兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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夕鈴、小犬を拾う 2

こんばんは。慧ネンです。

まだ続き書けてないけど、出し惜しみも何なのでアップしちゃいます~。

ララ本誌ゲットしました!
発売日は明日なので、詳しい事は書きませんが。

陛下…、貴方ってお人は…(*_*;

では、リクエストSSの続きをどうぞ!

***



夕鈴、小犬を拾う 2

築数十年の古い二階建てのアパート。その二階に夕鈴の部屋はある。
一人暮らしを始めるにあたり、なるべく家賃の低いアパートを選んだ。そのためセキュリティーが甘く、高校生の女の子が一人で住むには少し物騒ではあるが近所には交番もあるし、民家も密集している。
夕鈴は特に不便も危険も感じず、一年以上暮らしてきた。

年に数回様子を見に来る家族(父と弟)以外、男の人をこの部屋に上げるのは初めてだった。

「ちょっと待ってて下さいね。」

鍵を開けて中に入ると、箪笥から取り出したタオルを彼に渡し、キンと冷えた部屋を暖めるべく、電気ストーブのスイッチを入れる。
お風呂場に直行して、手早くバスタブを洗うと熱めのお湯を溜め始めた。

「あ、えっと…。」

声を掛けたものの、呼ぶ名前すらないのは不便だなと思う。

「すぐにお湯が溜まりますから、それまでここで暖まっていて下さい。」

まだ玄関の三和土で立ち尽していた彼を手招きして、ストーブの傍を譲った。
ノロノロと靴を脱ぎ、夕鈴の隣に来た彼はストーブの前に座り込んだ。バスタオルの用意をしようと立ち上がり掛けて、彼の艶やかな黒髪の合間に見えた赤い物に目を見張る。

「ど、どうしたんですか!?これっ…!」

思わずガバッと頭を掴んでしまい、彼が「つっ…」と漏らした声にハッと我に返った。

「ご、ごめんなさいっ!」

慌てて手を離す。
よくよく見ると、彼の後頭部には傷があり、もう乾いているようだが血がこびり付いていた。

「…覚えてないんだ。頭が痛かったのは、これのせいだったのか…。」

本当はお風呂で冷えた身体を温めて欲しかったのだが、傷のせいでそうもいかなくなった。困ったように言う彼に、今夜は頭を濡らさない、長湯をしないように言ってお風呂を勧めた。

今日一日何も食べていないと言うので、早くお腹を一杯に満たして欲しくて、彼がお風呂に入っている間に晩ご飯の準備をする。
お米を研いで炊飯器にセットし、高速炊飯のスイッチを押す。冷凍しておいた作り置きのカレーを解凍し、レタスときゅうり、トマトを切ってサッとサラダを作る。掛けるドレッシングも夕鈴の手製だ。

電子レンジがチンっとなった頃、肩にタオルを掛けた彼がお風呂から出て来た。
ご飯の前に気になっていた後頭部の傷を治療し、包帯を巻きながら翌日知り合いの医者に見せようと思う。
血は止まっているけれど、場所が場所だけに不安だ。この傷が、彼の記憶喪失の原因かもしれない。

気にはなるが夕鈴は医者ではないので、これ以上の治療は出来ない。
今はまず、とても疲れている彼に元気になってもらうため、彼の胃袋を満たしてあげなければ…。

炊き上がったご飯を皿によそい、アツアツのカレーを沢山掛ける。大盛りのカレーとサラダをテーブルに運ぶと運ぶと、それを見た瞬間、クウっと彼の正直なお腹が可愛らしく鳴った。

ちょっと照れたように笑った彼が、「食べて良いの?」とお伺いを立ててくるので、「どうぞ。」と微笑むと、凄い勢いでがっつき始めた。
よほどお腹が空いていたんだなあと思い、喉に詰まらせたりしないようにグラスに水を入れて持ってくる。

彼の前に座り、夕鈴もカレーを食べながら彼の豪快な食いっぷりを見ていた。


お風呂から出た夕鈴は、こたつに座っている彼をこっそり観察する。

パジャマ代わりになる服を探したが、長身の彼には父の服も弟の服もサイズが合わない。苦肉の策で、湿っていた彼の服にアイロンを当てた。その上から父親の半纏を着ている。

そんなちぐはぐな格好だが、端正な顔付きの彼は妙に絵になっている。

「…夕鈴っ。」

ぱあっと、彼の顔が綻ぶ。

お風呂に行く前に夕鈴が入れてあげたホットミルクを、手を温めながら両手でマグカップを持って飲んでいる彼はまるで子犬のようだ。
何だかピンと立った耳と、嬉しそうに振られる尻尾が見えるみたい。

けれど先程、風呂上がりの彼がフウッと息を吐いた時、細められた紅い瞳が冷たく見えて。
夕鈴はちょっとビクッとしてしまった。

ホットミルクを飲みながら、「温かいね。」と笑う彼は子犬のようなのに。
その一瞬だけ、何故だか彼が獰猛な狼に見えた。


続く


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よろしくお願いします。

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