩大と克右も黎翔に続く。

工場の中は外から見る以上に崩壊していて、瓦礫の山を乗り越え、声を掛けながら進んでいく。
二階に上がる階段をようやく見つけた黎翔は、崩れた天井から覗く青空を一瞬見やり、慎重に登った。
自分が犯人なら、捕まえた人間を誰にも見つからないように入り口から一番遠い、二階の奥に放置する。

「…汀っ!いるなら返事をしろっ!!」

重機はもう動いていないが、作業途中の工場は今にも崩壊しそうな感じだ。
早く見つけなければと、黎翔の気が逸る。

「……ょう…っ!」

その時、黎翔の耳に夕鈴が呼ぶ声が聞こえた。


穴が開いた天井から、太陽の光と工場を壊す重機が見える。
バキバキと凄い音がしてすぐ近くに瓦礫が落ちてくるたびに、四人は気が気でない。

土埃が凄くて、夕鈴は思わず咳き込む。

「…大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。」

えへへと微笑む彼女の身体が、小刻みに震えている。
二月と言うこの寒い時期に、夕鈴はコートを羽織っていなかった。
コートはホテルに残されたままで、水月が彼女をホテルから連れ出す時に身体を包んでいた毛布は見当たらない。
直接横になっている地面の冷たさも、夕鈴の体温を奪って行く。

「無事に助けられたら、あったかいココアが飲みたいです。」

苦笑いをしながら夕鈴が言うと、

「私は紅茶の方が良いですね。」と水月は微笑み。
「欲を言うなら、我々は鍋を囲んで熱燗を頂きたいですね。」
そう二人の部下は笑う。

ふっと、差し込んでいた太陽の光が途絶え暗くなった。
不自由な体制で上を見ると、天井の隙間から見えるのは大きな重機の色。
それが上げられ下ろされたら…。

蒼褪めた時、煩かった音が止み静かになった。

「と、止まった…?」
「誰かが我々がここにいる事に気付いたのか?」

水月の部下の言葉を聞きながら、動かなくなった重機を見上げていた夕鈴は、ぴくっと身体を震わせる。

「――ぃ…」

耳に届いたのは。

「課長…?」

待ち望んだ、彼の声。

「…返事…しろ!汀っ…!」
「…課長ーっ!私はここです!!」

思い切り叫ぶと、カツカツと響く靴音が近付いてくる。

「汀っ!」
「課長…!!」

冬だと言うのに額に汗をかいた黎翔が走り込んで来て、どれほど心配を掛けたのだろうと思う。

「大丈夫か?」
「はい。」

黎翔は夕鈴を拘束していた縄を切ると身体を起こし、着ていたコートを脱いで彼女に掛けた。
冷たい頬に触れ、殴られた跡などない事に安堵する。夕鈴の身体を確認した黎翔は、縛られていた手足に多少擦り傷があるものの、大きな怪我はしていようでホッと息を吐いた。

「よく頑張ったな。」

彼の温もりが残るコートで身体を温めていた夕鈴の表情が、黎翔がそう言って頭を撫でた瞬間、クシャリと歪んだ。

「ひっ…うぅ…~かちょうぉ~…っっ」

ボロボロと泣き始めた夕鈴を、黎翔は引き寄せて思い切り抱き締める。
本当は怖かっただろうに、泣かずに必死に頑張った可愛い部下を、宥めるように背を撫でる。

大きな手が背中を撫でてくれるのを感じながら、夕鈴は課長にしがみ付き、彼の胸に頬を当て、思い切り泣いた。

「大丈夫か?」
「ええ、まあ何とか。」

浩大に身体を起こされた水月は縄を切ってもらい、ようやく自由になった手足を動かしてみる。
二人の部下の拘束は、克右が解いてくれている。

「…色男が台無しだなあ、おい。」

水月の頬の痣と、血が滲んでいる口元を見た浩大が、ポケットからハンカチを取り出して渡しながら軽口を叩く。
ピリッと痛むそこにハンカチを当て、水月は「大した事ないですよ。」と苦笑い。
この程度の怪我で済んだだけでも儲けものだ。
命があるだけ、良しとしなければ。

盛大に泣いていた夕鈴の声が小さくなり、彼女はどうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ。
そんな彼女を難なく抱き上げて、姫抱きで歩いていく黎翔の後姿を見遣る。

