兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 17

夜遅くに失礼します。

今回は元々プロットに無くて、後から浮かんできたシーンだったので難産でした。
本当は昨日上げたかったのですが、間に合わず…。

投下して寝ようと思います。

いつもの事ながら色々おかしいと思います。見直す気力が無いので、誤字脱字がありましたら、こっそり教えて下さいね。

では、どうぞ!

***



氾家の政敵に、氾家長男・水月と共に誘拐された夕鈴を救い出した黎翔は、彼女を自宅マンションに連れ帰った。
怪我の措置の知識がある彼は自ら夕鈴の手足の傷を治療したが、さすがに服を着替えさせる事は出来ない。
仕方なく黎翔は叔母であり、会社の女医でもある珀瑠霞と夕鈴の親友で部下の明玉を呼び出した。
特にあの叔母には借りを作りたくないが仕方が無いと割り切る。

瑠霞の車でやって来た二人は、頼んでいた夕鈴の服以外にも、食材や薬なども持ってきてくれた。
着替えをしている間リビングから出ていた黎翔は、着替え終わった夕鈴を抱き上げると以前彼女が寝泊まりしていたゲストルームに運び、ベッドにそっと下ろす。

若干熱い体温を不安に思いながら、優しく彼女の頬に手を這わした。


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 17


リビングに戻ると、ソファに座って待っていた明玉が立ち上がり近寄ってくる。

「夕鈴、大丈夫ですか?」

不安げに揺れる瞳。
危険な目に遭い続けている親友の事が、気になって仕方が無いのだろう。

「ああ。今の所は落ち着いている。」

あの様子では、今夜は熱を出すかもしれないが。
二人が持ってきてくれた薬で熱が下がらない場合は、馴染の医者を呼ぶしかないだろう。

「…それで?彼女に害なす輩は全て判明したのかしら?」

優雅に長い脚を組んで、ソファに座っている瑠霞が聞いてくる。
黎翔は苦虫を噛み潰したような表情で、首を横に振った。

数人捕える事が出来たが、夕鈴を駅の階段から突き落とそうとした犯人は未だに見付かっておらず、何が目的で犯行に及んだかも分かっていない。

克右が助けたので事なきを得たが、もし落ちていれば大怪我をしていたかもしれない。

殺意を抱くほど恨まれるような事を、夕鈴自身がしたとは考えられない。
犯人は黎翔に恨みを持つ者か、黎翔に好意を持っていて傍にいる夕鈴の存在を疎ましく思っている者。
克右が見た犯人の後姿は男だった。後者は違うと言う事になる。

瑠霞は口元に手を当てて少し考える素振りをした後、「私も調べてみるわ。」と立ち上がる。

「――色恋沙汰に関しては、女の方が詳しいのよ。」

ね?と明玉に同意を求めると、彼女も頷きながら立ち上がった。
親友を苦しめる輩を、これ以上野放しには出来ない。
何としてでも、見つけ出してやる。

浩大と克右が黎翔のマンションを訪れた頃、夕鈴は高熱を出して魘されていた。
頬を真っ赤に染まり、汗も酷く、息が荒い。
医者に診てもらい、時々意識を浮上させる彼女に黎翔はこまめに水を飲ませる。

浩大に氾水月からの伝言を聞き、彼は思わず持っていたペットボトルをぐしゃりと握り潰してしまった。
怒りで震えている黎翔を見て、浩大はあちゃーと思う。

水月も命知らずな事をしてくれた。
知らなかったとはいえ、ただでさえ酒に弱い夕鈴に睡眠薬入りのカクテルを飲ませるなんて。
つまり今彼女は、風邪と二日酔いで寝込んでいるのだ。
結局翌朝になっても熱は下がらず、夕鈴は丸二日寝込む羽目になった。

ようやく熱が下がった彼女は、身体を起こしぼんやりと部屋を見渡す。
熱で朦朧としている時、課長が甲斐甲斐しく世話をしてくれたのを朧気に覚えている。
カチャリと扉が開き入ってきた彼と目が合ってしまい、夕鈴は恥ずかしくなってワタワタとしてしまった。

だって、髪はぼさぼさだし、パジャマは汗で濡れているし、きっと酷い顔をしている。
好きな人に、こんな姿を見られるのは正直嫌だ。

真っ赤になった顔を掛布団で隠した夕鈴に、黎翔が近付いてくる。

(な、何でこっち来るの~?)

