兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪ドラマみたいな、終わり方

このお話は『♪ドラマみたいな、ハプニング?』の続きです。






『夕鈴、雑炊ありがとう。とても美味しかったよ。』


黎翔から届いたメールを読み返して、夕鈴はホッと息を吐く。バイトの休憩時間、夕鈴はお昼ご飯を食べながら欠伸を噛み殺していた。

二時頃まで黎翔のマンションにいたのだが、朝は八時から喫茶店のバイト。少し寝たいし、家族の朝ご飯の準備もある。まさか朝帰りをするわけにもいかない。

黎翔が朝起きた時、すぐ食べれるように何か作ろうかとキッチンに向かうが、冷蔵庫の中はほとんど何も残っていなかった。

器具は揃っているので自炊はしているようだが、ここ数日忙しかったと言っていたので、主に外食や出前ですましていたのかもしれない。

このマンションにくる時見かけた24時間営業のスーパーがあったのを思い出し、材料を買いに外に出ようかとも思ったが、この部屋はオートロックだ。
一度外に出たら、黎翔が開けてくれなければ、中に入る事が出来ない事に思い至る。

悪いと思いながら夕鈴はキッチンと冷蔵庫の中を探し回った。

見付けたお米と、冷凍庫に入れられていた鶏肉。サラダに使った残りだろうか、少し萎びた水菜と白菜も野菜室に入っていた。
あまり使われた形跡がない土鍋も発見したので、雑炊でも作ろうかと考える。
野菜も傷んでいる所を切り飛ばせば使えない事もないし、幸いな事に卵もある。

芸能人である黎翔に、こんな残り物で作った庶民料理を食べさせても良いものかと思ったが、材料がこれしかないので仕方がない。

食べたくなければ捨ててもらえばいいと思い、夕鈴は調理に取り掛かった。

その雑炊を見た黎翔が、捨てる所かパクパクとすぐに完食してしまった事など、もちろん夕鈴は知る由も無い。


『…体調良くなって安心しました。でも、無理はしないで下さいね?』


あんなに弱り切った彼の姿はもう見たくないと、夕鈴は心から思った。


♪ドラマみたいな、終わり方


黎翔はまた忙しくなり、夕鈴に会いに行く時間がとれず、メールだけの遣り取りが続いた。
それでも暇を見付けては、彼女にメールを送り、夕鈴はそれに返事を返す。

そんなじれったくも穏やかな日が、何日か続いた後、

ある日を境に、彼女からの返事が、途絶えた。

黎翔はレコーディングの合間にイライラしながら、携帯を操作していた。

何度メールを送っても、夕鈴から返事が返ってこない。どんなに遅くなっても、律儀な夕鈴は必ずメールを返してくれていたのに。

どうして?と黎翔は思う。

今まで夕鈴としたメールの遣り取りを思い返してみても、その日にあった事や世間話が主で、何故夕鈴が返事を返してくれなくなったか、その原因が分からない。

夕鈴に返事を返す事が出来ない何かがあったのではないかと心配になり、変装をして彼女がバイトしているコンビニに行った日もある。
すると店長らしき年配の男が、何度も訪れる黎翔をジロジロ見ながら、彼女は暫く休暇を取っていると言ってきた。

黎翔は落胆して、トボトボとコンビニを後にした。

「…Rei」

背後から黎翔に声を掛けてきたのは、Hiroだ。

「彼女が返事を返してこないのって、コレのせいじゃねえか?」

彼が差し出してきたのは、一冊の雑誌。

実は黎翔がイライラしている原因は他にもある。
それは、数日前に撮影が終了したドラマの打ち上げ後に起こった。

ドラマで共演した新人女優とのツーショットを撮られてしまい、沢山の雑誌に載ってしまった。
すぐ近くに他の共演者やスタッフ達もいたのだが、運悪く二人だけ映ってしまい、テレビでも『Creuzリーダー・Rei、熱愛発覚!?』と囃し立てられる。

