兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

意地悪上司の、眠れぬ夜

こんばんは。
ご無沙汰してます。

暑いですね。もうそれしか言葉がありません。
…と思ったら、昨日は凄い雷雨でした。
「局地的に…」と天気予報で言っていましたが、局地的過ぎるだろ!と叫びたいほどの変な天気でした(*_*;
雷は嫌だな。パソコンに影響がないか不安になります。
稲光を見るのは好きなんですけどね。

さて、上司と部下シリーズ○○○編を書くにあたり、いきなりその展開は話が飛躍しすぎてるんじゃないかなと思い、小話を書いてみました。
ちょっと気弱な課長がいます。
そんな課長は見たくない!と言う方は、閲覧をお控え下さいね。

では、どうぞ!


***



意地悪上司の、眠れぬ夜


黎翔はたった一人、長い通路を歩いていた。
窓の外に視線を向けると見慣れた街並みが広がっていて、今自分がいるのは職場である白陽コーポレーションだと気付く。
誰にも会わない事を訝しみながら進んでいると、突き当りに階下に下りる階段があった。
ドクンと大きく心臓が跳ねて、彼は思わず足を止める。

――ここは、汀が落ちた場所ではなかったか?

だから何だ。彼女は無事で、もうすでに職場復帰している。
まだ通院はしているが、傷の経過は良好だと聞いている。
今更、何を不安がっているんだ?

自嘲しながら歩みを進めるも、何故か足取りは重く、息苦しい。
出来る事なら、これ以上進みたくない。
この先を、見たくない。

ドクン、ドクン、
自分の心臓の音がうるさい。
ドクン、ドクン、ドクン。

恐る恐る見下ろした、階段の踊り場は。
鮮やかなほど、真っ赤に染まっていた。

その血溜まりの中に、愛してやまない大切な女性が――。

「うわあああぁぁっ……!!!」

布団を跳ね飛ばす勢いで飛び起きた黎翔は、ハアハアと荒い息を何とか落ち着けようとする。

「はあ…またか……。」

室内はまだ暗く、夜明けは遠いようだ。
それなのに、もう一度眠りにつきたいとは思えなかった。

もうすぐ三月の末とはいえ、まだ汗をかくような季節ではない。それなのに寝汗で服がじっとり濡れていた。
黎翔は仕方なくベッドから降り、汗を流すためにバスルームに向かう。
あの日から、情緒不安定な日々が続いていた。

「…ちょう?…課長?」
「珀課長?」

会議中にぼんやりしていたようで、部下達に怪訝そうに声を掛けられてハッとする。

「…どうしました?」
「…いや、何でもない。」

黎翔は悪かったと謝り、途中だった議案を進め始めた。

課長補佐と共に会議室を出ていく課長の後姿を見ながら、夕鈴は首を傾げる。
彼女の周りにいる同僚達も、最近の彼の様子に異変を感じている。

周囲の人間が気付くほど、最近の課長は仕事中に心ここに非ずといった感じでぼんやりする事が増えた。


「…眠れないからって、酒に逃げるのは止せ。」
「仕方ないだろう。こうでもしないと眠れない。」

浩大にウイスキーのボトルを取り上げられそうになって、黎翔はそれをかわし蓋を開けるとグラスに並々と注ぐ。
張元に話して睡眠薬を処方してもらったが、期待した効果は得られず。
『逃げている』と言われたらその通りかもしれないが、強い酒でも飲んで酔い潰れたら眠れるのではないかと思い、金曜の夜に浩大をマンションに呼んだ。

