兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 23

お久し振りです

暑さのせいか、頭痛に悩まされている慧ネンです。
溶けそう…

ちょっと短いですが、続きを投下します。
婚約者(フィアンセ)も後一話で終わりそうです。
もう少しだけお付き合い下さい…!

※原作ネタ(コミックス3巻)含みます。


***



「もう~本当にびっくりしたわよ。」

ずっと黎翔が座っていた椅子に座ってリンゴの皮を剥いているのは、夕鈴の親友明玉。
見舞いに来た浩大と一緒に所用で席を外した彼は、今ここにはいない。

「ごめん、明玉。」

ブツブツ文句を言っている親友に、取り敢えず謝っておく。

先日から明玉は出張で、今朝二日振りに出社したら夕鈴が怪我をして病院に入院した事を先輩達から教えられた。
しかも課長の婚約者である氾紅珠を助けようとして階段から落ちたというのだから、怒り狂った課長が何か仕出かすのではないかとハラハラしていたが、今の所危惧するような事は起きていない。
もっとも、今朝早く紅珠の親の会社の株が下落してちょとした騒ぎになっていたのだが、今は落ち着いているし、夕鈴は何も知らないようなので課長の名誉のために黙っておくことにする。

何かのはずみで夕鈴にばれなければ、問題ないだろう。
彼女は課長想いの、良い部下であった。

(まあ、バレて課長が夕鈴に怒られるのも面白そうだけどね…。)

――人間的には、少々難があったが。


意地悪上司の、婚約者(フィアンセ) 23


冬とは言え午後になると陽向は温かい。
庭師が自慢の庭に出て何やら作業をしているのを、紅珠は二階の私室からぼんやりと見つめていた。

「…紅珠。」
「お父様…。」

いつの間に入って来たのか、呼ばれて振り返ると、朝から自社の株価下落の対応に忙しかった父が立っていた。

「会社の方は大丈夫ですの?」

幾分青い顔をした父が気になって問い掛けると、史晴は困ったように苦笑いし頷いた。
そしてホッと息を吐く。

今朝早く急に下がり始めた氾エンタープライズの株価は、今は持ち直し通常に戻った。
このままのスピードで行けば会社倒産の危機とまで危ぶまれるほどの暴落だったが、ピタリと下落は止まり浮上し始めた時には、この騒ぎの裏にいる人物の力に心底恐怖したものだ。

『――次は無いぞ。』

先程ここに来る前の車の中で受けた電話で、彼が言った言葉が耳に残っている。

『…私の部下はこういうのを嫌うのでね。だが、私が情けを掛けるのは一度だけだ。』

低い声、彼自身は許せていないのだと、その声色は語っていた。

「…汀と言う女性社員に礼を言わなければならないね。」

彼女がいなければ、珀黎翔は止まらなかった。
彼女がいなければ、娘紅珠は怪我をしていたかもしれない。

今は彼女に敬意を表し、暫くの間は大人しくしていようかと史晴は思う。

彼としては、これからますます力を付けていくであろう珀黎翔を娘と結婚させて、切れない繋がりを持ち続けたい。
珀黎翔は厄介な政敵になる前に、懐に入れておきたい存在だ。
幸い、美も教養も兼ね備えた娘には、彼の隣に立つ素質は十分ある。

問題は…。

「お父様、私、黎翔様の婚約者でいられる自信が無くなりましたわ…。」

――娘本人が落ち込んでしまっている事だった。


紅珠が黎翔に初めて会ったのは、高校生になったばかりの頃。今から一年以上前だ。
父親に婚約者として紹介された彼の第一印象は、『冷たそうな人』だった。

端正な顔立ちの紅い瞳が印象的な、紅珠にとってとても大人な男性。

元々、喜怒哀楽を顔に出すような人ではなく、楽しげに笑う事もなければ、大きな声で怒る事もない。
紅珠との付き合いも義務としてしているような感じだった。

欲しい物を強請れば買ってくれるが、それは付き合っていく上での必要経費のようなもので、彼から何かを贈られた事はなかった。

けれど今まで、どんなに素っ気ない態度を取られても、彼が自分に敵意を向けてくることはなかった。

「黎翔様は怒ると本当に怖いしっ、私の事などなんとも思っていないのですわ…。」
「何を言うんだ、紅珠。彼が怒ったのは、部下の女性が怪我をして気が立っていただけだよ。」

