兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪ドラマのようだと、あなたは言った

このお話は、『♪ドラマじゃないけど、素敵な愛を』の続きです。


ベランダに続く大きなガラス窓から入り込む暖かい光に、夕鈴はふと目を覚ました。
黎翔と一緒にドラマを見ていたはずだが、何時の間にか二人共寝てしまったらしい。
テレビの画面はもう消えていて、黎翔が眠る前に消してくれたのかな?と思う。

ソファで、黎翔に乗りかかるように眠っていた自分に、夕鈴は慌てて身体を起こす。
彼は夕鈴に腕枕したまま、安らかな寝息を立てていた。

きっと連日の仕事で疲れているだろう彼を起こすのは忍びなく、夕鈴はそろそろと起き上がるとソファを下りる。

――と、そんな夕鈴の足元に、茶色い塊が寄ってきた。

「…ラブ。」

夕鈴が抱き上げると、子犬はキャンと鳴く。
夕鈴は微笑みながら、子犬の鼻先に人差し指を当てた。

「駄目よ、大きな声で鳴いちゃ…。黎翔さんが目を覚ましちゃう。」

シィーっと困ったように言うと、言葉は通じていないだろうにクゥン…と声を抑えた。

ラブは、付き合い始める前二人が良く会っていた公園に住み付いていた、あの子犬だ。
黎翔に良く懐いていた子犬を、二人で飼う事にした。

黎翔は仕事が不規則なので、世話できない時には夕鈴が家に連れて帰り、彼のマンショに来る時には連れてくる。

豆柴のこの子犬は、愛嬌があり、人間にとてもよく懐く。夕鈴が学校やバイトの時世話してくれる彼女の父と弟も、すぐに可愛がってくれるようになった。

実はオスなのだが、名は『ラブ』と黎翔がつけた。

黎翔が公園で夕鈴を待っている時、ずっと傍にいてくれたこの子は、『もしかしたら僕達のキューピッドだったのかもしれない』と、彼は照れくさそうに笑った。

黎翔の部屋についた途端嬉しそうに部屋中を走り回り、窓際の日向で昼寝をしていたのだが、時間はもうすぐ夕方――きっとお腹が空いて目を覚ましたのだろう。

おやつ代わりにジャーキーを一本与えて、ラブの頭を撫でる。

「もうすぐで晩ご飯だから、これで我慢ね。…黎翔さんまだ寝てるから、煩くしちゃ駄目よ?」

そう言って、夕鈴は晩ご飯の支度に取り掛かった。


♪ドラマのようだと、あなたは言った


唇を舐められる感触に、黎翔は意識を浮上させる。

夢現のまま彼は初め、それは腕の中にいる夕鈴かと思った。
柔らかく甘い彼女の唇を思い出し、黎翔は感情を昂ぶらせる。

もっと味わいたくて、彼女の身体を抱き締めようとした。だが、その手は見事に空(くう)を描いた。

「ん…?」

ドラマを見ながら二人出会った頃の話をし、先に眠ってしまった彼女に腕枕して横になったはずなのだが?

それに何だか、自分の唇を舐めるものが、妙に生温かい。
そして、ハッハッと言う、動物のような息遣い。

「――ラブ……。」

目を開けると、目の前には近過ぎるラブの鼻先が。小さな身体を掴んで抱き上げると、ラブは嬉しそうにキャンキャン吠えた。

ハーと、黎翔は肩を落とす。

せっかく甘い時間を過ごしたかったのに、隣に寝ていたはずの夕鈴の姿が無い。

どこに行ったのだろうと思いながら身体を起こすと、良い匂いが黎翔の鼻をついた。

「あ、起きたんですね。」

よく寝てましたね、とリビングに顔を出した夕鈴はエプロン姿。

「…おはよう、夕鈴。」

朝ではないけど、黎翔はそう言葉を返す。

「はい。…もう夜ですけどね。ご飯出来てますけど、食べますか?」

まだ少しぼんやりしていた黎翔は、苦笑いしながらの夕鈴の言葉にハッと覚醒した。

室内はもう照明が灯され、カーテンも閉められている。時間を見ると、19時過ぎ――。
少し横になるつもりが、4時間近くも寝てしまっている。
それに今日は久し振りの休日。せっかくなので二人で夕食を作ろうと、夕鈴と話していたのに…。

