兎と狼のラビリンス

こちらは白泉社『狼陛下の花嫁』の二次創作ブログサイトです。(作者様・出版社様とは関係ありません)

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♪愛しい彼女の、ファーストキスは?

このお話は、二人の出会い編のオマケ話です。

(オマケのわりに、長いです…)

そして少しだけ、大人表現?(キスだけですが…)

苦手な方は、閲覧しないで下さい。



♪愛しい彼女の、ファーストキスは?


「――そう言えば…」

黎翔はふと思い出して、夕鈴に問い掛ける。

「夕鈴のファーストキスって、…いつだったの?」

それは黎翔がずっと気になっていて、なかなか聞き出せなかった事だ。

あの日の夜、ファーストキスかと聞いた自分に、夕鈴は『セカンドキスも、貴方で嬉しい』と言った。
黎翔の覚えている限り、夕鈴のファーストキスを奪った記憶が無い。

夕鈴は、まだ諦めていなかったのかと溜息を吐く。
彼は夕鈴より四つも年上だが、こと夕鈴の事になると心が狭い。

でもそんな彼の子供っぽい所も大好きなので、夕鈴は仕方がないなと笑う。

なかなか教えてもらえなくてブーと膨れている黎翔の、腕を引き、耳元で告げる。

真相を聞いた、黎翔は。

「え~?…それってキスと言わな―「だまらっしゃい!」」

ボスッと、持っていたクッションを、彼の顔に押し付ける。

「うぶっ…!…酷いよ、夕鈴~」

酷いのはどっちだと、夕鈴は思う。

異性と付き合った事もない夕鈴にとっては、あの夜は忘れられない出来事だ。

今でもあの時の事を思い出すと、胸がドキドキするのに。

正真正銘、夕鈴にとってはファーストキスだったのだ。

たとえ彼の言うように、世間一般にはそう言われないかもしれなくても。


黎翔から『付き合って欲しい』と言われて、数日後。
彼が疲労から熱を出し、夕鈴がマンションに送っていった、あの夜。

子供のように夕鈴に行かないでと言い、また眠りに落ちた黎翔は、一時間足らずでうっすらと目を開けた。

「黎翔さん?…大丈夫ですか?」

彼の瞳は潤んでいて、かなり熱が上がってきているようだ。
本当は熱さましでも飲ました方が良いのだが、キッチンやリビングには薬箱が見当たらなかった。

実は、薬嫌いの黎翔が薬を常備していないと言う事を、付き合い始めてから知ったのだが。

「…あ、つい…」

ぼんやりとした瞳で、黎翔は夕鈴を見詰め呟く。

額に乗せている濡れタオルは何度替えてもすぐ温くなり、その熱の高さに夕鈴は本気で心配になった。
汗もかなりかいていて、着ている服が湿ってきている。

せめて水分だけでもと思い、冷蔵庫を覗くと、常備しているのかミネラルウォーターが数本入っていた。
一本引き抜くと夕鈴はリビングに戻り、黎翔が横になっているソファの傍に膝立ちになる。

「黎翔さん…?…お水です、飲めますか?」

キャップを外し、黎翔の口元に近付けるが、意識が朦朧としている彼は自分で飲む事が出来ないようだ。

夕鈴はどうしようと考える。

流石にこのままだと、彼は脱水症状を起こすだろう。
食事はともかく、水分を取らずにいるのは危険だ。

ソファに横たわる、黎翔を見詰める。

漆黒の髪は汗で額に貼り付き、端正な顔は高熱の為、苦しげに顰められている。
薄く開かれた形の良い唇から洩れるのは、荒い吐息。

彼の唇に、夕鈴の視線は釘付けになる。

母親を早くに亡くし、夕鈴は小学3年の頃から家事を行ってきた。高校に入ってもバイト三昧で、誰かと付き合った事もない。
家族以外の異性の表情をこんなに近くで見るのも、今日が初めてだ。

それがましてや、少しずつ心惹かれている相手ならなおの事。

「~~~っ!」

夕鈴はギュッと目を瞑り、覚悟を決めた。

相手は病人、――恥ずかしがってる場合じゃない!