焦って潜り込もうとしたら、課長の手が布団に掛かりそっと捲られた。
大きな手が額に当てられて、涙を溜めた瞳を大きく見開いて夕鈴は彼を見上げた。
不安げに見詰めてくる瞳が、ホッと緩む。

「…熱、下がったな。」
「あ、はい…。」
「…どこか痛い所とかないか?」
「だ、大丈夫、ですっ…。」

「そうか。」と安心したように呟き、額に触れていた手が離れていく。
最近の課長の優しげな表情はジッと見るには恥ずかし過ぎて、ついつい俯いてしまった夕鈴は、自分が着ている服を見てハッとする。

どう見てもこれはパジャマだ。
私、いつ着替えたっけ?
それより、私どうやって課長のマンションに…?
――あれ?

(わ、私っ…、課長に裸見られちゃったの!?)

パジャマを掴んだまま停止したと思ったら、夕鈴の顔が茹蛸のように真っ赤に染まっていく。
じわじわ~と涙が目の淵に溢れて来て。
黎翔はようやく彼女が誤解している事に気付く。

「ちっ違う、汀!着替えさせたのは叔母と明玉で、私じゃないからな…!」

珍しく頬を赤くした黎翔は、焦ったように弁明して、くるりと背を向けた。

「しんどくないならシャワー浴びてリビングに来い。食事の準備をしておく。」

パタンと扉が閉まり一人残された夕鈴は、カーテンレースの向こうに見える青空を見て、今が昼間だと言う事に気付く。
携帯を確認すると、水月に会いに行った日から二日たっている。
自分はそんなに寝込んでいたのかと驚く。

ソファの上には旅行かばんが置かれていて、中を見ると下着とセーターなどの服、化粧品も入っている。
明玉と瑠霞先生が来ていたと言う事は、きっと二人が用意してくれたのだろうと思う。

準備をしてバスルームに向かおうとすると、少しだけ足首が痛んだ。
手首はあまり気にならなかったが、その痛みで誘拐された後縛られていた事を思いだす。
少しだけ、ほんの少しだけ、あの時の恐怖を思い出した夕鈴だったが、彼女はもっと大変な事を思い出してしまった。

助けに来てくれた課長に抱き寄せられた瞬間、張り詰めていた気持ちが緩んでしまい、温かい体温にホッとして、彼の胸に縋って泣いた。

(私、私…何て事を~っ!!)

彼の背中に手を回ししがみ付くと、ギュウッと抱き締めてくれた。
背中を撫でてくれる手は、とても大きくて、温かくて。
全てを包み込むような、優しい抱擁。
逞しい胸板だったな…。

「――って、何思い出してんの~~っ!?」

ボッと火がついたように羞恥に真っ赤になった頬を押えて、夕鈴は頭を振りしばらくの間悶えていた。

シャワーを浴びていると大分落ち着いてきたが、それでも課長と顔を合わせるのは恥ずかしかった。
リビングに向かうとキッチンの方から良い匂いが漂ってきて、二日間碌に食べていなかった夕鈴のお腹がくうと鳴る。

ちょうどその時、黎翔がレストランのウエイターのようにスパゲッティが乗った皿を二枚左手に、サラダとスープ、水が入ったグラスを乗せたトレーを右手に乗せて、器用に危なげなく運んできた。

恥ずかしくて課長と顔を合わせ辛いと思っていたのに、かなりお腹が減っていた夕鈴はその事を忘れて一心不乱に食べ始めた。
普段外食か、出来合いの物を買って食べてる事が多い課長だが、作れないわけではなく作るのが面倒くさいだけらしい。彼はレシピがあれば何でも作ってしまう。そしてかなり料理上手だ。

「…美味しいですっ!」
「そりゃ良かった。」

とっても美味しくて幸せそうに微笑みながら食べる夕鈴を見て、黎翔も嬉しそうに笑った。

「おー夕鈴ちゃん。回復して何よりだ。」
「お邪魔します。」

夜になって浩大と克右がマンションにやって来た。

「浩大課長、克右さん。色々ご心配掛けました。」

水月と共に行方不明になった自分を、課長と共に助けに来てくれた二人にも礼を言う。

「気にしなくて良いよ~。俺らがしたくてした事だし。」
「ご無事で何よりでした。」

気にする必要はないと笑ってくれる人達がいるから、夕鈴はとても励まされ、笑っていられると思った。

四人で本日の晩ご飯の鍋を囲って食べた後、夕鈴の今後の身の振り方を話し合う。

今回の誘拐事件の犯人は、水月も彼の部下も顔を覚えていたため、早々と逮捕された。
けれど、夕鈴を狙ったすべての犯人が捕まったわけではない。

「もう危険はないと判断されるまで、ここで一緒に暮らして欲しい。」

黎翔のその言葉に、今までの夕鈴なら断っていただろう。
けれど、少しだけ素直になって、本当の気持ちを伝えてみようと思う。

「…私も、課長と一緒にいたいです。」

状況を考えればこう思うのは不謹慎だが、どんな理由であれ、好きな人の傍にいられるのはやっぱり嬉しい。
はにかみながら思わず本音を呟いた夕鈴は、向かい側に座る男三人が目を丸くしているのに気付き、ハッとする。