真相を問われたその新人女優の曖昧な態度も、この騒動に拍車を掛けたのかもしれない。

口説いている最中の本命の女性からは連絡が途絶え、マネージャーには迂闊さを指摘され、怒られる始末。

黎翔の気分は、最高潮に荒んでいた。

「…Rei、遊びならこの辺でもう終わりにしろと言うトコだけど、彼女の事、本気なんだろ?なら、お前の本気を見せてやれ。」

いつも相談に乗ってくれる面倒見が良い男は、黎翔を押すように背中を叩いた。


夕鈴は浮かない表情で、テレビ画面を見詰めていた。

「好きになったから付き合って欲しい」と言ってきた男は、数日前雑誌やテレビにスクープとして取り上げられた。相手役の女性は、彼が出演するドラマの共演者の新人女優。

コンビニのバイト中に、週間雑誌の表紙を飾っていたその写真を見たとき、夕鈴の心臓は凍り付きそうになった。

それと同時に、納得もする。

彼の隣に並ぶ彼女の姿の、何と違和感のない事か。

グラビアアイドルから女優になったその女性は、夕鈴が太刀打ちできないほど綺麗な顔をしていた。

今巷で大人気の芸能人から付き合って欲しいと言われて、驚くと同時に歓喜した自分が夕鈴は恥ずかしくなった。
会えない日が続いても、メールの遣り取りだけでも満足していたけれど、幸せな時間はもう終わるのだ。

そう思ったら、彼のメールに返事を返す事が出来なくなった。

彼は相変わらず、その日の出来事を伝えてきて、そして夕鈴に愛の言葉を囁く事を欠かさなかった。
そんな彼に、返事を返す事が怖くなってしまったのだ。

夕鈴がバイトをしているコンビニに彼が来る事を恐れて、店長に無理を言って一ヶ月ほど休みにしてもらった。バイト仲間の女の子から、黎翔らしき青年が夕鈴を訪ねてきて店長に追い返されていたとメールが届いたのは一昨日の事。

急に返事を寄越さなくなった自分を、黎翔が探しているのだろうという事は容易に想像が着く。
だが夕鈴には、黎翔が自分の事を諦めてくれるまで待つしかなかった。

今ならまだ、彼の戯れだと思って諦められるから。

自分の事を芸能人扱いしない夕鈴に、ただ興味を持って一時的に執着しているだけ。

彼の想いも、今ならそう思えるから。

今が潮時だろうと思いながら、黎翔に少しずつ惹かれていた夕鈴の胸は切なく痛んだ。


そんなある日だった。
家にいた夕鈴に、黎翔からメールが届いた。

14時から0チャンネルの番組を見て欲しいと。
不思議に思いながらテレビを点けると、夕鈴が滅多に見る事がない芸能関係のスクープやスキャンダルの番組だ。

どうして黎翔がこの番組を見て欲しいと言ってくるのか分からなかった夕鈴だが、スタジオの司会者達の言葉に目を見開いた。

「…続きまして、バンドグループ・Creuzのリーダー・Reiさんの記者会見の様子を、お伝えしようと思います」

「Reiさんといえば数日前、新人女優〇〇さんとの熱愛報道がありましたが…。本日の記者会見はそれについてでしょうか?」

「〇〇さんは彼との関係について、『親しくさせてもらってます』とのコメントがありましたが、Reiさんがこの騒動で正式に会見するのは初めてですね。」

スタジオでの司会者とゲスト出演者達の会話を、夕鈴は呆然としたまま聞く。

テレビ画面には会場に現れた黎翔が、カメラのフラッシュを浴びながら会見用に作られた椅子に座る姿が映し出されている。

「あ、会場の準備が整ったようですので、どうぞご覧下さい。」

見たくはないと思いながら、彼の真の想いを聞けるのはこれが最後になるかもしれない。
そう思った夕鈴は、グッと拳を握りブラウン管越しの黎翔を見詰めた。


沢山のフラッシュを浴びながら、黎翔は、いやReiは、集まった報道陣を冷たい瞳で見詰める。

記者会見を開く事にマネージャーはあまりいい顔はしなかったが、Reiはきちんと事の真相を世間に伝えたいと思った。

自分には、心惹かれる大事な女性がいる事。
噂になっている女優とは、何の関係も無い事。

何より、連絡が取れなくなった夕鈴に自分の気持ちを伝える手段は、これしかないと思った。

夕鈴。

僕の気持ちは変わらない。

僕にとって一番大事なのは、君だよ?

愛しくて愛しくて、ずっと傍にいて欲しいと思うのも君だけだよ?

だからお願い。

君に会いたいんだ。

もう一度僕に、あの笑顔を見せて。

美味しい料理を食べさせて。

そしてこれからも、ずっと傍に。


悲恋のドラマみたいな、悲しい別れはしたくないから。

そんな辛い終わりなんて、絶対に嫌だから。

だから僕は伝えるよ。

君への想いを、全て。


夕鈴が見てくれている事を願いつつ、黎翔はマイクに顔を向けた。


続く



さあ、どうなるでしょう…。

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よろしくお願いします。

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