土日は休みなので、遠慮なく飲む事が出来る。
簡単なつまみを作り、リビングで酒盛りを開始した。

ゲストルーム、バス、トイレ、キッチン、リビング…

黎翔は部屋の中を歩き回り、夕鈴の姿を探していた。
どこを覗いても彼女の姿はなく、一体どこに行ったのかと不安になる。

『…汀!どこにいるんだ!?』

大声で呼び掛けても、自分の声が反響するだけで彼女からの返事はない。

『汀!…返事をしろ!…汀!!』

叫びながら部屋中を走り回る。
ハアハアと自分の息遣いだけが聞こえる。

カタン、と音がして、黎翔はその部屋に駆け寄り扉を開けた。

『――汀っ!?』

開けた扉の先、部屋の中はいつか見た風景と同じように真っ赤に染まっていた。

「…おい、黎翔っ!!」
「―――っっっ……っ!!!…はあっ…はあっ…はあ…」

肩を揺さぶられ飛び起きて、そこがリビングのソファだと気付いて盛大に溜息を吐く。
浩大との酒盛り中に、ソファでうたた寝していたようだ。

「…大丈夫か?」
「ああ…。」

ソファに座り直し、汗に濡れた前髪を思わず掻き上げる。

「そんなに夢見が悪いのか?」

飲み始めて一時間も経たないうちに寝落ちした上に、すぐに魘され始めた黎翔の様子に浩大は問う。
仕事中も様子がおかしいと、一課の面々から話は聞いていた。

「まあ、な…。」

黎翔は言葉を濁したが、浩大はその原因に気付いていた。

鏡の前で前髪を掻き上げて、夕鈴は額の傷を見てみる。
昨日仕事が終わってから病院に行っていたのだが、経過もよく、赤い筋のような跡が残っているだけだ。
頭が痛い、気分が悪くなったなど、特に何もなければ、また一ヶ月後に来てくれと院長先生に言われた。
薬も飲まなくて良くなったので、夕鈴は嬉しくて笑みを浮かべた。

土日は休み、今日は部屋の掃除でもしようかなと思っていると、テーブルの上に置いていた携帯が着信を知らせた。

「…え?」

届いたメールを読んで、夕鈴は思いっ切り戸惑ってしまった。

酔い潰れたら夢も見ずに眠れるかなと思っていたが、世の中そんなに甘くないらしい。
結局いつもの悪夢に魘され、眠る事も出来ず、おまけに酷い頭痛に悩まされる事となった。

お昼前に『よく効く薬もってきてやる』と浩大は出て行き、まだ帰ってこない。
そんな特効薬があるならお目に掛かりたいものだと、ここ数日碌に眠れていない黎翔は悪態を吐く。

横になりたいが、そうすればまた眠ってしまい、夢に魘される。
食欲もなく、冷たい水でも飲もうかとキッチンに向かっていると、インターホンが鳴り響いた。
浩大なら遠慮なく勝手に入ってくる。一体誰だ?と思いながら来訪者を確認した彼は、
「…て、汀…っ?」
意外な人物に驚いて慌てて迎え入れた。

「すみません、連絡も無しに突然来て。」
「いや、それは良いが…一体どうした?」

怪我をして一ヶ月ほどここで療養していた夕鈴。
無事に自宅に戻った後、マンションに来るのは約一週間振りだ。

「浩大課長から、課長が二日酔いでダウンしているから介抱よろしくって連絡が来ました。食欲が無いみたいだから、何か作ってやってくれと。」

ビニール袋を掛けた腕を持ち上げて、夕鈴はにこっと笑う。

「顔色良くないですよ?ご飯が出来るまで、休んでいて下さい。」

キッチンお借りします、と中に入って行く夕鈴の背中を呆然と見つめる。
彼女と一緒に暮らしていていた日々が、とても昔の事のように思えた。

「食べ終わるまで、見張ってますからね!」と息巻く夕鈴に見られながら、彼女が作った雑炊を食べ終えて。薬局で購入して来たらしい薬を強制的に飲まされた。

母親よろしく、ソファに横にさせられて、休んで下さいと言われる。
布団をかぶせた後、彼女は傍の床の上に座り込んだ。
きちんと眠ったかどうか確認するつもりのようで、ガキの昼寝じゃあるまいしと黎翔は苦笑いする。

困ったような表情をしている課長を見ながら、夕鈴は浩大のメールの内容を思い出していた。
課長に言った内容は半分嘘だ。浩大からのメールには、彼が夢に魘されて眠れない、それが自分がこのマンションを出た後からだと記されていた。