「や、えっと、あの…!」

浩大と克右はワタワタしている夕鈴に意味ありげに微笑み、照れている黎翔の脇を、からかうように両側から肘で突いてやった。

泊まっていくかと思いきや、二人は遅くに帰って行った。
ゲストルームに下がった夕鈴は、もう寝ようかと思いながらも、散々寝たので眠気が訪れず困っていた。
かばんの中に漫画が数冊入れられていて、そう言えば明玉に貸してくれと頼んでいた事を思い出す。何か温かい物でも飲みながら読もうと思い、キッチンに向かうため部屋を出ようとすると扉がノックされた。

「はい。」
「悪い、もう寝てるかもと思ったんだが。」
「いえ、大丈夫です。」

入ってきた黎翔は手にトレイを持っていた。
まだ湯気が立っていて、温かい飲み物だと言う事が分かる。
タイミングの良さに、夕鈴は驚いてしまった。

「寝れないのか?」
「昼間沢山寝ましたから。」

ベッドに腰掛けて、黎翔の言葉に苦笑いした夕鈴は、サイドテーブルに置かれたマグカップから漂う香りに気付く。
甘い、大好きなココアの香り。

「――汀。氾水月が、おまえにすまなかったと謝っていた。」

ハッとして顔を上げた夕鈴が見たのは、苦虫を噛み潰したような、嫌そうな表情。
黎翔としては、水月の名前など出したくなかったが、奴からの伝言を夕鈴に伝えたか?と浩大に聞かれ、まだ言ってない事を咎められたからだ。

「水月さん…。」

あの時自分が言った、「助け出されたら温かいココアが飲みたい」と言う言葉を、彼は覚えていてくれたのか。
彼は好きな紅茶を飲み、彼の部下の二人の男性は、望み通り鍋を突きながら一杯やれただろうか。

夕鈴の顔が少しだけ嬉しそうに見えて、やっぱり伝えるんじゃなかったと黎翔は思う。

水月に言われて、ココアを買ってきたのは浩大だった。
夕鈴が好きな飲み物を、自分より先に奴が知ったと言う事が腹立たしい。

「奴はもうお前に関わらない。お前も、奴に会っても不用意に近付くなよ。」

それだけ言うと、彼は「おやすみ」と部屋を出て行った。

何だか毛嫌いしているような課長の態度に、夕鈴は困ったような曖昧な表情を浮かる。
確かに彼は自分を酷い目に遭わそうとしていたかもしれないけれど、私利私欲のためではなく大切な妹のためを思っての行動だった。

課長には悪いけれど、水月の事をやっぱり嫌いにはなれないと思いながら、夕鈴はココアを飲んでホッと息を吐いた。


続く


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  • posted by  
  •  
  • 2014.05/31 12:59分 
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  • [Res]

やっとですね(^_^) 

こんばんは(^-^)夕花ですm(_ _)m

やっと夕鈴が素直になりましたね(^-^)
側にいたいなんて!
でも、着替えのことを勘違いするあたりが夕鈴の可愛いところですね(^_^)
課長は手厚く看病してますし(^-^)
水月を毛嫌いするのは夕鈴のことを自分より先に知ったりすることが嫌なんでしょうね(笑)
夕鈴に対して、ここまで気遣うのに、課長の気持ちに気づかないなんて、可哀想ですね(^-^;)課長もですが(笑)

この続き、楽しみにお待ちしております。
  • posted by 夕花 
  • URL 
  • 2014.06/04 23:17分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

名無しの読み手様

いつもコメントありがとうございます(^^♪
鈍感娘の夕鈴には、確かにはっきり気持ちを伝えないと通じないですよね。
課長がもっと素直になったら良いだけだと思うのですが…。
告白はもう少し先のようです。
課長には色々秘密があるのですよ。
ハッピーエンド目指して頑張ります!!
  • posted by 高月慧ネン(名無しの読み手様へ) 
  • URL 
  • 2014.06/06 18:36分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: やっとですね(^_^) 

夕花様

いつもコメントありがとうございます(^^♪
このシリーズの二人は、どちらかと言うと夕鈴の方が大人だったり。自分の気持ちに素直になるって、大切な事だけど難しい。
好きな子を苛めてしまうあたり、課長は子供っぽいですね(^v^)
課長に裸を見られたと勘違いしてワタワタする夕鈴や、彼女の好みを先に水月に知られて嫉妬している黎翔を書くのは楽しかったです♪
この二人の進展と同じくスローペースの更新ですが、ラストまでお付き合い頂けたら嬉しいです(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(夕花様へ) 
  • URL 
  • 2014.06/06 21:04分 
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