「ごめん、夕鈴!…僕一人だけ寝過ごしちゃって…」

慌てる黎翔に対し、夕鈴は優しく微笑む。

「…大丈夫です。黎翔さん、疲れてるんだから休める時に休まなくちゃ。」

元々家事全般得意な夕鈴にとって、晩ご飯の支度など何の苦にもならない。それどころか、ソファで惰眠を貪る恋人の顔を見る事が出来たのがとても嬉しい。

あの頃は、こんな日が来るなんて思っていなかった。


黎翔の記者会見を見たあの夜、ようやく決断して彼が待つ公園に夕鈴は向かった。
連絡もしないで3時間も待ちぼうけを喰らっていた彼は、怒りもせずに夕鈴を抱き締めてくれた。

あの後、公園のベンチに並んで座って二人話をした。

会えなかった日々の事、お互いの気持ち。

黎翔も夕鈴も、ようやく自分の気持ちに素直になれた。

遅くなってしまったので黎翔は夕鈴を自宅まで送り、保護者の方に挨拶をしたいと言ったが、芸能人である彼がいきなり家を訪れたら家族がビックリすると思い、夕鈴は流石にそれを断った。

もう深夜に近い時間、夕鈴は音を立てないように静かに中に入ったのだが――。
玄関の上がり口には、仁王立ちした父親が待ち構えていた。

実は慌てて家を飛び出したので、携帯は自室に置き去りのまま。
連絡もつかない、何の連絡もなしに遅くまで外にいた夕鈴を、父は怒ったのだ。

自分を心配して怒ってくれているのが分かったので、夕鈴は父親の説教をきちんと受け止めた。

が、黎翔には内緒だ。

その事を教えると、彼は自分のせいだと言うだろうから。

食事を終え、二人で後片付けをし(夕鈴は自分がすると言ったが、黎翔は頑として聞き入れなかった)、その後はまた寛ぎタイム。

リビングのソファに並んで座り、テレビはつけずに二人で談笑をする。

明日は日曜だが、黎翔は昼から仕事が入っている為、明日の午前中には夕鈴を自宅に送らなければならない。
二人が共に過ごせる時間は、余り多くはない。

誰にも邪魔されない二人だけの逢瀬の時間を、黎翔はとても大事にしていた。

「…思うんだけどね?」

「はい?」

「僕達の出会いって、ドラマのようだと思わない?」

隣に座る夕鈴の顔を覗き込んで、黎翔はフワリと笑う。

ドラマみたいな出会いじゃなかったと思っていた夕鈴は、彼の言葉に苦笑いをする。

確かに、自分達は出会ってから、色々な事があったと思う。

平凡な恋をする女性もいる中で、自分は芸能人相手に、普通じゃない恋をした。

「…決してドラマチックではないですけどね?」

初対面の時の事を言われると、黎翔はしょぼんと肩を落とす。

でも今更、あの出会いをなかった事には出来ないし、あの日がなければ、今と言う日々は来ないのだ。
付き合い始めてからの日々を思い出し、夕鈴はとても暖かい気持ちになる。

「…今すごく幸せだから、あんな出会いも有りかなと思うんです。」

「夕鈴…。」

「―私達には、ちょうど良かったんじゃないでしょうか?」

「…うん、そうだね。」

黎翔は微笑む彼女の唇を、そっと塞いだ。


黎翔はドラマのようだと言ったが、夕鈴は思う。

これからもきっと自分達は、様々な出会いと別れを繰り返し、共に進んでいく。


これはドラマなんかじゃなく、本当の、『物語』――。


END


二人の出会い編は、一応これで終了です。

せっかくなのでタイトルを、『ドラマ……』にしようと思ったのですが、思う以上に話が長くなり、内容よりタイトルに苦戦

内容とタイトルが合っていないようなところも…
慧ネンの力量不足です

この後、ちょっとしたオマケ話をアップ

内容は、例の真相です…
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