宥めてくる父に、紅珠はフルフルと首を横に振る。

幼い頃から大事に育てられた紅珠は、両親にも怒られた事が無い。
初めて黎翔に冷たく睨まれた時、息が止まりそうなほど苦しくて、恐怖で身体の震えが止まらなくなった。
言いたい事も言えず、震えていた自分を助けてくれたのは、彼の部下の女性。
紅珠からみれば、恋敵にあたる存在だった。

きっと酷い事を言ったはずなのに、彼女は紅珠を助けてくれた。
何も言えなかった自分と違い、彼女は彼にきちんと意見を言う事が出来るのだ。

「時間を掛ければ、彼もお前の素晴らしさに気付いてくれるよ?お前ほど彼の隣に立つに相応しい女性はいないのだから…。」
「――いいえ、お父様。」

何の見返りも求めず、損得無しに人を助け、他人の痛みが分かる人間。
彼に隣に立ち、共に歩んでいけるのは彼女のような女性なのだろう。

母性にも似た、包み込むような優しさ。
男性にも意見を言える、意志の強さ。
凛とした美しい大人の女性――。
そんな彼女に、彼も惹かれたのかもしれない。

紅珠はポッと頬を染めた。

「…私を黎翔様から庇って下さった夕鈴さんは、とってもとっても素敵でした。」
「――ん?」

今、史晴は大事な娘の口から、衝撃な言葉を聞いた気がした。


「…お前ってホントズルい男だよな。」

夕鈴の病室に向かって歩きながら、隣を歩く黎翔に浩大が言う。

「――何がだ?」

彼がそう言う意味を分かっているが、わざとらしく聞き返すと嫌そうな顔をされた。

誰かに非難されようと罵られようと、夕鈴を守るためなら何だってする。
卑怯な手も使うし、場合によったら自らの手を染めるかもしれない。

けれど、それを彼女自身には知られたくないのだ。
優しい彼女は、きっと自分のせいだと自らを責めるから。

何も知らず、綺麗なままで、ただ幸せそうに笑っていて欲しい。
それが、自己満足なエゴだったとしても。

彼女の病室からは、彼女と親友の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
扉を開けようとすると、『課長』と言う言葉が聞こえてきて思わず動きを止めてしまったが、何を話しているかまでは聞こえなくて、黎翔は憮然としたまま扉を開ける。

何故だか顔を真っ赤にさせた夕鈴と、ニヤニヤしている明玉がいた。

「…何だ?また私の悪口を言っていたんじゃないだろうな?」
「ち、違いますっ!…もう!明玉の馬鹿!!」

ガバッと布団を被ってしまった夕鈴を見て、明玉は楽しそうに笑いながら黎翔と浩大に向かってウインクした。
恋バナが大好きな明玉にきっとまた冷やかされたのだろうなと、ちょっとだけ夕鈴が哀れに思えた二人だった。


続く


夕鈴と明玉が何を話していたのかは、ご想像にお任せします


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Comment

さすが夕鈴(^-^) 

こんばんは(^-^)夕花です。

夜遅くに失礼しますm(_ _)m
体調はいかがですか?
蒸し暑い日が続いていますので、お身体には気をつけて下さいね(^_^)

さすが夕鈴(^-^)
紅珠、落としましたね(^-^)
凛とした強さがいいですし、人を思いやる優しさを持っていて、夕鈴の魅力ですよね(^-^)
それなのに、可愛らしい一面があって、課長を引きつけて、離しませんね(笑)

でも、課長、怖いことしますね(;^_^A
そこまでやりますか、といった感じで、夕鈴のことを思えば、ですが(>_<)

この続きが楽しみです(^_^)
ではまた(´▽`)ノ
  • posted by 夕花 
  • URL 
  • 2014.07/25 00:43分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: さすが夕鈴(^-^) 

夕花様

コメントにいつも励まされています!嬉しいです~(^^♪
毎日暑いですね…。溶けそうですが、何とか頑張っています。
熱中症には気を付けなければ…(*_*;

凛々しい夕鈴には同性の紅珠もメロメロです!
『お姉様』って感じ♥
課長の前では、可愛いんですけどね。
課長も裏ではいろいろやっていますが、それを夕鈴に知られるのは嫌みたいです。
困ったちゃんです。
まあすべては夕鈴の事を想っての行動だから、許してあげて下さいね(^v^)
  • posted by 高月慧ネン(夕花様へ) 
  • URL 
  • 2014.07/25 02:20分 
  • [Edit]
  • [Res]

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