命の危機に晒されても、微笑みを絶やさず、それどころか自分を攫った相手を励まそうとした夕鈴。
とても強い女性だと思っていたけれど。

「彼女は、彼の前では泣けるのですね…。」

そして彼女を見る時の彼の顔は、妹紅珠の前では一度も見せた事の無い、初めて見る愛情に満ちた表情だった。


かなり痛み付けられた二人の部下を支えて欲しいと頼み、水月は自分の足で歩いて外に出た。
明るい光が目に眩しく、思わず手を翳す。

工事関係者が呼んだのだろう、そこには救急車とパトカーが止まっていて、救急隊員と警察が駆け寄ってくる。
事情も説明しなければならないし、特に二人の部下は病院で治療をしてもらう必要がある。

声を掛けてくる警察官に少し待って欲しいと頼み、水月はこちらに歩いてくる黎翔と正面から向き合った。

「…言い訳はしません。このような事に彼女を巻き込んでしまって、本当に申し訳ありませんでした。」
「――氾水月。」
「私の負けです。今回の件から手を引きます。私はもう彼女に関わません。」

妹のためにと彼女に付き纏い、珀課長から離れるように色々したけれど。
彼女を知れば知るほど、敵わないと思った。
きっと嫌な思いを、辛い思いをしたであろう彼女に。

「珀課長。夕鈴さんに『すみませんでした』と伝えて下さい。」

今は車の中で安らかな寝息を立てているだろう彼女の事を思い、水月はそう言うと黎翔に頭を下げた。

「黎翔。」

警察と話している水月を見ていると、浩大が声を掛けてきた。

「夕鈴ちゃん怪我はしていないようだけど、身体がかなり冷えているだろうから早く連れて帰ってやれ。」
「お前達は?」
「警察に行って事情を話してくる。こうなった以上、無関係ってわけにはいかないだろ。帰りは柳家の坊ちゃんにでも来てもらうから。」
「…分かった。」

運転席に座り、助手席でくうくうと寝息を立てている夕鈴の顔を覗き込む。
閉じられている目元は赤くなっていて、彼女のそんな姿を痛々しいとも、可愛いとも思う。

今は疲れ果てて眠っている彼女が目を覚ました時、この一連の事件が全て解決出来ていたら良いと思いながら、黎翔は車を発進させた。


続く

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Comment

いいです! 

こんばんは(^-^)夕花です。

コメントのお返事、ありがとうございますm(_ _)m
ホント、陛下が寂しそうでした(>_<)
ずっと、頭の中では夕鈴が占めているのですね(^_^)

今回も良かったです!さすが課長達です!!
夕鈴の身を案じて、建物の中にさっさと入って行くなんて!
やっと課長の腕の中で夕鈴が泣けて、良かったです。やっぱり、課長は夕鈴と一緒にいると、優しい表情するのですね(^-^)
夕鈴が目覚めた後の二人の会話が気になります!
次回、楽しみにしております。
  • posted by 夕花 
  • URL 
  • 2014.05/26 23:41分 
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2014.05/26 23:44分 
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Re: いいです! 

夕花様

こちらこそ、いつもコメント下さってありがとうございます!
とても嬉しいです(^^♪

課長にとってはもちろんの事、浩大や克右にとっても夕鈴は守らなくてはいけない存在ですから、皆さん必死ですね。
いつも意地っ張りの夕鈴も、ようやく課長の腕の中では素直になれるようになったようです(^v^)
意地悪だった課長も大分優しさを見せるようになり、ようやく二人の関係が進展するように思います。
ちまちまと進みますが、二人の仲を応援お願いします♪
  • posted by 高月慧ネン(夕花様へ) 
  • URL 
  • 2014.05/30 16:20分 
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Re: 助かったけど 

名無しの読み手様

いつもコメントありがとうございます(^^♪

夕鈴も無事に救出できて一安心です。
水月さんも、結局悪人にはなり切れず。
根っから悪い人ではないので、このくらいで良いと思っています。
待てきつかったですか?
危機感ある所で止めた方が、次が楽しみになるかな…と。(←嘘です。)
夕鈴が少しでも素直に気持ちを言えますように。
  • posted by 高月慧ネン(名無しの読み手様へ) 
  • URL 
  • 2014.05/30 17:09分 
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