夕鈴はミネラルウォーターを一口含むと、薄く開かれている彼の唇にエイッと押し当てた。
黎翔は口内に流し込まれる冷たい水を感じてか、コクリと喉を鳴らす。

夕鈴が唇を離すと、黎翔は物欲しげに「もっと…」と呟いた。

唇に初めて感じた他人の熱に、夕鈴は顔を真っ赤にしながらも、『相手は病人、相手は病人』と繰り返し自らを言い聞かせる。

再度口に含むと、恥ずかしいのを我慢し、彼に水を与える。
黎翔の喉が動いたのを確認し、夕鈴は唇を離そうとした。

――が。

「ン?…んんっ!?」

まるで夕鈴を逃がさないとでも言うように、延びてきた黎翔の舌。
彼の舌は夕鈴の口内にあっという間に入り込み、彼女の舌に絡み付いた。

「うぅん……!」

逃げようとしても夕鈴の頭は黎翔に何時の間にか押さえられていて、離れる事も出来ない。
冷たい夕鈴の口内が気持ち良いのか、黎翔の舌は執拗に蠢く。

「…ぁん……」

永遠にも感じられた、数秒にも満たない時間。

唇が離れた時、夕鈴はペタンと座り込んでしまった。

「うそ…」

唇を押さえ、夕鈴はぼんやりと呟く。

人助けの為、人工呼吸のようなものだと思うようにした。
それなのに、今の行為は、どう考えても――。

黎翔はと言うと、喉の渇きが失せ楽になったのか、また眠りについたようだ。
虚ろな視線、あの状態の彼は、起きた時この事を覚えていないだろう。

「…ファーストキス、奪われちゃった……」

夕鈴は目に涙を浮かべたまま、頬をピンク色に染める。

恥ずかしさと、悔しさと、そしてこれは、歓喜だ。
まだ正式には付き合っていないけれど、黎翔の事は決して嫌いではない。

ただ芸能人である彼と付き合う事に、心が不安を感じ、なかなか受け入れられないだけだ。

たとえ彼と付き合う事が出来なくても、今日の事は一生の思い出になる。


誰にも言わない、きっと彼も知る事のない、唯一の秘密だ。


黎翔に言うつもりなんてなかったのに、彼がしつこく聞くから話さざるを得なかった。

それなのに彼は、それはファーストキスって言わない、なんて言うから。

「…バカ!…黎翔さんのスケベ!エッチ!!」

黎翔の顔に押し付けたクッションで、彼の身体をバシバシ叩く。

確かに人助けの一環だったが、夕鈴にとってあれがどれだけ勇気のいる行為だったか。
恋する乙女心を、黎翔はちっとも分かってない。

「わっ!…夕鈴、痛い!…ごめん、ごめんってば…!」

目に涙を浮かべて自分を叩いてくる彼女が、本気で傷付いている事が分かって、黎翔は必死に謝る。
打ち付けられるクッションをパシッと掴むと、夕鈴は悔しそうに、う~と唸った。

「…本当にごめん、夕鈴。」

黎翔は心から謝る。

熱で朦朧としていたとはいえ、彼女の唇を初めて奪った時の事を、全く覚えていないなんて。

一生の不覚だと、黎翔は思う。

彼女の『初めて』は、一度しかないのだから。

だが少しの安堵もある。

「…夕鈴のファーストキスが、僕で良かった…」

自分の知らない他の男に奪われていたらどうしようかと、黎翔は思った。
もしそうだったとしたら、自分は相手の男を見つけ出して再起不能にしてしまうだろう。

そう思いながら、黎翔は夕鈴の唇にそっと優しいキスを落とす。
まだ黎翔の腕の中で暴れていた夕鈴は、その優しい口付けにようやく落ち着いたようだ。

付き合い始めて、もう何度も交わしてきた口付け。
まだ少しぎこちなさが残るが、夕鈴は必死に答えようとしてくれる。

そんな彼女が、黎翔はとても愛しい。

夕鈴の細い身体を抱き締め、甘い唇に酔いながら黎翔は幸せだと思う。


――ファーストキスだけじゃなく、セカンドキスも、これからの彼女のキスはずっと、自分が奪っていくのだから。


END

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よろしくお願いします。

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