一週間もの間、碌に眠れない日々を過ごしたのだろうかと胸が苦しくなった。

投げ出されている彼の右手をキュッと握ると、課長は驚いたように閉じていた目を開けた。

「課長…私、ここにいますよ?」
「汀…。」

もう彼が、夢の中でも自分の姿を探す事が無いように。

「…ここにいますから。」
「…ああ。」

静かに微笑む彼女に、黎翔は頷き返す。

「…手、握っていても良いか?」

らしくない事を言っている自覚はあるけれど。
初めて弱さを彼女に、見せるけれど。

こうしていれば、「はい。」と、はにかんだように笑うその姿を、彼女の存在を、傍に感じる事が出来るから。

彼女が傍にいて、笑ってくれるなら。
――きっともう、眠れない夜は来ない。


END


関連記事
スポンサーサイト

Comment

┃q・ω・∪ こんばんは♪ 


…普段、弱点などないような完璧な人(課長)でも大切な女性(夕鈴)が傷ついた姿に遭遇してしまうと、トラウマになってしまうんですねぇ…。

でも、そんな弱い自分を夕鈴にだけ見せて、また夕鈴もそれを受け入れて…。

まだお互いの気持ちを伝えあっていなくても分かり合えるっていいですね♪

心が暖まります( ´艸`//)

  • posted by 桃月 
  • URL 
  • 2014.08/03 02:23分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: ┃q・ω・∪ こんばんは♪ 

桃月様

前回のコメント返信と同時にこちらのコメントが来た…(*_*;
もう、本当にすみませんm(__)m

普段弱みを見せない人ほど、何かしら深い傷を抱えているのかもしれません。
まだ恋人同士じゃないけど、二人がお互いの弱さを支え合って行けると思います。
これから関係が進んだら、弱さも強さを見せ合えるようになる事でしょう(^^♪
  • posted by 高月慧ネン(桃月様へ) 
  • URL 
  • 2014.08/03 03:12分 
  • [Edit]
  • [Res]

二度目です(笑) 

こんばんは(^-^)夕花です。

二度目のコメントになりました(笑)
いつもコメント、ありがとうございますm(_ _)mいつも返事を下さいまして、暖かい言葉、嬉しい限りです(*^▽^*)

あの課長がまさか悪夢に襲われてしまうとは(>_<)それだけ、あの転落事故は課長にきついことだったのでしょうね(T_T)
お酒に逃げてしまうほど、お疲れモードになるなんて!
こういう時に役に立つのは、やはり浩大なんですね(^_^)
一番の薬は夕鈴でしょうけど(^-^)
課長の元に行かせますからね(^-^)
夕鈴に手を握ってもらって、ゆっくり眠ってほしいです(^_^)
そのまま、一緒に寝てもらえれば、一番でしょうけど(笑)
まだ告白してないですからね(笑)

次回も楽しみにしておりますm(_ _)m
  • posted by 夕花 
  • URL 
  • 2014.08/05 01:14分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: 二度目です(笑) 

夕花様

こちらも二度目のコメント返信です(笑)
いつもコメントありがとうございます。本当に毎回励まされています(^^♪
課長って、何でも出来てパーフェクトな完璧人間って感じだけど、何からしくない弱さを秘めているような感じがしませんか?
そんならしくないところを書いてみたかったんです(汗)
でも自分から誰かに助けを求めたり、夕鈴に甘えたり出来ないから、遠回しにフォローするのが浩大なんですよね☆

一緒に寝たら悪夢は絶対見ないと思いますが、仰る通り告白もまだだし付き合っていないですから。
今は、手を握っていてもらえるだけで我慢です(^v^)
  • posted by 高月慧ネン(夕花様へ) 
  • URL 
  • 2014.08/10 00:46分 
  • [Edit]
  • [Res]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

右サイドメニュー

プロフィール

高月慧ネン

Author:高月慧ネン
『兎と狼のラビリンス』へようこそ。
黎翔と夕鈴が大好きな管理人・慧ネンが、溢れる妄想を書き殴るために作ったブログです。
原作沿いや現代パラレル、色々ありますので、お好きなお話をお読み下さい。
よろしくお願いします。

†いらっしゃいませ†

キリの良い数字を踏まれた方は、ご連絡下さい♪

ご訪問中のお客様

現在の閲覧者数:

にほんブログ村ブログパーツ

ブロとも申請フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。